Tesla Model Y 分解調査:電動パワートレインの技術
オクトバルブによる熱管理、バッテリー、モーター、インバーター ~Munro社の分解調査データより
2021/05/31
要約
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Tesla Model Y (マークラインズ ベンチマークセンターにて撮影) |
Tesla Model Yはテスラ初のクロスオーバーSUVとして2020年に発売され、現時点では四輪駆動(AWD)のグレードのみとなっている。Munro & Associates, Inc.では2018年のTesla Model 3に続いて2020年に分解調査を行っており、マークラインズではその詳細情報を販売している。本稿ではMunro社の分解調査(Zone 4: Powertrain & Battery Pack)で明らかになったTesla Model Yの電動パワートレインの技術を紹介する。
Tesla Model Yの電動パワートレインについては、Model 3、中でもAWD仕様の「パフォーマンス」、「ロングレンジ」のグレードとは共通部品が多い。そうした中で進化が目立つのが熱管理システムである。
Model 3においても電動パワートレイン排熱によるバッテリーの加熱が可能なシステムとなっていたが、Model Yではそれらに加えて車室内HVACからの熱流の統括制御も可能なように、LLC対応のヒートポンプシステムや「オクトバルブ」と呼ばれるバルブ集合体などの仕組みが導入されており、冷却水の流路をバルブで切り換えて排熱がバッテリーの加熱に使えるようになっている。
バッテリーは2170形状の円筒形リチウムイオンバッテリーセル4,416個を4個のモジュールで構成し、75kWhのバッテリーパックとしている。
モーターはModel 3と同様に、主駆動輪である後輪は同期モーター、副駆動輪である前輪は誘導モーターを採用しているが、誘導モーターのローターの導体はテスラでは初めてのアルミ鋳造製となっている。
インバーターもModel 3と共通部分が多く、後輪駆動用はSiCのMOSFET、前輪駆動用にはシリコンのIGBTをパワーモジュールに採用している。
Model YとModel 3の電動パワートレイン諸元比較
Model Y | Model 3 | |||
---|---|---|---|---|
前輪 | 後輪 | 前輪(四輪駆動のみ) | 後輪 | |
モーター形式 | 誘導モーター | 埋込み磁石型同期モーター(IPMSM) | 誘導モーター | 埋込み磁石型同期モーター(IPMSM) |
最大出力 | 米国: 69kW (Long Range AWD) 133kW (Performance AWD) 中国: 137kW (Long Range AWD) 137kW (Performance AWD) |
米国: 201kW (Long Range AWD) 179kW (Performance AWD) 中国: 180kW (Long Range AWD) 202kW (Performance AWD) |
米国: 98kW (Long Range AWD) 131kW (Performance AWD) 中国: 137kW (Performance AWD) |
米国: 195kW (Long Range AWD) 190kW (Performance AWD) 198kW (Standard Range Plus RWD) 中国: 202kW (Performance AWD) 202kW (Standard Range Plus RWD) |
最大トルク | 中国: 219Nm (Long Range AWD) 219Nm (Performance AWD) |
中国: 326Nm (Long Range AWD) 404Nm (Performance AWD) |
n.a. | 中国: n.a. (Performance AWD) 404Nm (Standard Range Plus RWD) |
バッテリー | 米国: 82kWh (Long Range AWD) 82kWh (Performance AWD) 中国: 76.8kWh (Long Range AWD) 76.8kWh (Performance AWD) |
米国: 82kWh (Long Range AWD) 82kWh (Performance AWD) 54kWh (Standard Range Plus RWD) 中国: 76.8kWh (Performance AWD) 55kWh (Standard Range Plus RWD) |
(出所:マークラインズ CASE(電動化・自動運転) Model YおよびModel 3のデータより作成)
マークラインズは、デトロイトに本拠地を置く車両ベンチマークのエンジニアリング会社Munroと提携している。Munro社は各種車両の分解調査を行い、全ての部品について、重量・寸法など詳細スペック、コスト分析を実施、分析結果のレポートを提供している。詳しい情報をご希望の方は、下記へお問い合わせください。
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Tesla Model 3 分解調査レポート:
Tesla Model 3 分解調査:シャシー、ボディ(2019年5月)
Tesla Model 3分解調査:インテリア、HVAC(2019年4月)
Tesla Model 3分解調査:モーター、インバーター、バッテリー(2019年3月)
関連レポート:
Tesla:2022年に生産・販売100万台体制を目指す(2021年5月)
The Battery Show & EV Tech Digital Days 2020(2020年12月)
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