欧州市場:2035年に新車のCO2排出量100%削減へ
2022年上期の販売は13.7%減の560万台、EV比率は11.6%、バッテリー生産を増強
2022/09/09
- 要約
- EU、2035年までに新車のCO2排出量100%削減へ 2026年に見直し
- 各国政府の電動車購入支援策 PHV向けは打ち切りの動きも
- 各国政府・自動車メーカー各社はEV用バッテリーの生産能力を整備
- 2022年1-6月のEV販売は前年同期比32%増の65万台
- 乗用車販売台数:2022年1-6月はサプライチェーン分断により13.7%減
- 乗用車生産台数:2022年1-6月は半導体とワイヤーハーネス不足で13.6%減
- LMC Automotive販売予測:西欧のライトビークル販売台数は2025年に1,590万台となる見込み
要約
欧州市場は環境規制の厳格化、半導体供給不足、ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの分断と原材料・エネルギーの価格高騰など、多くの課題に直面している。
欧州連合(EU)の閣僚理事会は2022年6月、欧州委員会が提案した気候変動対策パッケージ「Fit for 55」の主要項目に合意。乗用車のCO2排出量については2030年までに2021年比55%削減、2035年までに100%削減する提案に合意した。ただし2026年に欧州委員会が技術の発展を考慮して必要な見直しを行うことを確認した。欧州自動車工業会(ACEA)は2035年の目標値を現時点で設定するのは時期尚早とし、削減目標を達成するには代替燃料インフラ規則案が設定する公共充電ポイントの数が不十分だとしている。
各国政府は電動車普及のために様々な購入支援策を実施してきた。しかし最近では、ドイツのようにプラグインハイブリッド車(PHV)に対する補助金を終了する動きも出ている。英国は電気自動車(EV)やPHVへの購入補助金を2022年6月で終了し、今後は資金を公共充電インフラの拡大に充当する。一方、各自動車メーカーは電動化計画を加速させている。
電動車の重要部品であるバッテリーについては、各国政府や自治体がバッテリーメーカーに資金助成を行い、生産拠点の整備を進めている。また、各自動車メーカーはバッテリーの自社開発・生産やバッテリーメーカーとの提携により、必要な量のバッテリーの確保を図っている。
欧州における電動車の販売(EV、PHV、HV)は2022年1-6月にEVが前年同期比31.6%増の64.7万台、PHVが12.0%減の47.3万台、HVが2.2%増の132.4万台。販売台数に占める割合はEVが11.6%、PHVが8.4%、HVが23.6%となり、EVは2021年より4%ポイント拡大した。各自動車メーカーはCO2排出規制目標を達成するため、2022年にも多様なEVやPHVモデルを投入する。
欧州30カ国の2021年の乗用車販売は前年比1.5%減の1,177万台、2022年1-6月は前年同期比13.7%減の560万台となった。半導体不足とサプライチェーンの問題により生産台数が抑制され、販売も減少傾向が続いた。2022年下期には半導体の供給状況は改善する見込みだが、ウクライナ侵攻や新型コロナウイルス対策が及ぼす影響については不透明である。
欧州17カ国の2021年の乗用車生産は前年比4.9%減の1,119万台、2022年1-6月は前年同期比13.6%減の547万台。ロシアのウクライナ侵攻によりウクライナからのワイヤーハーネスの供給が途絶え、半導体の供給不足も続いて生産が減少した。2022年下期にはサプライチェーンは改善するが、ウクライナの戦争とロシアからの不安定なエネルギー供給の影響が懸念される。
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電動車の販売台数(2022年1-6月) (出典:ACEA資料よりMarkLines作成) |
Mercedes-Benzの新型フルサイズ電気SUV EQS SUV (出典:Mercedes-Benz Group) |
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