ハノーバーショー:第66回IAA国際商用車ショー報告(上)

「新しいモビリティーワールド物流」:メルセデス・ベンツ、スカニア、イベコ

2016/10/31

アイデアによって駆動されるIAA商用車ショー

「IAAポスターの意味」(VDA=ドイツ自動車工業会による)

 テーマ「Ideen sind unser Antrieb=(アイデアが我々の駆動力)」のもとに、現代的で革新的な「接続性」/「デジタル化」/「安全」を青色のフロントガラス相当のヘッドアップディスプレイ上に、接続された情報システムのイメージとして表現。未来へ進化するバン/トラック/バス車両のデジタルな相互作用の世界を提示している。

「IAAショー全体」


 例年になく夏の暑い空気がまだ残るハノーバーで世界最大の商業車ショーが2016年9月末に開催された。27万平方メートル(東京モーターショーが開かれる、東京ビッグサイトの3.5倍)のメッセ会場に52カ国から約2013社の出展者、330台以上のワールドプレミア、100台以上の欧州プレミアが登場した(前回と同等)。外国からの出展比率は61%に上り、大小部品メーカーが多く、主に中国/イタリア/オランダ/トルコ等から出展。訪問客層は欧州の他、中国、今回はとりわけ東南アジアやインドからのビジネス客が目立った。中国からの来場者はどこのショーでも女性の開発関係者が多く部品の写真やメモを熱心に取っていた。

 「ダイムラー」グループは一つの大ホールを貸し切っての恒例の大展示だが、今回フルモデルチェンジされたキャブを展示した「スカニア」はいつも以上の大賑わいであった。プレスデーを除き写真撮影は開場を待って駆け足しで現場に一番で行かなければ良い写真取りは出来ない状態であった。

「欧州のトラック輸送状況と市場」


 一往復平均1,000km前後を走る日本の長距離トラックは夜間走行が多く、昼の幹線道路やサービスエリアではあまりトラックを見かけない。東西南北にはりめぐらされたアウトバーンや欧州の主要幹線道路では2,000〜3,000km走行に及ぶ長距離トラックが多く、昼夜関係なく走行し昼も仮眠する姿が多く見られる。(写真は、北は北欧から、南はイタリアまで南北に伸びる幹線道路の一部「アウトバーン7号線」にて。)

「トラック市場」

(VDAドイツ自動車工業会資料、詳細は弊社データを参照ください)

  • EC圏内では貨物輸送の約76%がトラック輸送であり比率は高まっている。ドイツでは毎日平均160万台以上のトラックが走行。
  • (2015年)西欧の6トン以上のトラック登録台数は259,000台、(前年比+14%)(日本約90,000台)。スペイン, オランダが20%以上の伸び。(今年のドイツ大型トラックは87,000台以上を予測)。
  • (2015年)ドイツのトラック輸送は4,657億トンkm。(日本約2,158億トンkm)

2014年のハノーバーショー取材レポート
上:Daimlerの自動運転トラックとMANの新大型エンジンの展示
下:Volvo、SCANIA、RenaultとZFの展示



IAAショーの出展概要:接続性・デジタル化・安全・自動化・代替パワートレーン


 前回のハノーバーショーでは各社「TCO=Total Cost Ownership」をキーワードに「トラックの生涯コストと収益性のバランス評価」を訴求ポイントにした展示がみられた。今回のキーワードはポスターで示された通り、「接続性、Connectivity」、デジタル化、安全、自動化であり高度な通信サービスと革新的なセンサー技術を駆使したトラックを軸にしたデジタルネットワークの推進活用である。基本にあるのはトラック輸送の更なる効率化と生産性向上、安全性確保とドライバー支援、環境貢献/CO2の削減である。

  1. 接続性=Connectivity」は全欧を走る車両情報をデジタル化でビッグデータとして共用化することで、輸送品質や車両サービスを競争力強化に位置付ける。トラック輸送の拡大と収益性向上に対応させる。各社とも、「つながる」をキャッチフレーズに車両や輸送サービスベースで総合的な利便性の提供のための参考展示を行っていた。
  2. 自動化はいまだコンセプト段階の展示。
    • 自動自律化研究で先行している「メルセデス・ベンツ」が大型や中型バンの配送トラックへ展開し出展。
    • 自動化例は「メルセデス・ベンツ」以外は「Bosch」や「ZF」など大手サプライヤーの技術展示が主役であった。
    • その他には、トレーラー連結〜切り離しの自動化、空気抵抗軽減策のミラーレス化、ステアリング操舵時や後退時に自動的にデジタルミラーへ車両直近の3D画像を表示する技術などの展示が見られた。
  3. 安全性確保。安全装置の採用の目的は運転支援補助システムとしてドライバーの負担軽減にあり、最終的には荷主も含めた生産性の向上につなげるもの。
    • 空気抵抗低減策のミラーレス化に端を発した、3Dデジタルミラーによる広範囲の可視化の展示(車両挙動により視界を制御)。
    • 車両衝突回避/軽減、車線逸脱警報、横滑り防止など日本車同様に欧州車でも標準装備されているが、多機能カメラ/レーダー/超音波等の装備のさらなる採用への提案がされていた(サプライヤーが主)。
  4. ショー本来の製品群では
    1. コンセプト車の出展:「メルセデス・ベンツ」, 「イベコ」, 「マン」(デジタルミラー等)。
    2. EVの出展:「メルセデス・ベンツ」のトラック/バス、「三菱ふそうキャンター」、「マン」。
    3. 代替燃料車の出展:ディーゼルハイブリッド、LNG車の増加。
    4. 三点セットの展示:①4✖2,6✖2,6✖4のトラクター、②スワップボデーシャシー車、③ダンプ等。
    5. 軽量化:4✖2配送用近距離トラクター、トレーラーフレーム、2軸トレーラー等。
    6. 6✖2トラクター(2軸目操舵軸、シングルタイヤ&リフトアップ機構)左ハンドルで出展。
    7. 南アやオーストラリア向け右ハンドル6✖4高出力トラクター出展。
    8. ラリーやスピードレース用トラックの出展。



「トラック各社出展概要」

(WP)はワールドプレミアを示す

ダイムラーグループ
・メルセデス・ベンツ
①コンセプト車(WP) ・EV=都市内用 大型車バン、集配用 中型バン
・EV=未来の路線バス
・中型バン向け荷物積載装置
②現行車 ・アクトロス、 アントス、 アロクス、 アテーゴ等大型/中型のトラクターや各種荷台架装車
・南ア向けアクトロス右ハンドルトラクター、ロンドン向けエコニック セメントミキサー
・スプリンター他中小型バン、 ワゴン
③バス(WP) ・セトラHDH 超豪華観光バス
・三菱ふそう
①キャンター(WP) ・量産用EV小型バン、 
②現行車 ・キャンターハイブリッド4×4、平ボデー、消防車等
・ダイムラーグループ ・ダイムラーグループ内の各1台を参考出展
 フレイトライナー/ウエスタンスター(米国)、バーラトベンツ(インド)、
 福田欧曼(中国)、三菱ふそう東京モーターショー出展車
フォルクスワーゲン トラックス&バスグループ
・スカニア
①フルモデルチェンジ(WP) ・Sレンジ(新設)トラクター、スワップボデー車  
・Rレンジ トラクター    ・(P、Gレンジ来春ライン投入 )
②コンセプト車(WP) ・Pレンジ ディーゼルハイブリッドトラクター(パラレルタイプ)
③現行車 ・Rレンジ原木運搬車、 Gレンジ LNGトラクター、 
④バス ・観光バスHD(マイナーチェンジ)・ LNGインターシティーバス、 ハイブリッド路線バス
・マ ン
①新設車(WP) ・TGEシリーズ 小型トラック、 バン
②フェイススリフト(WP) ・TGX、 TGSシリーズ 大型トラクター、スワップボデー車、ダンプ、原木運搬車
③現行車 ・TGX南ア向け等右ハンドルトラクター、 TGM中型冷凍車等
④バス(WP) ・ネオプラン観光バス ツアーライナー
・VWコンステレーション(ブラジル)
  ・トラクター、CNGトラクター、観光バス
ボルボグループ
・ボルボ
①現行車 ・FHシリーズ トラクター(6×4リフトアクスル車含む)、スワップボデー車、原木運搬車
・FMXダンプ
・FM軽量トラクター、 FE中型冷凍車、 FL消防車
②参考出品 ・ハイパワーレース車
③バス ・EV路線バス、ディーゼルハイブリッド路線バス、観光バス
・ルノー
①現行車 ・Tシリーズ トラクター、スワップボデー車
・Cシリーズ 軽量トラクター
・Kシリーズダンプ
・Dシリーズ スキップローダー、 キャリアカー
②参考出品 ・Kシリーズ モスクワ~北京ラリー車
イベコ グループ
・イベコ
①コンセプト車(WP) ・LNGトラクター ペトロナス
②現行車 ・(フェイスリフト)ストラリス チャンピオンシリーズXPトラクター、NPトラクター
・ストラリス LNGトラクター
・ユーロカーゴ 中型バン、CNG中型トラック
・ニューデイリー小型ワイドバン
③バス ・観光バス マジェラス(ラグビースポンサー車)
④参考出品 ・トラックレース用トラクター
・イベコアストラ ・アストラ 重ダンプ
パッカーグループ
・ダフ
①現行車 ・XFトラクター(ショーエディション含む)、 XF低床トラクター、サイレントトラクター
・CFダンプ、アームローラー車、サイレントトラクター
・LF中型エアロ
②その他 ・パッカーエンジンシリーズ
ボッシュ、  Z F
モック展示 ・スクリーンディスプレーによるデジタルミラーや自動運転、ワイヤーモックによる部品展示(ZF)


メルセデス・ベンツ:自動化時代の商用車の姿を示すコンセプトモデルを多数出展

 いつも通り、ホール15号館全館を貸し切ったメルセデス・ベンツの展示会場の入り口にはダイムラーのグループ力を誇示するように傘下のフレイトライナー/ ウエスタンスター(米国)、バートラベンツ(インド)、三菱ふそう(日本/インド)、福田欧蔓(中国)のトラックが出迎える!


 下は館内の写真。左下白抜き写真は会場左手に位置する、ふそう「キャンター」ブース の一部。右下白抜き写真はメルセデス・ベンツ傘下の高級バス「セトラ」5台が出展している。


 世界一の商業車生産/販売を誇る「メルセデス・ベンツ」は前回のIAAで未来の自動自律走行長距離トラックコンセプトを発表し、2016年春には隊列走行の実地試験を行い堂々と先進技術を訴えた。そして2016年7月のEV大型トラック試験走行のプレビューを経て、IAAプレスデー前夜に「ベンツの未来は目覚める!」のテーマで大々的に「ダイムラーメディアナイト」を開催しIAAに臨んだ。
IAAのポイントは

  1. 長距離トラック輸送の末端である都市内トラックやバン、そして都市内バスで、静かで安全快適でCO2 排出を0にしたEVコンセプト車を出展。自動走行から端を発した無人化装置、バンへのスマートフォンで操作する自動搬出入, ドローンの配送。
  2. 顧客や社会のために効率的なモビリティと、輸送システムへシームレスな「接続性」を提供する。(自動走行トラックの隊列走行とEVの市場投入、交通インフラとデジタルサービス)。
  3. 大型アクトロス20周年モデルなどの大中型トラック。OM470改良エンジンとその他パワートレーンなど 。
  4. 欧州の戦略車種である「ふそうキャンター」のEVモデル, 各種ボデー架装車。


メルセデス・ベンツ コンセプト車Ⅰ:都市内(近距離用集配)EVトラック「アーバンe トラック」

(上写真メルセデス・ベンツ資料)


右上写真床部:透明強化ガラスから搭載機器が見られる。


ハブ隣接モーターを左右2基ハブに隣接させた「ZF電気アクスル」とアクスル後部に高容量インバーターを搭載。

シャシーフレーム内に3モジュールのバッテリー, バッテリークーラー,電動エアコンプレッサーを搭載。


 2016年7月末、メルセデス・ベンツ本社内で上左写真のキャブ付シャシー試作車を発表。発表時点では現行大型車「アントス」をカモフラージュしたものだったが、IAAショーにはメルセデス・ベンツのコンセプトデザインに相通ずる同一イメージのキャブに電動冷凍機を搭載したリアゲート付きバン型車を出展。

  1. 欧州各都市部向けにクリーンで静かなゼロエミッションの集配用大型EVトラック出展。
  2. ベース車両は大型車「アントス」、 車両総重量(GVW)26ton, 荷台長は7.4m。
    6✖2 リアスーパーワイドシングルタイヤ(495/45R 22.5, 駆動荷重11.5ton),
  3. 出力125kwモーター2基、リチウムイオンバッテリー総容量212kWh、一回充電走行範囲は欧州都市内の実質日当たり稼働距離の200km確保、モーター駆動時の定格電圧は400V、モーターは500kW✖2基、歯車装置組合せの車輪トルクは11,000Nmに達する。
  4. バッテリー重量約2.5tonで、車両では約1.7ton重量増。EU委員会では代替ドライブ搭載トラックGVW1ton増加を許容しており、積載重量は12ton確保。

 車両デザインはメルセデス・ベンツデザインフレーズの「ホット&クール」を基に展開。

  • 滑らかなで官能的な「ホット」な車体, 高度な技術と機能で「クール」を表す‥とのこと。



  • 外形のブラックフロントグリルは、外部とトラックを接続するブランディング要素で種々の視覚機能 を有する。(車両動作状態, 充電状態等々)
  • ミラーレスのデジタルミラーとインパネには二つの12.3インチのカラーディスプレイで車両内外挙動と稼働情報や車両電子制御情報のインテリジェント制御システムを把握できるインターフェース機能を持つ。また、インパネ右にタブレット端末もセット可能。
  • 都市内で200kmの航続距離を最大限に生かす為にトラックと周辺環境との間のインテリジェント通信やテレマティックス活用を通し、駆動制御やエネルギー制御でトラックパフォーマンスを発揮。最先端のディスプレイは日々の業務でドライバーをアシスト出来るようにしている。


メルセデス・ベンツ コンセプト車Ⅱ:戸口への端末輸送の為のEVバン 「ビジョン バン」


 「アーバンeトラック」の次の使用工程である最終戸口集配の為の魅力的なバンを出展。他の商業車メーカーとは一歩も二歩も先を見越した開発力と技術の余裕と自信を見せつけた。

  • 自動積載装置や2基のドローン宅配を併せた端末輸送の理想形:「未来のEVバン」
    1. 新しい先進的な顧客の要求、末端輸送の効率化とドライバーの負担軽減を狙い、将来のトラック輸送の解決への姿を提案。荷主注文〜荷姿把握〜集配計画〜自動化された荷室〜車両管理〜集配ルート設定〜輸送への全工程をデジタル接続する完全自動化を示し、「未来のバン」を訴求。
    2. ベース車両は「スプリンターハイルーフバン」相当、GVW約3〜3.5ton/積載重量1.4ton。
    3. 出力は75kwモーター1基をリアアクスルデフセンターに設置し、航続距離は270km。
    4. ドライバーはジョイスティックコントローラーでの自動運転。インパネのデジタルスクリーンで輸送に係わるインテリジェント情報を把握、操作する。
    5. フロントブラックグリルは、先の「eトラック」同様に自車の走行状態/ドローン稼働を表示する。

バンのルーフに搭載された2基のドローンは10kmの範囲で2kgの荷物を配送できる。
・配送センターでの完全自動積卸しシーン(メルセデス・ベンツ資料)
・ショーでの、ラックシステムと自動積卸しデンストレーション
・庫外ではスマホでコントロールする

 

 メルセデス・ベンツは、「Connectivity」=「接続」というIAAキーワードを、遠くない未来像として具現化。完全自動化されたトラック一貫輸送を統合されたシステム例としてショーアップしていた。「物流とトラックはややもすると現実的な問題解決」のみが優先するが「夢」も大変重要!



メルセデス・ベンツ コンセプト車Ⅲ:街と接続するEVバス「将来の路線バス」


 世界的に最も売れたメルセデス・ベンツの路線バス「Citaro」をベースに全長12mのコンセプト路線バスを出展。 街中でもはっきりとその存在と利便性がわかるように「調和のとれた非対称のウインドウグラフィック」 の外形を訴求。内装も照明/ドアレイアウト/情報システム等の先進機能と有機的なシートとレイアウトで 退屈しない楽しい路線バスを提供(メルセデス・ベンツ)。



  1. 安全・快適で効率的な「CityPilotの半自動走行の路線バス」。「CityPilot」:市内バスの要件を満たし半自動運転を可能にする、街に合ったバスロケーションシステムとバス。(アムステルダムのバストランジットシステムで試験運行完了)
  2. バスと組み合わされるCityPilotシステムはデジタルミラー/3Dビジョン/外部環境センサー/ステレオカメラ等10台のカメラを装備し、その他のセンサーと制御装置で街の交通インフラ全てをスキャン/情報交換してバス運行を支援。当然バス停への安全確実な接近停止、あらゆる乗客条件を感知しドア開閉を約束する。
  3. 車室内は、街の公園や広場をイメージした内装は異なる3つのゾーンで構成され、ベンチシートと木立イメージの照明類、シンプルなインパネは大画面のカラーディスプレイのみ。
ガラスと外板, 各部の始末の品質はコンセプト車であろうと完璧である。


メルセデス・ベンツ:その他の出展モデル


 セミボンネットバンが大半を占める欧州小型トラック市場で「キャンター」は積載性や小回りの良さからメルセデス・ベンツの戦略車に成長し、IAAには毎回種々の荷台架装車を出展している。三菱ふそうが開発したフルEV小型トラックは前回のIAAで試作車を出展し、今年のIAAでは量産車としてダイムラートラックアジア(DTA)の一員として、メルセデス・ベンツブースに出展。EV小型トラックの第3世代モデルとして登場させた。

  1. 出力180kw, 380Nmの最大トルク、最大70kWhのリチウムイオンバッテリーで100km走行可能。
  2. キャンターワイドボデーで最大GVWは7.5ton, 積載重量は2〜3ton。
  3. 量産車はポルトガルと川崎工場で生産される、量産時の外形内装は不明。



メルセデス・ベンツトラック旗艦「アクトロス」 アクトロス誕生20年記念モデル


 「スモールルック」と呼ばれ不評であった大型トラックは、20年前1996年に箱型のスタイルとしてフルモデルチェンジされた「アクトロス」が誕生。欧州トラックキャブのベースとなったメルセデス・ベンツ大型トラックの旗艦「アクトロス」は毎回IAAに特別車を出展し拡販にテコ入れしてきた。 今回のIAAには20年記念モデルを出展。記念バッジをつけたのみの地味な展示であった。

  1. 床面がフラットな最上級モデル「メガスペース」キャブをベースに、記念バッジの他、外装グリルはメッキモール, 内装はシートなどを専用モデルとした。
  2. 「1863」最強エンジンの「OM473」625ps搭載、GVW18ton, GCWは40ton,

 各社特徴として下記車種などを出展。


・「6✖2R」2553 大陸投入(英国のみであった)2軸目シングルタイヤ、操舵付リフトアップ

・近距離用軽量化トラクター「4✖2」1846。1枚サイドフレーム, カプラーの薄型化
新規市場開拓車

・南ア向け右ハンドル6✖4トラクター2648

・ロンドン向け「エコニック」8✖4ミキサー3235
右はロンドン市内の安全プロジェクト対応の低床キャブ建機ミキサー、


 最もコンパクトで幅広い使用性を持つ最新世代OM470エンジン(326〜456ps/2,200Nm迄5タイプ)を基にしたパワートレーン展示。12速パワーシフトトランスミッション3, クルーズ&パワートレインコントロール、軽量化アクスルの組合せで最大6%の燃料消費削減に寄与。 研究、開発、生産間のチームワークの結果を示している。



ダイムラー傘下「ゼトラ」 超高床バス「S516 HDH Top Class」

 1951年世界初のスケルトン構造のバスボデーを創り、世界一のボデー品質を持つ「ゼトラ」の超高級バス(IAA特別仕様)。

  • 全長:13.3m, 全高:3.9m, 全幅:2.55m、
  • エンジンOM471, 510ps、
  • 乗客21名, 乗員2名、(本革ラウンジシート)


スカニア[フォルクスワーゲン グループ]:新旗艦モデル「S」シリーズと「R」シリーズを出展

 「スカニア」は2016年8月23日19時(現地時間)、新型(キャブ中心)のフルモデルチェンジを発表。 発表会はパリの荘厳かつ華麗な「グランドパレス」にて内外のディーラーやジャーナリストを集めた(下記写真)。また同時に公式HP上ではカウントダウンをして世界中にライブ配信し、発表した。


 オーナードライバーに人気のある「スカニア」は、今回のIAAではフルモデルチェンジした新設定「S」及び「R」シリーズのトラクターを中心にバスを含め10台を出展。いつも通りの混雑を呈した。フォルクスワーゲングループとして「マン」と併せ「ダイムラー」に追いつき追い越せ姿勢を示した。

1961年、自動車開発で模範となっているSCANIA車両モジュールシステム(部品規格化,共通化)を開発。 1980年には現在の製品のベースとなる車両, 部品全てをモジュール化したR,G,P,Tの各シリーズを発表し、その後1996年フルモデルチェンジ〜2006年マイナーチェンジ 今回はキャブが主役であるが20年ぶりの新世代モジュールでのフルモデルチェンジの発表である。(写真は「S」ハイライン)


 今回のIAAに展示しているフルモデルチェンジ対象車は「S」及び「R」シリーズであり、その他の シリーズは来春より順次発表するとのこと。

 展示車の特徴は

  1. シリーズ:「R」シリーズの格上のクラスとして、「S」シリーズを新たな旗艦シリーズに設定。「ハイライン」と呼称するハイルーフモデルのキャブ高を従来モデルより100mm高く, 床もフラットにした。
  2. エンジン:DC型及びV8・730PSは健在。L6は〜500PS迄チューンアップ。
  3. 燃費:キャブコーナーやバンパー下の形状改善,燃料噴射装置改善等で約5%の燃費改善。
  4. レイアウト:室内拡大(詳細後述), フロントオーバーハング50mm短縮。
  5. 安全性:サイドカーテンエアバッグでロールオーバー時の被害軽減。


旗艦「S」ハイライン4✖2トラクター, ルーフスポイラー&サイドディフレクター付、ハイルーフ/フラットフロア、V8,16L,730ps,フルエアサス, 前軸重8ton+後軸重11.5ton。

「R」ノーマルルーフ4✖2トラクター, ルーフスポイラー&サイドディフレクター付、フロアは「S」より16cm低い, L6,13L,410PS,リアエアサス,前軸重7.5ton+後軸重11.5ton。フロントグリルは部分型共通で「S」は上方延長, 塗装色違い。

ステップ&ドア左「S」,右「R」

  • ドアインナー,アウターパネル部分型共通、
  • ドアトリム,機構共通,
  • ステップ「S」4段,「R」3段

 

 内装の特徴概要は現行踏襲だが、不評であった室内の狭さを若干拡大。

  1. パッケージ&レイアウト:全高「S」4m, 「R」3.88m(フロアトンネル高150mm)「S」室内高 約2.35m, 室内空間拡大 ドライバー席 65mm前方へ,20mm外側へ。
  2. インパネ本体幅約100mm縮小, ステアリングハンドルは下方部フラットタイプ。

上写真は会場に展示の「R」カットキャブ

インパネ本体全シリーズ共通(写真はオプティクルーズコントロール(AMT)2ペダル) 、7インチタッチモニター、

 


センター情報ディスプレイを挟んで左速度,右回転計,計器内にデティールモニター。

操作性向上で若干形状変更の「オプティ クルーズコントロール」、排気等ブレーキ系 スイッチを集中させた。右は駐車ブレーキ。

ルーフコンソール類は全高upに伴い容量拡大、「S」キャブ最上級車は助手席回転機能付。
フォルクスワーゲングループ「アウディ」並みの始末の良さ, 建付品質。


「S」キャブハイラインのウインドウモール始末の良いキャブドア開口部や綺麗なプレスライン。(プレス多工程か?)

ドア前端見切り。風切り音は見切り幅の縮小とシールラバー装着によって低減。 バックパネルのプレスラインと剛性確保。


ワイパーガーニッシュ:最近はメルセデス・ベンツやボルボなどは コスト低減で外だしワイパーだが、グリップと組合せたセミコンシールドワイパー処理。

キセノンヘッドランプ,バンパー下 エアロ処理


フロントコーナーパネルは 分割タイプとなり精巧な板金ヒンジ で開閉。ドア/コーナー両方同時開閉 は3D CAD設計でなければ出来ない。

・ホース,パイプ類の整理, エアサスキャブマウント, トルクチューブ高さ位置は「S」,「R」共通、
・キャブティルトは電動式になった。 (正面右上にリモコンスイッチ、右側写真は外し時)


「S」ハイライントラクターのシャシーエンド処理、最近各社のトラクタートップモデルはシャシー外観品質を向上させている。リアコンビランプはLEDタイプ。


「S」ハイライン6✖2Rトラクター 2軸目操舵輪リフト機構付。

V8,16L,580ps,フロントリーフ,リアエアサス, 前軸重9ton,後軸重7.5ton+11.5ton。


「R」ハイライン6✖2スワップボデー車コンテナツイストロック高さは2段、後々軸操舵輪リフト機構付。

L6,13L,500PS,フルエアサス, 前軸重7.5ton,後軸重11.5ton+7.5ton。 キャブ高さの差はドアハンドルとフェンダー間 の差で異なるのでわかる。


「G」ハイライン ルーフ 4✖2 LNGトラクターOC09, L6 , 9L, 340ps, フルエアサス,LNGタンク左450L, 右380L。後軸重11.5ton。

「P」ロールーフ4✖2ディーゼルハイブリッドトラックL5, 9L, 320ps+130kw, フルエアサス,シリーズハイブリッド, リチウムイオンバッテリー5kWh, 使用可能1.2kWh。


 今回のショーのキーワードの一つ「接続 Connectivity」の一例をスカニアブースでもPR。先述したが、1日数百万台のトラックが欧州域内を走りトラックから発せられる多量のデータ を如何にメーカー/ユーザーが有効に利用していくかが各社の競争力の一つとなってきている。写真は 車両/運行/積荷/天候環境/ドライバー支援等々を瞬時に把握し各種サービス支援, データ集積を図っている。

(オランダ車籍のスカニアトラクター+シュミッツ(独)トレーラーにトルコのドライバーが乗り、 モロッコの積荷を北欧へ運ぶ途中でオーストリアの山中で何らかの不具合起きる、と言うようなことも起きるのが、欧州のトラック輸送の現実である)。



イベコ:代替燃料コンセプトトラック Zを披露

 大型トラクターから小型トラック、バス迄幅広い車種を持つ「イベコ」は北欧勢とドイツ勢に挟まれたやや狭い会場であったが、コンセプトトラックを始め14台を出展、元気の良い「イタリア」を訴求!2016年6月にはスペイン マドリッドでIAA出展した大型トラクター「ストラリスXP」を事前発表していた。


コンセプトトラック「イベコ‘Z’4✖2トラクター」「‘Z’」は代替燃料でCO2=0(ゼロ)を示す。


 「イベコ」は2012年のIAAにコンセプトトラクターを出展し、その後モデルチェンジも予想されたが十数年同じキャブを使い続けている。今回のIAAにはイタリアらしい大胆なコンセプトトラックを出展した。 外観/内装ともラウンディッシュな形状で空気抵抗を削減した未来感を出している。一人乗車であり出入り口ドアは左側のみで自動階段、内装はフラットフロアで右側にはベッドを用意。デジタルモニターとスティックハンドルで自動自律走行を予定し、ドライバー支援/安全運行/接続された情報を駆使し、環境に優しいトラックを目指したコンセプトとなっている。



「’Z‘」=CO2排出量0〜燃費低減へ。


 優しい環境を目指し、「バイオメタン」をLNG化した代替燃料を本格的に使用したトラクター。キャブの背中に1,200L容量の複雑成形の多層断熱/絶縁体のアルミ製タンクをビルトインしている。2,200km走行可能。エンジンは 460ps/2,000Nmを発揮する自社の「カーソルⅡ」LNGを搭載、さらにエンジン燃焼を効果的にして摩擦損失を低減させ、燃料消費を低減させる低粘度油「ペトロナスウラニア」を使う。



大型トラクター「新ストラリスXP—TCO2チャンピオン」

 一新したパワートレーン(シャシー, エンジン,駆動系等)を採用し、「燃費の削減、総所有コスト (TCO)、CO2排出量削減」で信頼性と効率性向上を訴求した長距離用トラクター出展。燃料節約11%, 運転支援, 車両/運行管理サービスでTCO向上3%=稼働全体で5.6%の効率化。

 エンジンは先代のHI-CRUISEをチューニング、エンジン・カーソルⅡ L6, 11L, 480ps/ 2,300Nm, ZFハイトロニクス12段AMT, 4✖2, 前軸リーフサス, 後軸エアサス, GVW19ton, GCW44ton。

外観骨格は15年以上前のもの、 内装は現行踏襲、 フロアは200mmのトンネル高さ、インパネは2014年マイナーチェンジ。



「新ドライブライン(4✖2トラクター シャシー周り)」

 新ストラリスXP発表に合わせて、一新したシャシー周りを展示した。

  • 一枚サイドフレーム,モジュール化し各種ブラケット類を削減し軽量化。11%燃費低減に寄与。
  • エンジンは「カーソル系3シリーズエンジン搭載」展示はカーソルⅡ460ps搭載。
  • ZFハイトロニクス12段AMT、前軸リーフサス、後軸エアサス、後軸エアサス装置45kg軽量化。



大型トラクター「新ストラリス NP」—4✖2LNGトラクター

 先述の「XP」の長距離用LNG車タイプ、3%のTCO効率化
エンジン‥カーソル9LNG用, L6, 8.7L, 400ps/1,700Nm, ZF12段ATM、
前軸リーフサス, 後軸エアサス, GVW19ton, GCW44ton。


イベコ 中小型トラック中型「ユーロカーゴ」

小型「デイリー」


 イベコ中小型トラックはメルセデス・ベンツ中小型「アテーゴ」や「スプリンター」と並ぶ欧州ではベストセラー トラックとなっている。トラックバン等車種やボデー形態が豊富で、その堅牢性でメルセデス・ベンツに比べやや廉価であることから人気となっている。

 

中型トラック「ユーロカーゴ」

 誕生は1992年でキャブは古くドアなどは大型と部分共通、基本的に骨格は変えずフロント周り等を2回大幅変更し、昨年大胆な顔にマイナーチェンジした。

 今回エアサスとCNGをシリーズに加え出展。


ディーゼル バン型車
GVW 16ton, L6, 7L, 280ps, /1,000Nm,ディーゼル, ZF12段ATM, フルエアサス、

CNG キャブ付きシャシー車
GVW 12ton, L6, 5.9L, 204ps/750Nm,CNG, 480L, アリソンAMT, リーフサス、
右がCNG車



小型トラック「ニューデイリー」

 1978年フィアットデイリーから6代目の最新のモデルチェンジを2014年に実施し、同年の IAAに出展。歴史ある小型トラックでありバンからトラックまで幅広い車種を揃え信頼が厚い。今回のIAAにはユーロ6適応のエンジン、ZFのオートマッチックトランスミッションの搭載し、エンジンの静粛化、12%の軽量化を施した新シリーズのバン/トラックを出展した。

 写真は軽量,大容積のアルミバンボデー搭載車。


GVW 7.2ton, L4, 3L, 180ps/430Nm, ZF8段ハイマチックAMT, 前軸トーションバーサス,後軸エアサス、

特車「アストラHD9」重ダンプ
イベコ傘下の特車メーカー GVW50ton, 8✖4, エンジン カーソル13, L6, 12L, 500ps/2,300Nm, ZF16段AMT。

「新ストラリスXPレーストラック」
フェラーリチーム, パリダカチーム, シュワップ レーシングチームの3チームのパートナーシッ プ協賛車、開発は社内。

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キーワード
IAA、ハノーバー、トラック、バス、ダイムラー、ベンツ、メルセデス、イベコ、マン

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