ASEAN:新車販売が回復、エコカー政策からEV導入策に移行

タイはEV投資インセンティブを導入、マレーシアは省エネルギー車(EEV)導入で先行

2017/12/08

要約

 ASEAN市場の新車販売台数は、景気や経済政策、販売促進策などの影響を受けて大きく変動する傾向が見られる。主要5カ国の2016年販売台数は約300万台。2017年は景気回復を受けてタイ市場が大幅に回復、インドネシア、マレーシアも堅調。フィリピンは2018年から物品税が増税されるため、駆け込み需要が続いている。一方、ベトナムは2018年から輸入車関税がゼロになるため、買い控えにより低迷しているが、2018年には販売が回復する見込み。

 ASEANの生産台数は主要4カ国で約380万台。タイ(200万台)とインドネシア(110万台)は燃費の良い小型車を現地生産・輸出するための優遇策を導入し、日系メーカー各社はこれに対応してグローバルコンパクトカーや新興国専用車を投入してきた。マレーシア(60万台)は2020年に年産100万台超を目指す国家自動車政策「NAP2014」を打ち出し、周辺国に先駆けてEVやHVなどEEV(Energy Efficient Vehicles)の導入を促進している。フィリピンは2015年に自動車産業支援策「CARS Program」を発表、6年後に年産60万台超を目指す。

ASEAN

出所:MarkLines 年次販売台数データより作成

 オーストラリアの2016年新車販売台数は118万台で過去最高を更新した。一方、同国では2017年10月に国内の車両生産が終了。これまで現地生産されていたFord、GM、トヨタの各モデルも他国からの輸入車に切り替えられる。タイからの完成車輸出はオセアニア向けが最も多く、タイでは今後さらにオーストラリア向けの輸出が増えると期待されている。

 最近は世界的なEVシフトの影響もあり、ASEANでも各国政府がEV導入策を打ち出し、電動車の市場投入やインフラ整備を進める動きが出ている。マレーシアでは国民車メーカーのPeroduaやProtonがEEV適合車を投入したのに続いて、BMWやVolvo CarsなどもEEV適合車の現地生産を開始するなど、電動車の導入が進んでいる。タイは2017年3月にEV投資インセンティブを発表し、8月にトヨタのHV生産投資案件を承認した。インドネシアでもEV導入に関する法令策定に向けた準備が進められている。

 

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