GM (1) EV拡販は失速、電動化計画の見直し
北米におけるEVの商品展開と関連投資
2024/10/08
- 要約
- 米国市場向けEV商品:量産セグメントでラインアップを拡大
- Chevrolet:2024年から主力セグメントへのEV投入を本格化
- Cadillac:GMのEV販売を牽引、2025年までに5車種を揃える
- Buick:EV導入計画は大幅に後退
- GMC:Hummer に続きフルサイズ・ピックアップのEVラインアップを拡大
- BrightDrop:商用EV専用ブランド、Chevroletブランドと統合
- ホンダとの協業:EVに続きFCVの共同開発も進めるが、将来計画は後退
- 北米のEV生産工場:2025年にEV生産100万台/年を取り下げ
- バッテリー生産:Ultiumセル4工場の建設を進めるが、2024年に入って進捗の遅れも
- 充電インフラ:各社との提携により高速充電ネットワーク構築を進める
- 自動運転技術:専用モデルの開発は中断
要約
2024年5月に発売されたコンパクトSUV Equinox EV(出典:GM) |
GMは、いち早くラインアップの完全電動化へのコミットを打ち出し、2021年には、新車ライトビークルの内燃エンジンを2035年までに廃止する計画を発表した。米国では2022年頃からはEV専用設計のUltium プラットフォームをベースとする新モデル群をミッドサイズSUVやフルサイズトラックなど量販セグメントへ段階的に投入を進め、EVラインアップを拡大した。
しかしながら、バッテリー供給不足や一部のリコールなどによる立ち上げ遅れもあり、EV生産、販売の拡大は遅れ気味となっており、販売に占めるEVの比率も頭打ちの状況になっている。
2023年後半からは、米市場でのEV需要の停滞を受けて、発売計画や生産投資を見直す発表や報道が相次いでいる。GMのBarra CEOは、同社のEV移行戦略に変更はないとしながらも、2025年にEV生産を100万台/年とする目標の達成が難しいと言及するなど、これまで掲げてきた商品ラインアップや生産拡大の目標については、市場環境に合わせて再検討する姿勢を示している。
サプライチェーンを確保するために2022年から投資を進めるUltiumバッテリーセル工場建設の合弁事業についても、新規工場の建設中断や稼働見通しの遅れが発表されている。
一方で、生産投資の商用車専用子会社として立ち上げた「BrightDrop」のChevroletブランドへの統合、自動運転専用車「Origin」の開発中止など、より現実的でコスト重視の方向性も示している。
ホンダとの共同開発を一部見直す一方で、現代自動車との技術協力を発表するなど、目まぐるしく変わる業界動向を睨んで他OEMとの合従連衡の戦略の模索も続く。
中国市場における販売の不振でGMにとって北米市場の重要性は増しているが、EV需要の失速や熾烈化するコスト競争に加え、米中対立を背景とする米国の経済安全保障政策がサプライチェーンに与える影響も大きく、GMが強くコミットし投資を進めてきたEV移行戦略を取り巻く環境はより厳しく、複雑なものになっている。
本編は、GMの最近のグローバルな動向と発表された計画を整理するレポートの第一部として、北米におけるEVの商品展開と関連投資について報告する。第二部では、米国、中国を始めとする主要市場での商品展開、販売状況、グローバルな企業業績などについて報告し、併せてGlobalDataによるGMのグローバル生産予測を掲載する予定である。
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