スズキ:インドの年産能力は2013年に170万台体制へ

中国では2015年に年産能力50万台、インドネシアにはエンジン工場新設

2011/12/05

要 約

 スズキの最大市場であるインドでは、四輪工場でのストライキや金融引き締めによる需要縮小の影響で、2011年度上期の販売が前年同期比10.6%減の53.4万台。通期では、厳しく見て100万台程度、良くて昨年度並み (120万台) の見通し。

 日本国内市場の2011年度上期販売は、震災等の影響で軽自動車販売が5万台減少。通期の国内販売は、前期をやや下回る58.6万台の見込み。

 一方、中国やASEAN諸国では販売拡大が続いており、生産体制も拡充する計画。中国では新工場を建設し、2015年には年産能力を50万台とする。インドネシアでは、年産能力10万基のエンジン工場を新設する。

 インドでも、中・長期的には需要・輸出拡大を見込んでおり、Manesar工場の第2、第3工場を追加して、2013年の年産能力を50万台増の170万台とする計画。また、今後はインドでSwiftなど高価格の車の販売を増やし、売上単価を引き上げるとしている。

 2011年度上期の世界販売は4.0%減の120万台、業績は上期としては2年ぶりの減収・営業減益。通期の販売見通しは、当初予想を10万台下方修正し、271万台とした。業績見通しについては、タイ洪水の影響が不透明なこともあり、利益目標として当初予想を据え置いた (売上高は前期並みの2兆6,100億円、営業利益は2.9%増の1,100億円)。

 なお、VWとの資本・業務提携について、スズキはVWに契約解除とスズキ株の売却を求め、VWは株式を保有し続けるとして、両社が対立。スズキは、2011年11月に国際仲裁を申し立てた。



インド:2011年度上期の販売は労働争議と需要縮小で11%減の53万台

 スズキのインド連結子会社Maruti Suzuki の2011年4-9月の販売台数は、10.6%減の53.4万台。2011年2月に高級セダンKizashi, 8月に小型ハッチバック車の新型Swiftを投入したが、Manesar工場での労働争議による生産活動の一時停止、金融引き締めやガソリン高による国内需要の縮小等の影響で、販売は減少した。

 特に金融引き締めでローンが組みにくくなった影響が大きく、Maruti800などスズキが得意とする低所得者向けの小型車の販売が大幅に減少した。スズキは今後、販売台数やシェアにこだわらず、Swiftなど高価格の車の販売を増やすことで売上単価を引き上げる方針。2011年度通期の販売台数見通し (2011年11月発表) は、厳しく見て100万台程度、良くて昨年度並み (120万台) としている (11月までの 8カ月間の販売は 17.8%減の 681,200台)。

Maruti Suzuki の業績

(台・100万Rs)
2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2010年
4-9月
2011年
4-9月
総販売台数
国内販売
輸出
561,822
527,038
34,784
674,924
635,629
39,295
764,842
711,818
53,024
792,167
722,144
70,023
1,018,365
870,790
147,575
1,271,005
1,132,739
138,266
596,978
520,823
76,155
533,833
473,089
60,744
売上高
純利益
純利益率
120,034
11,891
9.9%
145,922
15,620
10.7%
178,603
17,308
9.7%
203,583
12,187
6.0%
289,585
24,976
8.6%
361,282
22,886
6.3%
169,878
10,636
6.3%
158,574
7,897
5.0%
インド国内市場
Maruti のシェア
1,143,076
46.1%
1,379,979
46.1%
1,549,882
45.9%
1,552,703
46.5%
1,949,776
44.7%
2,520,421
44.9%
1,177,047
44.2%
1,196,539
39.5%
資料:Maruti Suzuki Quarterly Report Q4 FY2009, Q2 FY2010
(注) 1. インド Rs は、2011年12月初時点で約 1.53円。
2. "インド国内市場" は、2010年度までは SIAM (Society of Indian Automobile Manufacturers) の統計によるPassenger Vehicles の国内販売台数、2010年4-9月/2011年4-9月は各メーカー発表の乗用車/UV/MPV販売台数の合計。
"Maruti のシェア" は、Maruti の国内販売を "インド国内市場"で除した計算値。

 

Maruti Suzuki:労働争議によりManesar工場で生産停止、4.5万台の損失

 Maruti Suzuki の Manesar工場では、同工場独自の労働組合設立を望む労働者とそれを認めない経営者との対立をきっかけに、労働争議が生じた。2011年 8月、一部従業員の怠慢行為の発生を受け、会社側がロックアウトを強行して以来、労使交渉がこじれ、10月25日まで断続的にストが続いたが、10月末に収束した。部品子会社にもストが発生し、稼働していた Gurgaon工場の生産規模も縮小した。Maruti Suzuki の2011年 4-9月の生産台数は58.5万台で、前年同期より 18%減少。
 Maruti Suzuki の2011年 4-10月の販売台数は、前年同期より約 12万台減少した。スズキは、Manesar工場で発生した労働争議による損失分が約 4.5万台、インド市場の景気の影響による減少が7.5万台としている。

資料:日経産業新聞 2011.11.2, 日刊自動車新聞 2011.11.8, Maruti Suzuki Press Release 2011.10.29

 

Maruti Suzuki のセグメント別販売台数

(台)
セグメント モデル 2010年
4-11月
2011年
4-11月
A: Mini 全長:3600mm以下、排気量:1.0L以下 Muruti800, A-Star, Alto,
Wagon-R
361,887 298,830
A: Compact 全長:3600超4000mm以下, 排気量:1.4L以下 Swift, Estilo, Ritz 176,328 133,533
A: Super Compact 全長:4000超4250mm以下, 排気量:1.6L以下 Dzire 69,815 60,787
A: Mid-Size 全長:4250超4500mm以下, 排気量:1.6L以下 SX4 13,241 11,662
A: Executive 全長:4500超4700mm以下, 排気量:2L以下 Kizashi - 336
Total A: Passenger Cars 621,271 505,148
B: Utility Vehicles 2x4 or 4x4, フレーム構造, 2 box, 5-10人乗り Gypsy,
Grand Vitara
4,428 4,296
C: Vans 1 or 1.5 box, 5-10人乗り Omni, Eeco 105,182 97,973
国内販売合計 730,881 607,417
輸出 97,559 73,783
総販売台数 828,440 681,200
資料:Maruti Suzuki Press Release 2011.10.1
(注) 1. SIAM が 2011年 7月に採用した乗用車の新たなセグメント区分による、セグメント別販売台数。 Passenger Cars, Utility Vehicles, Vans を合わせて、乗用車 (Passenger Vehicles) としている。
2. Kizashi は 2011年 2月に発売した高級スポーツセダン、2011年 8月には新型 Swift を発売。
3. インドでは2011年半ば頃からガソリン価格の高騰に伴い、ディーゼル車への需要が高まっている。スズキは、Swift, Dzire, Ritz, SX4にディーゼル車を設定している。

スズキ:インド市場における新型車投入 (2011~2012年)

発売年月 概要
Kizashi 2011年2月  スズキの車種の中で最上級のセダン。2.4L ガソリンエンジンを搭載。富裕層向けで、販売価格はMT車が165万ルピー、CVT車が175万ルピー。対抗車は VW Jetta, Honda Accord, Skoda Laura。日本の相良工場から完成車を輸出販売する。
新型 Swift 2011年8月  2010年8月に日本・欧州で発売した小型ハッチバック車。新型の1.2Lガソリンエンジンと1.3Lディーゼルエンジン (Fiatからライセンス供与を受けて自社生産) を搭載。インドの道路事情を考慮し、専用タイヤ、ホイール、サスペンションを採用。価格は 42.2万~63.8万ルピーで、最低価格は旧型より約 1.2万ルピー高い。
新型3列シート車 2012年前半  新型 Swift をベースに開発し、デザインは Maruti Suzuki の研究開発部門が手がけ、2010年 1月の Delhi Auto Expo に出展したコンセプト車 "rIII" を踏襲する。Manesar工場で年間 5万台程度の生産を計画。

資料:スズキ Press Release 2011.2.2/2011.8.18、日刊自動車新聞 2011.8.19, 日刊工業新聞 2010.10.29/2011.2.9

 

Maruti Suzuki:2013年の年産能力は170万台

 Maruti Suzukiは2012年初頭にManesar第2工場、2012年度末にも第3工場 (年産能力は各25万台) を稼働する計画。これにより、インドでの年産能力は現状の120万台 (Gurgaon工場85万台、Manesar工場35万台) から170万台に拡大する見通し。

 さらに、今後のインド市場の需要増と海外向けの輸出増、老朽化したGurgaon工場の更新に対応するために新工場の設置が必要として、2011年10月、工場用地の購入を決定した。

 

Maruti Suzuki:Manesar工場に第2、第3工場を新設、さらに新工場建設のための土地購入

稼働時期 概要
Manesar
第 2 工場
2012年1月  年産能力 25万台。2010年 2月に建設計画を発表し、現在建設中。投資額は約 170億ルピー。
Manesar
第 3 工場
2012年度末
or
2013年度初
 年産能力 25万台。2010年 9月に建設計画発表。投資額は約 192.5億ルピー。
新工場 未定  2011年10月、四輪車工場の建設などを見据え、インド西部の Gujarat州 Mehsana地区で土地購入を決定。インド市場の今後の需要増と海外向けの輸出増に対応する。老朽化した Gurgaon工場を更新するためにも、新工場の設置が必要。近く州政府と正式調印する予定。

資料:Maruti Suzuki Press Release 2010.9.7/2011.10.29、スズキ Press Release 2011.10.29, 日刊自動車新聞 2011.6.3

 



国内市場: 2011年上期の軽自動車販売は5万台減

 2011年4-9月の国内販売台数は、登録車が前年同期より4,000台増加したものの、軽自動車が5万台減と大きく減少し、合計では15.0%減の26.1万台。2011年度通期の見通しは、前期をやや下回る58.6万台としている。

 新型車投入では、2010年9月に世界戦略車の新型Swift、2011年1月に小型車の新型Solioと軽ワゴンの新型MR Wagonを発売。2011年12月には軽自動車Altoの新グレードAlto Ecoと新型Swift Sportを投入する。

 電動車両では、Swift ベースのプラグインハイブリッド車の実証試験を実施している。

スズキの国内新車販売

(1,000台)
2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
計画
2010年
4-9月
2011年
4-9月
軽自動車 606 587 579 554 521 510 275 225
登録車 85 86 85 67 68 76 32 36
国内合計 690 673 665 622 588 586 307 261

資料:スズキの決算参考資料 2011.5.10/2011.11.7

スズキ:日本市場における新型車投入 (2010年後半~)

発売年月 概要
新型 Swift 2010年9月  約 6年ぶりに全面改良した小型乗用車。スズキが販売する登録車の第1の柱。軽量化と高剛性を両立した新型プラットフォーム、吸排気 VVT を採用した新開発 1.2Lエンジン、副変速機付きCVT を採用。動力性能を高め、燃費 (10・15モード) も 23.0km/L に向上 (2WD・CVT車、旧型は21.0km/L)。今後、欧州、インド、中国にも投入する。年販目標は国内が 43,000台、海外が30万台強。
新型 Solio 2011年1月  約12年ぶりに全面改良した小型背高ワゴン。新プラットフォームと、Swiftと共通の1.2Lエンジンを採用。後席両側スライドドア、多彩なシートアレンジも特徴。燃費は10・15モードで22.5km/L。Swiftに続く登録車第2の柱として拡販を図る。年販目標は12,000台。
新型 MR Wagon 2011年1月  全面改良した軽ワゴン。新しくクルマを持つ若年ユーザーを想定。低燃費、広い車内空間、個性あるデザインをコンセプトに開発。16年ぶりに刷新した軽量・高性能な軽自動車用エンジン(R06A型)と副変速機付きCVTを搭載し、燃費は10・15モードで25.5km/L。
新型 Alto Eco 2011年12月  軽自動車 Alto の新グレード。軽自動車用の新型エンジン(R06A型)と CVT を採用。停車直前の減速時(9km/h以下)からエンジンを止める新アイドリングストップシステムをスズキで初めて搭載。燃費は JC08モードで 30.2km/L で、ガソリン車トップ(スズキ調べ)。価格は 89.5~99.5万円。Altoシリーズ全体で月販目標は 7,000台。
新型 Swift Sport 2011年12月  新型 Swift をベースに、足回りやハンドリングをスポーティにしたモデル。出力と燃費を向上させた 1.6L M16Aエンジン、専用に開発された 6速MTまたは副変速機付き CVT を採用。欧州でも販売され、欧州向けはハンガリーで生産する。
Swift PHV 未定  2010年秋から、プラグインハイブリッド車 Swift range extenderの試作車を使い、日本、欧州、インドで実証試験を実施中。2011年12月開催の東京モーターショーには、同モデルを改良し、電池容量を増やして EV走行距離を 15km から 30km に延ばした Swift EV Hybrid を出展した。

資料:スズキ Press Release 2010.8.26/2010.12.24/2011.8.10/2011.11.8/2011.11.24

 

三菱自動車に小型車 Solio を OEM供給、三菱自動車から軽商用EVをOEM調達

 スズキと三菱自動車は、スズキが三菱自動車に新型小型乗用車 Solio を OEM供給することで合意した (2010年 12月)。2011年春から月間 800台程度、年間約 1万台を、国内市場に限定して供給。三菱自動車は デリカD2 として販売している。国内でスズキが三菱自にOEM供給するのは初。
 三菱自動車は、2011年12月に発売する軽商用 EV MINICAB-MiEV を、スズキに OEM供給するため、両社で協議に入ると発表した(2011年11月)。2012年 2月から少量台数を供給し、2012年度中に本格供給を開始する計画。三菱自がスズキに OEM供給するのは初。三菱自は、同モデルの日産への OEM供給も検討している。

資料:スズキ Press Release 2010.12.24, 日刊自動車新聞 2010.12.25/2011.11.24

 



中国での年産能力を50万台に倍増、インドネシアにエンジン工場を新設

 スズキは、中国で2015年を目処に新工場を建設し、年産能力を50万台に引き上げる計画。ASEAN市場では、インドネシアに年産能力10万基のエンジン工場を新設する。ベトナムでは、四輪車工場を移転・新設し、生産能力を6割増の5,000台に増強する。

中国:重慶長安鈴木汽車の第 2工場を建設し、中国での年産能力を 50万台に倍増

 スズキは2010年 8月、合弁会社の重慶長安鈴木汽車で設備を増強し、年産能力を 3割増の 20万台とした。もう 1つの合弁会社、江西昌河鈴木汽車と合わせると、中国での年産能力は 36万台となった。
 スズキは2015年を目処に、重慶長安鈴木汽車の第 2工場を建設し、中国での小型車の年産能力を 50万台に引き上げると発表 (2011年11月)。既存工場がある工業団地内で、重慶市が長安鈴木に無償で貸与する用地に建設する。新開発のエンジンを現地生産し、新型車に搭載して、中国の排ガス規制強化に対応すると共に、拡大する中国内陸部の需要を取り込む。投資額は 600億円程度。

資料:日経産業新聞 2010.8.30, 日刊工業新聞 2011.11.21

インドネシア:年産能力10万基のエンジン工場を新設

 スズキは、インドネシアの西ジャワ州にある生産拠点の敷地内に、年産能力10万基のエンジン工場を新設する計画 (2011年 6月発表)。総投資額は 300億円。新エンジン工場建設により、従来日本から輸入していたエンジンを現地生産し、生産の効率化や円高の影響軽減を図る。これに合わせて、完成車工場の生産能力も2012年3月までに8万台から10万台に増強する。
 2010年11月の報道では、スズキは2012年を目途に、インドネシアに新型車 2車種を投入するとされる。1車種目はインドネシアで人気の高い 3列シート車で、排気量 1500cc前後。2012年前半にインドで生産開始する新型車をベースに、現地仕様に変更する。2車種目は小型車で、政府の"低価格・グリーンカープログラム"に対応し、Wagon R をベースに開発する排気量 1000cc前後の新型車。投資額は約 400億円程度。

資料:NNA.Asia 2011.6.27, 日刊工業新聞 2010.11.12

ベトナム:四輪車年産能力を6割増の5,000台へ

 スズキは、2013年にベトナムの四輪車工場を、Dong Nai省 Binh Da工業団地から、近くの Long Binh工業団地内にある自社二輪車工場の隣接地に移転する (2011年11月発表)。既存工場が手狭になったため、新工場を建設し、年産能力を 6割増の 5,000台に増強する。投資額は約 10億円。工場の床面積は 9,200平方メートル。ベトナムではトラックやバン等を生産しているが、2013年からは Super Carry (バン/トラック) を増産する計画。

資料:スズキ Press Release 2011.11.16, 日経産業新聞 2011.11.17, 日刊工業新聞 2011.11.17

タイ:洪水の影響

 タイ洪水の影響で、スズキはバンコク郊外の二輪車工場の操業を10月12日より見合わせていたが、12月1日より一部再開する。来春の稼働を計画している四輪工場は、被災地域から離れており、影響はない。
 日本国内の生産は、洪水の影響で部品調達に支障が出ることが心配されていたが、12月末までの部品調達の見通しが立ったので、年内は四輪・二輪全工場は通常操業を続ける。2012年 1月以降は部品の納入状況を見極めた上で判断する。

資料:スズキ Press Release 2011.11.25

 



VWとの提携:包括契約解除に向け国際仲裁申し立て

 スズキは、2011年11月、VWとの資本・業務提携の包括契約解除を巡り、国際仲裁を申し立てた。仲裁は長期にわたる可能性もある。スズキにとって、開発費がかかる環境技術では他社との提携が必要だが、VWとの問題が長引くと他メーカーとの提携が困難になりかねないとされる。

VWとの資本・業務提携の包括契約解除に関し、国際仲裁申し立て

 スズキは2011年11月24日、VW との資本・業務提携の包括契約解除を巡り、国際商業会議所国際仲裁裁判所 (フランス・パリ) に仲裁を申し立てた。審理は英国・ロンドンで行う。スズキは18日に同包括契約を解除すると発表。VWに対し、保有する19.89% (議決権) のスズキ株を、スズキまたは同社が指定する第三者に売却するよう求めていた。VWはこの要求に応じず、仲裁手続き開始に至った。
 両社は2009年12月に包括提携契約の締結を発表。しかし、その後の提携は進まず、双方の意図の違いが拡大していた。スズキは、VWが持つハイブリッド技術などコア技術へのアクセスが不十分だったとして、VWの契約違反を主張。VWがスズキを "経営方針に重要な影響力を与える関連会社"と位置付けたことにも反発していた。VWは、部品や技術を共通化してコスト競争力を高めるため、スズキに重要な技術情報の開示を求めたが、現行の出資比率では実現できなかった。また、スズキが Fiat からディーゼルエンジンを調達するのは契約違反と主張。VW側に提携違反はなく、スズキ株を売却する意図はないとしている(2011年11月末現在)。

資料:スズキ Press Release 2011.11.18, 日経産業新聞 2011.9.30, 日刊工業新聞 2011.11.25

スズキ:Fiatから1.6Lディーゼルエンジンを調達

 スズキは2011年 6月、Fiat Powertrain Technologies (FPT) から新型ディーゼルエンジン (DE) の供給を受けると発表した。高出力・低燃費の 1.6L DE を年 2万基の規模で調達し、ハンガリーの Magyar Suzuki で 2013年に生産を開始する新型車に搭載する。同エンジンは、スズキの四輪駆動システムと相性が良いとしている。スズキはこれまで、2L/1.3L DE についても Fiat の協力を受けている。

資料:スズキ Press Release 2011.6.27, 日経産業新聞 2011.6.28

 



2011年度通期の販売見通し:当初予想を10万台下方修正し、271万台

 スズキの2011年4-9月の世界販売台数は、前年同期比4.0%減の120万台。日本では、震災による減産と前年がエコカー補助金制度で販売拡大した反動で、同15.0%減の26万台。海外販売は、インドでの販売減少もあり、同0.4%減の94万台となった。

 2011年11月発表の2011年度通期見通しでは、国内販売計画を軽自動車中心に上方修正したが、海外計画はインドの減少等を受けて下方修正し、世界販売台数見通しは6月発表の予測より10万台下方修正して271万台とした。世界生産見通しも295万台で、同9万台下方修正した。

スズキの新車販売台数

(台)
2006年度
07年3月期
2007年度
08年3月期
2008年度
09年3月期
2009年度
10年3月期
2010年度
11年3月期
2011年度
計画
2010年
4-9月
2011年
4-9月
日本合計 690,668 673,259 664,880 622,000 588,000 586,000 307,000 261,000
海外 1,530,958 1,732,490 1,641,176 1,727,000 2,053,000 2,133,000 948,000 944,000
世界合計 2,221,626 2,405,749 2,306,056 2,349,000 2,642,000 2,719,000 1,255,000 1,205,000

資料:スズキの決算参考資料 2011.5.10/2011.11.7
(注) スズキブランド車の販売台数。国内販売にはシボレーブランド車を含む。2011年度計画は2011年 11月発表。

 

スズキの地域別新車販売台数
(1,000台)
日本 欧州 北米 アジア その他 合計
インド 中国 ASEAN
2010年度 588 243 33 1,133 290 96 1,625 153 2,642
2011年度(計画) 586 244 34 n.a. 1,697 158 2,719
2010年4-9月 307 119 16 521 125 44 739 75 1,255
2011年4-9月 261 113 16 473 147 57 735 80 1,205
資料:スズキの決算参考資料とプレゼンテーション 2011.5.10/2011.11.7
(注) 1. アジアの"計"には、他のアジア諸国も含まれるため、インド・中国・ASEANの合計とアジアの"計"とは一致しない。
2. 2011年 4-9月の ASEAN での販売 (57,000台) の内訳は、インドネシアが 44,000台、タイが 5,000台、マレーシアが 3,000台、フィリピンが 2,000台、ベトナムが 2,000台。

 

スズキの生産台数

(1,000台)
2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度
計画
2010年
4-9月
2011年
4-9月



国内
向け
軽自動車 608 588 590 545 513 514 287 232
登録車 83 82 79 58 63 73 30 35
輸出車 388 415 331 219 259 253 144 130
OEM供給車 134 134 139 138 159 180 85 78
合計 1,212 1,219 1,139 959 994 1,020 547 475



欧州 189 252 260 180 164 183 82 87
北米 22 28 7 1
アジア 987 1,138 1,088 1,406 1,720 1,751 794 755
合計 1,199 1,418 1,355 1,586 1,884 1,934 876 842
世界生産 2,412 2,637 2,494 2,545 2,878 2,954 1,423 1,317

資料:スズキの決算参考資料 2011.5.10/2011.11.7
(注) 国内生産は完成車生産台数 + CKD生産台数。海外生産は現地ラインオフ台数 (CKD組立てを除く)。

 



2011年度通期の業績見通し:当初予想据え置きで、売上高は前期並み2兆6,100億円

 スズキの2011年4-9月期連結決算は、震災や円高の影響によるマイナス要因をアジアの製品販売の伸びやコスト削減で吸収しきれず、連結売上高は前年同期比7.0%減の1兆2,262億円、営業利益は5.9%減の647億円で、上期としては2年ぶりの減収・営業減益となった (純利益は、GMの株式売却などで増益)。

 2011年度通期の連結業績見通しは、為替レートを1米ドル77円 (当初予想は80円)、1Euro 109円 (同110円) と修正した上で見直した。タイ洪水の影響が不透明なこともあり、利益目標として、6月公表時の予想を据え置いた。6月公表の予想は、売上高は前期比0.1%増の2兆6,100億円、営業利益は2.9%増の1,100億円、純利益は10.7%増の500億円。

スズキの連結業績

(100万円)
2006年度
07年3月期
2007年度
08年3月期
2008年度
09年3月期
2009年度
10年3月期
2010年度
11年3月期
2011年度
見込み
2010年
4-9月
2011年
4-9月
売上高
国内売上高
海外売上高
3,163,669
973,500
2,190,200
3,502,419
981,400
2,521,000
3,004,888
965,500
2,039,300
2,469,063
952,559
1,516,504
2,608,217
937,400
1,670,800
2,610,000
940,000
1,670,000
1,318,760
493,000
825,800
1,226,169
448,700
777,500
営業利益
経常利益
純利益
132,900
139,183
75,008
149,405
156,904
80,254
76,926
79,675
27,429
79,368
93,841
28,913
106,934
122,502
45,174
110,000
125,000
50,000
68,814
74,936
30,411
64,731
67,555
32,009
設備投資
減価償却費
試験研究費
207,400
149,900
92,100
243,600
161,600
108,700
216,200
141,200
115,000
120,200
141,800
108,800
130,300
138,400
104,100
210,000
120,000
110,000
66,300
62,500
50,400
55,100
47,600
51,500
従業員数 (人) 45,510 50,241 50,613 51,503 52,731 52,759 54,289
為替 (ドル) 117円 114円 101円 93円 86円 77円 89円 80円
為替 (Euro) 151円 160円 144円 131円 113円 109円 114円 114円

資料:スズキの決算短信 2011.5.10/2011.11.7, 決算参考資料 2011.5.10/2011.11.7
(注) 2011年度見込みは、2011年6月発表。2011年度第2四半期決算発表時にも変更なし (為替レートのみ、当初の80円/ドル、110円/Euroから変更した)。

 

スズキの営業利益増減要因
(億円)
増減益幅 諸経費等の
増減
原価低減 研究開発費 売上・構成
変化等
為替影響 減価償却費
2010年4-9月 370 (140) 101 (61) 619 (105) (44)
2011年4-9月 (41) 250 71 (11) (386) (114) 149
2010年度 275 (131) 355 47 253 (283) 34
2011年度(予想) 31 150 260 (60) (89) (410) 180

資料:スズキの決算発表資料 2011.5.10/2011.11.7

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>