スズキのインド事業:新工場稼働、生産能力225万台に拡大へ

2020年度に販売網を3,000店舗に拡大、年販200万台を目指す

2017/07/13

要約

2017年7月下旬に日本で発売される新型Civic Sedan(写真:ホンダ)
インド製の世界戦略車「バレーノ(Baleno)」
(Maruti Suzuki資料)

 スズキの2017年3月期世界販売台数は前期比2.0%増の291.8万台。同社最大市場のインドでは10.7%増の144.5万台と大きく販売を伸ばし、全社販売台数の約5割を占めた。

 スズキはインドを世界戦略拠点として育成する方針。インド発のグローバルカーを現地で生産し、国内市場向けの供給能力をさらに高めるとともに、輸出拡大も図る。2017年2月にはインド西部のグジャラート新工場が稼働を開始。第1ラインの生産能力は年間25万台だが、第2、第3ラインも増設し、同拠点の生産能力を75万台まで引き上げる計画。ハリヤナ州にある既存の2工場(年産能力150万台)と合わせて、スズキのインドにおける年産能力は225万台に達する見通し。

 グジャラート新工場では小型ハッチバック「バレーノ(Baleno)」を生産している。「バレーノ」は、まず初めにハリヤナ州マネサール(Manesar)工場で生産を開始し、2015年10月にプレミアム販売網「ネクサ(NEXA)」で発売した。インド国内では月販1万台を超える最量販プレミアムハッチバックとなっている。また、「バレーノ」はインド製の世界戦略車として約100以上の国や地域に輸出される。日本向けにも2016年初から輸出を開始、インド政府の「Make in India」政策を受けて、マルチ・スズキから日本に輸出される最初の車となった。

 スズキは2017年6月末、2020年度にインドで年販200万台を目指し、販売店舗数を3,000店、サービス拠点を5,000店に拡大する方針を発表した(2017年3月末時点の店舗数は2,312店、サービス拠点が約3,200店)。同社は2015年7月に立ち上げたプレミアム販売網NEXAの店舗数を増やし、急増する中間所得層向けのラインナップを拡充している。また、小型SUV「ビターラ・ブレッツァ(Vitara Brezza)」や小型商用車(LCV)「スーパーキャリイ(Super Carry)」などの新モデルを投入し、同社として新たなセグメントにも参入。既存の量販モデルも刷新して、インドの排ガス規制や安全基準の強化にも対応していく。

 2017年4月には、東芝、デンソーとインドにリチウムイオン電池パックの新会社を設立すると発表。インドでは2020年にBharat Stage 6 (Euro 6準拠)が導入される予定。スズキはすでにインドで「シアズ(Ciaz)」および「エルティガ(Ertiga)」のディーゼルHVモデルを販売しているが、さらに現地生産モデルの電動化を推進する。

関連レポート:
インド自動車市場:NCAPとEuro 6準拠の排ガス規制を導入 (2017年3月)
トヨタとスズキ:業務提携の検討開始を発表 (2016年10月)
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スズキ世界販売の5割を占めるインド市場

 スズキの2017年3月期決算は、連結売上高が前期比0.3%減の3兆1,695億円、営業利益が36.5%増の2,667億円となった。四輪車事業の売上高は0.6%増の2兆8,956億円、営業利益は32.4%増の2,551億円で増収増益を確保している。四輪車の販売台数は前期比2.0%増の291.8万台。内訳は、海外販売が2.2%増の227.9万台、国内販売が1.4%増の63.9万台。同社最大市場であるインドで10.7%増の144.5万台と大きく販売を伸ばした。

 スズキの2018年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比7.3%増の3兆4,000億円、営業利益が10.0%減の2,400億円。引き続き海外市場における四輪車販売の増加を見込んでいるが、研究開発費や減価償却費等も増加するため、増収減益と予想している。四輪車の世界販売見通しは前期比5.2%増の307.1万台とし、同社初の300万台超を狙う。特に世界販売の約5割を占めるインド市場で8%増を見込んでいる。



スズキの連結業績

(単位:億円)

  2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度
計画
売上高 26,082 25,122 25,783 29,383 30,155 31,807 31,695 34,000
国内売上高 9,375 9,868 10,409 11,327 10,946 10,479 10,375 10,500
海外売上高 16,708 15,254 15,374 18,056 19,209 21,328 21,320 23,500
営業利益 1,069 1,193 1,446 1,877 1,794 1,953 2,667 2,400
経常利益 1,225 1,306 1,556 1,978 1,943 2,091 2,867 2,550
純利益 452 539 804 1,075 969 1167 1600 1,450
設備投資 1,303 1,267 1,693 2,136 1,945 1,715 1,988 2,200
減価償却費 1,384 1,031 937 1,172 1,344 1,683 1,634 1,800
研究開発費 1,041 1,098 1,193 1,271 1,259 1,310 1,315 1,500
為替 (1ドル) 86円 79円 83円 100円 110円 120円 108円 110円
為替 (1ユーロ) 113円 109円 107円 134円 139円 133円 119円 115円
為替 (1ルピー) (未発表) 1.68円 1.54円 1.68円 1.81円 1.85円 1.63円 1.65円
出所:スズキの決算参考資料



スズキの新車販売台数

(単位:1,000台)

  2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度
計画
日本 588 596 672 728 756 630 639 645
欧州 244 223 197 205 195 207 245 267
北米 33 32 30 - - -  -  -
アジア インド 1,133 1,006 1,051 1,054 1,171 1,305 1,445 +8% 
中国 290 296 253 232 253 186 148 n.a.
インドネシア 75 94 139 165 148 120 92 n.a.
タイ 6 10 33 40 20 21 23 n.a.
120 144 112 105 129 209 162 n.a.
1,625 1,550 1,588 1,596 1,721 1,842 1,870 1,983
その他 153 160 174 181 196 183 164 176
合計 2,643 2,560 2,661 2,709 2,867 2,861 2,918 3,071
出所:スズキの決算参考資料


グジャラート新工場が稼働、インドの生産能力を225万台に拡大へ

 スズキがインド西部グジャラート州Hansalpurに設立した新工場が2017年2月から稼働を開始した。スズキが全額出資で設立した製造子会社、Suzuki Motor Gujarat Private Limited (SMG、グジャラート州Ahmedabad)が運営。第1ラインの生産能力は年間25万台で、小型ハッチバック「バレーノ(Baleno)」を生産する。同モデルはスズキのインド法人、マルチ・スズキ(Maruti Suzuki)のプレミアム販売網NEXAで販売される。第1ラインへの投資額は約600億円。

 2019年初頭の稼働を目指し、第2ラインとエンジン・変速機工場も建設する計画。投資額は約1,000億円。さらに2020年代初めごろまでに、第3ラインも増設する計画で、将来的にグジャラート工場の生産能力を75万台まで引き上げる計画。

 今後はグジャラート工場の敷地内に部品メーカーを誘致する方針。稼働当初は既存工場があるハリヤナ州など他地域から大半の主要部品を運んで調達している。車体部品など輸送コストがかかる大物部品を中心に工場隣接地での生産体制を整えていく。

 マルチ・スズキの既存工場の年産能力は、ハリヤナ州にあるグルガオン(Gurgaon)工場が70万台、同州マネサール(Manesar)工場が80万台の合計150万台。グジャラート新工場の稼働開始により、スズキのインドにおける年産能力は175万台に増強され、将来的には225万台に達する見通し。



スズキのインド生産能力

(単位:台/年)

運営会社 工場 2016年 2017年~ 2019年~ 2020年代~
Maruti Suzuki India Ltd. Gurgaon 700,000 700,000 700,000 700,000
Manesar 800,000 800,000 800,000 800,000
Suzuki Motor Gujarat Private Limited Hansalpur 250,000 500,000 750,000
第1ライン稼働 第2ライン稼働 第3ライン稼働
合計 1,500,000 1,750,000 2,000,000 2,250,000
出所:MarkLines 完成車メーカーの拠点、各社発表および報道より編集



インドを世界戦略拠点に育成、現地生産車の輸出を拡大

 スズキはインドを世界戦略拠点として育成する方針。インド発の世界戦略車を現地で生産し、国内市場向けの供給能力を高めるほか、輸出拡大も図る。

 マルチ・スズキは2016年9月、インドからの輸出台数が累計150万台に達したと発表した。同社は1987-88年にハンガリー向けに初めて輸出を開始して以来、欧州、ラテンアメリカ、アフリカなどの100カ国以上に輸出している。主要輸出先はスリランカ、チリ、フィリピン、ペルー、ボリビア。2016年5月からは小型商用車(LCV)「スーパーキャリイ(Super Carry)」を南アフリカとタンザニア向けに輸出、今後は南アジア諸国にも輸出する計画としている。

 日本向けには2016年初めにハッチバック「バレーノ(Baleno)」の輸出を開始。インド政府の「Make in India」政策を受けてマルチ・スズキから日本に輸出される最初の車となった。「バレーノ」は日本以外にも、オーストラリア、ニュージーランド、欧州の数カ国やラテンアメリカなど100カ国以上に輸出されており、2017年6月までに6万4,000台以上を輸出している。



東芝、デンソーと電池パック工場を新設、インドの排ガス規制強化に対応

 スズキ、東芝、デンソーは2017年4月14日、インドに自動車用リチウムイオン電池パックの新会社を共同で設立することで合意したと発表した。2017年中に設立し、2年以内をめどに生産を開始する。製造する電池パックはスズキのインド製造子会社へ供給する計画。当初の設備投資額は約200億円。合弁会社の資本金は約20億円で、出資比率はスズキ50%、東芝40%、デンソー10%を予定している。

 スズキは2017年5月、インドに建設するリチウムイオン電池工場の生産能力を年間60万台に設定したと発表した。



インドで2020年にEuro 6導入、スズキは環境対応車の投入を加速

 インドでは2010年から段階的に導入されてきたBharat Stage 4 (Euro 4準拠)規制が、2017年4月から全国で施行。さらに、Bharat Stage 5 (Euro 5準拠)を省略して、2020年にはBharat Stage 6 (Euro 6準拠)が導入される。

 スズキは規制強化に対応するため、現地モデルの電動化を推進する。同社はすでに鉛蓄電池を使用するマイルドハイブリッドシステム「SHVS (Smart Hybrid Vehicle by Suzuki)」を搭載したモデル「シアズ(Ciaz)」と「エルティガ(Ertiga)」のディーゼルハイブリッド車(HV)を販売している。2017年3月期の販売台数に占めるSHVS搭載車の割合は、「シアズ」が6割、「エルティガ」が4割。

 新会社ではセル(単電池)から電池パックまで現地生産することで、小型車にも搭載可能なコストに抑える意向。インド国内におけるリチウムイオン電池パックの安定供給を実現し、環境対応車の普及促進を図ることで、インド政府が掲げる「Make in India」政策に貢献していく方針。



2020年度にインドの販売店舗数を3,000店に拡大、年販200万台へ

 スズキは2017年6月末、2020年度にインドの販売店舗数を3,000店に拡大する方針を発表した。2017年3月末時点の店舗数は2,312店。また、アフターサービスの需要増加に対応し、サービス拠点も約3,200店から5,000店(うち販売店併設が3,000店)に拡大する。

 スズキはインドで2020年度に年販200万台を目指す。2017年3月期の販売台数は144.5万台。同国の乗用車市場ではシェア約5割を占めている。しかし、近年は自動車メーカー各社が重点市場として強化し、新規参入も相次ぐなど、競争が激しくなっている。同社は販売網の整備を加速することで、競合他社を引き離し、トップシェアを維持していく方針。

 同社は特に急増する中間所得層向けにプレミアム販売網NEXAの店舗数を増やし、販売車種のラインナップを拡充している。2017年3月末時点、NEXAディーラー網はインド全土で252店舗、累計販売台数は20万台超。

シェアグラフ年度 インド年度別台数
出所:SIAM資料より作成
注:Passenger Vehicles (PVs)のシェア。 乗用車 (Passenger Cars)、ユーティリティ・ビークル (UVs)、バン (Vans)が含まれる。
出所:SIAM資料より作成
注:各年度とも4月~3月の集計値。


NEXAのラインナップ拡充、新セグメント参入と既存モデルの刷新

 スズキはインドで2019年までに全面改良を含む10モデルの新型車を投入する計画。プレミアム販売網NEXAのラインナップ拡充を進めるとともに、小型SUV「ビターラ・ブレッツァ(Vitara Brezza)」や小型商用車(LCV)「スーパーキャリイ(Super Carry)」などの新モデルを投入し、同社として新たなセグメントにも参入。既存の量販モデルも刷新して、インドの排ガス規制や安全基準の強化にも対応していく。



プレミアム販売網NEXAのラインナップ拡充

 マルチ・スズキはプレミアム販売網NEXAのラインナップ拡充を進めている。2015年8月に第1弾モデルとしてクロスオーバーSUV「Sクロス(S-Cross)」を発売したのに続いて、同年10月末に第2弾モデルとして新型小型車「バレーノ(Baleno)」を発売。2017年1月にはコンパクトクロスオーバー「イグニス(Ignis)」の新型車、3月にインフォテインメントシステムや安全機能を充実したプレミアムモデル「Baleno RS」を投入し、4月からは中型セダン「シアズ(Ciaz)」の販売チャネルをNEXAに変更した。

S-Cross ・2015年8月5日、クロスオーバーSUV「Sクロス(S-Cross)」を発売。Gurgaon工場で生産。プレミアム販売網NEXAの第1弾モデルとして販売。
・全長4,300mm、全幅1,765mm、全高1,590mm、ホイールベース2,600mm。
・1.3L「DDiS 200」と1.6L「DDiS 320」の2種類のディーゼルエンジンを設定。1.3Lエンジン(最高出力66kW、最大トルク200Nm)は5速MTと組み合わせ、燃費は23.65km/L。1.6Lエンジン(88kW、320Nm)は6速MTと組み合わせ、燃費は22.70km/L。
・1.3Lモデルは4グレード(Sigma、Delta、Zeta、Alpha)設定で、販売価格は83.4万~107.5万ルピー(Delhi, Ex-showroom)。1.6Lモデルは3グレード(Delta、Zeta、Alpha)で119.9万~137.4万ルピー。
・S-Crossはインド初のプレミアム・クロスオーバーSUV。マルチ・スズキはS-Crossの開発に60億ルピーを投資した。
Baleno ・2015年10月26日、新型小型車「バレーノ(Baleno)」を発売。Manesar工場で生産。プレミアム販売網NEXAの第2弾モデルとして販売。2017年2月からはグジャラート州Hansalpur新工場でも並行生産。
・全長3,995mm、全幅1,745mm、全高1,500mm、ホイールベース2,520mm。
・1.2Lガソリンエンジン(61kW、113Nm)または1.3Lディーゼルエンジンを搭載。ガソリン車は5速MTまたはCVT、4グレード設定で販売価格は49.9万~70.1万ルピー。ディーゼル車は5速MTを組み合わせ、4グレード設定で61.6万~81.1万ルピー。
・Balenoは2014年9月のフランクフルト・モーターショーに出展されたグローバルコンパクトカー。新プラットフォーム「ハーテクト(HEARTECT)」を初めて採用。インドで生産し、日本や欧州など約100以上の国や地域に輸出する。中期の販売目標は年間15万台程度で、うち5万台の輸出を見込む。
・Balenoは2015年東京モーターショーでジャパンプレミア。Bセグメント用の新開発プラットフォームを採用。パワートレインは新開発の1.0Lターボエンジンに6速AT、1.2LエンジンにCVTを組み合わせる。日本市場では1.2Lモデルを2016年3月9日に発売、1.0Lターボモデルを5月13日に発売。年間販売目標は6,000台。
Baleno RS ・2017年3月3日、小型ハッチバック「バレーノ(Baleno)」のプレミアムモデル「Baleno RS」を発売。プレミアム販売網NEXAで販売する。
・1.0L直噴ターボガソリンエンジン「BOOSTERJET」(最高出力75kW、最大トルク150Nm)を搭載。SmartPlayインフォテインメントシステムや、デュアルエアバッグ、プリテンショナー付きシートベルト、EBD付きABSなどの安全機能を装備。
Ignis ・2017年1月13日、コンパクトクロスオーバー「イグニス(Ignis)」の新型車を発売。Gurgaon工場で生産。プレミアム販売網NEXAで販売。
・全長3,700mm、全幅1,690mm、全高1,595mm、ホイールベース2,435mm。
・1.2Lガソリンエンジンまたは1.3Lディーゼルエンジンの2種類。MTとAMTを設定。4グレードで販売価格は45.9万~78.0万ルピー。
・マルチ・スズキは新型Ignisの開発に95億ルピーを投資。現地調達率は98.5%。Ignisのインド市場投入は日本と欧州に次ぐもの。
Ciaz ・2015年9月1日、中型セダン「シアズ(Ciaz)」のディーゼルハイブリッド車「Ciaz Smart Hybrid」を発売。販売価格は82.3万~101.75万ルピー。
・1.3Lディーゼルエンジン(FCAが技術供与)にISG(モーター機能付き発電機)を組み合わせたマイルドハイブリッドシステム「SHVS (Smart Hybrid Vehicle by Suzuki)」を搭載。5速MTとの組み合わせで、燃費は28.09km/L。
・Ciaz Smart Hybridは、インド政府のハイブリッド車・電気自動車(EV)生産販売促進プログラム「FAME (Faster Adoption and Manufacturing of Hybrid and Electric Vehicles)」に参画している。
・2015年9月12日、Ciazに新グレード、Vxi(O)とVdi(O)を追加。デュアルエアバッグ、ABS、プリテンショナー付きシートベルトなどの安全装備を強化。
・販売価格はVxi(O)が74.8万ルピー、Vdi(O)が83.75万ルピー。ベースグレードのVxiおよびVdiとの価格差はそれぞれ1.7万ルピー増、1.45万ルピー増。
・2017年4月1日から、Ciazの販売チャネルをプレミアム販売網NEXAに変更。Ciazは2014年10月の発売以降、累計販売が15万台を超える。



Ignis Ciaz
S-Cross (Maruti Suzuki資料) Ciaz (MarkLines撮影)



新モデル:小型SUV、小型商用車市場に参入

 マルチ・スズキは2016年3月に新型コンパクトSUV「ビターラ・ブレッツァ(Vitara Brezza)」を発売。全長4m未満のSUV導入により、乗用車市場の全セグメントをカバーした。また、同年7月には小型商用車(LCV)「スーパーキャリイ(Super Carry)」の発売により、インドの小型商用車(LCV)市場に初参入した。

Vitara Brezza ・2016年3月8日、新型コンパクトSUV「ビターラ・ブレッツァ(Vitara Brezza)」を発売。Gurgaon工場で生産。
・全長3,995mm、全幅1,790mm、全高1,640mm、ホイールベース2,500mm。荷室は328L。
・1.3Lディーゼルエンジンと5速MTを搭載。燃費は24.3km/L。ガソリンエンジンも追加予定。
・オートLEDヘッドランプ、クルーズコントロール、SMARTPLAYインフォテインメントシステム、リアビューカメラなどを装備。助手席エアバッグ、EBD付きABSなどがオプション設定。販売価格は69.9万~96.8万ルピー。
・Vitara Brezzaはマルチ・スズキ初のサブ4mクラスのコンパクトSUV。同社のインド人技術者が初めて外観デザインを担当した。同社はVitara Brezzaの導入で、乗用車市場の全セグメントをカバーする。
・Vitara Brezzaは発売後1年で11万台強の販売を記録。Indian Car of the Year 2017を含め、受賞実績は25以上にのぼる。
Super Carry ・2016年7月27日、小型商用車(LCV)「スーパーキャリイ(Super Carry)」を発売。Gurgaon工場で生産。
・全長3,800mm、全幅1,560mm、全高1,865mm、ホイールベース2,110mm。最大積載量は740kg。
・793ccの2気筒ディーゼルエンジン(24kW、75Nm)を搭載、5速MTを組み合わせる。燃費は22.07km/L。
・当初は3都市(グジャラート州Ahmedabad、西ベンガル州Kolkata、パンジャブ州Ludhiana)に限定して販売。価格は40.1万ルピーから(Ludhiana, Ex-showroom)。
・マルチ・スズキはSuper Carryの発売でインドのLCV市場に初参入し、商用車専門の販売店網も立ち上げた。
・インド市場での販売に先立ち、2016年3月よりGurgaon工場でSuper Carryの生産を開始し、5月末から南アフリカとタンザニア向け輸出を開始していた。



Vitara Brezza Super Carry
Vitara Brezza (Maruti Suzuki資料) Super Carry (Maruti Suzuki資料)



モデルチェンジ:Ertigaにハイブリッド車追加、Dzireに新型プラットフォーム採用

 同社はまた、量販車種のモデルチェンジも進めている。2015年10月にインドMPV市場でシェア20%以上を占める「エルティガ(Ertiga)」の改良モデルを発売。新たにマイルドハイブリッドシステム「SHVS (Smart Hybrid Vehicle by Suzuki)」搭載車を追加した。2016年5月にはインドの最量販車「アルト800 (Alto 800)」のマイナーチェンジを発売。前モデルより燃費を9%改善した。2017年5月にはコンパクトセダン「ディザイア(Dzire)」の新型車を発売。新プラットフォーム「ハーテクト(HEARTECT)」を採用し、安全装備やインフォテインメントシステムを拡充した。

Dzire ・2017年5月16日、コンパクトセダン「ディザイア(Dzire)」の新型車を発売。Manesar工場で生産。
・全長3,995mm、全幅1,735mm、全高1,515mm、ホイールベース2,450mm。
・1.3Lディーゼルエンジンと1.2Lガソリンエンジンの2種類。燃費はディーゼル車が28.4km/L、ガソリン車が22.0km/L。
・5速MTと5速Auto Gear Shift (AGS)を設定。ガソリン車、ディーゼル車とも各4グレードを用意、販売価格は54.5万~94.1万ルピー。
・新プラットフォーム「ハーテクト(HEARTECT)」を採用。ボディには超ハイテン材およびハイテン材を多く採用。デュアルエアバッグ、プリテンショナー付きシートベルト、EBD付きABSなど安全装備を強化。Apple CarPlay、Android Auto、Mirror Link対応のインフォテインメントシステムも備える。
・マルチ・スズキは新型Dzireの開発に100億ルピー超を投資。現地調達率は99%。インド国内での販売に続いて、インド周辺国、中近東、アフリカ、中南米市場でも販売される。
Ertiga ・2015年10月16日、MPV「エルティガ(Ertiga)」の改良モデルを発売。
・ABSやデュアルエアバッグ等の安全装備をベースモデルにも設定。新たにマイルドハイブリッドシステム「SHVS (Smart Hybrid Vehicle by Suzuki)」搭載車を追加。SHVS搭載車の燃費は24.52km/L。
・1.4Lガソリンエンジン、CNGのほか、1.3Lディーゼルハイブリッドを追加。ガソリン車は5速MTまたは4速AT、4グレード設定で、販売価格は59.99万~84.26万ルピー。ディーゼルハイブリッド車は5速MTを組み合わせ、4グレード設定で75.58万~82.54万ルピー。
・ErtigaはインドMPV市場でシェア20%以上を占める。
Alto 800 ・2016年5月18日、エントリーカー「アルト800 (Alto 800)」のマイナーチェンジを発売。
・全長3,430mm、全幅1,490mm、全高1,475mm、ホイールベース2,360mm。前モデルより全長が30mm延長。
・796ccの3気筒エンジン(最高出力35.3kW)を搭載。燃費は24.7km/Lで、前モデルより9%改善。CNG車の燃費は10%改善して33.44 km/kg。
・エアバッグ、チャイルドロック、キーレスエントリー等をオプション設定。ガソリン車は4グレードで販売価格は24.9万~33.4万ルピー。CNG車は37万ルピーで、オプション付きが37.6万ルピー。
・Alto 800は12年連続でインドの最量販車であり、マルチ・スズキの国内販売の18~20%を占める。



Dzire Ertiga
Dzire (Maruti Suzuki資料) Ertiga (Maruti Suzuki資料)


GST導入で自動車の間接税引き下げ、各社とも販売価格を値下げ

 インド政府は全国統一の物品・サービス税(GST: Goods and Services Tax)を2017年7月1日から施行した。GSTの導入により、各州で異なっていた間接税の税率が統一され、州を越えた取引が活発化する見込み。

 GSTの基本税率は4段階(5%、12%、18%、28%)で、自動車には最も高い28%が適用される。追加課税を含めた自動車・二輪車/三輪車のGST税率は28~43%。従来の税率30.2~55.3%に比べると、小型車は小幅な減税にとどまるが、大型車やSUVではGST導入による減税効果は大きい。ハイブリッド車(HV)は従来の優遇税率が撤回され、GSTの区分に基づく税率が適用される。なお、電気自動車(EV)の税率は従来と同じ12%に据え置かれている。

 自動車各社はGST導入に伴う減税効果を顧客に還元するとし、軒並み車両価格の引き下げを発表した。マルチ・スズキは自社モデルの価格を最大3%引き下げたと発表。一方、GST導入で税率が引き上げられるHVについては、「シアズ(Ciaz)」および「エルティガ(Ertiga)」のディーゼルHVモデルを値上げした。



自動車に賦課される間接税

セグメント GST
導入前
GST導入後 差異
合計 内訳
二輪車 (排気量 <350 cc) 30.2% 28.0% 基本税率 28.0% -2.2%
租税率 (Cess) 0.0%
二輪車 (排気量 >350 cc) 30.2% 31.0% 基本税率 28.0% 0.8%
租税率 (Cess) 3.0%
小型乗用車
(全長 < 4m; ガソリン <1200 cc)
30.2% 29.0% 基本税率 28.0% -1.2%
租税率 (Cess) 1.0%
小型乗用車
(全長 < 4m; ディーゼル <1500 cc)
30.2% 31.0% 基本税率 28.0% 0.8%
租税率 (Cess) 3.0%
中型乗用車
(排気量 <1500 cc)
47.3% 43.0% 基本税率 28.0% -4.3%
租税率 (Cess) 15.0%
ハイブリッド車 (HV) 30.3% 43.0% 基本税率 28.0% 12.7%
租税率 (Cess) 15.0%
電気自動車 (EV) 12.0% 12.0% 基本税率 0.0% 0.0%
租税率 (Cess) 12.0%
大型乗用車
(排気量 > 1500cc)
49.0% 43.0% 基本税率 28.0% -6.0%
租税率 (Cess) 15.0%
SUV
(全長 >4m; 排気量 >1500 cc;
地上高 >170mm)
55.3% 43.0% 基本税率 28.0% -12.3%
租税率 (Cess) 15.0%
商用車 30.2% 28.0% 基本税率 28.0% -2.2%
注:GST導入前は州により税率が異なるが、平均値を記載。
出所:Central Board of Excise and Customs (CBEC)資料および各種報道よりMarkLines作成。


LMC Automotive 生産予測:スズキの世界生産は中期的に300万台に達する見込み

LMC Automotive、2017年4月)

 LMC Automotiveの生産予測(2017年4月)によると、スズキの2017年の世界生産は前年比3.9%増の298万台になる見通し。インド、日本、パキスタンで増加し、ハンガリー、中国、インドネシアでの減少をカバーすると見ている。

 スズキの最大市場であるインドでは、2017年に前年比7.6%増の163万台を生産すると予測。スズキは新型BalenoやVitara Brezzaなど需要の高い新型車の生産を拡大するため、Alto、Swift、Dzireといった販売上位だが旧モデルの生産を縮小した。同社は2月、グジャラート州Hansalpur新工場で新型Balenoの生産を開始した。新工場の稼働によりインドでの生産能力は25万台追加され、さらに25万台の第2ラインも2019年までに稼働を開始する予定。

 1月にはスズキの中核モデルとなる新型車Ignisをインドで発売。Maruti Suzukiとサプライヤーは、Ignisの開発に約1.4億ドルを投資して、現地調達率98.5%を達成。Ignisは発売当初に月販4,800台を記録した。また、2月にはCiaz SHVS (Smart Hybrid Vehicle by Suzuki)およびErtiga SHVSなど、マイルドハイブリッド車の累計販売100万台超を達成した。

 スズキの日本での生産台数は2017年に前年比12.6%増の772,084台と予測。LMC Automotiveは「スズキが2016年11月29日に日本市場にSolioのハイブリッドバージョンを追加したことで、今回の予測レポートにおける同モデルの生産・販売予測を引き上げた」とコメントしている。

 対照的に、Magyar Suzukiのハンガリー工場での生産台数は2016年の211,266台から2017年には150,087台へ29.0%減少すると予測。LMC Automotiveでは、「2016年12月に中核モデルSwiftの生産が中止され(新型Swiftは日本から供給される)、同工場での生産はS-CrossとVitaraの2モデルしか残されていない。現時点で新たなモデルをハンガリー工場で生産する予定はなく、年末までの生産予測が2016年水準にとどまる可能性は低い」と見ている。

 スズキのライトビークル生産台数は、インドでの継続的な増産を考慮して、中長期的に300万台に達する見通し。一方、日本での生産は2020年に70万台を下回ると予想している。



スズキのライトビークル生産予測

(台)

COUNTRY GLOBAL
MAKE
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
  Suzuki 2,808,148 2,887,510 2,834,382 2,944,754 2,995,756 3,068,314 3,090,307
  Maruti-Suzuki 32,411 35,666 36,037 38,047 0 0 0
Suzuki Group Total 2,840,559 2,923,176 2,870,419 2,982,801 2,995,756 3,068,314 3,090,307
India Suzuki 1,262,441 1,413,418 1,512,744 1,628,348 1,652,595 1,693,268 1,759,005
  Maruti-Suzuki 2,260 0 0 0 0 0 0
India sub-total 1,264,701 1,413,418 1,512,744 1,628,348 1,652,595 1,693,268 1,759,005
Japan Suzuki 902,979 815,096 685,588 772,084 722,088 744,666 681,797
Indonesia Suzuki 147,985 133,630 134,574 113,322 119,488 143,802 152,493
China Suzuki 266,033 176,155 147,925 135,246 148,094 145,878 145,346
Hungary Suzuki 139,292 181,035 211,266 150,087 141,355 126,097 135,174
Pakistan Suzuki 49,919 98,725 75,973 75,529 123,993 128,175 131,074
  Maruti-Suzuki 30,151 35,666 36,037 38,047 0 0 0
Pakistan sub-total 80,070 134,391 112,010 113,576 123,993 128,175 131,074
Thailand Suzuki 23,297 54,371 56,275 56,169 72,805 70,344 68,462
Iran Suzuki 453 1,308 1,573 4,380 5,488 6,609 7,119
Vietnam Suzuki 2,654 3,492 3,825 4,247 4,239 4,411 4,637
Ecuador Suzuki 5,863 5,978 3,123 3,775 4,096 3,504 3,599
Brazil Suzuki 4,173 2,118 1,516 1,567 1,515 1,560 1,601
Malaysia Suzuki 3,059 2,184 0 0 0 0 0
Source: LMC Automotive "Global Automotive Sales Forecast (April 2017)"
(注) 1.データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2.本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。
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キーワード

スズキ、インド、Maruti Suzuki、NEXA、グジャラート、Gujarat、Make in India

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