TRW Automotive Holdings Corporation 2014年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2014年
12月期
2013年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 17,539 17,435 0.6 -アクティブセーフティおよびパッシブセーフティ製品の需要増、主要市場における生産台数の増加が寄与。北米ブレーキ部品/モジュール事業の売却による影響を補った。
営業利益 501 1,227 (59.2) -売上の増加があったものの、英国・米国・カナダにおける年金調停関連費用、リストラ費用、その他事業費用の増加が影響。
部門別売上高
シャシーシステム 11,354 11,492 (1.2) -北米ブレーキ部品/モジュール事業の売却、為替差損が影響。一部、販売増が売上高減少分を相殺。
乗員安全システム 3,357 3,314 1.3 -一部、製品価格の下方修正があったものの、販売量の増加および為替差益が寄与。
電子部品 937 721 30.0 -販売量の増加および為替差益が売上高を押し上げた。
自動車部品 1,891 1,908 (0.9) -販売量の減少および為替差損が影響。



ZFによる同社買収

-2015年5月、ZF Friedrichshafen AGの同社買収が完了。同社は、新たに設置される「アクティブ&パッシブセーフティテクノロジー (Active & Passive Safety Technology)」部門としてZFに統合される予定。統合される会社は「ZF Friedrichshafen AG」として事業を展開する。買収完了により、3~5年間におよぶとみられる同社統合に向けたプロセスが開始される。新たな会社は売上高300億ユーロ、従業員数13万名を超え、自動車部品サプライヤーの世界トップ3の1つとなる。買収完了に伴い、TRWの株式は5月15日の取引開始前に、ニューヨーク証券取引所における売買が停止され上場廃止となる予定。(2015年5月15日付プレスリリースより)

事業再編

エンジンバルブ事業をFederal-Mogulに売却
-2015年2月6日、Federal-Mogulにエンジンバルブを扱う全ての完全子会社の売却を完了。売却金額は385百万ドル。今回売却されたエンジンバルブ事業は乗用車、大型車、産業用および船舶用大径エンジン向けにエンジンバルブを扱い、年間売上高は610百万ドル。従業員は5,400名で12カ国において事業を展開してきた。今後、TRWは安全製品に注力し、引き続きアクティブおよびパッシブセーフティシステムの開発・生産拡大に向けた投資を行っていく意向。

受注

-拡張性に優れたモジュール式のコラム式電動パワーステアリング (EPS) の供給を、VolkswagenグループとFiat-Chryslerグループの主要プラットホーム向けに開始したと発表した。これらの合計生産量は年間100万ユニット以上を見込む。今回採用される車種は、VolkswagenグループがVolkswagen 「Polo」、「up!」、「e-up!」、Audi 「S1」、Skoda 「Rapid」、「Spaceback」、「Fabia」、「Citigo」で、Fiatが「500L」と、中国の広汽Fiat 「Viaggio」の合計10車種となる。(2014年11月5日付日刊自動車新聞より)

-Daimler Trucks North America (DTNA) のラインナップ向けにステアリングシステムを納入する単独サプライヤーとして、7年間の長期供給契約を締結したと発表。これにより同社は、DTNAのブランドであるFreightliner、Western Star、Thomas Built Bus、Freightliner Custom Chassisのモデル向けに、ステアリング用のギア、ピットマンアーム、リンケージ、コラム、ポンプを納入することになる。(2014年9月23日付プレスリリースより)

-2015年より長城汽車の最新中型SUV向けにベルトドライブ式EPSを供給すると発表。同社はコスト低減を図るため、アジア太平洋地区に生産拠点を設立している。上海の安亭工場ではこの2年ほどで年産800,000個の生産、組立て設備を完備した。ベルトドライブ式EPSは、従来の油圧パワーステアリングに比べ、100kmあたり0.3リットルから0.4リットルの燃費向上、1kmあたり7グラムから8グラムの排出ガス削減を実現するという。(2014年4月22日付け各種リリースより)

-Citroenの小型クロスオーバー車「C4 Cactus」向けに新型のルーフ・エアバッグの供給を開始したと発表した。乗員に向かってバッグが開く通常の前席エアバッグと異なり、天井トリムに設置したユニットからフロントガラスに沿ってバッグが開く。これにより、前席に座る様々な体格の乗員に対応する。また、従来型はインストルメントパネルに組み込む際に専用設計を必要としていたが、ユニットを天井に配置することで設計の共用化を実現して効率化を図った。(2014年4月9日付日刊自動車新聞より)

-GM 「Cadillac CTS」の2014年モデル向けに、第2世代のアクティブコントロールリトラクターシステム「ACR2」の生産を開始。北米でこの「ACR2」を生産するのは初めてとなる。このシステムは、ブレーキと安定制御コントロールセンサーからの情報を利用して、事故の前に危険を検知する。危機的状況が検知されると、シートベルトの緩みを引き込むことで、衝突に備えて乗員の姿勢を正すとともに、ドライバーへ事故の可能性を警告することができるという。(2014年3月20日付プレスリリースより)

-日産自動車の日本および欧州向け「X-Trail」、ホンダの日本向け「Vezel」に電子制御付き電動パーキングブレーキ (EPB) の供給を始めたことを明らかにした。X-TrailにはEPBに加え、衝突被害軽減ブレーキ用のシングルカメラ式センサーが採用された。イスラエルのモービルアイ社の技術を活用したもので、コストと障害物検知性能のバランスに優れるのが特徴。衝突被害軽減ブレーキ搭載ニーズの高まりを受けて、引き合いが増えている。(2014年3月12日付日刊自動車新聞より)

-前方監視カメラ「S-Cam」がChryslerの「Jeep Cherokee」2014年モデルに採用されたと発表。車線維持支援、ハイビームヘッドライト制御、衝突軽減ブレーキを補助する機能を提供した。同社の前方監視カメラは車線逸脱警報、前方衝突警告、ヘッドライト制御、道路交通標識検知、歩行者検知などの安全機能を備えている。シャシーシステムと統合することにより、電動ステアリングと組み合わせた車線維持、レーダーと横滑り防止装置を組み合わせた自動緊急ブレーキ機能などのドライバー支援を提供することができる。(2014年2月15日付日刊自動車新聞より)

受賞

-Rane Groupとの合弁会社Rane TRW Steering SystemsがRenault Nissanより「Component Exports」賞を受賞。(2014年6月3日付プレスリリースより)

-欧州の生産2拠点がVolvoより「Volvo Cars Quality Through Excellence (VQE) Award」を受賞。1拠点目のTRW Automotive (Slovakia) はスロバキアNove Mestoに位置し、EPSモーターおよびベルトドライブ式ステアリングシステムを生産している。もう1拠点のTRW Automotive GmbHは、ドイツGelsenkirchenに位置し、電動油圧パワーステアリングシステムと油圧式ラックアンドピニオンステアリングギアの生産を行っている。(2014年2月13日付プレスリリースより)

2015年12月期の見通し

-同社は2015年12月期の売上高目標を、166-169億ドルと計画。

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2014年12月期 2013年12月期 2012年12月期
エンジニアリング、研究開発費用 (同社負担分) 957 905 834

研究開発拠点数

(2014年12月31日現在)
  北米 欧州 アジア太平洋 その他 合計
シャシーシステム 3 4 4 1 12
乗員安全システム 2 2 - - 4
電子部品 2 - - - 2


-上海市嘉定区安亭に、同社最大となるテクニカルセンターを開設したと発表。ブレーキやステアリング関連など主力事業の研究開発や試験部門で構成し、1200人以上のスタッフを配置する予定。自動車市場の拡大が予測される中国市場において開発体制を強化することで、受注拡大に結びつける狙いだ。同施設は敷地面積が6万6千平方メートルで、同社最大の開発施設となる。ブレーキやステアリング、サスペンション、乗員安全システム、セーフティーエレクトロニクスなど20以上のテストラボで構成し、すべての主要事業を網羅する施設とした。さらに研究開発部門に加えて、エンジニアリングデザインやアプリケーション、試験、検証などの部門も設けるほか、技術サービスや営業部門も設置。充実した顧客サポート体制を構築することで、新規受注につなげていく。(2014年6月17日付日刊自動車新聞より)

製品開発

後部座席用エアバッグ
-ドイツのKarlsruheで開催されたエアバッグに関する国際会議「Airbag 2014」において、以下の技術を含む後部座席用のエアバッグ技術を発表。2017年後半に生産を開始するとしている。

  • ルーフ搭載型の後部座席用エアバッグ:フロントシート向けのルーフエアバッグシステムを後部座席に適用する。リトラクタープリテンショナーとロードリミッターが付いたシートベルトと組み合わせることで、後部座席の乗員の頭部がフロントシートへ接触する危険を軽減するもの。
  • フロントシート搭載型の後部座席用エアバッグ:フロントシートの後部座席側にエアバッグを搭載し、後部座席の乗員を保護する。エアバッグは独特の形をしており、後部座席の乗員とフロントシートの距離に合わせて展開する。

着火式インフレーター
-軽量・小型化を実現した新型の着火式インフレ-ター「SPI2 EVO」を発表。欧州や中国で販売される超小型車から中型車に搭載される同社の小型ルーフレール用エアバッグ向けとなる。このインフレーターは、既存の製品に比べて直径を約5mm小さく、長さを約50mm短くし、約35%の軽量化を実現している。2015年はじめにドイツのLaage拠点、中国・陝西省の西安 (Xi'an) 拠点、米国・アリゾナ州のMesa拠点でこのインフレーターの生産を開始する予定。同社はすでに自動車メーカー5社から「SPI2 EVO」を6件受注している。(2014年12月3日付プレスリリースより)

自動運転支援向け次世代カメラ
-自動運転支援向けの次世代カメラシリーズ「S-Cam (エスキャム) 4」を発表。従来品に比べて対象物の検知距離を2倍に広げたほか、縦横の制御と対象物を認識する二つのアルゴリズムを統合するなど性能を高めた。サイズも世界最小レベルを実現。2018年に市場投入を予定する。エスキャム4シリーズは、歩行者や自転車横断に対応する自動緊急ブレーキ (AEB) 用に設計した単眼モノカメラと、3種類のレンズを搭載した複眼カメラで構成。これにより360度の検知範囲を実現する。イメージプロセッサー (画像変換処理機能) には、モービルアイ社の「Eye Q4」を使用した。(2014年9月26日付日刊自動車新聞より)

商用車用ステアリング
-ドイツのHanoverで開幕したIAA国際商用車ショーにおいて、2つの商用車用ステアリング技術を公開。

  • 商用車用の油圧パワーステアリングと乗用車用の電動パワーステアリングのベルト駆動システムを組み合わせた「ReAX」で、運転制御性および安定性の向上に貢献する。2018年の搭載に向けて2017年に生産が開始される予定。すでに大手自動車メーカーと共同でこの技術を使った半自動運転機能の研究・開発を進めている。
  • エネルギー効率に優れた油圧パワーステアリングポンプ「ActivMode」。従来のポンプに比べてエネルギー消費量を最大50%削減できるもので、2017年の搭載に向けて2016年に生産が開始されるとみられる。

高速道路運転支援機能
-米国ミシガン州Locke Townshipのテストコースにおいて、顧客および報道関係者向けに半自動運転機能のデモンストレーションを実施。高速道路運転支援機能として、時速40km以上の走行における自動ステアリング、自動ブレーキ、自動加速を体感することができる。今回使用された車両には、同社のAC1000レーダーと次世代カメラのプロトタイプ、ベルトドライブ式EPS「EPS BD」、横滑り防止装置 「EBC 460」を搭載し、アダプティブ・クルーズ・コントロール (ACC) および車線中央走行支援 (LCA) を可能にした。(2014年9月15日付プレスリリースより)

電動パーキングブレーキ
-日本の自動車メーカー3社向けに、同社の最新世代の電動パーキングブレーキ (EPB) の納入を開始。また、近い将来、もう1社向けにも生産を開始する予定。TRWは、これまで世界で2,500万ユニット超のEPBを生産しており、引き続きこの分野をリードしていく意向。(2014年7月28日付プレスリリースより)

シートベルトリトラクター
-次世代シートベルトリトラクター「フローティング・スプール1 (FS1)」を開発。従来品より小型化することで約15%軽量化した。2014年第2四半期から生産を開始し、アジア、欧州、北・南米の自動車メーカーに供給する。同製品は、車両衝突時にベルトを固定するロックポールを省略し、力がベルトにかかることでスプールが作動してリトラクターをロックする構造を採用した。これにより小型化することで軽量化を図るとともにパッケージングの柔軟性を高め、様々な搭載方法に対応した。シンプルな構造とし、価格も抑制した。(2014年6月20日付日刊自動車新聞より)

緊急時ステアリング支援システム
-衝突の危険がある場合にステアリングを操舵して衝突の回避を支援する緊急時ステアリング支援 (ESA) システムを開発し、2018年モデル向けに17年から生産を始めると発表。前方の道路を監視するビデオカメラ、レーダーセンサーからのデータを電動パワーステアリングシステムに接続するインターフェースに統合。ESAが作動するとステアリングトルクを増加させ、衝突を回避できるよう左右に車両を誘導してドライバーを支援する。 (2014年6月7日付日刊自動車新聞より)

ステアリングホイールコンセプト
-Rinspeedのコンセプトカー「XchangE」に、同社が開発した新たなステアリングホイールのコンセプトが採用されたと発表。ハンズオン/オフセンサーとホイール位置調整機能により、ドライバーは自身が運転するか、ハンドルを移動させ助手席の人が運転するか、自動モードでの走行にするかを選択できるという。このコンセプトカーにおいてTRWは、ギアシフトをステアリングホイールに統合したことで、センターコンソールを不要とした。(2014年3月4日付プレスリリースより)

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2014年12月期 2013年12月期 2012年12月期
シャシーシステム 418 461 364
乗員安全システム 118 112 104
電子部品 70 80 61
自動車部品 76 77 86
コーポレート 12 5 8
合計 694 735 623


-2015年12月期の設備投資額は、650百万ドル-690百万ドルと計画。

海外投資

<メキシコ>
-2014年、CIFUNSAとの合弁会社Evercast, S.A. de C.V.に17百万ドルを出資。長期供給契約に基づき、新会社はTRWの北米拠点にブレーキ部品を供給することになる。

<中国>
-子会社「上海天合汽車安全系統有限公司 [Shanghai TRW Automotive Safety Systems Co., Ltd.]」はOEM向け生産能力増強のため、95.2百万元を投じ上海市嘉定区安亭鎮 (Anting Town, Jiading District, Shanghai) に位置する上海楽浦発展公司 [Shanghai Yuepu Development Co., Ltd.] の工場を賃借すると発表。敷地面積は13,197平方メートル、延べ床面積は11,408平方メートル。年間20万個の各種ステアリングホイールを生産する計画。工場完成後は新たに約400名の人員を雇用する。(2014年10月17日付け各種リリースより)

-TRWの子会社「天合東方 (西安) 安全気嚢気体発生器有限公司 [TRW Dong Fang (Xi'an) Safety Airbag Inflator Co., Ltd.]」は、100百万元を投じ設備を増設すると発表。同社はSPI2 EVOサイドエアバッグインフレーター技術の導入と生産ライン2本の増設、DI10インフレーター生産ライン1本の増設と関連補助設備の設置を行うとしている。(2014年5月26日付け各種リリースより)

<インド>
-インド合弁会社のRane TRW Steering Systems (RTSSL) が、TRWのエアバッグおよび最新型シートベルトシステムの生産を開始したと発表した。これらの運転席・助手席用エアバッグとシートベルトの生産には、TRWがグローバルで採用している製造規格を適用。最初の年産能力は約32万ユニットで、3~5年内に約81万ユニットまで引き上げる計画。なお、RTSSLは、TRWとRane Groupの折半出資による合弁会社。(2014年4月28日付プレスリリースより)