【ものづくり】SURTECH 2019 表面技術要素展:自動車部品の表面処理技術

亜鉛めっきブレーキキャリパー、超硬質Alピストン、フィルム成形パネル、樹脂ウィンドウ、高性能吸音材など

2019/02/07

要約

  SURTECH 2019 表面技術要素展(会期:2019年1月30日(水)~2月1日(金)、会場:東京ビッグサイト)は、表面技術協会、日本鍍金材料協同組合、株式会社JTBコミュニケーションデザインの主催。SURTECHとは、めっき、塗装、熱処理、表面硬化などの「ものづくり」の基盤技術である表面処理技術を総称する造語。エンジニアが多く参加する専門展示会として開催され、今年は81社が出展した。

  本稿では、同時開催された新機能性材料展2019、3次元表面加飾技術展2019での出展内容を含め、自動車部品の表面処理技術と高機能性樹脂などを取材した。

入場登録所 会場風景
SURTECH 2019表面技術要素展 入場登録所 SURTECH 2019表面技術要素展 会場風景

 

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次世代亜鉛めっきブレーキキャリパー

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
メルテックス㈱
(東京都中央区)
米国PAVCO代理店
量産:次世代亜鉛めっきブレーキキャリパー
NiClipsen C-NB
高ニッケル合金比率12~16%
塩水噴霧(赤さび)
1,000~3,000時間
ユケン工業㈱
(愛知県刈谷市)
試作:次世代亜鉛めっきブレーキキャリパー
メタス ANK
高ニッケル合金比率12~18%
塩水噴霧(赤さび)
1,200時間以上

 

次世代亜鉛めっき(メルテックス)

  メルテックス社の展示品は表面処理に次世代亜鉛めっきを施したブレーキキャリパーの量産品。めっき薬は米国PAVCO社製。メルテックス社はめっき薬メーカーだが、PAVCO社製品の代理店も兼ねている。

  ブレーキキャリパーは通常、素材は球状黒鉛鋳鉄FCDで製造され、鋳肌に直接、3価亜鉛めっきを8ミクロンのせている。展示品は高ニッケル合金比率12~16%の亜鉛めっきとなっており、耐食性を向上させている。

 

次世代亜鉛めっき(ユケン工業)

  ユケン工業の展示品も次世代亜鉛めっきを施したブレーキキャリパーの試作品。高ニッケル合金比率12~18%の亜鉛めっきとなっており、耐食性を向上させている。

メルテックス
量産:高耐食性ブレーキキャリパー
ユケン工業
試作:高耐食性ブレーキキャリパー
高耐食性ブレーキキャリパ 高耐食性ブレーキキャリパ
次世代亜鉛めっき
高ニッケル合金比率12~16%
展示パネル:次世代亜鉛めっき NiClipsen C-NB
(全世界の自動車メーカーで承認・採用)
次世代亜鉛めっき
高ニッケル合金比率12~18%
展示パネル:次世代亜鉛めっき メタス ANK
(塩水噴霧1200時間合格、赤さび発生なし)


高機能・無電解ニッケルめっき

  ニッケルめっきは耐摩耗性が必要とされる部位に硬質めっきとして使用される。環境問題のあるクロームめっきから置き換わっている事例が多い。老舗めっき薬品メーカー2社から、無電解ニッケルめっきに付加価値を追加した商品の展示があり取材した。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 付加価値技術
日本カニゼン㈱
受託加工工場:群馬県太田市)
アルミ・シリンダーブロック
無電解ニッケルめっき
カニゼン
<特殊形状無電解めっき>
針状めっき:金属樹脂接合用途
ブロッコリー状めっき:無反射用途
ディンプルめっき:フッ素添加低摩擦用途
上村工業㈱
(大阪市中央区)
高硬度無電解ニッケルめっき
ニムデン KHN-2
厚付:ニムデン KFJ-20
PTFE複合:ニムフロン
はんだ接合用:ニムデン KSL

 

高機能・無電解ニッケルめっき(日本カニゼン)

  日本カニゼンは、1955年当時、日本で初めての無電解ニッケルめっき総合メーカーだった。「カニゼンめっき」の名称は、無電解ニッケルめっきの代名詞として、以前は自動車部品の図面にはカニゼンと記載されていたが、その後、めっき液メーカーが増えたため、図面表記も「化学ニッケルめっき」と一般名称に変わっていった。

  日本カニゼン社は2002年より表面処理分野の国内最大手である日本パーカライジングのグループ会社になっている。

量産:アルミ・シリンダーブロック 展示パネル:特殊形状無電解めっき
アルミ・シリンダーブロック 特殊形状無電解メッキ
無電解ニッケルめっき通常品
薬品:カニゼン中りんタイプ
針状めっき:金属樹脂接合用途
ブロッコリー状めっき:無反射用途
ディンプルめっき:フッ素添加低摩擦用途

 

高機能・無電解ニッケルめっき(上村工業)

  上村工業の無電解ニッケルめっきの登録商標はニムデン。種類が多いが、自動車で使用されるのは4種類という。高硬度ニムデン KHN-2、厚付ニムデン KFJ-20、PTFE複合ニムフロン、はんだ接合用ニムデン KSLが使用される。

量産:高硬度・無電解ニッケルめっき ニムデン KHN-2 量産:厚付・無電解ニッケルめっき ニムデン KFJ-20
ニムデン®KHN-2 ニムデン®KFJ-20
用途事例:軸受
膜厚:25μm
硬度:Hv680
用途事例:インジェクター
膜厚:70μm
量産:PTFE複合・無電解ニッケルめっき ニムフロン 量産:はんだ接合用・無電解ニッケルめっき ニムデン KSL
ニムフロン® ニムデン®KSL
用途事例:ピストン
摩擦係数:0.07
用途事例:パワーコントロールユニット


アルミ・超硬質ピストン

  航空機、船舶技術で自動車に展開可能な展示があり取材した。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 工法
倉敷ボーリング機工㈱ 試作:アルミピストン
超硬質表面処理 KURACERA
硬度 Hv600~1900
塩浴法

 

アルミピストン超硬質表面処理(倉敷ボーリング機工)

  倉敷ボーリング機工は航空機、船舶などのビジネスが多く、自動車部品は少ないが、アルミやマグネシウムの超硬質表面処理KURACERAでは自動車産業向けを期待しているという。

  展示はピストンだったが、アルミボルトにも使用できる。軽量化が進むと締結部品のボルトもアルミ化して、さらなる軽量化を図る車種も増えてくる可能性があるが、締結技術の視点では、アルミは柔らかくアルミ同士のネジ部はかじりによってネジが溶着し締結できなくなる問題がある。そのため、アルミのねじ部には硬質の表面処理を施す必要があり、超硬質表面処理KURACERAは有効な技術といえる。

試作:アルミピストン 展示パネル:Al,Mg用超硬質表面処理 KURACERA
アルミピストン

展示パネル
Al,Mg用超硬質表面処理 KURACERA 膜厚10~150μm、硬度Hv600~1900
<硬度比較>硬質クロム Hv800、硬質陽極酸化被膜 Hv400、アルミ素材 Hv100


プラスチック加飾:クロームめっき、フィルム成形

  プラスチックの加飾めっきは外観が良い電気クロームめっきが多い。プラスチックの加飾めっきは金属よりも手間がかかる。最終的に薄い電気クロームめっきを施すが、プラスチックは電気を通電しないので、下地処理として銅めっきと化学ニッケルめっきを施し、通電するようにしてから電気クロームめっきをかける三層構造になっている。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 工法
柿原工業㈱
(広島県福山市)
アウトドアハンドル
フロントグリル
大型射出成形
樹脂クロームめっき
奥野薬品工業㈱
(大阪市中央区)
樹脂めっき薬品
㈱浅野研究所
(愛知県愛知郡東郷町)
ディスプレイカバー インサート成形法(FKS機)
被覆成形法(TFH機)
熱板式圧空成形機(FKH機)
自動車メーターパネル 熱板式圧空成形機(FKH機)

 

樹脂・加飾クロームめっき(柿原工業)

  ABS、ポリカーボネートPC/ABS複合材、衝撃吸収ポリプロピレンPPなどの種々の素材に対応。高級感のあるメタリック調を実現した。柿原工業は大型の射出成形機も保有し、成形からめっきまでの一貫生産に対応している。

量産: アウタードアハンドル クロームめっき新製品 量産:自動車グリル
アウタードアハンドル 自動車グリル
材質:PC/ABS複合樹脂
表面処理:ダーク調3価クロームめっき
工法:射出成形
展示パネル:高級感と深みのあるダーク調3価クロームめっき
大型射出成形~めっきの一貫生産
材質:ABS樹脂
表面処理:クロームめっき
工法:1050トン大型射出成形機

 

樹脂・加飾クロームめっき薬品(奥野薬品工業)

  奥野製薬工業は各種めっき液2700種類を販売するが、最も得意とするのは、プラスチックへの装飾めっき用処理薬品。さまざまな特性ニーズに対応している。

量産: アウタードアハンドル薬品 プラスチックめっき:軽量化材料にさまざまな特性を付与
アウタードアハンドル薬品 展示パネル

展示パネル:プラスチックめっき用装飾電気めっき

 

3D樹脂カバー・フィルム成形機(浅野研究所)

  浅野研究所は1953年創業の熱成形機のパイオニア。世界26カ国に累計5,000台を超える販売実績がある。今後、自動車の軽量化でプラスチックが増えることを見込み、自動車向けの技術開発に注力している。

量産:ディスプレイカバー 量産:自動車メーターパネル
ディスプレイカバー

自動車メーターパネル

<上段:インサート成形法(FKS機)>
 材料:PMMA/PC張合せ材 板厚0.3㎜
 工法:スクリーン印刷 →真空成形(FKS機)→射出成形インサート成形
<下段:被覆成形法(TFH機)>
 材料:PMMA/PC張合せ材 板厚0.175㎜
 工法:スクリーン印刷材+射出成形材 →被覆成形(TFH機)
展示パネル:3D樹脂カバーの3工法
 FKS:圧空真空成形機、FKH:熱板加熱式圧空成形機、TFH:被覆成形
工法:熱板式圧空成形機(FKH機)

圧空・真空成形:プラスチックシートを加熱軟化させた状態で圧縮空気や真空引きで金型内に押し付け成形する工法。
熱板加熱式:接触加熱。プラスチックシートを温調された金型で挟んで加熱する工法。


高機能プラスチック:樹脂ウィンドウ、高性能吸音材

  樹脂フロントウィンドウは傷がつきやすいのが課題で、高価なCVDダイヤモンドコートで対応している。CVDダイヤモンドコート機は小さいものでも1億円はくだらない。フロントウィンドウのような大型の製品を処理できる設備はさらに高価になるため、中小メーカーでは導入が困難。そのため体力のある大手の化学メーカー帝人が先行投資している。

(出展会社概要)

会社名 展示品 材質・工法
帝人㈱ 樹脂フロントウィンドウ 材質:ポリカードネートPC
工法:大型射出成形機+CVDダイヤモンドコート機
高性能吸音材
繊維直径15→9μm
不織布

CVD:Chemical Vapor Deposition 化学蒸着、低真空炉(熱CVD1000℃、プラズマCVD200℃)

量産:樹脂フロントウィンドウ 量産:高性能吸音材
樹脂フロントウインド 高性能吸音材
材質:ポリカードネートPC
工法:大型射出成形機+CVDダイヤモンドコート機
展示パネル:ポリカーボネート製樹脂フロントウィンドウ
繊維直径15→9μm
展示パネル:ハイエンドタイプ吸音材


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キーワード
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