Mercedes-Benz OM654ディーゼルエンジン

Daimlerモジュラーエンジン更新計画の2L直列4気筒エンジン

2018/01/19

要約

 VWの排ガス不正逃れが発覚して以来、ディーゼルエンジンには逆風が吹いているが、それに対してDaimlerはこれからも自信をもってディーゼルエンジンを作り続けるというメッセージを込めて、新しいモジュラー設計のエンジン計画を発表している。ここではそのモジュラーエンジンの第1弾である2L直列4気筒エンジンについて紹介する。

Daimler新モジュラーエンジンの概要

 Daimlerは新世代のICE(内燃機関)として一連の新エンジン開発を進めている。ラインナップは2L直列4気筒ガソリン&ディーゼル、3L直列6気筒ガソリン&ディーゼル、4L V型8気筒ガソリンの5機種となる。

 モジュラー化の利点としては部品の共用化や組み立てラインの共通化が注目されがちであるが、開発の省力化も大きな狙いの1つである。ボア径とストローク長を1種類にすることで燃焼解析、排気、燃費素質など手間のかかる開発が一度で済む。このため5機種のエンジンを短期間のうちに市場投入できたのである。
 一般に、出力と燃費のバランスを考えると、気筒あたりの排気量はガソリンエンジンで400~500㏄、ディーゼルエンジンで500~600㏄といわれている。Daimlerはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの部品共用化、組み立てラインの共通化までを狙って、両エンジンの気筒あたりの排気量を500㏄に統合化したと考えられる。

 新モジュラーエンジンでは最量産される主力エンジンの排気量が従来の3Lから2Lへとダウンサイズ化しているのが特徴である。もう1つは6気筒エンジンがV型から直列に戻されたことである。これには2つの理由がある。1つには、従来の直列6気筒エンジンは全長が長く、衝突安全対策のため、やむを得ずV型を採用したこと。現在では熱効率向上のために小ボア径化し、ライナーレスのアルミシリンダーブロックを採用するなどしてボアピッチを詰めて全長を短縮できるので直列6気筒でも問題がなくなった。もう1つはV型6気筒よりも直列6気筒の方がモジュラー設計しやすいこと。直列6気筒は直列4気筒に2気筒を加えるだけで済み、補機配置も共通化できるのに対してV型6気筒ではシリンダーヘッドが二つになるなど部品点数が増えるし、全長が短く幅広になるがゆえに補機配置のスペースが限られ、レイアウトも複雑になる。

エンジン外観
エンジン外観 (Daimler資料)
新型2L直列4気筒ディーゼルエンジン

 

OM654エンジンの概要

 2016年春にMercedes-Benz E220dに搭載され、発表・発売された直列4気筒 排気量2Lのディーゼルエンジン。従来型OM651エンジン(排気量2.2L)の後継で、新モジュラーエンジンの第1弾として開発された。車載は横置きFF、縦置きFR、4WDに対応している。排気量を約10%縮小し、シリンダーブロックにアルミ合金を使用するなどでパッケージ寸法の小型化、エンジンの軽量化(約35kg)を実現している。燃費(CO2排出量)は102~112g/km、排気の後処理システムは現行EU6規制に適合している。またエンジンフロント側、上部を近接遮蔽板で覆い、エンジンからの放射音を抑えている。

 新型2Lエンジンの開発は、最大90kW/Lまで拡張できる高い動力性能のポテンシャル、2017年に導入される新試験モードであるWLTC(Worldwide harmonized Light duty Test Cycle)や実走行時の排ガス測定を実施するRDE(Real Driving Emissions)への対応、燃費向上のための小型・軽量化を図るのが狙い。

エンジン外観
エンジン外観 (Daimler資料)
立方体のようにコンパクトにレイアウトされたOM654エンジン

 

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