日産の商品戦略:2012年にアルティマなど有力3モデルを投入
モジュール設計により最新技術を幅広い車種に提供、安価な予防安全装備も広く搭載
2012/07/31
要 約
本レポートは、日産が2011~2016年度の中期経営計画「日産パワー88」で進めている商品戦略について報告する。
日産は中期計画の6年間に、51の新型車を投入する計画。2011年度は5車種にとどまったが、2012年度には、グローバルに10車種を発売する。販売台数が期待できるコアセグメントの車種が多く、なかでもアルティマ、シルフィ(北米ではセントラ)、ノート(欧州では「INVITATION」コンセプトとして発表している)の3車種を、グローバル成長3モデルとしている。日産は、車種数は抑え1車種当たりの販売台数を拡大する方針(中期計画期間中に15車種を新規投入するが、統合などにより13車種を削減する)。
インフィニティブランドと商用車事業の拡大にも注力するとしている。それぞれ商品ラインアップを強化し、販売する地域も拡大する。
また日産は、中期計画期間中に90の新技術を導入する計画。特に燃費向上技術と安全技術を優先して導入する。
燃費向上については、日産は「ゼロ・エミッション(EV)」と、エンジン進化型エコカー「PURE DRIVE」(HVシステムを含む)を二本柱として進めている。PURE DRIVE戦略のもと、ダウンサイジングエンジン「HR12DDR」(DIG-S)や新世代CVTなど、低燃費技術のラインアップを拡充し、各セグメントでトップクラスの燃費を目指す。
安全装備については、日産は1個の後方カメラのみを使用する、従来品より安価な予防安全装備を開発し、北米仕様アルティマから始めグローバルに幅広い車種に搭載する計画。
また日産は、新世代車両設計技術である「日産CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」を、2013年以降発売する新型車の車両開発に導入する。セグメントを越えた共用化を可能にするモジュール設計の導入により、部品共用化によるコスト低減を図るとともに、魅力ある新技術を幅広いセグメントに同時適用することが可能となり、商品力を飛躍的に向上させるとしている。
なお、新興国市場のエントリーセグメントに投入する新ブランド(中国に投入したヴェヌーシアとインドなどに投入するダットサン)については、下記関連レポートをご参照ください。
関連レポート:日産の新興国戦略(2012年7月)
Nissanブランド:2012年に、アルティマ/ノートなど有力量販車を発売
2012年4月に中国で発売した新型シルフィ
(日産が2012年度に投入するグローバル成長モデル3車種の一つ、
北米ではセントラの車名で発売する)
主に日本・欧州で販売するモデル
シーマ | 2012年5月 日本で発売 | 2012年5月に国内で発売した5代目シーマ。3.5Lガソリンエンジンと日産独自の「1モーター 2クラッチ」HVシステムである「インテリジェント デュアル クラッチ コントロール」を搭載する。JC08モード16.6km/Lの低燃費と優れた加速性能を両立。インテリジェントペダルなど最新の安全技術を設定。年間販売目標は1,000台だが、初年度は2,000台を目指す。 |
---|---|---|
新型シーマは、中国市場に投入するインフィニティM(日本名フーガ)のロングホイールベース車をベースに開発した。国内専用車とされる。 | ||
新型 コンパクトトカー | 新型ノート 2012年9月 国内発売 | 現行の「ノート」と「ティーダ」を統合して、Vプラットフォームベースの新型「ノート」として2012年9月に発売する。3気筒1.2Lの「HR12DDR」(DIG-S)または「HR12DE」エンジンと、副変速機付CVTを搭載。またコンパクトクラスで初となるアラウンドビューモニターを搭載する。国内で年間12万台を販売し、日本国内の車名別ランキング上位3位入りを目指す。 |
1.2Lの 「HR12DDR」(DIG-S)エンジンは、直噴ミラーサイクルとスーパーチャージャーを搭載、アイドリングストップシステムを組み合わせたダウンサイジングエンジン。1.5Lエンジン搭載車並の力強い走りと、25.2km/L (JC08モード、現行車は1.5Lエンジンで18km/L)というクラスナンバーワン(排気量1,000cc以上でHVを除く、日産調べ) の低燃費を実現した。 | ||
2013年 欧州発売 | 欧州では英国工場で生産し、2013年にコンセプトカー"Invitation"ベースのBセグメント車として販売を開始する。 なお、日産は2011年前半に欧州で販売する「マイクラ」に「HR12DDR」(DIG-S)エンジンを搭載し、CO2排出量95g/km(欧州計測モード)を実現している。 | |
グローバルに 販売 | 新型コンパクトカーは、グローバルに年35万台以上を生産する計画。中期経営計画「日産パワー88」の達成に大きな役割を果たすとしている。 | |
ラティオ | 2012年夏 国内発売 | 前モデルは追浜工場で生産していたが、タイ工場に移管し、タイで生産しているVプラットフォームベースの小型セダン(現地車名アルメーラ)と統合。2012年夏から年間1万台程度を日本に逆輸入する。 |
主に北米で販売するモデル
アルティマ | 2012年6月末 発売 | 新型アルティマを2012年4月のニューヨークオートショーで初披露し、2012年6月末に発売した。直列4気筒2.5Lエンジン/V6 3.5Lエンジンと新世代のCVTを搭載。4気筒車のEPA燃費は 27 mpg city/38 mpg highway/31 mpg combinedで、現在米国で販売される中型乗用車でトップ。価格は21,500ドルから。 |
---|---|---|
Moving object detection(MOD)、Blind spot warning(BSW)、Lane departure warning(LDW)の三つをセットにした安全装備を設定した(1個のリアカメラで上記の3つの機能を果たす)。 | ||
パスファインダー | 2012年秋発売 | 4代目パスファインダーを2012年1月のデトロイトオートショーに出展し、秋に発売する。従来のBody-on-frame構造をUnibody構造に変更する。V6エンジンと次世代CVTを搭載し、combined 燃費は前モデルV6エンジン車比25%向上する(highway燃費は 26 mpg)。 |
新型グローバルセダン(シルフィ/セントラ)
シルフィ | 2012年半ばに 中国で発売 | 2012年4月の北京モーターショーに出展した。1.8Lガソリンエンジンと副変速機付エクストロニックCVTを搭載する。花都工場で生産し、2012年半ばに中国で発売し、その後2014年までに世界約120カ国で順次発売する。 |
---|---|---|
セントラ | 2012年秋 北米で発売 | 7代目セントラを新型シルフィベースで開発し、2012年秋に北米で発売する。日産は、次期型セントラを、トヨタ・カローラ、ホンダ・シビックに対し従来より強力に対抗できるモデルとする計画。 |
欧州で生産するモデル
中型 ハッチバック | 2014年 英国で生産 | 日産は英国工場に127百万ポンドを投資し、2014年から新たな中型ハッチバックの生産を開始する。欧州で主流の中型Cセグメントへの再参入を果たす(欧州で販売した中型セダンPrimeraは、2007年で販売を終了した)。英国工場で年間8万台の生産を計画。 |
---|
Infinitiブランド:モデル数、販売地域を拡大し、2016年度50万台販売が目標
インフィニティブランド:質・量両面の向上を目指す
販売地域を 70カ国に拡大 | 2016年度 | インフィニティブランドは、2012年5月時点で、46カ国・地域で販売している。2016年度までに70カ国に拡大し、世界で50万台販売する計画(2011年度は米国で9.8万台、世界で約15万台)。今後新たに販売を開始する国・地域は、ブラジル、メキシコ、チリ、オーストラリア、南アフリカ、香港など。 |
---|---|---|
2012年度は、世界で過去最高の20万台販売する計画。増加分の多くの部分を中国に期待している。2016年には、中国で10万台を販売する計画。 | ||
車種数を 10に倍増 | インフィニティブランドの商品ラインアップを、2011年の5車種から、2016年度までに10車種に倍増する計画。2012年以降、JX(2012年3月)、インフィニティEV(2014年)、エセレア・コンセプトベースの小型車(2014年)などを発売する。PHVのEMERG-Eコンセプトは、量産は未定とされる。 | |
ドイツ3社と並ぶ 価格水準を目指す | インフィニティは、2016年までにBMW、Mercedes、Audiのドイツ3社のラグジュアリー車と同等の実販売価格を目指す。現在、インフィニティとトヨタ・レクサスの実販売価格はほぼ同等で、Audiの価格に迫っているが、Mercedes/BMWとは差が大きいとしている。 | |
香港に インフィニティ 本社を開設 | 2012年5月 | 日産は、2012年5月に、インフィニティ本社を香港に開設した。商品企画やマーケティング機能を集約する。中国は今後、世界のラグジュアリーブランド車販売の中心地になるとしている。 |
開発は、引き続き日本で大部分を担当する。日本の「おもてなし」の心を大切にする。 |
ダイムラーと、プラットフォーム・エンジンで提携
ダイムラーのプラット フォームを採用する エセレア・コンセプト | 日産は、2014年をめどに、メルセデス・ベンツのコンパクトカー・プラットフォームをベースにしたインフィニティブランドのプレミアム・モデルを投入する予定と発表した(2012年1月発表)。 日産は開発費を削減でき、ダイムラーも開発費負担を軽減できる。 |
---|---|
実際には、メルセデス・ベンツAクラスおよびBクラスが使用する、Mercedes Front-wheel-drive Architecture (MFA)を採用して、インフィニティエセレア(ETHEREA)コンセプト(日産が2012年のジュネーブモーターショーに出展した)ベースの量産モデルを開発するとされている。 | |
また、エセレアは、マグナ シュタイヤーに生産を委託する計画。日産は、エセレアが主に欧州市場をターゲットとすることや、ダイムラーのプラットフォームベースであることから、マグナ シュタイヤーに委託するとしている。マグナ シュタイヤーは、ダイムラーのMercedes-Benz Gクラスを30年以上受託生産している。 | |
ベンツとインフィニティ 向けエンジンを生産 | ルノー・日産アライアンスとダイムラーは、日産のテネシー州デカード・エンジン工場で、ダイムラーが開発した4気筒2500cc級のエンジンを生産し、メルセデス・ベンツ車とインフィニティ車に供給すると発表した。2014年に生産を開始し、最大稼働時の生産能力は年間25万基規模となる予定。 |
ダイムラーは、2014年からアラバマ州タスカルーサ工場で組立てるメルセデス・ベンツ「Cクラス」に搭載する。インフィニティは、2014年から欧州で生産する「エセレア」コンセプトベース車などに搭載する。 |
インフィニティ:2012~2014年に発売するモデル
インフィニティ JX | 2012年3月 米国で発売 | 日産は2012年2月米国スマーナ工場でインフィニティJXの生産を開始し、3月に発売した。米国でのインフィニティ車生産は、キャントン工場でのQX生産に続く2車種目(現在は、QXを日産車体九州工場で生産している)。 |
---|---|---|
Dプラットフォームベースで開発した3列シート7人乗りの高級クロスオーバー車(このセグメントはアキュラMDXが開拓した)。V6 3.5LエンジンとCVTを搭載し、EPA燃費は18 mpg city/24 mpg highway。価格は41,400ドルから。日産は、米国で年間6万台程度の販売台数を期待している。 | ||
Mロング ホイールベース | 2012年6月 中国で発売 | 2012年4月の北京モーターショーに、インフィニティMロングホイールベース車(150mm延長し3050mmとした)を出展し、6月に発売した。 |
インフィニティG | 2013年 | 日産はインフィニティG(日本名スカイライン)を2013年に刷新し、現行のV6エンジンに加え、ダイムラーから4気筒ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを調達・搭載し、またHVを設定する予定とされる。 |
インフィニティEV | 2014年 | 2012年4月のニューヨークモーターショーに、インフィニティEVのほぼ生産モデルである"LE Concept"を出展した。リーフをベースとする100% EVで、2年以内に発売するとしている。 |
PHVコンセプトカーの出展
インフィニティ EMERG-E コンセプト | 生産は未定 | 2012年3月ジュネーブモーターショーに出展した、2人乗りミッドシップの高性能スポーツカー。全長は4,464mm、ツインモーターとレンジエクステンダーとなる3気筒エンジンを搭載するPHV。停止状態から時速60マイル(約96km)まで4秒、EV走行距離は30マイルとしている。 |
---|
インフィニティの海外生産を促進
米国と中国でも生産
米国で生産 | 日産は円高の影響を最小化するため、インフィニティ車についても日本以外での生産を拡大する。米国や欧州への供給は、原則として現地で行う。2012年2月に米国スマーナ工場でJXの生産を開始した。 |
---|---|
2014年から 中国で生産 | 日産は、中国の襄陽工場で、2014年から中国専用のインフィニティ2車種の生産を開始すると発表した。湖北省の襄陽工場では、現在ティアナとムラーノを生産し、高価格帯の車を生産する設備や管理体制が整っているとしている。 |
小型商用車(LCV)で世界最大のメーカーを目指す
小型商用車の中期計画
商用車の 中期目標 | 日産は、中期経営計画において、2016年までに世界最大の小型商用車メーカーになるとの目標を掲げている。日産の小型商用車のグローバル販売台数は、2011年度に初めて100万台を超えた。2016年度までに、200万台に拡大する計画。 |
---|---|
販売地域を拡大 | 新興国市場にも拡大する。日産が乗用車を販売する地域で商用車も販売しているのは6~7割で、商用車を新たに販売するだけで販売の純増が期待できる。日本で展開している専門店「商用車プロショップ」を新興国にも広げる計画。 |
開発体制が充実 | 商品面では、2009年に自社開発したNV200バネットを発売するまでは、マツダボンゴの供給を受けバネットバンとして販売していた(現在もNV200バネットと併行して国内販売中)。またキャラバンは11年間フルモデルチェンジしていないなど遅れていたが、開発体制が整い2012年に新型車を発売した。今後は自社開発車の他社へのOEM供給も拡大する計画。 |
NV350キャラバンシリーズ
NV350 キャラバン、 キャラバンワイド | 2012年6月 日本で発売 | 2012年6月、キャラバンをフルモデルチェンジし、「NV350キャラバン」の車名で発売した。同市場はトヨタ「ハイエース」が80%のシェアを押えているが、燃費性能、広い荷室空間、先進装備を訴求しシェア40%を目指す。 |
---|---|---|
2.0L/2.5Lガソリンエンジンと2.5Lディーゼルエンジンを搭載。ホイールベースを延長し、荷室長を250mm延長して、4ナンバー車で最大の3050mmとした。前モデルにはなかったワイドボディー車も2012年冬に投入する。 | ||
世界85カ国へ 輸出 | 日産車体の九州工場で年間6万台生産し、世界85カ国に輸出する(国内販売目標は年24,000台)。日本からの輸出を守る車種の一つとする計画。 |
NV200シリーズ
NV200バン | 2013年2月 米国で発売 | 日産は2013年2月に、NV200バン(日本では2009年にNV200バネットの車名で発売した)を、米国の商用車専門ディーラーを通して発売する。このセグメントは年間需要約3万台で、フォードのTransit Connectが独占しているが、日産は今後市場が拡大すると見込む。北米向けNV200バンはメキシコで生産する。 |
---|---|---|
(注)日産は2010年末から、米国で、V6 4.0LエンジンまたはV8 5.6Lエンジンを搭載するフルサイズバン NV1500/NV2500HD/NV3500HDを販売している。 | ||
NV200ベースの タクシー | 2013年後半から | 2013年後半から、ニューヨーク市のタクシー(保有台数は、13,000台以上)として、NV200を独占供給する。メキシコのクエルナバカ工場で生産する。予定する標準装備一式を含めたメーカー希望小売価格は29,700ドル。 |
日産は、NV200電気自動車タクシーの導入も計画。ニッサン・リーフ6台と充電設備をニューヨーク市に無償で提供し、パイロットプログラムを実施する予定。 | ||
e-NV200 | 2013年度 (スペイン工場で 生産) | 日産は、2013年度からスペインのバルセロナ工場でNV200の100%電気自動車"e-NV200"を生産し、グローバルに供給する。「日産リーフ」に続く2車種目の電気自動車となる。EV走行距離は、リーフと同等(200km)を目指す。 |
バルセロナ工場は、NV200のガソリン車を生産している。e-NV200の生産に100百万ユーロを投資し、700人を新規雇用する。またリチウムイオン電池は、英国サンダーランド工場で生産し、供給する。 | ||
米国でも発売 | 2012年1月、デトロイトモーターショーにも出展した。ビジネスユーザーを主なターゲットとするが、個人やファミリーユースの顧客も想定している。 |
フルサイズバンベースの乗用車
NV乗用車 | 2012年4月 米国で発売 | 日産は、NV3500 HD Passenger Vanを発売した(日産は"NV乗用車"と略称)。フレーム構造で、V6 4.0LまたはV8 5.6Lエンジンと大型商用車用5速ATを搭載。4列シートで12名が乗車できる。価格は、31,690ドルから。 |
---|
ピックアップトラック
次期型1トン ピックアップ トラック | 2014年 (メキシコ、タイ などで生産) | 日産は、次期型ピックアップを開発し、2014年にもメキシコ、タイ、スペインなど5カ国で年間40万台規模を生産する。 |
---|---|---|
日産と三菱自は2010年12月に、両社の次期型1トンクラスピックアップの開発・生産協力を検討すると発表した。しかし日産車は北米でも販売するので三菱車より少し大型になるため、両社の共同開発は見送られる見込み。 | ||
タイタン | 2014年頃 | 北米で販売するフルサイズピックアップ「タイタン」次期型を、2014年にもキャントン工場で生産開始する。現在はV8 5.6LエンジンとCrew cab(2列シート、4ドア)/King cab(広いキャビンを持ち、1列シートの後部にスペースがある)の組み合わせだけだが、V6エンジン車やSingle cabも計画中とされる。 |
PURE DRIVE:低燃費技術のラインアップを拡充
各セグメントでトップクラスの低燃費を実現
PURE DRIVE | 日産は、低燃費技術について、究極のエコカー「ゼロ・エミッション(100% EV)」と、エンジン進化型エコカー「PURE DRIVE」(HVを含む)を二本柱として、各セグメントでトップクラスの低燃費を実現する方針。 |
---|---|
「PURE DRIVE」として、既に、マーチに搭載した副変速機付きCVT、アイドリングストップと組み合わせた「HR12DE」エンジン、また量産車初のデュアルインジェクターを採用した1.5L 「HR15DE」エンジン(2010年6月、日本で発売したジュークに搭載)などを投入している。 | |
HR12DDR エンジン | 日本で2012年9月に発売する新型ノートに、直噴ミラーサイクルとスーパーチャージャーを採用しダウンサイジングした3気筒1.2L「HR12DDR」(DIG-S)エンジンを搭載する。 |
新世代CVT | 新世代CVT(2.0L~3.5L用、変速比幅7.0を実現、またフリクションを約40%低減し燃費を約10%改善)を導入、米国で発売した新型アルティマから搭載を開始し、グローバルに導入する。 |
FF車用 HVシステム | 「1モーター2クラッチ」システムを、新世代CVTに内蔵し、2.5Lスーパーチャージャー付きエンジン、リチウムイオン電池と組み合わせた。まず米国で2013年に発売し(アルティマが有力候補とされる)、グローバルに投入する。 |
スマートシンプル ハイブリッド | 日産は2010年11月に、セレナにベルト方式のスターター/オルタネーター(日産はECOモーターと呼称)を使用するアイドリングストップを設定した。今回、ECOモーターの出力とエネルギー回生発電量を高め、蓄電容量も高めて、エンジンアシスト機能も持つ簡易型HVシステム「スマートシンプルハイブリッド」を開発し、2012年8月からセレナに設定する。新型セレナのJC08モード燃費は15.2km/Lでクラストップとなる。 |
安価な予防安全技術を開発し、多くの車種に搭載
1台のカメラで3つの予防安全機能を果たす
日産は、車両後部に設置した1台のカメラで、自車後方・側方の様々なリスクを見極める「リヤカメラを用いたマルチセンシングシステム」を開発した。具体的には、車線変更時のBlind spot warning(死角検出警報)、クルマが方向指示器を出さずに車線から逸脱し始めた場合のLane departure warning(車線逸脱警報)、後退運転時のMoving object detection(移動物検知)の3つの機能を備える。 |
2012年米国で発売するアルティマに設定した。今後グローバルに幅広く搭載する予定。1台のカメラのみ使用し、また警報機能までにとどめることで(例えば、車線中央に戻るような誘導はしない)大幅なコストダウンを実現した。 |
新世代車両設計技術「日産 CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」を導入
「日産CMF」により、コストを削減しながら、新技術を幅広いセグメントに同時提供
「日産CMF」を 採用 | 日産は、次世代車両設計技術である「日産CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」を導入し、日産CMFに基づいて開発した車種を2013年から発売する。日産はCMFを採用した生産台数を、2013年に生産全体の12%、2016年に58%に高める計画。CMFの採用により、部品コストを27%、開発費を29%減らせる見込み。 |
---|---|
背景 | 車両開発において、環境技術や安全対策などコストアップ要因が拡大するなかで、商品競争力を保つために、さらなる開発コストの削減が求められている。 |
これまで日産はプラットフォームの共用化を進めてきた。しかし、日産によると、今日の激しい競争のなかで、プラットフォーム方式により個々のモデルの多様性を維持しながらコスト削減を同時に進めるのは困難になってきている。 | |
「日産CMF」の 構造 | 「日産CMF」では、車両構成を「エンジンコンパートメント」、「コックピット」、「フロントアンダーボディ」、「リヤアンダーボディ」の4つのモジュールとし、更に電子部品をまとめる「電子アーキテクチャー」を加えて、それぞれのモジュールに適切なバリエーションを用意、これらのモジュールの組み合わせを変えることで製品を設計する。 日産は、開発するモジュールを、ルノーだけでなくダイムラーとも共有するとしている。 |
新技術を 幅広く搭載 | 日産は2016年度までに90件の新技術を採用していく計画。「日産CMF」により、クラスを超えた設計の共用化が可能になり、従来は上級車中心に採用されていた魅力ある新技術を、幅広いセグメントの車両に同時に提供することが可能になるとしている。 |
(参考資料)日産のプレスリリース、日本各紙およびAutomotive News報道
<自動車産業ポータル、マークラインズ>