ホンダ フィットハイブリッド 分解調査 (1)

電池関連部品と電動サーボブレーキシステム

2013/12/17

要 約

ホンダ フィットハイブリッド
ホンダ本社のある「Hondaウエルカムプラザ青山」に
展示されているホンダ フィットハイブリッド。

*写真はクリックすると拡大されます。

 公益財団法人埼玉県産業振興公社 次世代自動車支援センター埼玉の主催で、2013年11月7日と8日の2日間、埼玉県北足立郡伊奈町にある埼玉自動車大学校内整備工場においてホンダの新型ハイブリッド車 フィットハイブリッドの車両分解見学会が行われた。その後、2013年11月27日には川口市の埼玉県産業技術総合センターにて分解部品の一般公開と「開発コンセプトとハイブリッドシステム技術の紹介」をテーマにした基調講演会が行われた。

 分解作業は初日に駆動用電池とパワーコントロールユニット(PCU)、ドライブユニット (エンジンおよびモーター内蔵7速デュアルクラッチトランスミッション)の取り外しを、翌日に取り外した部品の分解が行われた。

 本レポートでは第1回として電池関連部品と電動サーボブレーキシステムについて紹介する。ドライブユニットとモーター内蔵7速デュアルクラッチトランスミッションについては「ホンダ フィットハイブリッド 分解調査 (2)」として近く報告する。

関連レポート ホンダ アコードHV分解 (上) (2014年2月掲載)
ホンダ アコードHV分解 (中) (2014年2月掲載)
:ホンダ アコードHV分解 (下) (2014年2月掲載)
トヨタ アクア 分解調査 (1) (2012年11月掲載)
トヨタ アクア 分解調査 (2) (2012年11月掲載)
日産リーフ 分解調査 その1(2012年2月掲載)
日産リーフ 分解調査 その2(2012年9月掲載)
日産リーフ 分解調査 その3(2012年11月掲載)


ホンダ フィットハイブリッドの仕様概要

(詳細はこちら)
車両型式 DAA-GP5
車体 5人乗り5ドアハッチバック
車両サイズ 全長 3,955 X 全幅 1,695 X 全高 1,525 mm、ホイールベース 2,530mm
車両重量 1,080kg (Sパッケージは1,140kg、FおよびLパッケージは1,130kg)
燃費 (JC08モード) 36.4km/L (Sパッケージは31.4km/L、FおよびLパッケージは33.6km/L)
システム性能 最高出力:101kW/137ps、最大トルク:170Nm/17.3kgf-m

注) 分解車両はFパッケージ。

 

 



主要部品サプライヤー一覧

 

部品名
サプライヤー
ドライブ
ユニット関連
1.496L 直列4気筒アトキンソンサイクルガソリンエンジン
 (最高出力:81kW/110ps、最大トルク:134Nm/13.7kgf-m)、型式:LEB
ホンダ (内製)
スターターモーター ミツバ
フライホイール(クラッチダンパー) Luk (Schaeffler)
シリンダーヘッドカバー MAHLE
イグニッションコイル 日立オートモティブシステムズ
スロットルボディ ケーヒン
インテークマニホールド
VTEC油圧制御バルブ
エンジンマネージメントシステム(EMS)
電動ウォーターポンプ (エンジン冷却用) アイシン精機
ラジエーターファン デンソー
ラジエーターホース ニチリン
EGRクーラー マルヤス工業
空燃比センサー デンソー
リア触媒コンバーター ユタカ技研
マフラー
エンジンマウント 日信工業
交流同期 (永久磁石式同期型)モーター
 (最高出力:22kW/29.5ps、最大トルク:160Nm/16.3kgf-m)、型式:H1
ホンダ (内製)
7速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)
デュアルクラッチ Luk (Schaeffler)
電動ギアアクチュエーター
電動油圧クラッチアクチェーター Delphi Automotive
トランスミッションECU Continental AG
サイドカバー ROKI
バッテリー
関連
リチウムイオン電池パック ブルーエナジー
バッテリーECU ケーヒン
コンタクター パナソニック
電池配線モジュール 住友電気工業
冷却ファンモーター シナノケンシ
補機バッテリー 古河電池
PCU関連 インバーター 三菱電機
DC-DCコンバーター TDK
安全関連 ディスクブレーキ 日信工業
横滑り防止装置(ESC)
ABSアクチェーター
電動サーボブレーキシステム
ペダルフィールシミュレーター
ブレーキマスターシリンダー
サーボ(ブラシレス)モーター ミツバ
減速ギヤ/ボールねじ NTN
ブレーキホース 日立金属 (旧日立電線)
エアバッグECU 天津電装電子
シートベルト タカタ
空調関連 電動コンプレッサー サンデン
内外装関連 フロントガラス 日本板硝子
リアガラス、サイドガラス 旭硝子
バックドアステー ショーワ
リアビューミラー 村上開明堂
ヘッド/リアランプ スタンレー電気
サイドミラーランプ 小糸製作所
シート テイ・エス テック
パワーウィンドウスイッチ アルプス電気
トランスミッションレバー
その他 電動パワーステアリング ジェイテクト
ワイヤーハーネス 矢崎総業/住友電気工業
燃料タンク 八千代工業

 

 



分解作業前

 

分解作業前のフィットHV 車両前方から床下を見た写真
分解作業前のフィットHV。 車両前方から床下を見た写真。中央やや後部の黒い部分が八千代工業製の樹脂製燃料タンク。燃料タンクの左側にエキゾーストパイプ、右側に高圧ケーブルが見える。

 

 



電池パックおよびパワーコントロールユニット(PCU)

 

作業前のトランクルーム
作業前のトランクルーム 作業前のトランクルーム
作業前のトランクルーム。後部座席は前に倒されている。銀色のカバーの下にリチウムイオン電池パックとPCUがある。ホンダではリチウムイオン電池パックとPCUを総称してIPU (Intelligent Power Unit)と呼んでいる。 作業前のトランクルーム。写真は後部座席の右側後方。シートベルト横の格子状の部位からIPUを冷却するための空気を取り込む。

 

IPU冷却用インレットダクト 作業後のトランクルーム
IPU冷却用インレットダクト 作業後のトランクルーム
後部座席の右側後方にあるトランクルームの内部。中央にある黒いダクトはIPU冷却用インレットダクト。 IPUを取り外した後のトランクルームを後部座席から見た写真。IPUを冷却した空気を排出する排出口(矢印)がある。写真中央にあるオレンジ色の高圧ケーブルがリチウムイオン電池パックとモーターを繋いでいる。

 

インテリジェントパワーユニット (IPU)
インテリジェントパワーユニット インテリジェントパワーユニット
左の写真が取り外されたIPU。IPUは白い半透明のプラスチックケースに収められている。総重量は42kg。右の写真はプラスチックケースから取り出されたIPU (左の写真とは向きが逆になっている)。サイズはおよそ縦 370 X 横 650 X 高さ 210 mm。
赤い矢印はインバーター、その裏側にはDC-DCコンバーターがある。青い矢印はリチウムイオン電池パック。緑色の矢印はサービスプラグ。紫色の矢印はジャンクションボード。
トヨタ アクアはニッケル水素電池パックが後部座席の下に、インバーター、DC-DCコンバーター、昇圧コンバーターを一体化したPCUがエンジンルームのトランスアクスルの上にあったが、フィットHVではトランクルームの下にリチウムイオン電池パックとPCU (インバーター、DC-DCコンバーター)が並べて搭載されている。また、リチウムイオン電池パックとPCUは発泡スチロールで仕切られている。
黄色い矢印はIPU冷却ファン、白い矢印はアウトレットダクト。インレットダクトから取り込まれた空気はリチウムイオン電池パック、PCU、冷却ファンの順に流れ、アウトレットダクトから排出される。

 

IPU構成部品

ジャンクションボード IPU冷却ファン
ジャンクションボード IPU冷却ファン
主に電気回路の開閉を行うコンタクターで構成されるジャンクションボード。リチウムイオン電池パックの側面、IPUケースの外側に搭載されている。白い矢印はパナソニック製のコンタクターで、左側がプリチャージ、中央がメイン、右側がサブ。赤い矢印がメインヒューズ、青い矢印がバッテリー電流センサー、黄色い矢印がプリチャージ抵抗。 シナノケンシ製のファンモーターを採用しているIPU冷却ファン。サイズは横 170mm(ダクトを含むと520mm)、奥行きが170mm。

 

バッテリーECU リチウムイオン電池カバー
バッテリーECU リチウムイオン電池カバー
ケーヒン製のバッテリーECU。リチウムイオン電池パックのカバーの上に搭載されている。サイズは横 170 X 縦 100 X 高さ 25 mm。 リチウムイオン電池カバーの裏側。左下の部分が冷却用空気の取り込み口。

 

リチウムイオン電池パック
リチウムイオン電池パック リチウムイオン電池パック
ブルーエナジー製のリチウムイオン電池パックの電池カバーを外した写真。電池パックは4モジュール、1モジュールは12個のセルで構成されている。従って、電池パックには48個のセルがある。重量は42.5kg、体積は60L、総電圧は173V、容量は5.0Ah、総電力量は0.86kWh。リチウムイオン電池にすることで、旧型フィットHV搭載のニッケル水素電池に比べ蓄電容量を1.5倍に拡大した。 IPUケース(写真左側)から取り外された電池モジュール。矢印は温度センサー。IPU冷却用の空気は、モジュール上部からセルとセルの隙間を通ってモジュール下部へと流れ、その後、IPUケースの底を通り、PCUへ流れる。

 

電池モジュール 電池セル
電池モジュール 電池セル
モジュールを横に倒した写真。セルは直列に繋がれている。1モジュールの重量は4.5kg。定格電圧は43.2V、定格容量は5.0Ah、電力量は216Wh。 1セルの重量は277g、電圧はおよそ3.5V。

 

パワーコントロールユニット (PCU)
パワーコントロールユニット (PCU) パワーコントロールユニット (PCU)
左の写真は取り外されたPCU。右の写真はPCUの裏側。赤矢印(左写真)が三菱電機製のインバーター、青矢印(左写真)が相電流センサー、白矢印(右写真)がTDK製のDC-DCコンバーター。PCUはリチウムイオン電池を経由した空気がインバーターとDC-DCコンバーターの間を流れることで冷却される。空気は右写真のDC-DCコンバーター上部の吸入口を通り、同下部の排出口から排出される。その後、IPU冷却ファンを経てアウトレットダクトへと流れる。

 

インバーター DC-DCコンバーター
インバーター DC-DCコンバーター
インバーターの内部にあるゲートドライブ基板。インバーター全体のサイズは上から見ておおよそ130 X 160 mm、高さは60mm。 DC-DCコンバーターの内部。サイズは上から見ておおよそ170 X 170 mm、高さは55mm。

 

 



電動サーボブレーキシステム

 

ペダルフィールシミュレーター(ペダル操作部) タンデムモーターシリンダー(ブレーキ操作部)
ペダルフィールシミュレーター タンデムモーターシリンダー
日信工業製のペダルフィールシミュレーター。ブレーキペダルとタンデムモーターシリンダーは通常遮断され、ペダルの踏み具合は信号で電動サーボブレーキECUに送られる。しかし、このままではペダルを踏む感覚がなくなってしまうので、この装置によりブレーキペダルを踏んだ感覚を運転手にフィードバックする。 右側の銀色の部位(赤矢印)はNTN製の減速ギヤとボールねじ、上の黒い部位(青矢印)はミツバ製のサーボ(ブラシレス)モーター、左側の銀色の部位(黄色い矢印)は日信工業製のピストンがある。ここで油圧を発生させ、四輪に送る。サイズはおおよそ横 300 X 縦 150 mm。
電動サーボブレーキシステムはペダル操作部のペダルフィールシミュレーター、ブレーキ操作部のタンデムモーターシリンダー、ストロークセンサー、電動サーボブレーキECUで構成されている。ブレーキペダルの動きはストロークセンサーで検知され、ECUがタンデムモーターシリンダーのモーターに信号を送ることでボールねじとピストンが油圧を制御し、ブレーキをかける。サーボモーターの採用により高精度な油圧制御と素早い応答が可能となったため、ブレーキの踏み始めと停止間際の制動トルクを回生エネルギーとして回収できるようになった。その結果、旧型フィットHVに比べ、回生エネルギーの回収率は60%超向上した。緊急ブレーキ時やペダルストロークセンサーに不具合がある時は、ペダルフィールシミュレーターの油圧がタンデムモーターシリンダーに流れ、直接ブレーキをかける。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>