VWグループ(下):2020-2024年にEV、HV、デジタル化に600億ユーロを投資

Fordとの提携を小型商用車から自動運転技術、電動化にも拡大

2019/12/04

要約

ID. SPACE VIZZION
ID.シリーズ7番目のコンセプトカーID. SPACE VIZZION(出典:VW)

  VWグループが2019年6月に改訂した中期経営戦略「Together 2025+」では、「未来の世代のためのモビリティを創造する」ため、今後、さらにグループの変容を加速化し、戦略目標を体系的に達成するとしている。特に、組織のスリム化、ブランド価値向上のためのラインアップ再編、ソフトウェア商品としての車やサービスの開発等を今後の課題としている。2019年11月には同戦略の業績目標を再確認し、2025年までに特別項目を除くグループの営業利益率を7-8%、自動車部門の投下資本利益率を14%超とすることを目指す。設備投資と研究開発費については、2020年以降はそれぞれ売上高比で6%を目標とする。

  2019年11月に修正された次世代技術への投資計画では、2024年までの5年間でハイブリッド化、電動モビリティ、デジタル化に約600億ユーロ(以前は2023年までに440億ユーロ)を投資する計画。そのうち電動モビリティには330億ユーロ(同300億ユーロ)を投資する。10カ年の電動化計画も見直し、2029年までにEVを75車種(以前は2028年までに70車種)、HVを60車種投入する。EVの累計販売台数は2,600万台(同2,200万台)、HVは600万台の計画。

  EVの生産は、2022年までに欧州・米国・中国の18工場で行う計画で、工場の改修・新設を進めている。VWが開発したEV専用のMEBプラットフォームを使用するEVの生産拠点の中心となるのはドイツのZwickau工場で、約12億ユーロを投資して改修。中国では上汽VWの上海・安亭工場と一汽VWの佛山工場、米国ではChattanooga工場がMEBベースのEVの生産拠点となる。

  自動運転の分野ではAurora Innovationとの提携を解消し、Ford傘下の自動運転関連会社Argo AIに投資した。コネクテッドカーの基盤となるクラウドの開発では、引き続きMicrosoftとの提携を強化するが、自社内にもソフトウェア開発ユニットを設立し、ソフトウェアの内製化を進めている。モビリティサービスでは、VWは欧州でカーシェアリングサービスを拡大、インドでは定額利用サービスを開始した。Audiは欧州ではAudi on Demandブランドでモビリティ事業を展開、中国ではネット配車サービスを実施する。

  VWとFordは提携関係を拡大している。2019年1月に小型商用車の開発・生産で提携したが、同年7月には自動運転技術と電動化計画でも協力することに合意。VWはFordの自動運転子会社に投資し、FordはVWのEV用MEBプラットフォームを使用する。また、同年10月には米国の充電ネットワークでも提携することで合意した。


  なお、VW Groupの2019年1-9月期の販売台数と業績、2019年通年の業績見通し、新型車投入計画、中国市場、米国市場、LMC Automotive生産予測については、先に掲載した「VW グループ(上)」をご覧ください。

 

関連レポート:
VWグループ(上):SUVのラインアップを拡大、中国でNEV攻勢 (2019年11月)
ドイツOEMの電動化戦略:電動車投入タイムライン (2019年10月)
Frankfurt Motor Show 2019:欧州メーカーの展示取材 (2019年10月)
VWグループ (下): 2022年までに欧州・中国・米国の16工場でEVを生産 (2018年11月)
VWグループ (上): 7事業部門に再編、商用車は新会社TRATONに分離 (2018年10月)

 



中期経営戦略「Together 2025+」の業績目標を再確認

  2019年6月、VWグループは2016年6月に発表した中期経営戦略「Together - Strategy 2025」を改訂し、新経営戦略「Together 2025+」を発表した。「未来の世代のためのモビリティを創造する」ため、今後、さらにグループの変容を加速化し、戦略目標を体系的に達成するとしている。新経営戦略はガバナンス、業績、ブランド、ソフトウェア、リーダーシップの5つの活動分野で構成され、組織のスリム化、ブランド価値向上のためのラインアップ再編、ソフトウェア商品としての車やサービスの開発等を今後の課題としている。

  VWグループは2019年11月に新経営戦略「Together 2025+」で掲げた業績目標を再確認した。特別項目を除くグループの営業利益率は、2020年には前年と同水準の6.5-7.5%、2025年には7-8%を目指す。自動車部門の投下資本利益率は、2020年以降は12-14%、2025年からは14%超を目標とする。設備投資と研究開発費については、2020年以降はそれぞれ売上高比で6%を目標とする。2020年の自動車部門のNet cash flowは100億ユーロ以上の黒字、Net liquidityは200億ユーロ超を目指す。

 

VWグループの業績目標と実績(2019年11月18日発表)

2017年実績 2018年実績 2019年目標 2020年目標 2025年目標
営業利益率(特別項目を除く) 7.4% 7.3% 6.5-7.5% 6.5-7.5% 7-8%
投下資本利益率(自動車部門)(特別項目を除く) 14.4% 13.1% 12-14% 12-14%(注3) >14%(注3)
売上高に占める設備投資額の比率(自動車部門) 6.4% 6.6% 6.5-7.0% 6% 6%
売上高に占める研究開発費の比率(自動車部門) 6.7% 6.8% 6.5-7.0% 6% 6%
キャッシュ(自動車部門)
a) Net cash flow (注1)(10億ユーロ) 10.3 5.6 ≧9 ≧10 >10
b) Net liquidity (10億ユーロ)(注2) 22.4 19.4 >15(注3) >20(注3) グループ売上高
の最大10%

資料:VW Group Press Release 2019年11月18日
(注)1. Net cash flow = 「営業キャッシュフロー」-「営業活動に関連する投資キャッシュフロー」。ディーゼル問題およびM&Aの支出を除く。これらに関連する現金支出は、2017年に161億ユーロ、2018年に53億ユーロ。
2. Net liquidity = 現金、現金相当物、有価証券、子会社および合弁会社に対する貸付金、第三者の借入金を財源としない定期預金。
3. 2019年1月1日に導入されたIFRS 16 の「リース負債を財務上の負債として計上する」との規制の影響を含む。

 



電動化計画:2029年までにEVを75車種投入、累計販売計画は2,600万台

EV ID. ROOMZZ
フルサイズSUVのEV ID. ROOMZZ

  VWグループは2019年7月に発表した環境経営方針で、2025年までにVW車の生涯CO2排出量を2015年比で30%削減、2050年までにグループ全体の環境バランスシートをCO2ニュートラルにすることを目標としている。この目標を達成するため、電動化を含む次世代技術の開発計画を加速化している。

  2019年11月に発表した次世代技術への投資計画では、2020-2024年の5年間でハイブリッド化、電動モビリティ、デジタル化に約600億ユーロ(以前は2023年までに440億ユーロ)を投資する。そのうち電動モビリティには330億ユーロ(同300億ユーロ)を投じる計画。10カ年の電動化計画も見直し、2029年までにEVを75車種(以前は2028年までに70車種)、HVを60車種投入する。EVの累計販売台数は2,600万台(同2,200万台)、HVは600万台の計画。2019年9月時点の計画では、2019年通年のEVの販売台数は全体の1%、2020年には50万台で全体の4%とするとし、2025年には300万台で全体の20%とする野心的な目標を掲げている。

  2019年11月現在、VWブランドのEV向けサブブランドであるID.シリーズは7車種の投入を計画している。いずれもVWが開発したEV専用のMEBプラットフォームを使用し、小型車からSUV、フルサイズセダン、マイクロバス、バギー、そしてGran TurismoとSUVを融合した新セグメントの車まで多様な車種を導入する。

  VWブランドはID.シリーズ以外にもe-Golfやe-up!など多くの電動車を投入している。また、VWグループ傘下のAudi、Porsche、Skoda、SEATの各ブランドもそれぞれ電動化計画を展開している。各ブランドの計画の詳細については2019年9月掲載のレポート「ドイツOEMの電動化戦略」をご参照ください。

 

VWグループの電動化計画(2019年11月発表)

2020-2024年の投資計画 ・EV、HV、デジタル化など次世代技術の開発に600億ユーロを投資(同期間の設備投資および研究開発費の合計の約40%(前期は30%))
・600億ユーロのうち330億ユーロはEV、270億ユーロはHVやデジタル化に投資する計画
2020-2029年の投入・販売計画 ・75車種のEV、60車種のHVを投入する。
・2,600万台のEV、600万台のHVを販売する。
・2,600万台のEVのうち、2,000万台はVWのMEBプラットフォームを使用する車種
 残りの600万台の大部分はAudiとPorscheが共同開発する高級車向けPPEプラットフォームを使用する車種

 

EV用プラットフォーム

PPE Audi、Porscheが共同開発する高級車用プラットフォーム。フロントおよびリアアクスルにモーターを搭載。バッテリーサイズ、ホイールベース、トレッド幅等は変更可能。開発は予定より遅れており、2022年春以降にPPEプラットフォームを使用する最初のモデルとしてPorsche MacanのEVが投入される見込み。
MEB VW、Audi、Skoda、SEATが使用する量産車用プラットフォーム。小型車からSUV、大型セダン、バンまで様々な車種に使用可能。ID. BUGGYのような超小型シリーズにも使用できる。バッテリーの容量により、航続距離は330kmから550kmまで設定できる。2019年3月、大幅なコスト削減を目指して、MEBを他社に提供すると発表。その第1号はドイツのEVメーカー e.GO Mobile社となる。
小型版MEB SEATは2019年3月、VWと共にMEBの小型版となる新型プラットフォームを開発すると発表した。SEATを含む様々なブランドの全長約4mの車両向けとなる。このプラットフォームを使用し、エントリー車が2万ユーロを下回る価格のEVを開発する。このプロジェクトにはスペインで300人余のエンジニアが参加する予定。SEATがプラットフォームを開発するのは初めて。

 

VWブランド:投入予定の ID.シリーズ(すべてMEBプラットフォームを使用)

ID.3 2020年中頃に発売予定。バッテリー容量は77kWh、58kWh、45kWhの3種類で、航続距離はWLTPモードで330-550km。100kWの急速充電を使用すれば30分間の充電で290kmの走行が可能。ドイツでの価格は基本モデルで3万ユーロ以下となる見込み。2019年11月からZwickau工場で、2020年秋からはDresden工場でも生産する。
ID.4 2020年末に投入予定。ID. CROZZコンセプトカーをベースとするコンパクトSUV。83kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は483km。パワートレインの合計出力は225kW。
ID. BUZZ 2022年に生産開始予定。Microbusの後継車のEVバージョン。111kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は435km。モーター2基のシステム最高出力は275kW。
ID. ROOMZZ 最初の量産車は2021年に中国に投入予定。フルサイズSUVのEV。82kWhのバッテリーを搭載し、航続距離はWLTPモードで450km。2つのモーターを前後のアクスルに搭載した四輪駆動(電動4MOTION)で、システム最高出力は225kW。IQ.DRIVEシステムを搭載し、自動運転(レベル4)走行が可能。
ID. VIZZION 2022年に欧州に投入予定。フルサイズセダンのEV。111kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は708km。システム最高出力は225kW。自動運転システムとコネクテッド機能を搭載。
ID. BUGGY 2019年8月にコンセプトカーを発表。EVバギー。モジュール設計で、組み合わせ方式のアッパーボディをシャシーから切り離し、カスタマイズが可能。62kWhのバッテリーを搭載し、航続距離はWLTPモードで155マイル(約250km)。
ID. SPACE VIZZION 2019年11月にコンセプトカーを発表、2021年末に欧州、北米、中国で量産車を発売予定。Gran TurismoのエアロダイナミクスとSUVの車内スペースを組み合わせた、まったく新しいセグメントの車。82kWhのバッテリーを搭載、4MOTIONバージョンでは最高出力250kWを発揮し、0-100km/h加速は5.4秒。航続距離はWLTPモードで590km。


EVは欧州・米国・中国の18工場で生産

Chattanooga工場
米国のEV生産拠点 Chattanooga工場(出典:VW)

  VWグループは2022年までに欧州・米国・中国の18工場で電動車を生産する計画で、工場の改修・新設を進めている。MEBプラットフォームを使用するEVの生産拠点の中心となるのはドイツのZwickau工場で、約12億ユーロを投資して改修し、2019年11月には同プラットフォームを使用する最初のモデルID.3の生産を開始した。

  中国では上汽VWの安亭工場と一汽VWの佛山工場でMEBベースのEVを生産するほか、安徽江淮汽車との合弁工場でもEVを生産する。米国ではChattanooga工場に8億ドルを投資して拡張し、MEBベースのEVを生産する。

  電動車の重要部品であるバッテリーについては、VWグループ傘下の部品部門にバッテリーセル部門を設立し、開発・調達・生産・リサイクル等を行う。また、スウェーデンの電池メーカーNorthvoltと16GWhの合弁工場をドイツ・Salzgitterに建設し、2023-24年頃から生産を開始する計画。

  その他の電動車用部品については、欧州・北米向けのMEBベース車用電動ドライブはドイツのKassel工場、中国向けMEB車の電動ドライブはVWトランスミッション天津工場で生産する。2023年以降には両工場合わせて年間最大140万ユニットを生産する計画。

 

EVの生産計画:2022年までに3大陸の18工場で電動車を生産(8工場でMEBベース車を生産)

欧州 ドイツ・Zwickau工場:MEBベースのEVを生産する中心拠点。約12億ユーロを投資してEV専用工場に変換。2019年11月4日にID.3の量産を開始。第2組立ラインは2020年夏に改修し、同年内に稼働を開始する。2021年までにMEBプラットフォームをベースとするVW、Audi、SEATブランドの6モデルを生産する。年産能力は33万台で、欧州最大のEV工場となる。
その他のドイツ工場
Dresden工場:2020年秋にID.3の生産を開始。
Emden工場:2022年までにEV生産ラインを追加。ID.シリーズの電動SUVを生産する計画。
Hannover工場:2022年までにEV生産ラインを追加。
PorscheのStuttgart-Zuffenhausen工場:2019年9月よりブランド初のEV Taycanを生産
PorscheのLeipzig工場:2020年からMacanのEVを生産
AudiのBoellinger Hoefe工場:2020年後半からEVの高性能車 e-tron GTを生産
AudiのIngolstadt工場およびNeckarsulm工場:2020年以降にEVの生産を開始。
チェコ・SkodaのBratislava工場:2019年11月にブランド初のEV CITIGOe iVの生産開始
SkodaのMlada Boleslav工場:2020年にEVを生産開始
中国 上汽VWの上海・安亭(Anting)工場:2019年11月8日に完工。中国の合弁会社、上汽VWの工場。MEBプラットフォームをベースとしたEVの専用工場で年産能力は30万台。コンセプトカーの「ID. CROZZ」をベースとした中国市場向けミッドサイズ電動SUVのパイロット生産を開始した。量産開始は2020年10月の予定。将来はMEBプラットフォームを採用したVWグループの様々なブランドのEV生産を予定している。
一汽VWの佛山(Foshan)工場:VWは2020年までにMEBをベースとするEV生産ラインを追加する予定。EVの年産能力は30万台。
VWと安徽江淮汽車集団のEV合弁工場:安徽省合肥経済技術開発区の2019年4月の発表によると、両社は50.6億元を投資してEV工場を建設する。プレス工場、溶接工場、塗装工場、組立工場、バッテリーパック工場、研究開発センター及び付属の共用施設などを建設する。年産能力はEV10万台。
米国 米国・Chattanooga工場:2022年から北米におけるVWのEV生産拠点とする予定。2019年11月、VWは8億ドルを投資し、Chattanooga工場の拡張工事を開始。車体工場を拡張、EV用バッテリーパック工場を新設し、新たに1,000人を雇用する。同工場はVWのEV専用プラットフォーム MEBを使用してEVを生産する北米初の工場となる。
米国では2020年にMEBプラットフォームをベースとする初のEVを発売する予定。これは、SUVのEVのコンセプトカー ID. CROZZ の量産モデル ID.4となる見込みで、2020年後半に発売する予定。当初はドイツ・Zwickau工場で生産されるが、2022年初めにChattanooga工場に移管される。また、MPVのコンセプトカー ID. BUZZ をベースとしたEVも導入予定。

資料:VW Press Release 2019.9.6/10.28/11.8
(注)このほか複数ブランドを生産する工場での計画は2019年末までに決定する計画。

 

電動車用バッテリーをスウェーデンの電池メーカーと合弁生産へ

バッテリーセルの需要 2019年6月時点での計画によると、2025年以降の欧州単独で必要となる電池セルの年間需要は150GWhを超えており、アジアでも同規模の需要が見込まれるという。
バッテリーセル部門を設立 VWグループは傘下のVolkswagen Group Componentsにバッテリーセル部門を設立し、グループの各ブランドの電動化モデルに搭載するためにサプライヤーと協力していく。航続距離延長のための電池容量拡大から、使用するレアメタルの削減、持続可能な生産プロセスの最適化、バッテリーシステムのリサイクルまでを事業範囲とする。
Northvoltと合弁工場を建設へ 2019年6月、スウェーデンの電池メーカー Northvolt との電池関連事業に9億ユーロを投資。一部を Northvolt に直接投資し、同社の株式20%を取得。残りを投資して折半出資の合弁会社を設立し、2020年にドイツ・Salzgitterで16GWhのバッテリーセル工場の建設に着工する。稼働開始は2023-2024年初頭の計画で、中期的に700名の雇用創出が見込まれる。
Salzgitter工場でセルの試作開始 Salzgitter工場にはCenter of Excellenceを設置し、次世代のバッテリーセルを開発する。2019年9月、同工場でバッテリーセルのパイロット生産ラインの稼働を開始。1億ユーロ超を投資し、300名超の専門家が開発・試験・生産技術の導入に従事。
リサイクル工場を建設 バッテリーリサイクルのパイロット工場もSalzgitterに建設中で、2020年の稼働開始を予定。

 

電動車用部品の内製化を強化

新ブランドのVolkswagen Group Componentsを設立 VWは2019年1月1日付で新ブランドのVolkswagen Group Componentsを設立した。これにより、エンジン、ギアボックス、電動ドライブシステム等の部品の内製化を強化する。現在VWグループは世界61カ所に部品工場を持ち、8万人の従業員を擁する。新ブランドでは事業領域を、エンジンと鋳造部品、ギアボックスと電動システム、シャシー、シート、eモビリティの5つの領域に再編した。2023年までにeモビリティ関連部品の生産に総額38億ユーロを投じる計画。
欧州・北米向けEV用部品 ドイツのWolfsburg工場ではMEBプラットフォームとドライブシャフト、Brunswick工場はバッテリーシステム、Salzgitter工場はステーターとローター、Kassel工場はそのステーターとローターを組み込む電動ドライブを生産する。
今後欧州と北米向けMEB車用電動ドライブはKassel工場で生産し、年間最大50万ユニットの生産が計画されている。Kassel工場は、中国市場向けに電動ドライブを生産する中国のVWトランスミッション天津工場とも連携し、2023年以降、両工場合わせて年間最大140万ユニットを生産する。
中国でのNEV用電動ドライブ 中国では、VWトランスミッション天津工場が2019年6月に初の駆動用モーターAPP 290 (VWブランドのe-Bora, e-Lavida, e-GolfおよびAudi Q2L e-tron向け)と初のPHV向けDQ 400e ハイブリッドトランスミッション(Magotan/Tayron GTE, Tiguan L/Passatの PHV向け)の生産を開始した。年産能力はそれぞれ12万台と9万台。2020年からはMEBプラットフォームをベースとするEV向けのAPP 310 駆動用モーターも生産する。


自動運転:Auroraとの提携を解消、Fordと自動運転分野でも提携

  VWグループは、自動運転分野の米国のスタートアップ企業Aurora Innovationと提携していたが、Auroraが他の複数の企業との提携を検討していたため、2019年6月に提携を解消。同年7月、Fordとの提携を自動運転分野にも拡大することとし、Ford傘下の自動運転関連会社Argo AIに投資した。VWは自社の傘下にも自動運転子会社を設立し、SAEレベル4以上の自動運転システムを開発している。

 

VW:自動運転技術のAuroraと提携解消、Ford傘下のArgo AIに投資

Auroraとの提携解消 2019年6月、VWは自動運転車のソフト開発会社であるAurora Innovationとの提携を解消したと発表した。VWは2018年1月にAuroraとの戦略的提携を発表したが、Auroraは独立性を維持したまま、現代自動車など他の複数の企業との提携を検討しており、2019年6月にはFCAと共同で商用車向けの自動運転プラットフォームを開発すると発表していた。
Argo AIに投資 VWは2019年7月、Fordの自動運転の子会社であるArgo AIに26億ドルを投資すると発表。Argo AI は、SAEレベル4相当の自動運転システムを都市部でのライドシェアと物資の配達サービスに適用することに注力している。FordとVW両社はArgo AIに同額を出資、両社合計で株式の過半数を所有する。両社は、それぞれ米国と欧州で販売する自社の車両にArgo AIの自動運転技術を搭載することができる。
自動運転子会社を設立 VWは2019年10月、ドイツのMunichとWolfsburgに本社を置くVolkswagen Autonomy GmbH (VWAT) の設立を発表。VWATはレベル4以上の自動運転の開発センターとして、グループ内でノウハウを蓄積し、自動運転システムの市場導入を実現しようとしている。VWAT初の自動運転システムの用途は、都市部における人と物とのモビリティソリューションとなる見込み。2020年には米国Silicon Valleyに、2021年には中国に子会社を設立する計画。
レベル4の自動運転試験 VWは2019年4月、傘下のVW Group Researchがハンブルグの都市交通状況で自動運転車の試験を実施中だと発表した。ドイツ主要都市の実際の運転環境でVWがレベル4の自動運転試験を行うのは初めて。レーザースキャナー、カメラ、超音波センサー、レーダーを搭載した5台の e-Golf が、ハンブルグ市街の自動運転・コネクテッド運転用のデジタル試験区間3kmを走行する。


Microsoftとのクラウド開発を強化、ソフトウェア開発を内製化

  VWはコネクテッドカーのベースとなるクラウドについてMicrosoftと提携しているが、今後は欧州市場向けだけではなく、米国と中国向けのクラウドも開発する。また、VWは自社内にソフトウェア、コネクティビティ、自動運転、クラウド等のデジタル分野の専門家を集結させた新事業ユニットを設立していたが、2020年初頭から同ユニットを独立事業として運営。ソフトウェアの自社開発比率を10%未満から60%に引き上げるとともに、統一されたソフトウェアアーキテクチャを持つことにより、グループ傘下の全ブランドでソフトウェアコストを削減する計画。

 

VW:Microsoftとクラウド開発を強化、ソフトウェアの自社開発比率を10%未満から60%へ

Microsoftとクラウドサービスの開発を強化 VWとMicrosoftはVWのクラウドサービス「Volkswagen Automotive Cloud」を共同で開発している。これまでは欧州市場向けを中心に開発してきたが、2019年2月、今後は米国と中国にも目を向けるとした。同クラウドの基盤は、これまで通りMicrosoftのクラウド・プラットフォーム「Azure」で構築する。同クラウドは、コネクテッドカー、クラウド・プラットフォーム、デジタル・エコシステム間の接続を最適化する。同クラウドを利用する最初の車となるID.シリーズモデルは2020年に欧州で発売され、その後、中国、米国でも生産・販売を開始する計画。
ソフトウェア開発ユニットを独立事業へ VWは2019年11月、車載ソフトウェアの開発ユニット「Car.Software」を2020年1月1日からから独立事業として運営すると発表した。2025年までにソフトウェア開発の内製比率を現在の10%未満から60%に引き上げる計画。Car.Softwareは、コネクテッドカーとデバイスプラットフォーム、インテリジェントボディとコックピット、自動運転、車両モーションとエネルギー、デジタルビジネスとモビリティサービスの5つの事業領域で、ブランドをまたがるソフトウェアを開発する。2025年までにプロジェクトに70億ユーロ超を投資する。統一されたソフトウェアアーキテクチャを持つことにより、VWグループはすべてのブランドで車両あたりのソフトウェアコストを大幅に削減できるとしている。


VWはWeShareサービスを拡大、AudiはAudi on Demandブランドで複数の事業を実施

  モビリティサービス事業では、VWブランドはe-Golfを使用するカーシェアリングサービスをベルリンで開始、2020年にはハンブルクやチェコのプラハにも展開する。インドでは現地企業と提携し、VW車の定額利用サービスを開始。AudiはAudi on Demandブランドでモビリティ事業を欧州で実施。中国でも現地企業と提携してAudi車の配車サービスを展開。SEATはスペインで企業向けカーシェアリングサービスを実施する。

 

VW、Audi、SEATブランドのモビリティサービス

VWブランド
WeShareをベルリンで開始 VWは2019年6月、EVによるカーシェアリングサービス「WeShare」をベルリンで開始。当初は市の中心部など約150平方キロメートルの範囲でサービスを提供し、順次拡大する。まず、e-Golf1,500台でサービスを開始し、2020年初頭には e-up! 500台も追加する。さらに同年中頃に発売予定のID.3もラインナップに加わる見通し。2020年にはSkodaとともにチェコのプラハでサービスを開始し、その後はドイツのハンブルクにも展開する計画。
インドでZoomcarと提携 VWは2019年6月、インド最大のシェアモビリティプラットフォームZoomcarとの提携を発表した。これにより、ZoomcarのZAP Subscribeモデルでユーザーは毎月定額でVW Poloを利用することが可能となる。VWとZoomcarは今後VWの他モデルについても提供予定で、VWはZoomcarに融資、メンテナンス、 修理サービスも提供する。

Audi
Audi on Demandの傘下に複数のモビリティ事業 Audiは2019年5月、欧州でモビリティビジネスを拡大し、「Audi on Demand」をアンブレラブランドとして位置づけると発表した。「Audi on Demand」の傘下に複数のモビリティ事業が入る。同年第4四半期からは欧州の10カ国で約1万台のAudi車が、期間を自由に設定してフレキシブルに予約できる。また、顧客は提携する独大手レンタカー会社SIXTのプレミアムモデルに、新しく開発したアプリおよび将来は「Audi on Demand」のウェブを通じてアクセスでき、1時間から1年間までフレキシブルに予約できる。
中国でネット配車サービス 一汽VW Audiは2019年2月、ネット配車サービスプラットフォームの首汽約車(Shouqi Limousine & Chauffeur)と再提携し、四川省成都でAudi車の配車サービスを開始したと発表した。北京、三亜、西安に次ぐ、Audiモビリティサービスの更なる拡大となり、今回は中型セダンの「A6L」を導入。今後は、更に多くの都市で展開し、中国のハイエンドモビリティのニーズを満たす計画。

SEAT
企業向けカーシェアリングサービスを開始 SEATは2019年7月、傘下のRespiroが企業向けカーシェアリングサービスを実施すると発表。マドリードとバルセロナで運営を開始する。企業向けサービスに導入される車両は全てCNG車となる。


Fordとの提携:小型商用車から自動運転、EV、充電ネットワークに拡大

  VWとFordは2019年1月に広範囲にわたる提携で合意し、まず小型商用車の開発・生産で正式に合意した。中型ピックアップと大型商用バンはFordが、小型シティーバンはVWが開発・生産を担当する。同年7月には、自動運転技術と電動化計画でも協力することに合意。VWはFordの自動運転子会社に投資し、FordはVWのEV用MEBプラットフォームを使用する。また、同年10月には米国の充電ネットワークでも提携することで合意した。

 

Fordとの提携を拡大

小型商用車 FordとVWは2019年1月15日、広範囲にわたる提携で正式に合意したと発表した。小型商用車については、Fordが中型ピックアップと大型商用バン、VWが小型シティーバンを担当する。両社の2018年の小型商用車の販売台数を合わせると、約120万台となる。中型ピックアップや商用バンに対するグローバルでの需要は、今後5年間成長を続けると期待されている。
商用バンについては2019年1月に正式に合意。2022年からFordは、欧州向けの両社の大型商用バン(Ford Transitベース)の開発・調達・生産を担当する。VWは、欧州およびその他のグローバル市場向けのシティーバン(VW Transporterベース)の開発・調達・生産を担当する計画。
中型ピックアップトラックについては2019年3月に正式に合意。Fordは欧州・アフリカ・中東・アジア太平洋・南米向けの両社の中型ピックアップ(VW AmarokおよびFord Ranger)の開発・調達・生産を担当し、早ければ2022年に主要市場に投入する。
自動運転技術 2019年7月、両社のグローバル提携を自動運転技術の分野にまで拡大すると発表。VWはFordの自動運転の子会社であるArgo AIに26億ドルを投資する。10億ドルを出資し、16億ドル相当のVWグループの自動運転開発の中核を担うAutonomous Intelligent Driving (AID)をArgo AIに統合。VWとFordはそれぞれがArgo AIの自動運転システム(SDS)を専用の車両に組み込む。Argo AI は引き続き、SAEレベル4相当の自動運転システムを都市部でのライドシェアと物資の配達サービスに適用することに注力していく。
EV 2019年7月に提携をEVの分野にまで拡大すると発表。Fordは、VWが他社にも提供することとしたEV専用MEBプラットフォームを採用する。2023年にはMEBをベースとする1車種目のEVを欧州で発売し、6年間に2車種目も加えて60万台を販売する計画。
充電ネットワーク Fordは2019年10月、VWの子会社であるElectrify Americaと提携し、FordのEV用充電ネットワークにDC急速充電ネットワークが加わると発表した。これにより顧客は、出力150kWの充電器を利用すれば10分で推定47マイル(約75km)分を充電することができる。また、バッテリー容量10%から80%までは45分で充電可能。


------------------
キーワード
VW、Audi、Porsche、SEAT、Ford、江淮汽車、電動化、EV、バッテリー、Northvolt、自動運転、コネクテッドカー、ソフトウェア、Microsoft、モビリティ、配車サービス、カーシェアリング、クラウド、ライドシェア、Zoomcar、Argo AI、首汽約車、EU、ドイツ、中国、米国

<自動車産業ポータル マークラインズ>