ASEAN:新車販売が回復、エコカー政策からEV導入策に移行

タイはEV投資インセンティブを導入、マレーシアは省エネルギー車(EEV)導入で先行

2017/12/08

要約

 ASEAN市場の新車販売台数は、景気や経済政策、販売促進策などの影響を受けて大きく変動する傾向が見られる。主要5カ国の2016年販売台数は約300万台。2017年は景気回復を受けてタイ市場が大幅に回復、インドネシア、マレーシアも堅調。フィリピンは2018年から物品税が増税されるため、駆け込み需要が続いている。一方、ベトナムは2018年から輸入車関税がゼロになるため、買い控えにより低迷しているが、2018年には販売が回復する見込み。

 ASEANの生産台数は主要4カ国で約380万台。タイ(200万台)とインドネシア(110万台)は燃費の良い小型車を現地生産・輸出するための優遇策を導入し、日系メーカー各社はこれに対応してグローバルコンパクトカーや新興国専用車を投入してきた。マレーシア(60万台)は2020年に年産100万台超を目指す国家自動車政策「NAP2014」を打ち出し、周辺国に先駆けてEVやHVなどEEV(Energy Efficient Vehicles)の導入を促進している。フィリピンは2015年に自動車産業支援策「CARS Program」を発表、6年後に年産60万台超を目指す。

ASEAN

出所:MarkLines 年次販売台数データより作成

 オーストラリアの2016年新車販売台数は118万台で過去最高を更新した。一方、同国では2017年10月に国内の車両生産が終了。これまで現地生産されていたFord、GM、トヨタの各モデルも他国からの輸入車に切り替えられる。タイからの完成車輸出はオセアニア向けが最も多く、タイでは今後さらにオーストラリア向けの輸出が増えると期待されている。

 最近は世界的なEVシフトの影響もあり、ASEANでも各国政府がEV導入策を打ち出し、電動車の市場投入やインフラ整備を進める動きが出ている。マレーシアでは国民車メーカーのPeroduaやProtonがEEV適合車を投入したのに続いて、BMWやVolvo CarsなどもEEV適合車の現地生産を開始するなど、電動車の導入が進んでいる。タイは2017年3月にEV投資インセンティブを発表し、8月にトヨタのHV生産投資案件を承認した。インドネシアでもEV導入に関する法令策定に向けた準備が進められている。

 

関連レポート
ASEANの日系部品メーカー:生産能力拡大、新品目追加、事業体制強化などが続く (2017年8月)
インドネシア:市場規模110万台水準に回復、現地生産化が進展 (2017年8月)
タイ: 2017年の生産台数は前年比2.6%増の200万台の見通し (2017年1月)



  



ASEAN:主要5カ国の市場規模は300万台強、2017年は新車販売が回復基調

 ASEANの自動車市場規模は主要5カ国で300万台強。内訳は、インドネシア 100-120万台、タイ 80万台、マレーシア 60万台、フィリピン 30-40万台、ベトナム 20-30万台の水準。

 ASEAN市場の販売台数は、景気や経済政策、各国の販売促進策の影響を受けて大きく変動する傾向が見られる。タイでは2011-2012年に実施されたファーストカー減税の反動などで2013年以降の販売が低迷。インドネシアでは2013年にLCGC (Low Cost Green Car)政策が導入され、翌年にかけて市場規模が120万台水準に拡大したが、その後は景気低迷の影響を受けて100万台水準にとどまっている。

 2017年1-10月の新車販売台数は、景気回復を受けてタイ市場が大幅に回復、インドネシア、マレーシアも堅調で前年比プラスとなっている。フィリピンは2018年からの物品税引き上げを前に駆け込み需要が続き、2ケタ増を維持している。ベトナムは2018年から輸入車関税がゼロになるため、買い控えによる低迷が続いているが、2018年には販売が回復する見込み。

ASEAN

出所:MarkLines 年次販売台数データより作成



ASEAN5カ国の新車販売動向

発表機関 2016年
1-12月
前年比
2017年
1-10月
前年同期比
国内販売の動向
インドネシア
(GAIKINDO)
1,062,729
+4.9%
898,163
+2.6%
 2015年に自動車ローンの規制緩和や景気刺激のための経済政策パッケージが実施され、2016年半ばから新車販売はプラスに転じた。
 2017年も好調に推移しており、インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)は通年で110万台に達すると予測している。
タイ
(FTI)
768,788
-3.9%
689,260
+11.7%
 2016年は年初から新たな物品税が導入されて一部のモデルが増税になったことや、10月に前国王が崩御し、新車投入が控えられるなど、消費者の購買力が低下した。
 タイ工業連盟(FTI)によると、2017年は輸出の増加や民間投資の増加などにより、消費者心理が回復。新車投入の再開などにより販売が押し上げられている。また、2011-2012年に実施されたファーストカー減税で購入した消費者の転売禁止期間(5年間)終了に伴い、9月以降は買い替え需要も期待される。通年販売については年初予想の80万台から8月には83万台に上方修正した。
マレーシア
(MAA)
580,124
-13.0%
472,723
+1.4%
 2016年の大幅マイナスは、ローン審査の厳格化、世界経済の先行き不安などによる消費者心理の冷え込みが要因とされる。
 2017年に入り、1月に東海岸の洪水、4月にSUV/4WDの自動車税変更、7月に自動車保険の自由化に伴う車両登録の遅れがあり、ネガティブな影響を受けたものの、新車販売は堅調に推移している。
フィリピン
(CAMPI)
359,572
+24.6%
339,380
+16.0%
 2018年から購入時にかかる物品税の税率引き上げが見込まれ、駆け込み需要が生じている。
ベトナム
(VAMA)
304,427
+24.3%
220,121
-9.3%
 2016年1月から完成車(CBU)輸入に対する特別消費税(SCT)の算定方法が改定されて実質的に増税となったことから、国内組立車の販売が好調となった。7月には再度SCTが改定され、1,500cc以下は45%から40%へ、2,500-3,000ccは50%から55%へ変更された。
 2017年1月にはASEAN物品貿易協定(ASEAN Trade in Goods Agreement: ATIGA)により、ASEANからの完成車(CBU)輸入に対する関税が40%から30%へ引き下げられた。2018年1月にはさらに30%から0%へ引き下げられるため、今後の値下げを見越した消費者の買い控えが起きている。


ASEAN:タイ・インドネシアは輸出拡大、マレーシアはEV導入で先行

 ASEANの自動車生産台数は主要4カ国で約380万台。内訳は、タイ 200万台、インドネシア 110万台、マレーシア 60万台、フィリピン 10万台の水準。

 タイとインドネシアはコンパクトカーの現地生産を奨励し、輸出拡大を図ることで生産台数を拡大してきた。タイでは部品の現地生産化も進み、小型車だけでなくピックアップトラック(トヨタHilux、日産Navara、三菱Triton、いすゞD-Maxなど)のグローバル生産拠点としても定着している。インドネシアは国内販売の約4割を占めるMPV(トヨタAvanza、ダイハツXenia、ホンダMobilioなど)の生産拠点として発展。最近はSUVのスポーティな外観と走行性能を加えたクロスオーバーモデル(三菱XPANDERなど)が投入されている。

 タイ、インドネシアに続く生産規模のマレーシアでは、2020年に年産100万台超を目指す国家自動車政策「NAP2014」を進めている。特に周辺国に先駆けてEVやHVなどEEV(Energy Efficient Vehicles)の導入を促進している。フィリピンは2015年に自動車産業支援策「CARS Program」を発表し、6年後に年産60万台超を目指す。従来はAUV(Asian Utility Vehicle)を優遇する独自政策によって自動車産業の育成を図ってきたが、CARS Programの導入により、6年以内に合計20万台以上を生産する計画がある3モデルを支援対象として選定し、車両生産と合わせて部品の現地生産化も進めていく方針。


ASEAN

出所:MarkLines 年次生産台数データより作成



タイ・インドネシアの生産・輸出台数

発表機関   2016年1-12月台数 (前年比) 2017年1-10月台数 (前年同期比)
タイ
(FTI)
生産 1,944,417 (+1.6%) 1,641,231 (+0.2%)
輸出 1,188,515 (-1.4%) 940,820 (-6.3%)
インドネシア
(GAIKINDO)
生産 1,177,389 (+7.2%) 1,017,100 (+3.7%)
輸出 194,397 (-6.4%) 192,709 (+20.7%)



タイ:オセアニア向け輸出拡大に期待

 タイ工業連盟(FTI)自動車部会は2017年通年の生産予測について、年初予想の200万台(うち輸出向け120万台)から8月には193万台(同110万台)に下方修正した。完成車の輸出台数はオセアニア向けが増加し、2017年末にかけて前年比プラスで推移すると予想している。自動車部品の輸出も2017年1-6月に前年同期比13.9%増の95億ドルに拡大。通年で7.5%増の185億ドルに達すると予想している。
 タイからの完成車輸出は、オセアニア向けが月間約3万台、アジア向けが約2.5万台、中東、欧州、北米向けがそれぞれ約1万台(出所:MarkLines タイの輸出台数)。主力仕向け先のオーストラリアでは、2017年10月にトヨタ、GMの車両生産が終了し、国内販売車種は今後すべて輸入車になる。タイからオーストラリア向けの輸出もさらに増えることが期待される。

 政府主導の自動車テストセンターを建設
 タイでは東部経済回廊(EEC)地域に指定しているチャチェンサオ県に政府主導の自動車テストセンターを建設する計画。サナームチャイケート(Sanam Chai Khet) 郡の1,235ライ(約198ha)の敷地に建設、投資額は37.4億バーツ(約124億円)。部品メーカーは海外で実施していたテストを国内でできるようになり、コスト削減につながると期待されている。
 タイ工業省工業規格局 (TISI) による当初計画では、第1期にUNのUNR-117規格に準拠したタイヤテストトラックを建設、2018年4月に完工する予定。第2期では5つのテストトラックを建設、2018年に建設開始、2019年に完工、2020年に全ての施設が稼働開始する予定。しかし2017年5月の着工予定が遅れ、2018年第1四半期-第2四半期初めに竣工する見込みとされている。



インドネシア:内需拡大で現地増強、輸出振興が課題

 インドネシアは人口2.5億人を抱える潜在性の高い市場として、中長期的な内需拡大を見込んだ生産増強が進むと見られる。
 政府は国内生産車の輸出振興を図っているが、完成車(CBU)の輸出台数は20万台水準にとどまっている。輸出候補先にあげる豪州などではセダンの需要が高いが、インドネシア国内では多人数乗りのMPV(多目的車)やハッチバックの需要が高く、セダンの生産が進んでいない。同国ではセダンの奢侈税率(30%~)が他の車型に課される税率(10%~)より高く、業界側は輸出車両の生産促進に向け、セダンの奢侈税率引き下げを政府に要請している。また、輸出先の水準に合わせて、国内の排ガス基準や安全基準を整備していくことも課題となる。



マレーシア:輸出拡大と省エネ車の生産ハブを目指す

 マレーシア自動車協会(MAA)によると、2016年の生産台数は前年比11.3%減の545,253台、2017年1-10月は前年同期比4.2%減の421,635台。同国は2020年に年産100万台超を目指しているが、近年は年産50万台水準にとどまっている。

 マレーシア国際通商産業省(MITI)は2014年1月、国家自動車政策「NAP2014 (National Automotive Policy 2014)」を発表。完成車と自動車部品の輸出拡大を目指すこと、ASEAN地域における省エネ車の生産ハブに成長させることを重点目標に掲げている。2020年の生産台数目標は、乗用車 125万台、商用車 10万台、二輪車 80万台。乗用車については、国内市場規模100万台、輸出台数25万台を目指しており、自動車部品は100億リンギ以上の輸出を目標としている。



フィリピン:自動車産業支援策CARS Programを推進

 フィリピンの自動車生産台数は2014年以降、10万台水準で推移している。(出所:MarkLines フィリピンの年次生産台数データ)

 フィリピン政府は2015年6月、自動車産業支援策「Comprehensive Automotive Resurgence Strategy Program (CARS Program)」に関する大統領令第182号を公布した。国内自動車産業の健全な発展とASEAN地域での競争力を高めるのが狙い。海外から270億ペソの新規投資を呼び込み、年間60万台超の自動車生産、3,000億ペソの経済効果と20万人の雇用創出を見込む。
 CARS Programの支援総額は2016年から6年間で最高270億ペソ、1モデルへの支援額は90億ペソを上限とする。6年以内に合計20万台以上を生産する計画がある3モデルを支援対象として選定。支援対象となる事業は、車両生産、車体組立、大規模樹脂成形、共通部品や戦略部品の製造、車両・部品の試験施設など。完成車や自動車部品を生産するメーカーに対して年間45億ペソの免税措置を実施する計画。

 フィリピン貿易産業省傘下の投資委員会(BOI)は2016年6月、三菱自動車(Mitsubishi Motors Philippines Corporation)とトヨタ(Toyota Motor Philippines Corporation)をCARS Program参加企業として承認した。三菱自はMirageとMirage G4 (Attrage)で20万台、トヨタは新型Viosで23万台の生産を目指す。

 



ASEAN:エコカー政策からEV導入策に移行

 ASEANの自動車主要生産国では、燃費の良い小型車を現地生産・輸出するための優遇策を導入している。日系メーカー各社はこれに対応してグローバルコンパクトカーや新興国専用車を投入。ASEAN域内で販売するだけでなく、日本市場への逆輸入や、豪州や中東など輸出先の拡大を進めている。

 近年は世界的なEVシフトの影響もあり、ASEAN市場においても電動車の導入に向けた動きが出ている。各国政府はEV導入に向けた政策を打ち出し、OEM各社による電動車の市場投入やインフラ整備に参入する動向が見られる。



低燃費コンパクトカーへの優遇措置

タイ
Eco-Car
 タイ投資委員会(BOI)は2006年11月、小型低公害車「エコカー(Eco-Car)」政策を承認。2013年8月にはエコカー政策の第2期実施を承認した。第2期のエコカー規格は、欧州排ガス基準Euro5適合、CO2排出量100g/km以下、燃費23.3km/L 以上、ガソリン車1,300cc以下、ディーゼル車1,500cc以下など。エコカーには物品税率の軽減措置、生産メーカーには6年間の法人税免除などの優遇措置が付与される。(関連レポート:タイ政府、Eco-Car計画の第2期実施を承認
 エコカー対象モデルは、トヨタYaris、日産March、Almera、ホンダBrio、Brio Amaze、三菱Mirage、Attrage、スズキSwift、Celerio、Ciaz、マツダMazda2 (Demio)。(2017年10月時点)
 トヨタは2017年8月、小型セダンYaris Ativを発売。ViosのエクステリアデザインとYarisのパワートレインを流用、第1期エコカーの要件を満たす。9月には改良型Yarisも発売した。
 トヨタはタイのエコカー市場で2016年に前年比1.2%増の36,648台を販売し、シェア32%を占める。2017年は3.7%増の3.8万台を計画。エコカー市場全体では2016年の114,093台(市場全体の15%)から2017年は16万台(同20%)に増加すると予想。今後2-3年でタイ市場全体の25%に拡大すると予想している。
インドネシア
LCGC
 インドネシア工業省は2013年7月にLCGC (Low Cost Green Car)政策の規定を発表。燃費20km/L以上、ガソリン車980-1,200cc、ディーゼル車1,500cc以下、価格9,500万ルピア以下などの条件を満たすLCGCは奢侈税が全額免除される。(関連レポート:インドネシア政府:2013年7月にローコストグリーンカー (LCGC) 政策を正式発表
 LCGC対象モデルは、トヨタAgya、Calya、ダイハツAyla、Sigra、ホンダBrio Satya、スズキKarimun Wagon R、日産のDatsun GO PancaとGO+ Panca。(2017年10月時点)



電動車の導入策

マレーシア
EEV
(MITI)
 マレーシア国際通商産業省(MITI)は2014年1月、国家自動車政策「NAP2014 (National Automotive Policy 2014)」を発表。2020年までにマレーシアで生産される車両の85%を省エネルギー車 (EEV: Energy Efficient Vehicles)とする目標を掲げる。EEVには、低燃費車、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、代替エネルギー車(CNG、LPG、バイオディーゼル、エタノール、水素、燃料電池など)が含まれる。EEVの燃費基準を満たす場合、税制優遇措置や補助金などの各種インセンティブが付与される。
・Peroduaは2014年9月、EEVの第1号モデルとなる「アジア(Axia)」を発売した。2017年1-6月のPerodua販売台数は9万9,700台、このうちAxiaは3万2,600台を占め、マレーシア市場における最量販モデルとなっている。
・ダイハツは2016年7月、EEVに適合する小型セダン「ベザ(Bezza)」を発売。Perodua Axiaと同じプラットフォームを活用する新型国民車。PeroduaのRawang工場で生産される。
・Protonは2016年11月、コンパクトMPVで初めてEEV認定を受ける「エルティガ(Ertiga)」を発売した。Ertigaはスズキと提携して販売する最初のモデル。
・BMWのマレーシアにおけるPHV販売比率は50%超(2017年10月時点)。Kulim工場ではBMWおよびMINIモデルを20種類ほど現地生産しており、3 Series、X3、5 Seriesほか複数モデルがEEV認定を受けている。
・Volvo Carsは2017年10月、EEV認定を受けているPHV「S90 T8 Twin Engine Inscription」を発売。Shah Alam工場で現地生産される。
マレーシア
国家電気モビリティ計画
 マレーシアは国家電気モビリティ計画に基づき、2030年までにEVのマーケティングハブになることを目指している。エネルギー・環境技術・水省(KeTTHA)によると、輸送および個人保有目的のEV開発、EVエコシステム、EVエコノミーの3分野に焦点を当てる。
 2030年までにEVを10万台、充電ステーションを125,000カ所、EVバスを2,000台、電動バイクを10万台導入する目標を掲げている。2017年4月時点で合計1,136台のEV、EVバス、電動バイク、電動自転車が保有されている。
タイ
EV投資インセンティブ
(BOI)
 タイ投資委員会(BOI)は2017年3月、EV生産に対し一定期間の法人税を免税とする投資インセンティブを承認した。乗用車、ピックアップトラック、バスが対象となるが、免税内容は導入する電動車の技術レベルにより定められる。主な内容は以下のとおり。
・電気自動車(EV)生産:法人税を5~8年間免除。主要部品も生産する場合は、部品1種類につき1年間、最長10年まで法人税免除期間が延長される。
・プラグインハイブリッド車(PHV)生産:法人税を3年間免除。機械設備の輸入関税も免除。主要部品も生産する場合は、部品1種類につき1年間、最長6年まで法人税免除期間が延長される。
・ハイブリッド車(HV)生産:機械設備の輸入関税のみ免除。

 また、10種類のEV主要部品を生産する企業に対して、法人税を8年間免税とする。対象部品は電池、トラクション・モーター、電池制御システム、DC/DCコンバーター、インバーター、ポータブルEV充電器、サーキットブレーカーおよびEVスマート充電システムなど。
 BOIは2017年8月、トヨタのHV生産投資案件を承認した。投資額は190億バーツ(約630億円)。チャチェンサオ県Gateway City Industrial Estateに新工場を建設、2018年に稼働を開始する予定。新工場では年間7,000台のHVを生産するほか、EV用バッテリーを7万個、ドア、バンパー、フロントおよびリアアクスルなどの部品を合計910万個生産する計画。部品生産額は年間133億バーツ(約440億円)相当となる見込み。
 トヨタはタイでHV生産のほか、将来のHV開発のために電池や車両のリサイクル施設の建設を10月頃に開始する予定とされる。
タイ
EV普及に向けたロードマップ
(NEPC)
 タイ国家エネルギー政策委員会(NEPC)は2016年3月、電気自動車(EV)を本格的に普及させるためのロードマップを承認した。2036年までにタイ国内のEV台数を120万台にする計画。充電ステーションを少なくとも700~800カ所、最大で1,000カ所整備する予定。
・第1段階: 関連のインフラ、税制、法律、規制、サービスの料金を検討し、準備を進める。2016年内にバンコク大量輸送公団 (BMTA)がEVバス200台を導入する。スワンナプーム(Suvarnabhumi)国際空港とパタヤ(Pattaya)間のEVバス運行は、地方電力公社 (PEA)が行う予定。
・第2段階: 2017~2019年にEVの配備を拡大するほか、民間企業が公共交通事業へ参入することを許可する。
・第3段階: 個人向けEVの促進を行い、政府が基本インフラ、スマートグリッドの支援を行う予定。
インドネシア
EV振興策
 インドネシア政府は2025年までに低炭素車両(low carbon emission vehicles: LCEV)を40万台販売する計画のもと、国内EV関連産業を強化する大統領令を準備している。法令策定準備の一環として、インドネシア工業省は2017年12月末までにEVの試験走行を実施する予定。三菱自動車が2車種のEV試作車を10台提供する予定と報じられている。*
 インドネシアでは未だHV・EVはほとんど走行していないが、国営電力PLNがジャカルタを中心にEV・電動バイク用の給電施設の設置を進めている。

*三菱自動車は2017年12月11日、インドネシア政府と電動車の普及拡大を目指すための覚書を締結したと発表。同国における電動車の効率的な利用状況を調査する共同実験を行うとし、インドネシア工業省、国立大学、研究機関などに対して、プラグインハイブリッドEV「Outlander PHEV」8台と、EV「i-MiEV」2台および急速充電器を提供する。



オーストラリア:国内車両生産が終了、販売台数は過去最高を更新

 オーストラリアの2016年販売台数は前年比2.0%増の117万8,133台で過去最高となった。2017年1-10月は0.5%増の98万4,931台で引き続き堅調に推移している。

 オーストラリア市場の販売上位モデルはトヨタHilux、Corolla、Ford Ranger、Holden Commodore、現代 i30、Mazda3など。


ASEAN
出所:MarkLines 年次生産・販売台数データより作成

オーストラリアの車両生産が終了

 オーストラリアの車両生産は2017年10月に終了した。これまで現地工場で生産されていたHolden CommodoreやトヨタCamryなどは他国からの輸入車に切り替えられる。

Ford 2016年10月7日、1925年以来91年にわたるオーストラリアでの自動車生産を終了。ブロードメドーズ(Broadmeadows)工場ではFalconやTerritoryを生産していた。2016年以降はFalconの後継車としてMustangを輸入している。
トヨタ 2017年10月3日、54年にわたるオーストラリアでの車両生産を終了した。累計生産台数は345万1,115台。アルトナ(Altona)工場ではこれまでCamryなどを生産し、オーストラリア国内販売だけでなく、中東など海外にも輸出していた。
GM 2017年10月20日、69年間に及ぶオーストラリアでの自動車生産を終了。累計生産台数は760万台以上。エリザベス(Elizabeth)工場ではHoldenブランドのCommodoreやCruzeなどを生産していた。Commodoreの生産はOpelのドイツRusselsheim工場に移管。Cruzeの後継モデルは新型Astraとなり、OpelのポーランドGliwice工場で生産される。Holdenは今後、商品ポートフォリオの1/3以上を欧州から輸入で構成し、北米やアジアからも輸入するとしている。


(参考資料) 自動車生産・販売台数 年次データ

自動車販売台数

(単位:台)

国名 2012 2013 2014 2015 2016
オーストラリア 1,112,032 1,136,227 1,113,224 1,155,408 1,178,133
インドネシア 1,080,286 1,196,375 1,191,842 954,318 1,007,751
タイ 1,415,187 1,264,273 843,453 770,833 725,250
マレーシア 627,753 655,793 666,465 665,295 581,953
フィリピン 156,649 181,283 234,747 311,393 361,298
ベトナム 80,487 96,692 133,588 208,568 271,833
ニュージーランド 100,795 113,295 127,348 134,242 146,936
シンガポール 33,914 30,600 43,224 74,544 106,642

出所:MarkLines年次販売台数データ



自動車生産台数

(単位:台)

国名 2012 2013 2014 2015 2016
タイ 2,453,717 2,457,057 1,880,007 1,913,002 1,944,417
インドネシア 965,860 1,116,961 1,289,865 1,092,596 1,103,439
マレーシア 569,620 601,407 596,418 614,664 545,253
オーストラリア 221,254 215,926 180,311 173,009 161,294
フィリピン 55,360 52,260 96,711 101,533 96,835

出所:MarkLines年次生産台数データ



(参考資料) 日系メーカーの主な完成車生産拠点と生産モデル

国名 トヨタ・ダイハツ ホンダ 日産 三菱 スズキ マツダ
タイ トヨタ:
Samrong/Gateway/Ban Pho工場

Toyota Vios, Yaris (Vitz), Corolla Altis, Corolla Limo, Camry, Camry Hybrid, Hilux Vigo, Fortuner, Wish,
C-HR (2018年-), ハイブリッド車 (予定)

トヨタ車体:
Samutprakarn工場

Toyota Commuter (Hiaceベース)
ホンダ:
Ayutthaya/Prachinburi工場

Honda Brio, Brio Amaze, Jazz (Fit), Jazz Hybrid, City, Civic, Accord, Accord Hybrid, BR-V, HR-V (Vezel), CR-V, Mobilio
日産:
Samutprakarn工場

Nissan March, Almera/Latio, Sylphy, Pulsar, Teana, X-Trail, X-Trail Hybrid, Note (2017年-), Frontier/Navara
三菱:
Laemchabang工場

Mitsubishi Mirage (Space Star), Attrage (Mirage G4), Lancer EX, Pajero Sport (Montero Sport/Nativa)
Mitsubishi Triton (L200)/Fiat Fullback/Ram 1200
スズキ:
Rayong工場

Suzuki Celerio, Swift, Ciaz
AutoAlliance
Rayong工場

Mazda 2 (Demio), Mazda 3 (Axela), CX-3, BT-50 (-2017年)
インドネシア ダイハツ:
Karawang/Sunter工場

Daihatsu Ayla, Terios, Xenia, Sigra, Gran Max, Luxio, Hi-Max
Toyota Agya, Rush, Avanza, Calya, Town Ace/Hiace/Light Ace

トヨタ:
Karawang工場

Toyota Etios Valco, Vios, Yaris, Limo, Fortuner, Kijang Innova, Sienta

トヨタ車体:
Bekasi工場

Toyota NAV 1 (-2017年), Voxy (予定)

日野:
Purwakarta工場

Toyota Dyna
ホンダ:
Karawang工場

Honda Brio, Brio Satya, Jazz (Fit), BR-V, HR-V (Vezel), CR-V, Mobilio
日産:
Purwakarta工場

Nissan Juke, X-Trail, Grand Livina, Livina, Serena, Evalia

Datsun GO+ Panca, GO Panca
三菱:
Jakarta/Bekasi工場

Mitsubishi Outlander Sport, Pajero Sport (2017年-), Xpander (2017年-), Colt T120SS, Colt L300
スズキ:
Cikarang/Tambun工場

Suzuki Karimun Wagon R, Ertiga, APV, APV Arena, Carry, Mega Carry
 
マレーシア トヨタ:
Shah Alam工場

Toyota Vios, Camry, Fortuner, Innova, Hilux, Hiace

トヨタ:
Bukit Raja工場

(2019年稼働予定)
ホンダ:
Pegoh工場

Honda Jazz (Fit), Jazz Hybrid, City (Fit Aria), City Hybrid (2017年-), Civic, Accord, BR-V (2017年-), HR-V (Vezel), CR-V
Tan Chong
Segambut/Serendah工場

Nissan Almera/Latio, Teana, X-Trail, Grand Livina, Livina, Serena, Serena S Hybrid, NV 200, Frontier/Navara, Caravan/Urvan, Urvan NV350 (2017年-)
Tan Chong
Segambut工場

Mitsubishi ASX, Outlander (2017年-)
  マツダ:
Kulim工場

Mazda 3 (Axela), CX-5
フィリピン トヨタ:
Santa Rosa工場

Toyota Vios, Innova
ホンダ:
Santa Rosa工場

Honda City
日産:
Santa Rosa工場

Nissan Sentra, Almera, X-Trail, Grand Livina

Star Motor
Santa Rosa工場

Nissan Navara, NV350 Urvan Shuttle, Patrol Safari
三菱:
Santa Rosa工場

Mitsubishi Mirage (2017年-), Mirage G4/Attrage (2017年-), L300
   
ベトナム トヨタ:
Me Linh工場

Toyota Vios, Corolla Altis, Camry, Innova
ホンダ:
Me Linh工場

Honda City, CR-V (-2017年)
Tan Chong
Da Nang工場

Nissan Sunny, X-Trail
三菱:
Binh Duong工場

Mitsubishi Pajero Sport
スズキ:
Long Binh工場

Suzuki Swift, Carry
マツダ:
Quang Nam工場

Mazda 2 (Demio), Mazda 3 (Axela), Mazda 6 (Atenza), CX-5

出所:MarkLines 完成車メーカーの拠点、各社発表および報道より編集  



LMC Automotive販売予測:ASEANの販売台数は2020年に380万台へ

(LMC Automotive、2017年第3四半期)

LMC Automotive

 LMC Automotiveの販売予測(2017年第3四半期)によると、ASEANのライトビークル販売台数は2017年に330万台を超え、2020年には380万台に達する見通し。ASEAN諸国では安定した経済成長が続くことで将来的に市場規模(インドネシアとタイの市場が最も重要)が拡大、成長率は堅調だが大幅に伸びることはない。



インドネシア
 インドネシアのライトビークル販売台数は6月に低迷したため、2017年上半期は前年同期比で1%減少した。6月の販売不振は5月26日から始まったラマダンとそれに続く祝祭日によるもの。しかし、6月の反動と、8月に開催されたGAIKINDOインドネシア国際自動車ショー(GIIAS)で需要が急増することにより、第3四半期のインドネシア市場は回復すると予想される。このショーでは重要なMPVセグメントの新モデルがいくつも展示され、三菱Xpanderや、中国ブランド初の現地生産モデルとなる五菱Confero Sなどが含まれる。

タイ
 タイの新車販売台数は6月に前年同月比6%増と再び増加し、6カ月連続プラスとなった。これにより2017年上半期のライトビークル市場は前年同期比12%増に押し上げられた。同期の季節調整済み年率換算(SAAR)は平均で83.4万台/年となり、前年同期のLight Vehicle販売台数74.5万台を上回っている。これらの結果は、タイ市場が4年連続の販売減少から、2017年に入って回復したことを示している。2018年の伸び率は2%に減速し、2019年には再び3%に回復する見通し。ただし、2019年の成長予測は、2018年に選挙が行われ、新政権へ平和的に移行することを前提としている。他にも近い将来のライトビークル市場に影響を及ぼすプラス要因として、2012~2013年に導入されたファーストカーバイヤーに対する一時的な税還付制度が関連する。この制度では購入した自動車の所有権を5年間移転してはならないという条件があったが、制限期間が終了し、制度初期のファーストカーバイヤーは2017年から自由に自動車を売却することができる。

マレーシア
 2017年のライトビークル販売台数は59.1万台。輸出部門の回復、新型車の発売、通貨リンギット高が支えている。しかし、高水準の家計負債や生活費、厳しい分割ローンの条件など、ネガティブなリスク要因も残っている。LMC Automotiveの市場情報によると、非国民車の購入を希望している消費者は、PeroduaやProtonモデルの購入を検討する消費者より所得が高いと見られ、ローンの拒否率は低いとされる。しかし、国民車ブランドは2016年にLight Vehicle販売台数の48%を占め、市場全体への影響が大きいことから、LMC Automotiveでは国民車の進化とその販売動向について継続的に注意を払っていく。

フィリピン
 2017年のLight Vehicle販売は、2018年に新たな自動車物品税が導入されて値上げが予想されることが影響している。上半期は小型商用車(LCV)部門が前年同期比4%の伸びにとどまったのに対し、乗用車(PV)部門は20%増の大幅増となった。LCVは新たな増税から免除される。フィリピン政府は増税のタイミングを見直し、2段階で実施する予定。当初は2018年1月に1回で実施する予定だったが、第1段階は2018年1月、第2段階は2019年1月に実施することになった。物品税は価格に基づき、カテゴリーが4つから5つに増える。増税が免除されるのは、電気自動車、トラック、貨物バン、ジープ、シングルキャブのピックアップなど。ただし、ダブルキャブのピックアップは免除されない。LMC Automotiveは、消費者が2018年の価格上昇を避けるため、2017年に自動車を購入すると予測。2016年の総販売台数が39.8万台だったのに対し、2017年上半期の季節調整済み年率換算(SAAR)は平均44.3万台/年となり、この予測が確かに反映されている。この結果、LMC Automotiveは2017年のライトビークル販売予測を前回レポートより4.6%引き上げ、前年比13.8%増の45.4万台としている。

ベトナム
 ベトナムのライトビークル市場は、2017年上半期に前年同期比1.5%増となり、2016年の2桁成長から大幅に失速した。乗用車(PV)部門は前年同期比6%増、小型商用車(LCV)部門は約10%減となった。2016年の総販売台数25.9万台に対し、2017年上半期の季節調整済み年率換算(SAAR)は平均24.6万台/年。2017年通年の販売予測は前年比0.2%減の25.8万台。2018年1月に予定されている税制変更前に、消費者が車両購入を延期することが予想される。しかし、新たな税制が導入されれば、2018年の伸び率は再び2桁(25%増)に戻るとみている。



ASEANのライトビークル販売予測

(単位:台)


COUNTRY
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
Total 3,107,185 3,013,117 3,117,500 3,331,603 3,504,100 3,694,574 3,819,214
Indonesia 1,110,074 950,815 1,006,369 1,051,728 1,115,219 1,196,040 1,249,624
Thailand 853,480 774,730 744,414 838,603 855,525 880,928 900,809
Malaysia 660,027 661,967 575,830 591,202 610,752 639,204 660,346
Philippines 268,009 318,956 398,481 453,810 457,133 489,139 514,049
Vietnam 141,223 207,034 258,852 258,057 321,789 333,277 349,396
Singapore 35,024 68,739 104,010 107,183 111,618 122,566 110,226
Brunei 23,412 19,416 19,032 20,076 20,592 21,384 22,092
Laos 14,220 9,948 8,688 9,144 9,612 10,104 10,632
Myanmar 1,716 1,512 1,824 1,800 1,860 1,932 2,040

Source: LMC Automotive "Global Automotive Sales Forecast (Quarter 3, 2017)"
(注) 1.データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2.本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。
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ASEAN、アセアン、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、オーストラリア、豪州、電動化、EV、エコカー

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