【ものづくり】人とくるまのテクノロジー展2018名古屋

企画展示「モノづくりニッポン、未来を拓く“知恵・技・匠”」

2018/07/20

要約

 人とくるまのテクノロジー展2018名古屋(会期:2018年7月11日(水)~7月13日(金)、会場:ポートメッセなごや)は、自動車技術会主催で開催された。本展示会は今回で27回目、年2回横浜と名古屋で開催される。名古屋での開催は4年目となり、366社の参加となった。自動車会社、部品会社、材料会社の各社が最新技術を披露する場となっており、専門家向けの展示会である。今年も電動化対応の商品が数多く展示されたが、本稿では、要素技術にスポットを当てた「モノづくりニッポン、未来を拓く“知恵・技・匠”」と題する企画展示を取材した。異業種との融和がテーマであり、ネットシェイプ(切削レス成形)など、自動車産業の課題に応えるユニークな技術の展示から、実際に自動車で採用されている部品を紹介する。

人とくるまのテクノロジー展2018名古屋
会場風景
「モノづくりニッポン、未来を拓く“知恵・技・匠”」
企画展示会場風景



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コスト低減プレス技術/精密プレスシートギア、逆絞りモーターケース

 プレス技術による自動車部品のコストダウン事例を取材した。各社の固有技術の進化により従来不可能と思われていたプレス加工ができている。事例を参考にして欲しい。

 

<出展会社概要>

会社名 展示品 機能
(株)伊藤製作所
(三重県四日市)
量産:精密プレスシートギア
(焼結品のプレス化、高速精密プレス50CPM)
試作:φ1.2㎜穴厚板プレス
・順送プレス技術
(1台のプレスに複数の型を横一線に並べ、コイル材を横に順次送るプレス機)
旭精機工業(株)
(愛知県尾張旭市)
量産:モーターケース
CO2センサーケース
(二部品の一体化)
・深絞りプレス機メーカー
・加工機と加工の2本柱経営



精密プレスシートギア&φ1.2㎜穴厚板プレス(伊藤製作所)

  伊藤製作所の固有技術は順送プレス技術と金型技術。この順送プレス技術を進化させて、従来不可能と思われていたプレス加工を実現している。展示品は精密プレスのシートギアとφ1.2㎜穴厚板プレスだがどちらも順送型でできている。シートギアの歯面は、通常プレスでは板厚に対して30%程度だが、展示品はほぼ100%近くとなっている。ダレも少なく、有効歯面の長さはファインブランクプレスにも勝っている。精密プレスの場合、プレスサイクルが極端に落ちてしまうのが難点だったが、伊藤製作所の場合は、順送プレス技術により、通常プレスとほぼ同じ50CPM(50個/分)を達成している点がコスト低減に貢献する。

量産:精密プレス・シートギア

歯面状況

材質 合金鋼SCM415
板厚 6㎜
表面硬化 浸炭焼入れ
板厚の100%に近い歯面
試作:φ1.2㎜穴厚板プレス
精密せん断による高アスペクト比穴加工
材質 熱間圧延鋼板SPHC270
板厚 6mm



逆絞りモーターケース(旭精機工業)

  旭精機の得意とするのは深絞り技術。会社の創業は銃弾造りからで、「付加絞り」を登録商標として各種の深絞りに対応している。加工のほか、深絞りプレスを主体とした加工機販売も売上げの50%を占める。自動車産業向けでは電池関係の深絞りプレス機の販売も伸びている。
 展示品は内部に円筒部があるモーターケースやセンサーケースで、胴部の深絞りと内側円筒部の逆絞りを両立している。胴部と内側円筒部を交互に絞るのがノウハウとのこと。現在は自動車部品への展開を強化しており、「二部品の一体化」のテーマで取り組んでいる。

量産:CO2センサーケース

高精度な逆絞り加工技術
モーターケースの事例

逆絞りのサンプル

左:加工前 右:加工後
外側円筒部の深絞りと内側円筒部の逆絞りを同時に成形している。外側と内側を交互に絞って作成しているという。


コスト低減ネットシェイプ技術/転造ワイパーギア、冷鍛EGRバルブ部品、焼結ショックバルブ

 塑性加工分野では「ネットシェイプ」という言葉をよく耳にするが、もともとは航空宇宙産業のニッケルやチタンの高価な材料費の削減のために、仕上げの機械加工なしで最終製品形状を作るという「スローガン」だった。しかし、実際には自動車で使う鉄鋼製の冷間鍛造部品で進展した。20年前の製品公差は±0.1㎜だったが、いまや±0.01㎜も可能となっている。各社は金型構造や、金型表面硬化、高剛性パンチ材料、プレス機のサーボ化、モーション制御、などの技術を進化させている。

 

<出展会社概要>

会社名 展示品 機能
(株)名友産商
(愛知県小牧市)
量産品:ワイパーウォームギア
(コスト低減)
・NC転造機
・精密転造技術
福井鋲螺(株)
(福井県あわら市)
量産品:EGRバルブ部品冷鍛化
(コスト低減50%)
・精密冷間鍛造技術
・主力:民生品リベット
8000種類、年産120億本
ナパック(株)
(長野県駒ケ根市)
量産品:ショックアブソーバピストン
量産品:同軸度0.01㎜含油ベアリング
・精密焼結合金技術
・主力:OA事務機



精密転造ワイパーギア(名友産商)

  「転造」はねじ製作でよく使われる技術だが、名友産商が得意としているのはNC転造機を使用した精密転造。今回の展示品はワイパーの転造ウォームギア。転造化しても図面は従来のまま切削と同じであり要求精度は変わることはない。表面粗さも3ミクロンくらいの要求がありこれも満足しなければならないが、展示品の歯面は鏡面仕上げ(1ミクロン以下の表面粗さ)で、従来の切削品に比べても高精度である。また、転造の特徴である金属繊維を切らない加工硬化もあり耐久強度もアップしている。 冷間鍛造プレス機ではネットシェイプ技術の進展によりコンピュータ化が進んでいるが、転造機に関しては、あまりコンピュータ化が進んでいないという。名友産商ではNC転造機による精密転造に、いち早く取り組んでおり、正転逆転を繰り返すシャトル転造法などの転造方法やダイス構造の工夫でノウハウを蓄積し差別化を図っている。

量産:ワイパーギア
歯面状況
ウォームギアは鏡面となっているが、一回で成形しているという
NC転造機を用いた精密転造手法
転造加工について



EGRバルブ部品 冷間鍛造(福井鋲螺)

  福井鋲螺は、民生品のリベットではシェア70%のリベット類の専門企業で、実に8000種類のリベット類を生産している。ヘッダーは1200台もあり、生産数は年産120億本という。数多くの経験と高い技術力がある。異業種であるが、自動車部品への展開を強化しており、切削加工品の冷間鍛造一体化のテーマに取り組んでいる。

量産:EGRバルブ部品



VA/VE事例
従来は機械加工2部品より構成されていたが、冷間鍛造で一体化した。 コスト低減効果50%、効果金額年間2.5億円

中段の解説が展示品のVA効果額。具体的な金額が記載されている資料はあまり見かけない。



ショックアブソーバーピストン・焼結合金(ナパック)

  ナパックは焼結合金の専門企業で、納入先はOA事務機向けが多い。OA事務機の要求公差は自動車部品の一桁上の精度が求められる。その高精度技術をもって、自動車部品への展開を強化しており、高精度部品の受注のテーマに取り組んでいる。

量産:ショックアブソーバーピストン



高精度焼結金属部品の実現
穴まわりは流体が流れるため流線形。


軽量化技術/中空ラック、アルミキャリパピストン、極小曲げパイプ

 自動車の軽量化に直結する展示があり取材した。

 

<出展会社概要>

会社名 展示品 機能
高周波熱錬(株)
(岐阜県)
量産品:中空ラック
冷間鍛造+熱処理技術
軽量化 50%
(株)ミヤキ
(静岡県浜松市)
量産品:アルミキャリパピストン
硬質潤滑アルマイト
バネ下軽量化
秋田上日工業(株)
(秋田県大仙市)
量産品:オイルクーラ配管パイプ
極小パイプ曲げ
搭載性向上、コンパクト化



ステアリング ラック&ピニオン 中空ラック(高周波熱錬)

  高周波熱錬はステアリングのラック&ピニオンにおけるラックの中空化に成功し量産を行っている。軽量化率は従来品の50%を達成。ラックの機械加工は通常、棒材を使用するが、高周波熱錬では鋼管を材料にし、冷間鍛造と本業の熱処理技術によりラックを形成している。また切削加工でないため、歯形を部分的に変えることが容易にできる。可変ギアレシオに柔軟に対応しステアリング性能も優れている。焼き入れは中炭素鋼を使用し、表面だけでなく内部まで焼き入れを行っている。歯形が変形しないように熱処理を実施しているという。

量産:中空ラック
軽量化率50%

歯面状況

ステアリング用中空ラックバー製造技術

材質:中炭素鋼S30C~S35C
工法:冷間鍛造+高周波焼入焼戻
中央の歯が大きい、可変ギアレシオが容易に作成できる



アルミキャリパピストン・硬質潤滑アルマイト(ミヤキ)

  ミヤキの最も得意とする分野はアルマイト技術。特に「カシマコート」の商標を持つアルマイトは、アルマイトの微細な多孔質層にニ硫化モリブデンを含浸させ、潤滑性を持たせている。その「カシマコート」を処理したディスクブレーキのキャリパピストンの展示があった。アルミキャリパピストンは、二輪車ではよく見かけるが、乗用車のキャリパピストンは珍しい。硬質潤滑アルマイトの硬度は、カタログ値Hv400と普通のスチールピストンよりやや低いが、20ミクロンと膜厚が厚く、二流化モリブデンの潤滑効果もあるため実用性を有するようだ。少量生産ながら、国産高級スポーツカーの対向型ディスクブレーキで採用され、10年近くの実績があるという。

量産:アルミキャリパピストン

硬質潤滑アルマイト「カシマコート」

二硫化モリブデンを析出させる
アルミ表面潤滑処理

アルミニウム合金+硬質潤滑アルマイト50ミクロン+研磨(研磨後膜厚20ミクロン)




オイルクーラ―配管パイプ・極小曲げ(秋田上日工業)

  秋田上日工業が得意としているのはパイプの曲げ加工。極小曲げ工法を特許取得している。通常の曲げ半径Rはパイプ直径と同じくらいが普通で、20㎜管の場合は曲げ半径はR20㎜くらいとなり、20㎜くらいのスペースロスがでる。秋田上日工業の極小曲げと呼ばれるオリジナル工法では曲げ半径はR2㎜でスペースロスは2㎜で済むため、エンジンルームのレイアウト性が向上し、車がコンパクト化する。パイプの中に鋼球を入れて曲げるシンプルな工法でハイドロフォーミングのような高価な金型を必要としないため、コスト競争力がある。

量産:オイルクーラー配管
特許取得の極小曲げ工法
左上:曲げ半径R2㎜の直角曲げでもつぶれず、管の内径は確保している
<計算式>
極小曲げの半径Rは R=0.1D(D:管径)



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キーワード
ものづくり、加工技術、機械加工、成形、軽量化、プレス技術、切削加工、プレス、ネットシェイプ、切削レス成形、転造

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