Stellantis(下):北米で大型SUV、ピックアップ、欧州で小型SUV、LCVを投入

2020年はコロナ禍で大幅減益、2021年初から北米・欧州で半導体不足の影響

2021/04/07

要約

Stellantis統合時のFCAとPSAの業績
Stellantis統合時のFCAとPSAの業績(2020年下期と通年)
(出典:Stellantis)

  Fiat Chrysler Automobiles (FCA) とPSA Group (PSA) が対等合併して2021年1月16日に生まれたStellantisは3月3日、合併前の最終年度となるFCAおよびPSAの2020年の決算を発表した。FCAの2020年の売上高は前年比19.9%減の866億7,600万ユーロ、調整後EBIT(金利税前利益)は43.9%減の37億4,200万ユーロ。第4四半期は北米が復調し、調整後EBITは前年同期比プラスとなったが、全体的には新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた。一方、PSA(Faureciaを除く)の2020年の売上高は前年比19.2%減の476億5,700万ユーロ、調整後営業利益は33.9%減の33億7,000万ユーロ。下期には自動車部門の営業利益が前年同期を上回るなど業績が大幅に回復したが、通期ではコロナ禍の影響が大きかった。

  FCAの2020年の世界販売台数は前年比22.2%減の343.5万台。北米は23.3%減の184.2万台、欧州・中東・アフリカは21.5%減の99.9万台、南米は17.7%減の47.5万台だった。PSAの2020年の世界販売台数は前年比27.8%減の251.2万台。欧州では29.7%減の212.3万台、中東・アフリカは20.1%増の19.7万台、中南米では30.1%減の9.5万台となった。

  Stellantis(FCA+PSA)の2020年の地域別販売台数を見ると、販売台数全体に占める北米の比率は31%、欧州の比率は49%となり、FCA(北米の比率が54%)またはPSA(欧州の比率が85%)各社と比較して地域バランスが向上している。しかし、世界最大の自動車市場である中国を含むアジア/太平洋の比率は3%と低い。Stellantisは2021年の欧州、北米、中国の自動車市場はそれぞれ10%増、8%増、5%増と見込んでおり、その恩恵を受けるためには中国市場および他の各市場向けの戦略が必要としている。

  世界的な半導体供給不足を受け、Stellantisも2021年1月初頭から北米・欧州の工場で生産休止や減産を行っている。3月にはRamのピックアップトラックを生産している米国のWarren工場とメキシコのSaltillo工場で減産。また、Peugeot、Citroen、Opel車を生産しているフランスのRennes工場やSochaux工場でも減産している。

  新型車投入計画については、FCAが米国市場でRamおよびJeepブランドの高マージンのピックアップトラックやSUVを積極的に投入。欧州市場では、FCAとPSAがコンパクトカーやコンパクトSUV、商用バン等を投入。中国市場ではPSAがセダンやコンパクトSUVの投入を計画している。

  各地域での動きとしては、欧州では新型コロナウイルス感染拡大の影響で縮小した市場の中で、PSAの小型商用車の市場シェアが拡大。北米ではフリート販売の減少を、Jeep、Ram、Alfa Romeo等の個人販売がカバーした。南米ではブラジルに投入した小型ピックアップトラックのFiat Stradaが好調。中国ではPSAが今後5年間に14モデルを投入する。インドでは2021年前半にCitroenブランドを投入する計画。


  なお、Stellantisの2021年の業績見通し、FCAとPSAの統合効果(シナジー)、電動化戦略、電動化モデルの投入計画、自動運転、モビリティサービスについては、先に掲載した「Stellantis(上)」をご覧ください。

 

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