【ものづくり】第1回 名古屋オートモーティブワールド2018
低コストアルミプレス、高耐熱エラストマー、CFRTPアペックスシール、ボールねじ、はんだロボットなど
2018/09/12
要約
第1回名古屋オートモーティブワールド(会期:2018年9月5日(水)~9月7日(金)、会場:ポートメッセなごや)は、リードエグジビションジャパン株式会社主催で開催された。本展示会は毎年、東京有明で1月に開催され11回を数えているが、今回初めて名古屋でも開催され350社の参加となった。自動車会社、部品会社、材料会社の各社が最新技術を披露する場となっており、専門家向けの展示会である。今年も電動化対応商品が数多く展示されたが、本稿では「ものづくり」にスポットを当て、自動車産業の課題に応える、新工法や軽量化手法、実際に自動車で採用されている増産傾向の部品やユニークな設備を紹介する。
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第1回名古屋オートモーティブワールド2018 入場登録所風景 |
第1回名古屋オートモーティブワールド2018 展示会場風景 |
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軽量化:低コストアルミプレス、耐熱エラストマー、バキュームポンプCFRTPアペックスシール
軽量化が加速してきている。最近はアルミニウム業界とプラスチック業界の自動車向け製品の話題が新聞紙面を賑わすことが多い。炭素繊維強化のCFRPは従来、生産性の悪さからアルミニウムの敵ではないと思われていたが、CFRPの生産性改善は目覚ましいものがあり、生産プロセスを含めて様々な提案がされている。単なる軽量化はアルミ材ではなくCFRP材になる可能性がでてきた。そのため、アルミ業界側も、アルミニウムの拡販の目的で、プラスチック業界同様に生産プロセスの提案を行っている。今回はフレックスフォーム®という低コストメタルシート成形のプレス機の展示があった。
<出展会社概要>
会社名 | 展示品 | 材質、工法 |
---|---|---|
(株)神戸製鋼所 | 試作:アルミ・バックシート | フレックスフォーム® 低コストメタルシート成形 |
東洋紡(株) | 量産:排気ダクト | 高耐熱エラストマー(TPE)・ペルプレン® ブロー成形 |
量産:エンジンカバー | 5倍発泡材 高耐熱エラストマー(TPE)・ペルプレン® 熱プレス成形 |
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小高精密(株) (愛知県北名古屋市) |
量産:バキュームポンプ ベーン&アペックスシール |
熱可塑性CFRTP+短繊維 射出成形 |
レース用:2輪サスペンションロッド | 熱硬化性CFRP+長繊維 オートクレープ |
注)CFRP:炭素繊維強化樹脂 CFRTP:炭素繊維強化熱可塑性樹脂
低コストアルミプレス:フレックスフォーム®(神戸製鋼)
アルミニウム大手の神戸製鋼がアルミニウム拡販のために航空機生産で実績のあるアルミ用プレス機フレックスフォーム®の販売を強化するという。このプレス機は昨年神戸製鋼が買収した欧州スウェーデンのQuintus社製。低コストのメタルシート成形で、上型はゴムのダイアフラムで代用し、下型のみで形状を形成する。金型費は大幅に低減され1/2~1/4になる。自動車ボディ、ドア等への適用を想定している。工場内に設置した試作ラインで、まずは試作の注文を受けるという。
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試作:アルミニウム製バックシート | フレックスフォーム® 低コストアルミシートプレス成形 |
型構造 上型はゴム製ダイアフラムを使用する 油圧力は超高圧1400気圧 |
高耐熱エラストマー・ペルプレン®(東洋紡)
東洋紡の熱可塑性エラストマーはポリエステル系。ゴムとエンプラの両方の特性を有する。射出成形、押し出し成形、ブロー成形など様々な形状に加工できる。耐熱性にも優れることが特徴で、排気ダクトで使用されている。また発泡も可能で耐熱性もあることから、圧倒的に軽量なエンジンカバーの展示もあった。
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量産:排気ダクト 高耐熱エラストマー・ペルプレン® |
品揃えは4タイプ 長期耐熱性 Pタイプ 120℃ 屈曲疲労性良好 ENタイプ 130℃ Sタイプ 150℃ Cタイプ 175℃ 耐熱性良好 |
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量産:超軽量エンジンカバー 高耐熱エラストマー5倍発泡 |
最大発泡率5倍、比重0.22 |
ベーン式バキュームポンプ・CFRTPアペックスシール(小高精密)
小高精密は一貫して炭素繊維を基材とする樹脂系複合材料の研究と開発を行っている。あらゆる業界に対応しているが、蓄積されたノウハウと最先端の技術力を活かし、自動車産業への対応を強化しているという。
展示品はバキュームポンプのベーンと先端のアペックスシール。バキュームポンプは当面は増産が見込まれている部品である。ブレーキはエンジンの負圧を利用し軽くブレーキがかかるように構成されているが、可変制御エンジンバルブの流行により、エンジン負圧がブレーキで使用できない傾向になっている。
ベーンと先端のアペックスシールは両方とも射出成形した短繊維強化の熱可塑性CFRTP製だが材質は異なる。とくに先端のアペックスシールはバキュームポンプの心臓部品で、ロータリーエンジンのアペックスシールと同じような役割で、スーパーエンプラ系のCFRTP複合材で構成されている。CFRTPの中でも高機能製品であり、この様な部品に採用されるのは技術の証といえる。
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量産:バキュームポンプ ベーン&アペックスシール 熱可塑性CFRTP+短繊維 射出成形 |
レース用:2輪フォーク 熱硬化CFRP+連続繊維 オートクレープ工法 |
電動化部品:電動ブレーキ向けボールねじのウェットブラスト処理
自動車でボールねじの需要の増加が予測されている。ボールねじの仕上げに有効なウェットブラストの展示があり取材した。
日本では自動ブレーキの義務付けが近々行われる予測になってきた。それに伴い、自動車メーカーでは、その先の自動運転を見据えて信号待ちにも対応できるように、後輪ブレーキは電動パーキングブレーキ(EPB)に変更されるかもしれない。パーキング機構は従来のカム式パーキングからボールねじ式パーキングに変更となる。そのほか、電動バックドアやEVの電動ブレーキブースター等での使用も予測されている。
ウェットブラスト:スケール除去仕上げ(マコー)
マコー社は創業以来「ウェットブラスト」一筋の装置メーカー。ウェットブラストとは 水と研磨材の混合液を圧縮したエアーで、部材の表面に高速で投射し、洗浄とショット加工が同時にできる技術。金属のほかプラスチック、セラミックスなどにも使用できる。一般にショットブラストはドライブラストが主流だが、圧縮エアーだけのため、噴射力が弱く、粒子が細かいと力を発揮できないが、ウェットブラストでは細かい粒子の研磨材(粒径50μm)などを組み合わせることで、より滑らかな表面を実現できる。ボールねじの場合は、ブラストガンを円周に配置することで対応できるという。
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ウェットブラスト処理 ボールねじのスケール除去仕上げ ・表面を粗さずにスケール除去 ・高速処理時間1~2分 ・低コスト(3→1工程に短縮) |
電子基板製造設備:小型はんだロボット、小型電子チップマウンター
電子基板の組み立てで一番多い不良は手付けのはんだ工程であり、どこの会社も認定作業者工程となっている。手付けはんだは不良の出やすい高難度な工程といえる。
電子基板のはんだ付けは基板ごとはんだのディップ層に漬けるか、高価なチップマウンターで自動で作成するかだが、大型の電子チップを搭載する回路では、後付けのための2次作業工程がどうしても必要になっている。自動車で要求される信頼性を満足するには、はんだの手作業では無理がある。ロボットの低価格化小型化により、はんだ不良の撲滅に有効なはんだロボットも入手しやすい価格になっている。数社から展示があり取材した。
<出展会社概要>
会社名 | 展示品 | 特徴 |
---|---|---|
アポロ精工(株) (静岡県御殿場市) |
小型はんだロボット 接触式(熱伝導こて式) 非接触式(レーザー式) |
はんだロボット専業メーカー |
白光(株)(大阪市) | 小型はんだロボットHU200 接触式(熱伝導こて式) |
はんだこてのトップメーカー |
奥原電気(株) (東京都大田区) |
小型はんだロボットMS250 (ベルトコンベア式) 接触式(熱伝導こて式) |
“あったらいいな”を実現する 東京都大田区の会社 |
小型電子チップマウンター 全幅1500㎜ |
<機能> クリームはんだ自動印刷 チップ自動搭載 リフロー |
小型はんだロボット(アポロ精工、白光、奥原電気)
アポロ精工はんだ付けロボットメーカーとして40年以上の実績と経験がある。ロボットは人間よりも不良が少ないという。また、はんだ付けシーケンスを自由にプログラム出来るため、高度なはんだ付けに対応可能。展示品ははんだ部は接触式と非接触式の2方式。接触式ははんだこて式と定量スリーブ式の2方式、非接触式はレーザー光で加熱する。
白光ははんだこてメーカーだが、手動のはんだこての販売が減り、ロボットの販売に注力している。奥原電気からはベルトコンベアラインで使用することを考慮し、ベルトコンベア式のロボットの展示があった。各社とも安価で、200万円~300万円で販売しており、はんだロボットは普及すると予測される。
アポロ精工 L-CAT EVO-Ⅱ | 高級機J-CAT MLU-808FS | |
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小型はんだロボット | はんだ部拡大 接触式(はんだごてと同じ熱伝導式) |
はんだ部拡大 非接触式(レーザー加熱式) |
白光 HU200 | 奥原電気 MS250 |
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小型はんだロボット 接触式(はんだごてと同じ熱伝導式) |
小型はんだロボット(コンベア式) 接触式(はんだごてと同じ熱伝導式) 定価:320万円 |
小型電子チップマウンター(奥原電気)
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超小型チップマウンターライン ①クリームはんだ印刷機 ②チップ搭載機 ③ポイントリフロー機 能力:月産3000枚 全幅:1500㎜(①+②+③装置) 定価:980万円(①+②+③装置) 各工程の単品装置の購入も可能 リフローなどは既存設備を使用してもよい。 |
2000年以前は、電子基板の組み立ては、電子チップは片手で摘まめる大きさであったため、手作業のベルトコンベアラインでの生産も多かった。その後、携帯電話の普及に伴い、抵抗、コンデンサーといった電子チップが米粒以下の大きさになり手作業が不可能になった。そのため、高価なチップマウンターの設備が不可欠となった。チップマウンターの工程は「クリームはんだスクリーン印刷→テープフィーダー→チップ自動搭載機→画像検査→リフロー加熱炉」の一連の工程が一体となっており、10m~15mの比較的大きなものが多く、さらに準クリーンルームでの組み立てが必要であるため、導入には多額のコストを必要とする。そのため、電子基板の使用量の少ないメーカーでは外注生産に頼らざるを得ない状況がある。
奥原電気の小型電子チップマウンターは廉価で、3工程の合計でも1500㎜とコンパクト。各装置はビールケースほどの大きさにすべての機能が収まり、本体約25kgの重さは「移動できるマウンター」を実現している。小さな電子基板なら内製化が可能になる。
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