人とくるまのテクノロジー展 2018:トヨタ・日産の出展

トヨタはTNGAにより刷新したパワートレーン、日産は40kWh電池のカットモデルを出展

2018/06/08

要約

Dynamic Force Engine
トヨタのV型6気筒3.5L直噴ガソリンエンジン
-Dynamic Force Engine-

  本レポートは、2018年5月23日~25日パシフィコ横浜で開催された人とくるまのテクノロジー展 2018における、トヨタと日産の出展について報告する。

  トヨタは、FCV「MIRAI」のカットモデルと未来の水素社会のジオラマを出展した。トヨタは、FCVの年間販売台数を、現在の3,000台から2020年頃 3万台以上に拡大し、FCバス、FCフォークリフト、FC大型トラックなど多様化を進める計画。

  トヨタはTNGAにより刷新したパワートレーンを集中的に投入しているが、今回は直列4気筒2.0L直噴ガソリンエンジン、V型6気筒3.5L直噴ガソリンエンジン、および新型無段変速機「Direct Shift-CVT」を出展した。

  日産は、「ニッサン インテリジェント モビリティ」の象徴である「日産リーフ」と、容量を40kWhに引き上げたリチウムイオン電池パックのカットモデルを出展した。

  また、「Note e-Power」「Serena e-Power」が搭載する電動パワートレーン e-Powerを出展。

  世界初の量産型可変圧縮比ターボエンジン「VCターボ」の技術を紹介した。


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トヨタ:FCV「MIRAI」と水素社会のジオラマを出展

  トヨタは、FCV「MIRAI」のカットモデルと水素社会のジオラマ(展示物とその周辺環境・背景を立体的に表現したもの)を出展した。「ジオラマ」では、水素貯蔵施設、水素を製造するための風力発電や太陽光発電、自動車向けステーション、張り巡らした水素や電気の供給網などが配置されている。

  MIRAIは2014年12月に発売し、2018年3月までに日米欧で約5,900台販売した。現在の年間販売台数は3,000台程度だが、トヨタグループを挙げてFCVの普及・多様化を推進し、2020年頃からグローバルで年間3万台以上、うち日本においては月販1,000台レベル、年間1万数千台程度の販売を目指している。

  さらに2020年までに、FCバス「SORA」を東京オリンピックに向け100台以上導入。2020年頃までにFCフォークリフトを、トヨタ元町工場に170~180台程度導入予定で、2018年3月、同工場にFCフォークリフト専用水素ステーションを新設した。

  トヨタは、FCV、EV、PHV、それぞれのメリットとデメリットがあり、顧客の選択がどう収斂するかまだ明確でないため、フルラインアップで電動化に対応する方針。EV戦略を加速しつつFCVへの投資も継続する。これまではFCスタックの量産が困難なため、販売台数は年間3,000台にとどまっているが、上記のように年間3万台生産できる技術を開発することにより、2020年頃に発売する次期型FCVでは、FCスタックのコストを半減させる見通しと報道されている。

MIRAI カットモデル MIRAI カットモデル 未来の水素社会のジオラマ
FCV「MIRAI」のカットモデル 未来の水素社会のジオラマ

FCスタック/高圧水素タンクの生産設備を拡充、販売エリアを拡大

生産設備を拡充   FCスタックは、豊田市の本社工場敷地内に新たな建屋を建設、高圧水素タンクは、みよし市の下山工場内に専用ラインを新設する。
販売地域を拡大   MIRAIは、これまでに日本・米国・欧州9カ国の計11カ国で販売した。さらに、オーストラリア、カナダ、中国、UAEでMIRAIの実証実験を行っている。日本では、現在の4大都市圏中心から対象地域を拡げていく計画。

資料:トヨタプレスリリース 2018.5.24

トヨタが参画するFCVを推進する組織・団体

Hydrogen Council   2017年1月に、スイスのダボスで開催されたWorld Economic Forumの場で設立された。グローバルなエネルギー移行に関して、水素社会の実現を推進する。参画企業数は、13社(2017年1月)から39社(2018年3月)に増加。
JHyM   2018年2月に、自動車メーカー、インフラ事業者、金融機関が連携し、「日本水素ステーションネットワーク会社(略称JHyM)、英文社名:Japan H2 Mobility, LLC」を設立。戦略的な水素ステーションの整備と、効率的なST運営への貢献を通じ、水素ステーション事業の早期自立化とFCVの普及拡大を目指す。
  2018年5月時点で、日本国内に整備された水素ステーションは101カ所。国の計画では、2020年度までに160カ所、2025年度までに320カ所の整備を目指している。
あいち低炭素水素
サプライチェーン
  愛知県、知多市、豊田市、中部電力、東邦ガスなどが参画し、2018年4月に設立。水素は低炭素社会実現に向けた有用なエネルギーで、使用中に二酸化炭素(CO2)を排出しないというだけでなく、水素を媒体とすることで、風力、太陽光、下水汚泥などその他の再生可能エネルギーを貯蔵・運搬し、様々な分野で利用することができる。

資料:トヨタ

米国カリフォルニア州で大型FCトラックの実証実験

  トヨタは、2017年夏から、米国カリフォルニア州ロサンゼルス港でFC大型トラックの実証実験を行っている。FC大型トラックは、MIRAIのFCスタック(発電機)2基と、12kWhの駆動用バッテリーを搭載することで、約500kWの出力と、約1,800N・mのトルク性能を発揮し、貨物を含めて総重量約36トンでの走行が可能。通常運転における推定航続距離は約320km。

  さらに10月から同州ロングビーチ港でもFC大型トラックの実証実験を開始した。ロングビーチ港では、大型水素ステーション建設でシェルに協力する。同事業は、カリフォルニア州の800万ドルの補助金の候補に選出された。正式に承認された場合は、シェルは同港湾におけるトヨタの物流拠点に水素ステーションを建設し、シェルのステーションとして運営する。

  トヨタは、FC大型トラックもFCVの有力な用途と見込んでいる。

米国カリフォルニア州で実証実験を行っているFC大型トラック 電動車の棲み分け
米国カリフォルニア州で実証実験を行っているFC大型トラック
(資料:トヨタ)
電動車の棲み分け(普及イメージ)
(資料:トヨタ)

 

 



TNGAにより刷新した新型パワートレーン

  トヨタは、「いいクルマづくり」の構造改革「Toyota New Global Architecture (TNGA)」により、優れた走行性能と高い環境性能の両立を追求した新型パワートレーンを開発・投入している。新型パワートレーンは、エンジン、トランスミッション、ハイブリッドシステムと多岐にわたり、全19機種37バリエーション(エンジン:9機種・17バリエーション、トランスミッション:4機種・10バリエーション、ハイブリッドシステム:6機種・10バリエーション)を一気に導入する。2023年には、トヨタ単独の年間販売台数(日本・米国・欧州・中国)の80%以上への搭載を目指す。動力性能を約10%向上させながら、CO2排出量を18%以上削減する。

  新型パワートレーンは、(1)商品性向上(ダイレクトでスムースな優れた走行性能と高い環境性能を追求)、(2)生産効率向上(製品構造・加工基準を統一し、高速でフレキシブルなラインを迅速にグローバル展開)、(3)開発効率向上(モジュール開発により基本性能を効率的に向上)を目指したとのこと。

  人とくるまのテクノロジー展2018では、新型「直列4気筒2.0L直噴エンジン-Dynamic Force Engine-」、「新型V型6気筒直噴ガソリンターボエンジン-Dynamic Force Engine-」、および新型無段変速機「Direct Shift-CVT」が紹介された。

新型エンジンをDynamic Force Engineと呼称

  新型エンジンは"Dynamic Force Engine"と呼び、高速燃焼技術を採用。排気・冷却・機械作動時などの様々なエネルギーロスを少なくして熱効率の向上と高出力を両立させた。

  トヨタは、「世界初の高速燃焼技術」の採用を強調している。具体的には、ロングストローク化(S/B≒1.2)、バルブ侠角拡大(インテークバルブの軸とエキゾーストバルブの軸が形成する角度を拡大することにより、バルブ開口面積を大きくとれる)、レーザークラッドバルブシート(薄いバルブシートを作る技術を採用)を用いた高効率吸気ポートにより、流量アップとタンブル流(燃焼室内の吸気の縦の流れ・渦)強化を両立させ、高速燃焼を実現した。強化したタンブル流と噴霧自由度の高いマルチホールインジェクターを組み合わせて、燃料と空気のミキシングを向上させ、高速燃焼に貢献する。

  またトロコイド式連続可変容量オイルポンプを世界で初めて採用し、オイルの送り過ぎなどの無駄な仕事を低減して、エンジンのフリクション低減に貢献する。

直列4気筒2.0L直噴ガソリンエンジン

  新型エンジンは、モジュール開発により、開発効率と生産効率の向上を目指している。従って、基本のコンセプトと燃焼の考え方は既にCamryに搭載している「2.5L Dynamic Force Engine」と共通である(ただしスカート摺動面の低フリクション化を図ったレーザーピットスカートピストンは、2.0Lエンジンで世界初採用)。なお、この2.0L Dynamic Force Engineは、トヨタ車の中核エンジンとして展開する。後出の「Direct Shift-CVT」との組み合わせで、競合する過給エンジンと互角以上の動力性能とこれらを凌駕する燃費を実現する。

  新開発の2.0Lガソリン車用エンジン・ハイブリッド車(HV)用エンジンは、それぞれ、世界トップレベルの熱効率40%・41%(2.5Lエンジンと同じ)を達成した。

V型6気筒3.5L直噴ガソリンターボエンジン

  トヨタ初のV6過給エンジンを開発。高速燃焼技術と高効率ツインターボの新型エンジンとDirect Shift-10ATを組み合わせることにより、競合するV8過給エンジンと肩を並べる動力性能と圧倒的な燃費性能を実現した。2017年10月に発売した新型Lexus LS500に設定した。最高出力310kW (422PS)、最大トルク600N・m、FRのJC08モード走行燃費10.2km/L。

  ロングストローク化、高効率吸排気ポート、レーザークラッドバルブシート(Lexus初)、マルチホール直噴インジェクター(Lexus初)などで高速燃焼を実現。Lexus初の、電動ウェイストバルブ付き高効率ツインターボチャージャーを搭載する。

  圧倒的な静粛性とフラットなトルク特性を活かした爽快な加速フィーリングを両立させた。世界トップレベルの熱効率(最大37%)で高い出力と燃費性能を実現した。

  Direct-Shift-10ATは、世界トップレベルの変速スピードによるリズミカルな変速やドライバーの操作から意図を読み取り最適なギヤを選択する制御により、アクセル操作に即応するダイレクトで気持ちの良い走りを提供する。

直列4気筒2.0L直噴ガソリンエンジン V型6気筒3.5L直噴ガソリンエンジン
直列4気筒2.0L直噴ガソリンエンジン V型6気筒3.5L直噴ガソリンエンジン

 

 



新型無段変速機「Direct Shift-CVT」:発進用ギヤを採用

  「Direct Shift-CVT」開発では、機械損失低減、ワイドレンジ化と変速追従性向上に取り組んだ。

  機械損失低減: ベルト効率の悪いロー側使用時の伝達効率を向上させるため、乗用車用CVTに世界で初めて発進用のギヤを採用した。発進時はギヤ駆動とすることで、力強い加速を実現するとともに、アクセル操作に対して一瞬遅れるようなもたつき感を改善、スムースで気持ちの良い発進性能を実現。ギヤとベルトの切り替えには、AT技術で培った高応答の変速制御技術を使用している。

  ワイドレンジ化: 発進用ギヤの採用に合わせて、ベルトをハイ側に設定。より効率よくベルトを使用するとともにワイドレンジ化し、2.0Lクラストップの変速比幅7.5を実現した。

  変速追従性向上: 発進用ギヤの採用により、入力負荷が軽減されたことで、ベルトおよびプーリー部の小型化を実現。ベルト角度を11度から9度に狭角化するとともにプーリーを小径化し、変速速度を20%向上させた。これにより、ドライバーはパワフルでリズミカルな加速を感じることができる。

  これらの取り組みにより、ダイレクトでスムースな走りと現行比+6%の優れた燃費性能を実現した。

新型CVT「Direct Shift-CVT」 「Direct Shift-CVT」のワイドレンジ化
新型CVT「Direct Shift-CVT」 「Direct Shift-CVT」のワイドレンジ化

 

 



日産:新型リーフと搭載するリチウムイオン電池パックを出展

新型リーフが搭載するリチウムイオン電池
新型リーフが搭載するリチウムイオン電池パック

  日産は、2017年10月に日本市場に投入した新型リーフと、搭載するリチウムイオン電池のカットモデルを出展した。

  日産によれば、「日産リーフ」は「ニッサン インテリジェント モビリティ」の象徴で、

  • 電動化技術:新開発の40kWhのリチウムイオン電池を搭載し、航続距離(JC08モード)を280kmから400kmに伸ばすとともにモーター駆動ならではの滑らかで力強い加速をさらに向上させた。
  • 知能化技術:高速道路 同一車線自動運転技術プロパイロットに加え、プロパイロットパーキングを設定。また予防安全技術をさらに充実させるとともに、踏み間違い衝突防止アシストなどの機能を進化させた。
  • つながる技術:離れた場所からスマートフォンやAIスピーカーなどで、いつでもクルマの充電やエアコン制御ができる。「LEAF to HOME」でクルマの電力を家に供給することも可能。

 

 



電動パワートレーン e-Powerを出展

電動パワートレイン e-Power

電動パワートレーン e-Power

  「Note e-Power」「Serena e-Power」が搭載する電動パワートレーン e-Powerを出展。日産によると、充電を気にすることなく、どこまでも走れる電気自動車のまったく新しいカタチ。外部から充電する代わりに、エンジンで発電してモーターだけで走るSeries Hybridである。

  2.0Lターボエンジンに匹敵するビッグトルク(最大トルク254N・m)を発揮。異次元の加速の力強さとレスポンスを提供する。Note e-Power 2WD車の燃費(JC08モード)は37.2km/L。

  発進時から一気に最大トルクを発生するモーター特有の優れた瞬発力により、電気自動車と同様の加速を体感できる。さらに市街地や高速道路での走行中でも、アクセルの踏み増しにレスポンスよく反応。俊敏な走りを意のままに楽しめる。また、アクセルペダルを戻すだけで減速・停止・さらに停止保持まで行うことで、全く新しい運転感覚を提供する。

  新型リーフも、同様の機能を持つアクセルペダル「e-Pedal」を搭載する。

 

 



内燃機関の革新「VCターボ」エンジン

  通常のエンジンでは、ピストンはコンロッドでクランクシャフトと接続され、ピストン上/下死点は変えられない。「VCターボ」エンジンは、マルチリンク機構で接続し、リンクの端点をアクチェエータで可動にすることで、ピストンの上/下死点位置を変化させる。これにより、熱効率を決めるキーパラメーターである圧縮比を8:1から14:1の間で連続的に可変させることができ、高い環境性能と圧倒的な動力性能を同時に達成した、世界初の量産可変圧縮比エンジンである。

  新開発の高効率ワイドレンジターボと過給圧をきめ細やかにコントロールする電動ウェイストゲートにより、ターボラグを抑えて高効率に過給し、瞬時に大出力を発生させる。また、低負荷時には、電動VTC(Valve timing control system)によりバルブタイミングを連続的に変化させることで、アトキンソンサイクルによりポンピングロスを減らし、高圧縮比とのコンビネーションで高効率燃焼を実現する。

  VCターボを搭載するInfiniti QX50が、2018年春に米国で発売された。

VCターボエンジン 圧縮比14:1(左)と8:1(右)の対比 低圧縮時の拡大図
「VCターボエンジン」
(デトロイトモーターショー2018)
圧縮比14:1(左)と8:1(右)の対比
(Infinitiプレス資料)
低圧縮時の拡大図
(Infinitiプレス資料)


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キーワード
人とくるまのテクノロジー展2018、トヨタ、日産、FCV、TNGA、新型パワートレーン、e-Power、VCターボ

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