Ford(上):事業戦略「Ford+」のもとでEV、商用車に注力

2030年までに世界販売の40%超をEVへ、SK Innovationと129GWhのバッテリー工場建設

2022/03/30

要約

Ford F-150 Lightning
フルサイズピックアップトラックのEVバージョン Ford F-150 Lightning
(写真:Ford)

  Fordは2021年5月26日、新たな事業戦略「Ford+」を発表し、EV、コネクテッド技術、商用車事業を成長の柱とした。EVに関しては、2030年までにFordの世界販売台数の40%超をEVにすることを目指す。商用車事業については、事業部門「Ford Pro」を立ち上げ、商用車の販売だけではなく、充電・修理等の関連サ-ビスを提供し続けるビジネスモデルを展開する。

  Fordの2021年の米国販売台数は前年比7.0%減の189.2万台。新型SUVのBroncoやBronco Sport、Ford初の量販EVであるMustang Mach-Eは販売台数増に貢献したが、大半の乗用車の生産終了、半導体供給不足による減産の影響で販売は前年を下回った。Fordは2022年について、新型EVモデルの発売や半導体の供給改善により、卸売台数は10-15%程度改善すると予測している。

  米国における新型車投入計画では、収益性の低い乗用車はMustangを除いて廃止し、SUVやピックアップトラックに注力している。ピックアップトラックでは、2022年に中型のRanger、2024年にオフロード・タイプのBronco Pickupを追加。SUVでは、小型のEcoSportと中型のEdgeを廃止し、2023年にはメキシコ製の中型SUV、2024年にはフルサイズの新型Expedition、2025年には小型の新型Escapeを投入する。

  電動化計画については、2021年に最初のEVとなるSUVのMustang Mach-E、2022年には商用バンのE-Transitとフルサイズピックアップトラックの F-150 Lightningを発売。これらは最も象徴的なモデルを電動化するというFordの戦略を反映している。2025年には中型SUV ExplorerのEVバージョンのほか、Lincolnの3つのSUVモデルもEVバージョンを発売する計画。

  FordのグローバルEV導入計画では、2030年までにおよそ240GWhのバッテリーセル生産能力が必要となる。そのためFordは自社でバッテリー生産能力を整備するほか、多くの電池サプライヤーとも協力している。電池メーカーのSK Innovationとは合弁会社を通じて2つの工場を建設し、2025年までに年間129GWhのバッテリーを生産する計画。


  本編ではFordの事業戦略、米国での販売状況と商品戦略、電動化計画に焦点を当てて報告する。後編では、他地域の状況や戦略、企業業績、2022年の見通し、並びにLMC Automotiveによるグローバル販売予測について報告する予定。

 

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