東京モーターショー2017:自動運転や電動化部品に活用するプラスチック

電気特性、耐熱性など用途に応じたプラスチック部品・材料の採用事例

2017/11/17

要約

 第45回東京モーターショー2017は、「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」をテーマに、2017年10月25日~11月5日に東京ビッグサイトで開催された。主催者側の発表によると会期中の入場者数は累計771,200人(前回は812,500人)に達し、大盛況裡に閉幕した。

 最近の自動車業界の大きな話題は、電動化への転換の加速と自動運転である。これらの動きが進展するためには、センサー、カメラ、制御機器、インバーター等の部品が必要不可欠となる。バッテリーの負荷が大きい電動車では、搭載部品の増加に伴い、今後ますます軽量化ニーズが高まると見られる。その有力な解決策として、樹脂の使用がさらに増加していくと期待される。

 本稿は安田ポリマーリサーチ研究所の安田武夫所長の協力を得て、部品メーカーの展示に見られた注目されるプラスチック部品等を取り上げる。東京モーターショーは技術展示会に比べると樹脂関連の新しい話題は少ないが、電動化や自動運転関連を中心に最新の自動車部品が出展されている。今回はそれらに使用されている樹脂の動向を中心に紹介する。

豊田合成の製品ラインナップ
豊田合成の製品ラインナップ
電動車用製品やエンジン周辺部品などに樹脂を使用

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電動車用システム・エンジン部品・燃料タンクなど:Mahle、Schaeffler、ケーヒン、八千代工業ほか

Mahle:高電圧PTCヒーター

 内燃機関車ではエンジン冷却水の熱で暖房を行うが、EVはその熱源がないため、PTCヒーターが使用される。発熱体ケースは、耐熱性に優れるPA66-GF30、制御基板側ケースは電気特性等の物性バランスの優れたPBT-GF30が使用されている。

  • PA66: Polyamide 66 ポリアミド66
  • GF: Glass fiber ガラス繊維
  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート

高電圧PTCヒーター

エンジンルームの樹脂製品

高電圧PTCヒーター

エンジンルームの樹脂製品

 

Schaeffler:サーマルマネジメントモジュール


 サーマルマネジメントモジュールは、シリンダーヘッド、シリンダーブロック、エンジンおよびトランスミッションオイル、室内の温度調整等に使用される。ハウジングはPPSで、耐熱性、耐薬品性(耐LLC性)等を活かしている。

 同社ブースでは、PA系の材料を周辺部品に使用したドイツ車向けのエンジンなども展示されていた。

  • PPS: Poly phenylene sulfide ポリフェニレンサルファイド
  • PA: Polyamide ポリアミド

サーマルマネジメントモジュール

PA系の材料をエンジン周辺部品に使用

サーマルマネジメントモジュール

PA系の材料をエンジン周辺部品に使用

 

ケーヒン:吸気モジュール


  インテークマニホールド、インジェクター、スロットルボディをモジュール化したもので、PPA(PA6T)が使用されている。耐熱性、耐薬品性、機械的性質などが優れることが採用理由である。

  • PPA: Polyphthalamide ポリフタルアミド (PA6T: ポリアミド6T)

 同社ブースではエンジンルーム内の部品のほか、HVACユニットなどの樹脂製品が展示されていた。

吸気モジュール

HVACユニット

吸気モジュール

HVACユニット
展示パネル

 

ミクニ:冷却水制御バルブ

 エンジン内の複数の冷却水流路を1つのボディで適正に制御することにより、早期暖機、燃焼改善、フリクション・冷却損失を低減し、燃費、エミッション性能の向上を図る部品。ハウジングはPPA(PA6Tと推定)で、耐熱性、耐熱水性、耐LLC性等を活かしたものである。

  • PPA: Polyphthalamideポリフタルアミド (PA6T: ポリアミド6T)
冷却水制御バルブ
冷却水制御バルブ

 

日本サーモスタット:FCV用樹脂一体サーモスタット、モータコントロールバルブ


 FCV用樹脂一体サーモスタットは、FCスタックの温度制御のために使用されるサーモスタット。FCスタックの適切な稼働を図るため、下記の①、②の調整を行う。
  ①水素と酸素の化学反応で生じる熱によりスタック温度上昇時の冷却
  ②スタックの温度が下がりすぎると配電効率が落ちるため、適正温度の調節

 ハウジングはPPSで、耐熱性、耐熱水性等を活かした。

  • PPS: Poly phenylene sulfide ポリフェニレンサルファイド

 モータコントロールバルブは、エンジンの外部環境の状況により、エンジンの水温、各配管への水分配量を最適制御することで、暖機速度の向上、機械損失の低減、燃焼効率の向上を行い、燃費向上につなげる。この部品のハウジングもPPSである。

FCV用樹脂一体サーモスタット

モータコントロールバルブ

FCV用樹脂一体サーモスタット

モータコントロールバルブ

 

八千代工業: HV用燃料タンク


 HDPEとEVOHを組み合わせた燃料タンク。同社はバルブ取付けにおいて、タンク内面から溶着すること(インサートブロー成形)で穴あけを低減し、燃料蒸散を低減する機能部品内蔵技術を採用している。
 HVなど静粛性の高い車種では、ガソリンの揺れによる音が不快音として車内に響く。燃料タンク内で発生する音を低減するための構造物をインサート成形することにより、静音化を図っている。

  • HDPE: High Density Polyethylene 高密度ポリエチレン
  • EVOH: Ethylene-vinylalcohol copolymer エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂

HV用燃料タンク

燃料タンクのラインナップ

HV用燃料タンク
ホンダOdyssey北米モデルに搭載
展示パネル

燃料タンクのラインナップ
展示パネル:PHEV向け開発品

 

豊田合成: FCV用水素タンクライナー


  水素バリア性が必要となるため、PAが使用されている。複数の射出成形品を溶着してタンクライナーを製作している。

  • PA: Polyamide ポリアミド

 このほか、ターボダクト等のエンジンルーム部品を含む同社製品ラインナップを紹介していた。

FCV用水素タンクライナー

エンジンルーム

FCV用水素タンクライナー (画像左の製品)
展示パネル

エンジンルーム
ターボダクト

 

東京濾器:水位センサー、フューエルフィルタ

 東京濾器ではインテークマニホールドなどエンジンルームの樹脂部品を含む製品ラインナップが紹介されていた。

 ホンダのFCVに使用された水位センサーにはPPSが使用されている。燃料スタック内に搭載され、PPSの耐熱水性を活かした用途である。

  • PPS: Poly phenylene sulfide ポリフェニレンサルファイド

 フューエルフィルタは日野トラックのエンジン周辺に設置する部品で、この頭頂部は耐熱性、耐薬品性に優れたPPSが使用されている。

製品ラインナップ
製品ラインナップ

 

車載用水位センサー

フューエルフィルタ

車載用水位センサー

フューエルフィルタ

 

日本特殊陶業:水素漏れ検知センサー

 FCVの水素タンク近傍には水素漏れ検知センサーの設置が法令で義務付けられている。水素ガスは最も軽い分子で、タンク内は70MPaと高圧であり、漏えいすると火災事故に直結するためである。センサーのハウジングはPBT系材料と思われる。

  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート
水素漏れ検知センサー
水素漏れ検知センサー


ショックアブソーバー、ブレーキシステムなど:KYB、アイシン、HKT、NTN

KYB:次世代軽量ストラット式ショックアブソーバー

 ショックアブソーバー外筒およびブラケットを高強度のCFRTP(PAベース)で一体射出成形する。また、従来は金属材料であったピストンロッドにもCFRPを採用している。金属製部品の樹脂化により軽量化されている。

  • CFRTP: Carbon fiber reinforced thermo plastics 炭素繊維強化熱可塑性樹脂
  • CFRP: Carbon fiber reinforced plastics 炭素繊維強化樹脂
  • PA: Polyamide ポリアミド
次世代軽量ストラット式ショックアブソーバー

 

アイシン:電子制御ブレーキシステム

 HV/EV向けの電子制御ブレーキシステムを展示。プラスチックの使用は、黒いカバーがエンプラ系材料(黒い部分がPBTまたはPC)、ブレーキオイルリザーバタンクはPAであろう。PBT、PCは優れた電気特性等、PAは耐薬品性を活かしている。

  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート
  • PC: Polycarbonate ポリカーボネート
  • PA: Polyamide ポリアミド
電子制御ブレーキシステム

 

HKT:電磁弁

 大型トラック・バスのブレーキ系統やエンジン、サスペンション、トランスミッションなどの各種制御に電磁弁を使用する。ハウジングはSPSで、耐熱性、成形性、軽量性、低コストが採用理由。

  • SPS: Syndiotactic polystyrene シンジオタクチックポリスチレン
電磁弁

 

NTN:電動アクチュエーター

 DCモーターとボールねじを組み合わせた直動方式の電動アクチュエーター。ハウジングはPPS製で、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性等を活かしている。

  • PPS: Polyphenylene sulfide ポリフェニレンサルファイド
電動アクチュエーター
展示パネル


自動運転、通信システムなど:豊田合成、日立AMS、三菱電機、オムロンほか

豊田合成:ミリ波レーダー対応エンブレム


 近年は自動運転などの車両制御用にミリ波レーダーなどをエンブレムの近くに設置する。エンブレムの意匠性を上げるためにめっきを施すが、めっきは電波を遮断するため、センサーに悪影響を与える。このエンブレムは、めっきを隙間のある独自な構造とすることにより、電波を透過するようにしている。エンブレムにはPCが使用されている。表面光沢、耐衝撃性などが採用理由であろう。

  • PC: Polycarbonate ポリカーボネート

ミリ波レーダー対応エンブレム

エンブレムのラインナップ

ミリ波レーダー対応エンブレム
展示パネル

エンブレムのラインナップ

 

日立オートモティブシステムズ:自動運転ユニット


 車間距離制御システムや衝突被害軽減ブレーキシステム、車線逸脱警報システム等、複数の運転支援システムを単一のコントローラーに統合した先進運転支援システムの中核製品。表面には熱拡散のために金属を配している。ハウジングに使用するプラスチックはユーザーの要望で決まるとのこと。

自動運転ユニット

自動運転システム/電動車搭載部品

自動運転ユニット

自動運転システム/電動車向け製品

 

三菱電機:車両ゲートウェイシステム、バッテリーマネジメントユニット


 車両ゲートウェイシステムは、無線通信を用いたソフトウェアの更新、リモート監視による車内通信の異常検知などを行う。ハウジングは、電気的性質などの物性バランスに優れたPBTと推定される。
 バッテリーマネジメントユニットは、電動車に使用される多数の二次電池について個々の状況を把握し、制御するシステム。ハウジングはやはりPBTと思われる。

  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート

車両ゲートウェイシステム

バッテリーマネジメントユニット

車両ゲートウェイシステム

バッテリーマネジメントユニット

 

オムロン:ドライブカルテ

 カメラ、センサー、通信システムで構成される機器で、ハウジングには、物性バランス、外観の優れたPC/ABS樹脂を使用している。

  • PC: Polycarbonate ポリカーボネート
  • ABS樹脂: アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合体樹脂

 

参照レポート:
CEATEC JAPAN 2017:ドライバーモニタリング技術の展示 (2017年10月)

ドライブカルテ
ドライブカルテ

 

住友電気工業:セントラルゲートウェイ、イーサネット SW ECU

 セントラルゲートウェイは自動車に多数搭載されるECU間の信号のやり取りを制御する機器で、各々のネットワークを機能系統別にゲートウェイで繋がるようにする。イーサネット SW ECUはギガビットEthernetによる超高速通信を実現したスイッチのECU。共にハウジングは、電気特性等の物性バランスの優れたPBTと推定される。

  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート
セントラルゲートウェイ、イーサネット SW ECU
セントラルゲートウェイ、イーサネット SW ECU

 

カーメイト:ドライブアクションレコーダー

 業界初の全天周360°カメラで、ドライブレコーダー、アクションカメラとしても使用可能。360°のため横からの衝突や衝撃も録画可能。通勤時にはドライブモード、パーキング中は駐車監視モード、週末の活動ではアクションモードと3通りの使用が可能。ハウジングには機械的強度、寸法精度が良好なPCが使用されている。

  • PC: Polycarbonate ポリカーボネート
ドライブアクションレコーダー
ドライブアクションレコーダー


車体、ドアシステム、内装など:豊田自動織機、ユーシン、東海理化、Mothersonほか

豊田自動織機:樹脂ウィンドウ

 リアドアへの採用を目指した車体後部の樹脂ウィンドウを展示。プライバシー保護のために外から見えない着色をした耐衝撃性に優れるPCと、窓枠材料として耐薬品性に優れたPC/ポリエステル系アロイを2色成形している。(ポリエステルはPBTまたはPETと思われる)

  • PC: Polycarbonate ポリカーボネート
  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート
  • PET: Polyethylene terephthalate ポリエチレンテレフタレート
樹脂ウィンドウ
樹脂ウィンドウ

 

小糸製作所:ライセンスプレートランプモジュール

 ライセンスプレートランプ、バックカメラ、電子ミラー用カメラ、ドアオープナー等を一体化し、モジュール化したもので、小型・軽量化するとともに低コスト化を実現した。ハウジングはABS樹脂とPCのアロイと推定される。寸法特性、耐熱性、機械的特性に優れた材料である。

  • ABS樹脂: アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合体樹脂
  • PC: Polycarbonate ポリカーボネート
ライセンスプレートランプモジュール
ライセンスプレートランプモジュール

 

ミツバ:ダイレクトドライブワイパーシステム

 リンク機構を介さずにアームとブレードをワイパーモーターの出力に直結したダイレクトドライブ方式のワイパーシステム。世界で初めてブラシレスモーターを採用し、小型・軽量、作動音が小さいといった特徴に加え、高い制御性を持つ。ワイパーアーム、ブレードには強度、耐摩擦摩耗性、物性バランスの優れたPBTが使用されている。

  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート
ダイレクトドライブワイパーシステム
ダイレクトドライブワイパーシステム
展示パネル

 

アイシン:ドアシステム、構造接着剤


 ドアシステムには、摺動性、機械的特性等に優れたPOMやPBTなどのエンプラが使用されていると思われる。

  • POM: Polyoxymethylene ポリアセタール (polyacetal)
  • PBT: Polybutylene terephthalate ポリブチレンテレフタレート

 エポキシ系の構造接着剤の使用例が紹介されていたことも注目される。

ドアシステム

エポキシ系の構造接着剤

ドアシステム

エポキシ系の構造接着剤
展示パネル

 

ユーシン:リアアクセスモジュール

 リアアクセスモジュールは、バックドアに個別に取り付ける部品(ライセンスライト/リアビューカメラ/ドアオープンスイッチなど)をモジュール化し、スマートな外観を実現した。車両への組み付けが簡単になるだけでなく、ガーニッシュ部を含めた構成部品をすべて内製できるため、部品間の隙間を無くし、見映えを向上する。ハウジングは物性バランス、外観に優れたABS樹脂系アロイと推定される。

  • ABS樹脂: アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合体樹脂

リアアクセスモジュール

リアアクセスモジュール
展示パネル

 

東海理化:レバーコンビネーションスイッチ、シートベルト周辺部品

 東海理化はLexus LSに採用された部品を展示するコーナーを設置して、インパネ周りの内装部品や駆動部品などを紹介していた。

 レバーコンビネーションスイッチの外周部の構造部品は、物性バランス、外観が良好なABS樹脂。内部の二重円型回転部分は強度、摺動性が必要なため、POMまたはPA等の結晶性エンプラが使用されている。シートベルト周辺部品には、摺動性や機械的強度に優れるPOMなどのエンプラが使われている。

  • ABS樹脂: アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合体樹脂
  • POM: Polyoxymethylene ポリアセタール (polyacetal)
  • PA: Polyamide ポリアミド

Lexus LS搭載部品

Lexus LS搭載部品

レバーコンビネーションスイッチ

シートベルト周辺部品

レバーコンビネーションスイッチ

シートベルト周辺部品

 

Samvardhana Motherson Group:加飾内装部品


 加飾内装部品はPC/ABS樹脂のベース材にPMMAベースのフィルムをインサート成形して加飾したもの。同社ブースには様々な内装製品が展示されていた。

  • PC: Polycarbonate ポリカーボネート
  • ABS樹脂: アクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合体樹脂
  • PMMA: Polymethyl methacrylate ポリメチルメタアクリレート

加飾内装部品

内装製品の展示

加飾内装部品
製品パネル:ルーフモールディング

クラスターメーター
トヨタEtiosに搭載


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キーワード
モーターショー、樹脂、プラスチック、CFRP、炭素繊維、耐熱性、高剛性、成形、軽量化、電動化、接着剤

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