欧州の日系部品メーカー:欧米メーカーとの取引拡大を狙う
現地部品メーカーの買収・提携、東欧では生産能力増強、ロシアでは新工場稼働延期
2015/08/05
- 要 約
- ドイツ:現地企業買収(住友理工・日本電産)、生産体制強化(東洋紡・日清紡)など
- 東欧:生産能力拡充(愛知製鋼・エクセディなど)、新工場稼働(曙ブレーキ・アドヴィックスなど)
- 西欧:現地企業に出資・買収・協業(パナソニック・JVCケンウッド・河西工業)など
- ロシア:新設工場の稼働延期(ハイレックス・ユニプレス)、減産対策で新顧客開拓へ(ティラド)
- トルコ:タイヤ新工場稼働(住友ゴム)
要 約
西欧17カ国のライトビークルの販売台数は、LMC Automotiveによれば、2014年が前年比5.2%増の1355万台、2015年1-6月は前年同期比8.4%増の773万台と増加を続けている。こうした中、日系自動車部品メーカーによる欧州での事業展開では、欧米自動車メーカー・部品メーカーからの受注拡大を図るものが多い。
ドイツ:ドイツ自動車メーカーなどへの販売拡大を目指す
ドイツでは、地元の有力部品メーカーの買収(住友理工(旧東海ゴム)、日本電産)、生産体制の強化(東洋紡:基布工場設立、日清紡:生産拠点を再編しブレーキ用摩擦材の銅使用規制に対応)、自社の開発・営業拠点の設立(今仙電機、ジーテクト、村上開明堂、八千代工業など)、エンジニア・営業担当の増強(日本精機、パイオラックス)などにより、ドイツを中心に欧州自動車メーカーからの受注拡大を目指している。
東欧:新工場の稼働・工場拡張・設備増強が続く
東欧では、新工場の稼働が多くみられる(曙ブレーキ、アドヴィックス、椿本チエイン、テイ・エステック、ニッパツ、三菱樹脂など)。工場拡張・設備増強では、欧米自動車メーカーからの受注拡大への対応(エクセディ、ケーヒン、ハイレックスなど)、欧州向け小型モーター用磁石の全量生産(愛知製鋼)、ディーゼル排ガス規制対応部品の生産能力増強(デンソー、日本ガイシは第2工場も建設)などがみられる。この他、欧州全域での事業拡大を目指す企業買収(旭硝子)、西欧拠点から開発・営業機能を移転し生産との一体化(小糸製作所)などがある。
西欧:開発・販売体制強化、生産能力増強、企業買収、事業再編
開発・販売体制強化では、曙ブレーキが新たに完成品の研究開発拠点を仏国に設立、ヨロズが欧州事務所設立を計画。生産能力増強では、ユニプレスが新規受注に対応し英国で設備増設、河西工業が欧州大陸での生産拠点を仏メーカーとの協業で確保。
JVCケンウッドは買収で、パナソニックはスペイン有力部品メーカーへの出資で、欧州自動車メーカーへの販路の拡大・新製品の開発を計画。事業の再編では、NTNが独、仏に高付加価値部品の新生産ラインを設置し、量産品生産はスロバキアに移転。ジェイテクトは、欧州各国の軸受事業を再編し黒字化達成。住友理工は、仏拠点の赤字部品事業をルーマニアに移転。
ロシア/トルコ:ロシアでは市場縮小で新工場の稼働延期、既存工場の生産量縮小への対応
ロシアの2015年1-6月の自動車販売台数は前年同期比36.4%減の78万台と2013年からのマイナスが続いている。2015年1-5月の生産台数も61万台(同26.7%減)と低水準。
このため、新設工場の稼働延期(ハイレックス、ユニプレス)、生産低迷による採算悪化で販拡活動強化(ティラド)、合弁事業からの撤退検討(エクセディ)などがみられる。この他、新車装着用タイヤの生産開始(横浜ゴム)などの動きもある。
トルコでは、住友ゴムが新工場での乗用車・トラック用タイヤを生産開始。
日系部品メーカー動向関連レポート:
・ メキシコへの新規進出 (2015年6月)、メキシコでの増強とブラジルでの動向 (2015年7月)
・ 東南アジア編 (2015年4月)、米国編(2015年3月)
・ 中国編(上):華南・華中・西南での動向 (2015年1月)
・ 中国編(下):華東・華北・東北地域・中国全体での動向 (2015年2月)
・ インド編 (2014年11月)
・ タイ編 (2014年9月)
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