DaimlerとトヨタのEV普及に向けた取り組み

名古屋オートモーティブワールド 2020のセミナー講演より

2020/12/03

要約

  本レポートは、第3回名古屋オートモーティブワールド2020(会期:2020年10月21日~23日、会場:ポートメッセなごや)で開催されたセミナー講演の中から、DaimlerとトヨタのEVへの取り組みに関する内容を紹介する。

 

Daimler:エレクトリックモビリティの未来を形成するEV開発最前線 ~新たなEVの在り方とバッテリーの進化~

講演者:Dr. Benedikt Friess, Battery Research & Development, Research Scientist & Engineer, Daimler AG
※講演はビデオ録画により行われた。

Daimlerの推し進めるxEVフルライン化
Daimlerの推し進めるxEVフルライン化
(出所:Daimler)

  モビリティの未来を描くにあたり、何が必要なことか、そしてDaimlerはそれをEVでいかに実現していくかを説明したい。それは一企業の活動ではなく、国家方針のもとで各種産業や市民が協調するものとなる。

<政府方針 Energiwende (Energy Transition)に沿った社会的取り組み>

  欧州での意識調査では、車両価格の高さと電欠の懸念から50%以上がEVを購入したくないという意思を示した。Daimlerはバッテリー価格100 USドル/kWhおよび航続距離500kmがEV普及の閾値と考えており、これを達成しクリーンな電源を有効に使用できるEVを増やしていく。

  トータル・ゼロエミッションは自動車製造業だけで達成できるものではなく、社会全体の協力を要する。たとえば、地域の再生可能電力に生じる需給アンバランスを車載バッテリーで吸収するため、すべてのEVを系統連結し、その充放電状態を車両所有者に任せず系統側から統制することが考えられている。

  CO2排出をLCA (Life Cycle Assessment)で評価すると、ガソリン車→ディーゼル車→EVの順で少なく、将来さらに差が広がると予想しており、ニューモデルはそうした観点から開発を進めている。

  新技術の導入については、Daimlerは全固体バッテリーを2024年に市販車に採用しようとしている。

 

トヨタ:ZEV普及に向けて

講演者:豊島 浩二 氏
トヨタZEVファクトリー副本部長 ZEV B&D Lab 部長 ZEV B&D Lab チーフエンジニア

トヨタが描く将来の各種モビリティ共存の姿
トヨタが描く将来の各種モビリティ共存の姿
(出所:トヨタ)

  この講演の目的は、普及しない/儲からないEVをトヨタがなぜ、またいかに市場投入するのかをレビューすることにある。根底にあるのは、地球規模の視点で大気汚染やCO2排出を抑制することで幸せを増進させていきたいという思いである。

<EVや電池の社会展開のための仲間づくり>

  国内の消費者意識調査によれば、EVに対する不安は製品に対し価格が高いことで、走行可能距離が短いことは大きな障害となっていない。EV価格の低減のためには、製品の共通化による量産効果および電池価格の削減が必要である。そのため賛同するOEMと設計や部品調達を共有し、また中国の電池メーカーをパートナーとして支え合う関係の構築を行う。

  EV普及の実現には、電池のリサイクリングやシェアリングを通じて、事業所・家庭などのユーザー、電池メーカー、発電/蓄電事業者など業界枠を超えた大きな仲間づくりが求められる。

  CO2排出がLCAで評価されれば、ハイブリッドもEVもPHEVも大差なくなる。そこで顧客の選択肢を広げる点からも多種の環境車を投入する。また、商用車の電動化を進めるが、これはインフラの増強が期待できるためである。

  今冬に2人乗りBEVを発売するが、EV普及の観点からは仲間づくり、技術・構成品の共有化によるコスト低減 を目的とした製品となっている。

 

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