NIO(蔚来汽車):中国「新興勢力」のトップランナー

資金調達と技術革新、インターネット思考により新しいユーザーエクスペリエンスを創造

2019/04/02

要約

 中国自動車市場にダブルクレジット政策が登場し、新エネルギー車(NEV)補助金が徐々に削減されるにつれ、かつては「ppt(パワーポイント)造車」と揶揄された多くの中国新興EVメーカーが力を発揮し、製品を市場に投入し始めている。これら新勢力の中で、NIO(蔚来汽車)は群を抜いていると言っていいだろう。量産車がまだ世に出ていない状況の中で米国での上場を果たしたこと、初の量産車が一年で生産1万台を超えたこと、大手IT各社から投資を獲得したこと、独創的アイディアに満ちた新しいサービスと販売方式を打ち出したこと、これらはグローバルな自動車業界と市場で注目を集めた。その一方で、財務状況が芳しくない、生産能力が不足している等の問題がこの勢いのあるスタートアップ企業を悩ませている。MarkLinesは本レポートでNIOの創業期からの沿革を整理し、同社の強みや挑戦について分析する。

 

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企業紹介

概况

 NIOは中国新興EVメーカーの一つで、Smart Premium EVを生産している。ケイマン諸島に本社を登記しており、中国本土では通常香港資本の会社である。但し、生産工場、市場と顧客及び管理メンバーの多くは中国本土から来ているため、多くの人々はNIOを中国本土の自動車メーカーと見なしている。

 NIOという言葉には「Blue Sky Coming」のという意味を含んでいると同社では解釈している。NEVの生産企業として環境保護を追求し、未来の素晴らしい生活を展望するという意味を込めている。

 

創業者及び初期の投資チーム

 NIOの旧社名はNextev Inc.で創業は2014年11月。2017年7月にNIO Inc.へと社名変更した。創業者の李斌(William Li/男性)は1974年生まれで北京大学社会学部卒。NIOの創業以前は易車網(以下、Bitauto)、摩拜単車(以下、Mobike)など多くの企業の創業と投資に関わった。このうちBitautoは2010年にニューヨーク証券取引所に上場を果たしている。また、Mobikeは今日、中国でユーザー数の最も多い自転車シェアリングのブランドの一つである。

 NIOの初期投資チームの中で最も重要な役割を果たしたのは騰訊(Tencent)である。Tencentは2015年6月にNIOに初めて投資を行って以降、複数回にわたり資金を投じている。Tencentは中国では誰もが知るIT大手である。その業務範囲はインスタントメッセージャー、電子ゲーム、金融決済、音楽プラットフォームなど幅広い領域にわたり、しかもこれらの領域ですべて高い市場シェアを占め、百度(Baidu)、阿里巴巴(Alibaba)とともにIT三大企業「BAT」と称されている。

 李斌とTencent以外に、創業初期のNIOにとっての主な投資家は高領資本(Hillhouse Capital)、京東(JD)、順為資本(Shunwei Capital)及び紅杉中国(Sequoia Capital China)などである。

 

米国での上場と会社構成

 2018年9月12日、ケイマン諸島に登記したNIOの本社NIO Inc.はNASDAQに上場(IPO)した。担当したのはモルガンスタンレー、ゴールドマン・サックス、JPモルガンなど世界的な投資銀行8社。当IPOを通じてNIOは約10億米ドルの資金を調達し、発行株価は6.26米ドルとなった。2019年1月現在の時価総額は約69.97億米ドルである。

 このIPOの普通株は議決権の数によりA、B、Cの3クラスに分かれている。クラスA株式は1株1票で一般投資家向け、クラスB株式は1株4票で全てをTencentが保有、クラスC株式は1株8票で全て李斌が保有している。李斌とTencentがNIOの重大な決議に大きな影響力を持っていることになる。

NIOの主な子会社

国·地区 設立時期 社名 業務
ドイツ 2015年5月 NIO GmbH 車両設計本部
米国 2015年11月 NIO USA 米国本部、主に自動運転関連のソフト/ハードウェア及びその他のハイテクモジュールの設計と開発を担う。
英国 2016年2月 NIO Nextev (UK) Limited Formula EとスポーツカーEP9関連事業を担当するとともに、NIO上海に車両エンジニアリング支援サービスを提供。
中国香港 2015年2月 NIO Nextev Limited 初の完全子会社。NIOの英、米、独、中国など多くの子会社のホールディングカンパニー。
2015年12月 XPT Limited EV用システムと部品を開発
2017年1月 NIO Express Limited パワーマネジメント及び関連業務を担当
2017年2月 NIO User Enterprise Limited EV販売と顧客サービスを担当
中国本土 2015年5月 NIO Co., Ltd グローバル本部。研究開発活動などを担当
2016年5月 XPT (Jiangsu) Investment Co., Ltd 中国大陸の投資プラットフォーム
2017年1月 NIO Energy Investment (Hubei) Co., Ltd パワーマネジメント及び関連業務を担当
2017年3月 Shanghai NIO Sales and Services Co., Ltd EV販売と顧客サービスを担当


  その他の子会社、資本参加会社及び持株状況は下図を参照。

上図はマークラインズがNIOの目論見書より作成。



強みと直面するリスク

強み:中国高級EVセグメント市場の先駆者、斬新な充電ソリューションと企業理念

 NIOは中国高級EVセグメント市場のパイオニアである。2015年頃から中国に多くの新興勢力が出現した。これらの企業は基本的にBEVの生産に注力している。新浪(Sina)ニュースの統計によると、2019年初め、新興カーメーカーは50社を超えており、NIOもそのうちの一社である。多くの同業者の中で、NIOは創業当初から自社の製品を高級EVと明確に位置づけた。このセグメント市場における競合は多くない。新興カーメーカーのほとんどはエントリークラスまたはミドルクラス市場のポジショニングのため、中国市場にすでに進出している多くの老舗カーメーカーとの競争に直面している。

 NIOは革新的で総合的な充電ソリューションを構築した。多くの消費者がEVに抱く最大の不安は航続距離と充電難である。大部分のカーメーカーのソリューションはバッテリー容量の拡大と充電網の敷設である。NIOはこの2つの方法のほかに、バッテリー交換ステーション、充電供給車や最適な充電サービスを提供するアプリ「一鍵加電」などのソリューションとサービスを考案し、2018年には京港澳(北京-香港-マカオ)高速道路沿いに充電ステーションを敷設した(詳細は後述)。これらの対応策によりユーザーの充電と走行に対する不安は軽減されている。中国の充電インフラ施設は依然として不完全であることから見ると、よくできたソリューションといえる。

 企業理念はユーザーエクスペリエンスを中心として、独特で総合的なモビリティライフスタイルを提唱することである。創業者の李斌はインターネット業界において数多くの創業で成功した経験を持っており、NIOは様々な方面にインターネット業界の考え方を取り入れている。例えば充電設備は、リモートによる充電予約が可能でNIO House等の施設を通してブランドイメージとオーナーのアイデンティティーを打ち出すことに努力してきた。インターネット時代の前に誕生した多くのカーメーカーに比べ、NIOは経営理念とマーケティング手法の面においてもその独自性を持っている。 

 

リスク:芳しくない財務状況、NEV補助金打ち切り、生産能力不足

 NIOはスタートアップ企業としてその財務状況は決して楽観できない状況だ。2016年は25.69億元の赤字を計上。2017年、この数字は倍になり、損失は50.21億元に増えた。2018年上半期はそれが5億米ドル(約33.26億元)を超えた。2018年第4四半期、純損失は14億米ドル(約96億元)に近づいた。今後の新製品開発、生産能力拡大、インフラ建設、マーケティング等に莫大な資金が必要なこと、また主な競合であるTeslaの財務状況(Teslaは2003年設立、2010年NASDAQ上場、2018年第3四半期に初めて黒字化、それまでは赤字状態が続いた)を参考にすると、NIOは赤字が当分続く可能性が高い。2019年3月5日、2018年第4四半期及び2018年度の決算報告が出ると、1日の下落幅としては上場以来最大となった。米国資本市場に上場を果たしたとはいえ、これは決して良いニュースではない。

 中国政府のNEVに対する補助金は段階的に引き下げられ、打ち切られることになっている。中国政府が長期間にわたり実施してきたNEV補助金政策は中国NEV市場及び関連自動車企業の発展を促した。しかし、NEV市場の今後の健全な発展と競争のために、中国政府はNEVに対する補助金を段階的に引き下げ、最終的には2020年に完全に廃止することを決定した。補助金の打ち切りがNEVの価格上昇を招くのは確実である。NIOの製品位置付けは価格の高い高級車セグメント市場にあり、この変化が消費者の消費意欲にどのような影響をもたらすのか、今は判断するのが難しい。

 NIOは再び生産能力不足に直面する恐れがある。同社は初の量産モデルES8(詳細は後述)の第1ロットを2018年3月(或いは上半期)に納入するとしていたが、生産能力不足などの原因により、納期は何度も延期され、第1ロットの納入は2018年6月にやっと始まった。納期遅れは顧客の不満を招き、後続のES8と第2モデルのES6(詳細は後述)の生産能力が不安視された。NIOは上海嘉定に自前の工場建設を計画したが、2019年3月発表の決算報告では計画は撤回されている。現在はこれまで通り江淮汽車に生産を委託することになっており、今後の生産能力については依然はっきりしない状態である。



江淮(JAC Motors)との提携及び自社工場建設計画

 いかなる自動車企業でも中国市場で生産、販売を行いたいと思う場合、先ず中国発展・改革委員会(発改委)から生産資格を得て、その後に工業・情報化部(工信部)から生産販売許可を得て、さらに「道路機動車生産企業及び製品リスト」への掲載を果たさなければならない。NIOのような歴史の浅い新興カーメーカーが自動車を生産、販売する場合、通常2つの方法がある。

  • 各種ルートを通じて関連する資格と許可を得て、自前の生産工場を建設し、自身で生産/販売を行う。
  • 資格と許可を得ている完成車メーカーと提携し、自社の製品を委託生産してもらい販売する。

 2019年1月現在、NIOはまだ工信部の許可を得ておらず、ES8とES6の2モデルを江淮汽車で委託生産している状態である。

 

江淮汽車との提携

 2016年4月、NIOと江淮は100億元の戦略提携協定書を結んだ。NIOは当初3年間、江淮に1台ごとに生産コストを支払うとともに、工場の営業損失を補填するとした。現在、委託生産専用工場は安徽省合肥にあり、その敷地面積は約66.67万平方メートル、延べ床面積は27万平方メートルである。NIOによると、工場全体の投資規模、技術体系、生産ラインの規格、導入設備、人材確保、マネジメントプロセスなどはNIOが主導し、江淮はNIOが示した規格をもとに、独自の体系を結び付けこれをサポートしている。工場は2017年末に完成し、初の量産モデルES8を生産し、2018年6月に出荷を開始した。この他に、2018年9月に江淮は第2モデルES6も合肥工場で生産を行い、2019年6月に納入を開始すると発表した。

 

当初の自社工場建設計画

 2018年末、米国での上場の際の目論見書の中で、NIOは自社工場建設計画について述べている。もし工信部から許可を得たいなら自社工場は必須条件である。元々の計画では、合肥の委託生産工場に次ぐ第二の工場として、上海嘉定に約533,400平方メートルの土地を確保し自社工場を建設するはずであった。しかし、2019年3月5日発表の2018年第4四半期及び通年の決算報告では、その計画はすでに中止され、江淮への委託生産方式を続けることを明確にしている。

 この計画の中止には多くの要因がある。財務状況が芳しくないこと以外に、Teslaの上海臨港のギガファクトリーが2019年1月に正式着工したことが考えられる。中国政府が公布した「自動車産業投資管理規定」(以下「規定」)最新版では生産能力に対する規制、特に地方の生産能力の規制が強化されている。一方、「規定」は自動車全体の投資プロジェクトの統轄権限を中央から地方へ移管し、EV生産資格審査を再開することとした。新たに建設するEV生産工場すべてに対し、「規定」は厳しい条件を課している。一定の投資規模を満たしていることに加え、同じ省に属するEV工場プロジェクトが計画生産能力に達していることを申請の条件にしている。即ち、Teslaが先行して上海市の生産資格を得た以上、NIOはTesla上海工場の生産能力が「規定」の目標値に達して初めて自社工場の建設が可能になるのである。従来の建設計画を継続するなら、非常に受け身なものに変わるだろう。



「CASE」における製品と提携

在“CASE”方面的产品和合作

NIO Pilot:自動運転アシストシステムで、ES8とES6に搭載される。Mobileye EyeQ4プロセッサーを搭載し、学習機能を備え、遠隔でオンラインアップグレードが可能。この自動運転アシストシステムには12個のウルトラソニックセンサー、4個の360度カメラ、1個のドライバーモニター、5個のミリ波レーダー、トリフォカルカメラ1台が配されており、また、Highway Pilot、Traffic Jam Pilot、Auto Parking Pilot、Automatic Emergency Braking、Lane Departure Warningなどの機能が搭載されている。

NOMI Mate:NIOが世界初の車載AIシステムと称しているもので、車載コンピューティング能力とクラウドコンピューティングプラットフォームをベースに、音声インタラクティブシステムとインテリジェントエモーションエンジンを統合し、全く新しい一つの人と車のインタラクションを作り出したものである。ユーザーはこのシステムを通して音声対話方式によるナビゲーションや充電スポット、バッテリー残量などの情報検索を行うことができる。また状況判断、ドアの自動開閉、センサーによるトランク開閉と雨天のサンルーフ開閉などの機能を備えている。

 

自動運転分野

 NIOの自動運転レベルはレベル2とレベル3の間にあり、現在内部検証を行っており、まだ市場への投入には至っていない。検証が成功すればOTAによる製品アップグレードを行うとしている。

年・月 出来事
2016年4月 自動運転システムの実験を開始
2016年10月 米カリフォルニア州の無人運転実験用ナンバープレート取得
2018年3月 上海市のインテリジェントコネクテッドカーの走行実験用ナンバープレート取得、中国初の資格取得企業となる
2018年4月 北京市の自動運転車両の走行実験用ナンバープレート取得、北京初の資格取得企業となる

 

その他の完成車メーカー、サプライヤーとの提携

年・月 提携先 提携先の主要業務 提携内容
2017年4月 長安汽車 自主ブランド大手OEM 合弁会社設立の意向。研究開発、生産、販売、サービスなど全領域で提携。
2017年5月 Continental Group(ドイツ) ドイツの部品サプライヤー大手 戦略提携枠組み合意書を調印。EV、スマート交通、自動運転などの領域でパートナーシップを締結。
2017年12月 南方和順電動汽車産業サービス有限公司

国有企業の南方電網所属。EVリース、タクシー配車サービス、充電施設の設計、運営、修繕 戦略提携枠組み合意書を調印。モバイルインターネット技術に基づき、相互接続の規格を用いプラットフォームを統合しバッテリー交換施設を共同で建設。
2017年12月 広州汽車 自主ブランド大手OEM

戦略提携とNEV合弁プロジェクト合意書調印。コネクテッドNEVの技術開発、部品生産、運営などの領域で提携し合弁会社を設立。

2018年7月 Bosch Group(ドイツ) ドイツの部品サプライヤー大手 戦略提携合意書を調印。センサー技術、自動運転、モーター制御、スマート交通システムなどの領域で提携。調印式には李克強総理とメルケル独首相が出席。

 

クラウドコンピューティングとビックデータ分析

   2019年2月に東京ビッグサイトで開催された「第10回二次電池展」にて、NIO Inc. のEnergy Storage System Senior Director James Deng 氏による特別講演「Cloud Computing and Big data Analysis for Power battery」が行われた。概要は以下のとおり。

  • NIOは単なるEVメーカーではなく、ユーザーエクスペリエンスや卓越したサービスを提供。
  • ビッグデータを使ったBattery Platformを構築している。
  • NIO Powerによる充電サービスでは、世界で初めてバッテリー交換サービスを提供。ボタンを押すだけで遠隔による充電も可能。

  車載テレマティクスの発展により、斬新なバッテリー分析方法が可能となる。NIOでは、車両(ES8)やバッテリー、そして車載デバイスからの情報などを、サービスセンターに集約し、クラウドコンピューティングプラットフォームを活用してビックデータ分析を行っている。

 


  BLMS(Battery Life Management System)により、バッテリーの電流や電圧などのリアルタイム状況が把握できるとともに、SHO(State Of Health)を推定する。NIOでは、バッテリーパックにIDを付与して検証を行っており、すでに5万km分の走行状況データを蓄積。初期に導入された車両に搭載しているバッテリー状況を把握しており、過充電(温度、電流)の情報も保有している。これにより、ヒューズやコネクターの寿命を予測することが可能である。BAM(Battery Asset Modeling)では、バッテリー寿命などから残存価値を導き出し、どのタイプのバッテリーをどの車両に搭載するかといった分析や、自動車保険への活用などにも役立てることができる。

  追加情報をクラウドに蓄積し解析することで、デバイスの不具合対策、バッテリー交換時期の警告や新たなサービスや製品開発、技術開発の支援など様々な活用方法が想定される。

 



充電ソリューション及び各種サービス:NIO Power、NIO Houseなどインターネットと融合した施設やサービス

 NIOはTeslaと比較されることが多い。Teslaがメインの競争相手であり比較対象となっているが、NIOはしばしば自身の独自性をアピールしている。車両販売による売上が主要な収益源ではあるが、NIOはその他のサービスや製品を通して顧客のために楽しいライフスタイルとエクスペリエンスを創造している。現在、以下の魅力的なサービスを提供している。

 

NIO Power:インターネット技術を活用し、ユーザーに充電ソリューションを提供

京港澳高速沿线的蔚来换电站
北京-香港-マカオ高速道路沿線のNIOバッテリー交換ステーション

 充電に関する問題はEVオーナーにとって悩みの種である。これに対しNIOはNIO Powerサービスを提供し、そのスローガンは「充電は給油より便利」としている。NIO Powerはモバイルインターネットによる充電ソリューションである。広範囲に設置された充電施設網を持ち、NIOクラウド技術を用いてスマホアプリによる充電体験を提供する。NIO Powerが提供する具体的サービスは以下の通り。

専用充電器:決まった駐車スペースを持つユーザー用に設置する。規格は220V 32A(7kW)で、国際規格を採用し、現在中国本土にあるほとんどのNEVに対応可能な充電器。NIOの車両は自動充電が可能で、オーナーはスマホで充電の遠隔操作や予約を行うことができる。

スマホアプリ「一鍵加電」:モバイルインターネットとIoT技術をベースにしたサービス。オーナーはアプリでNIOのサービスマンを呼び出し代わりに充電してもらうことができる。このサービスは世界初となる。

バッテリー交換ステーション:この施設はNIO Powerサービスの中で最大の注目ポイントである。NIOのバッテリー交換ステーションは500件余りの特許を取得。全自動の交換は3分で完了、交換に際して並ぶ必要がないと謳っている。バッテリー交換の際には毎回バッテリーと車両の電気システムをモニタリングし、車両とバッテリーを終始最適な状態に保つ。バッテリー交換ステーション自体はコンパクトな設計で、標準の駐車スペースは3つで、拡張することも可能である。NIOは2020年までに全国で1,100ヵ所以上バッテリー交換ステーションを建設する計画である。最初のステーションは2018年5月に広東省深圳でオープンし、2018年11月までに北京-香港-マカオ高速道路沿線で18ヵ所が建設された。現在は華北-上海間の東部沿海地区にも建設する計画である。

充電供給車:NIOが新たに開発した充電製品。スーパーチャージャーなどの充電器に似たもので、ユーザーのもとに赴いて充電サービスを提供する。10分間の充電で航続距離100kmに達することが可能である。

バッテリーのバージョンアップ:このサービスは目下ES8のユーザーを対象としている。ES6に搭載されるのは容量84kWのバッテリーで、ES8に比べ容量が大きいためである。NIOはES8のバッテリーのバージョンアップを発表しており、一部の古くからのES8オーナーには割引価格を適用するとしている。その具体的な内容は2019年第2四半期に公開する予定。

 

NIO House:ユーザーに交流の機会とスペースを提供

 NIOはNIO Houseを従来型完成車メーカー(Teslaを含む)とは異なる経営理念を体現する重要なイノベーションの一つと見なしている。従来の完成車メーカーのラグジュアリーブランドのショールームに似ており、多くは中国大都市(北京、上海、広州、深圳、成都、西安など)の繁華街に開設している。これまでのショールームと異なる点は、車両を展示するだけでなく、オーナーに会議室やシェアリングスペース(labs)、図書館、カフェ、休憩室、小劇場(forum)などの空間と施設を提供することである。

 NIO Houseの主な役割りは、ブランディングと車両展示のほか、より重要なのはオーナーたちのためにアイデンティティーを構築し、またブランドコミュニティを創造し、オーナー同士がつながり、サークルを構築する機会をもたらすことにある。歴史の浅い新興カーメーカーであるNIOが新興EV製品領域の中で新たな高級車ブランドを確立するのは容易ではない。NIO Houseは大胆でユニークな試みだ。その舵を取る李斌氏はIT業界で多くの成功を収めた過去がある上に主要株主にはTencentがいる。NIO Houseは彼らのインターネット思考を存分に表しているといえる。

Accord Inspire
上海興業太古匯のNIO House 中国のNIO Houseネットワーク
華北地区 北京市 北京東方広場 東城区東長安街1号東方新天地商場
北京中関村 海淀区北四環西路58号理想穀倉大厦
華東地区 上海市 興業太古匯 静安区石門一路180及び286号興業太古匯
上海中心大厦 浦東新区銀城中路501号上海中心
江蘇省南京市 南京新街口 鼓楼区中山路75号南京中心大酒店
江蘇省蘇州市 蘇州中心 蘇州工業園星港街217号
浙江省杭州市 杭州西湖 上城区湖濱路18/19号湖濱銀泰 in77
安徽省合肥市 合肥先進製造基地 宿松路9766号
華南地区 広東省広州市 広州珠江新城 珠江西路5号広州国際金融中心
広東省深圳市 深圳平安金融中心 福田区益田路5033号深圳平安金融中心
広東省東莞市 東莞国貿中心 東城街道鴻福東路1号東莞国貿中心一層
西北地区 陝西省西安市 西安高新中大 雁塔区高新路72号中大国際
西南地区 四川省成都市 成都天府大道 天府大道北段1199銀泰IN99


製品ポジショニングと挑戦

ポジショニングとその考察

 NIOは製品の位置付けを中国大陸市場向けの高級電動SUVとしている。それは以下のような要因から考えられる。

 中国は世界最大の乗用車市場である。中でも高級車のセグメント市場は将来も成長し続ける勢いがある。2022年には年平均成長率(CAGR)は12.4%に達すると見込まれている。また、SUVセグメント市場のシェアも将来数年間顕著に成長し、2022年には台数として1,690万台、年平均成長率は9.4%に達すると見込む。

passenger vehicle sales volume in China by model type

上記グラフはマークラインズがNIOの目論見書より作成。

 中国がすでに世界のNEV市場のリーダーであることは間違いない。同時に電動化の傾向にあることも明らかである。強力な補助金政策と政府の支援を得て、中国のNEV市場の成長速度は世界をリードしている。NIOの目論見書によると、2013年から2017年の中国NEV市場の年平均成長率は141.5%に達した。同時期に世界では16.2%に過ぎない。2022年には中国NEV市場の年成長率は37.1%、台数としては年間360万台に達すると見込まれる。中国EV市場の2013年から2017年の年平均成長率は147.9%。同時期に世界では68.2%だった。2017年の中国NEV市場のうちEVの占める比率は64.1%だったのに対し、世界では27.3%。2022年には中国EV販売の年成長率は40.8%に達する見込みである。

NEV sales volume in China by power type

上記グラフはマークラインズがNIOの目論見書より作成。

global BEV sales volume by region

上記グラフはマークラインズがNIOの目論見書より作成。

 中国の高級EVセグメント市場は巨大な潜在力を秘め、しかも未だ十分に掘り起こされていない。2017年、即ちNIOの最初の量産モデルES8発売の前年までは、中国市場で最も売れたEV10モデル(吉利の3xe400、BJEVのEX260、江淮のiEV6s、BYDの宋EV300、上汽の栄威ERX5等)のうち、TeslaのModel X のみが高級車セグメント市場に属し、その他の9モデルはすべてエントリークラスに属しており、補助金適用後の販売価格は170,000元以下である。これは中国高級EV市場に巨大な潜在力があることを示している。

 

高級EVセグメント市場での戦い

 最初に挙げられるのはNIOの競争相手であるTeslaとの戦いだ。Teslaギガファクトリーが2019年1月に上海臨港で着工された。Model 3 は中国での量産が実現すればその価格は下がり、NIOとの競争が展開されるだろう。Teslaの工場建設はNIOが計画していた自社工場建設に不利な影響をもたらした。

 次はその他の合弁或いは外資ブランドからの攻撃だ。中国のダブルクレジット規定(規定スペックに達したNEVを生産するとプラスクレジット、規定スペック未達の従来型燃料車を生産するとマイナスクレジット。クレジット計算のボーナス/ボーナス率は新エネルギーの種類、EV走行での航続距離或いは排気量などの要素で変わる。中国政府は企業間のプラスクレジット自由取引を認め、いかなるカーメーカーもクレジット合計はプラスとすることを義務付けている)実施により、十分なNEVクレジットを獲得するために、長い間NEVを生産していなかった多くの合弁OEMが今後数年間にNEVモデルを中国市場に導入してくる。その中には高級車セグメント市場に入ってくるものもあり、NIOとの競争を繰り広げるだろう。

 最後に挙げられるのはその他の新興カーメーカーを含む自主ブランドとの戦いである。NIOの第2のモデルES6はES8よりも低い価格設定である。ポジショニングはハイエンドとミドルクラスの間である。多くの新旧自主ブランド製品がこのポジションの競争に加わってくるだろう。



現行モデルの紹介

EP9

EP9
NIO EP9

 EVスポーツカーEP9は第一番目に生産したモデルである。

 当モデルは2017年2月23日に米テキサス州オースティンのCircuit of the Americasで時速275kmを記録し、当時世界最速自動運転車の栄冠を獲得。2017年5月12日、ドイツのNürburgring北コースで過去最高の1周6分45秒を記録した。EP9は中国本土では法的に公道で走行できないが、レースで残した成績は創業期のNIOに良い宣伝効果をもたらした。

 

ES8

ES8
NIO ES8

 ES8は7人乗りの電動SUV。NEDC航続距離は355km(220.6マイル)、価格は448,000元から。

 その他の詳細スペック及び情報は下記のページを参照のこと。

https://www.marklines.com/ja/green_vehicles/model/598

 このモデルはNIOの初の量産モデル。ES8は市販前に先ずTencentの馬化騰(Pony Ma)、京東(JD)の劉強東(Richard Liu)、小米(Xiaomi)の雷軍(Lei Jun)など主な投資家たちに贈られた。2017年12月に一般消費者に向けて予約販売を開始。当初の納入予定は翌年3月であったが、2018年6月に延期された。2019年1月現在、累計販売台数は1万台を超えている。2019年1月と2月の月次納車台数は1,805台と811台だった。

 

ES6

ES6
NIO ES6

 ES6は5人乗り電動SUV。NEDC航続距離は410/430km(254.7/267.2マイル)または480/510km(298.3/316.9マイル)で、販売価格は358,000元から。

 その他の詳細スペック及び情報は下記のページを参照のこと。

https://www.marklines.com/ja/green_vehicles/model/702

  このモデルは2番目の量産モデル。ES8より低価格であり中・高級車という位置づけである。2018年12月に一般消費者向けに予約販売を開始。2019年6月に量産、納車を開始予定である。

 


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キーワード:中国、蔚来、NIO、新エネルギー車、NEV、電動車、BEV、EV、新興メーカー、ES6、ES8

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