【ものづくり】人とくるまのテクノロジー展 2018:軽量化加工技術と樹脂材料

軽量スチールフレーム新工法、アルミドアパネル接合法、樹脂製リアドア、足回り部品の樹脂化など

2018/05/30

要約

 「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」(自動車技術会主催、会期:2018年5月23日~25日、会場:パシフィコ横浜)は、今回で27回目、過去最大の597社が参加した。自動車、部品、材料の各社が最新技術を披露する専門家向けの展示会で、今年も電動化対応製品が数多く展示されていた。本稿では、電動化や低燃費化に伴う軽量化をにらんだ加工技術や材料技術に焦点を絞り、各社の展示ブースを取材した内容を報告する。

人とくるまのテクノロジー展2018横浜
入場口
人とくるまのテクノロジー展2018横浜
会場風景



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軽量化 加工技術:軽量スチールフレーム新工法、アルミドアパネル接合法など

 電動化に伴い、重い二次電池を搭載するために、それ以外のすべての部品の軽量化を行わなければならない状況となってきている。差別化、固有技術を持つ会社にはビジネスチャンスがある。自動車ビジネスにおける異業種からの参入が盛んに報道されているが、部品分野でも同様に異業種からの参入が見られるようになった。自動車産業の活性化と技術向上にとって好ましい状況といえる。

 

出展会社概要

会社名 展示品 目的
住友重機械工業㈱   STAF チューブフォーミング
試作:バンパービーム
軽量化と衝突安全性の両立
軽量化 溶接工法比 23%減
異業種からの参入
㈱UACJ マツダ ロードスター
量産:バンパーレインフォースメント
軽量化
レクサス LS500
量産:アルミドアパネル、ボンネット
軽量化 スチール比 25%減
日本発条㈱ 試作:アルミリアシート 軽量化と強度の両立
井原精機㈱
(岡山県総社市)
試作:ステアリングピニオン 加工時間半減
30秒→13秒



軽量スチールフレーム新加工法:STAF チューブフォーミング (住友重機械工業)

 軽量化された溶接のないスチールチューブ製のバンパービームの展示があった。建設機械の大手メーカーが、独自のSTAF (Steel Tube Air Forming)工法を持って異業種から参入する事例である。

 自動車や自転車で冷間ハイドロフォーミング(通称 バルジ加工)はよく利用される加工法であるが、住友重機械工業の場合は熱間エアフォーミングを採用。電気抵抗加熱で900度まで加熱し、内部に20MPaの空気圧をかけることで成形する。180度の折り曲げ加工も可能、軽量かつ高強度、高剛性のチューブフォーミングが可能となる。バンパー以外にも、フレーム、ピラー等への適用を検討している。工場内に設置した試作ラインで、まずは試作の注文を受けるという。

バンパービーム 試作 (スチールチューブ製)


断面形状の拡大画像
STAF (Steel Tube Air Forming)

車種によって、衝突安全性については規格をクリアするだけでなく、欧州車とのベンチマークなどから余裕を持たせたい。 新チューブフォーミング工法 STAF は住友重機械工業の登録商標
特徴:連続異形閉断面を高精度に加工できる、軽量・高剛性、アルミより安価
工程:鋼管 → 通電加熱 → 高圧空気圧入 → 成形 → 焼入れ焼戻し



アルミドアパネル接合法など (UACJ)

 近年、日本車の一部で、バンパーレインフォースメント、ドアパネル、ボンネット等がアルミニウム化されている。その展示があり取材した。UACJ担当者によると開発にはアルミユーザーと材料メーカーの綿密なコミュニケーションが重要という。新しい素材を使用すると、必ず新工法を考える必要が発生し、それを乗り越えることで技術が進化する。

マツダ ロードスターで量産中
バンパーレインフォースメントがアルミニウム化され、内部にリブがある押し出し工法となっている。
レクサス LS500で量産中
ドアパネルやボンネットは、部分的に重ねてプレスするテーラードプレスや、レーザー溶接を中心に、数種の接合法が全体に施され、スプリングバックを抑えてうまく成形している。
バンパーレインフォースメント

材質:7000系
工法:アルミニウム押し出し、アルミアーク溶接
ドアパネル
材質:アウター6000系 インナー5000系

アルミニウム接合は4種類の接合法を使い分けている
ボンネット
材質:アウター6000系 インナー5000系

 



アルミニウム接合法

① 摩擦攪拌接合 FSW
窓枠の補強等、テーラードブランクで重ねているが、ブランク前の溶接はFSW法
② レーザースクリューウェルディング LSW
スポット溶接代替工法
円筒状の工具を回転させながら押し付け、摩擦熱を発生させて母材を軟化させ、練り混ぜることで複数の部材を一体化させる接合法。 スポット溶接より打点が近接できる。

③レーザー線溶接
熱ひずみを最小に抑えたい部分に使用
④ セルフピアシングリベット SPR
リベット部
下部が線溶接。レーザー溶接では溶接材はなく、母材自身が溶着する。 リベットの裏側から見たところ



アルミニウム・はさみスポット溶接 (日本発条)

 アルミニウムで軽量化されたリアシートの展示があった。アルミニウムの板材は0.6mmと極限まで薄い材料を使用するため、スポット溶接が効かない。骨格はスチール製パイプ材を使用するので、スチールリベット溶接を行っている。アルミニウムは電荷の異なるスチールと強く接触していると電蝕という腐食が発生するため、アルミとスチールの間には表面処理等が必要になる。対策として、アルミニウムにあらかじめカチオン塗装したものをリベット溶接。その際、強く接合しないようにしている。

 軽量化設計は完了したが、生産技術は未着手。リベットを使用するので、手作業にならないように、リベット自動送り付き溶接機の開発などが今後の課題という。

軽量シート 試作
材質:(骨格)スチールパイプ、(背板)アルミニウム0.6㎜、(リベット)スチール
工法:リベット溶接
おもて面
うら面



高速歯車加工 (井原精機)

 「13秒で仕上がる歯車加工」と銘打っていたので、展示内容を訊ねてみた。ホブ歯切り加工は通常30秒かかるが、今回の展示品は13秒で仕上がる。設備を改造し工具を高速で回転させるが、工具が摩耗するので、対策としてコーティング等の改善を行い、量産の目途が立ったという。今後は後工程の研磨工程の時間短縮にも取り組むとのこと。

 岡山地区の加工会社は三菱自動車への依存度が高く、2016年に三菱自と日産が経営統合した影響を受け、非常に厳しい外部環境にあるが、加工時間そのものの短縮まで踏み込んだ合理化努力で状況を打開しようとしている。ほかにも岡山県産業振興財団ブースから数社の出展があった。本展示会以外でも岡山県産業振興財団ブースの出展は多く、県として努力されている様子がわかる。

ステアリングピニオン
13秒で仕上がる歯車加工





軽量化 樹脂材料:リアドアの樹脂化

 軽負荷部品であるリアドアの樹脂化など、いくつか量産品の展示があった。各社試行錯誤中の様子で、いくつか材料や工法がある。これらを比較取材した。

 

出展会社概要

会社名 展示品リアードア 材質 工法
ダイキョーニシカワ㈱ 量産:日産 小型車 熱可塑PPポリプロピレン 射出成形60秒
マグナ インターナショナルジャパン㈱ 量産:FCA Jeepモデル 熱可塑PPポリプロピレン 射出成形60秒
三菱ケミカルホールディングズ㈱ 量産:トヨタ プリウス 短繊維熱硬化性CFRP SMC工法
熱プレス120秒

CFRP (Carbon Fiber Reinforced Plastics 炭素繊維強化プラスチック):ゴルフクラブのシャフトが代表例。炭素繊維を重ねて樹脂で固めた複合材料。軽量で鉄並みの強度がある。組み合わせる樹脂には、加熱すると硬化する熱硬化性と、加熱すると融解する熱可塑性がある。
PPポリプロピレン:一番比重が軽い、熱可塑性樹脂のペレット供給で射出成形する。



熱可塑PPポリプロピレン 射出成形法 (ダイキョーニシカワ/マグナ)

 生産技術的な難易度はバンパー製作と変わらないが、リアドアは大型品であり、金型が非常に高価になる。日本では売れ筋でも月産数百から数千台の車種が多く、射出成形で60秒を切るサイクルで対応できたとしても、金型費を償却できる車種は限定されるという。

ダイキョーニシカワ
量産:日産 小型車
マグナ
量産:FCA Jeepモデル

特徴:成形時間が早く、熱硬化性CFRPにくらべ生産性が高く安価
材質:(個体ペレット)熱可塑PPポリプロピレン、(アウター)繊維強化PP、(インナー)ガラス繊維強化PP
工法:射出成形
加工時間:60秒=月産20,000個



短繊維熱硬化CFRP SMC工法 (三菱ケミカル)

 シートモールディングコンパウンド、SMC工法と言われている。繊維の長さを25mmと短くして、この繊維を熱硬化樹脂に混ぜてシート化する。さらに積層にして、熱プレスにかける。強度よりも生産性を重視した熱硬化CFRP。

 CFRPを自動車で採用するには、生産性の低さが課題となっている。展示品は、熱硬化樹脂の硬化時間を短縮し、生産性の悪かったCFRPの加工時間を120秒まで短縮しているという。1ライン16時間生産で月産1万個を生産できる計算になる。

短繊維CFRPリアドア
量産:トヨタ プリウス
SMC工法
Sheet Molding Compound
特徴:従来のオートクレープ工法(高温高圧炉式)に比べて圧倒的に生産性が高い
材質:熱硬化性 短繊維CFRP
工法:熱プレス成形
工程:短繊維CFRP + 樹脂 → 生地 → 金型 → 熱プレス
加工時間:120秒=月産10,000個





軽量化 樹脂材料:足回り部品の樹脂化

 欧州では足回りの高強度部品も樹脂化が始まっている。最強の強度と耐久性が必要なリーフスプリングも量産化された模様。強度的な視点だけで見れば、樹脂化できない部品はなくなってしまった。本展示会には量産品、レース用、試作品を含め、いくつかの展示があったので紹介する。量産化の観点では欧州の技術が先行している。

 

出展会社概要

会社名 展示品 材質 工法
ムベア
(本社 ドイツ)
欧州SUV:リーフスプリング 熱硬化GFRP
ガラス繊維強化
RTM工法 ハイサイクル熱プレス
BMW:ホイール 熱硬化CFRP
BMW 二輪車:メインフレーム 熱硬化CFRP
エムスケミー
(本社 スイス)
欧州ハスクバーナ:二輪メインフレーム 熱可塑PA CFRTP
カーボン長繊維強化
射出成形
東レ㈱ GT500:モノコックボデイ 熱硬化CFRP オートクレープ(高温高圧炉)3時間
東京R&D㈱ ホンダ 二輪車:ボデイ 熱硬化CFRP オートクレープ(高温高圧炉)3時間
旭化成㈱ 試作:バンパーレインフォースメント 熱可塑PA GFRTP
ガラス織布強化
プレス射出複合

GFRP: Grass Fiber Reinforced Plastics (ガラス繊維強化プラスチック)
CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastics (炭素繊維強化プラスチック)
GFRTP: Grass Fiber Reinforced Thermo Plastics (ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック)
CFRTP: Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics (炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)
PA: 熱可塑性ポリアミド樹脂、デュポンの商標ナイロンが有名



熱硬化GFRP&CFRP 高速RTM工法 (ムベア、本社ドイツ)

 GFRP製のリーフスプリングが2018年に欧州メーカーのSUVで導入が開始されている。鉄鋼製であってもバネ材は一般の鋼材に比べてはるかに高い強度の鋼材で製作されている。強度的な視点だけで見ると、樹脂化できない鉄鋼材はなくなってきた印象である。

 伝統的な熱硬化性樹脂を使用するが、高圧で樹脂を金型に注入するRTM (Resin Transfer Molding)工法により、ハイサイクルでの生産が可能となった。中空構造やインサート成形が可能なことが特徴で、中量生産に適しているという。

欧州SUV:GFRPリーフスプリング
2018年量産開始

軽量化50kg/1アクスル
75%軽量化、脅威の軽量化率
展示パネル

欧州車BMW:CFRPホイール
量産中


軽量化10kg/1台4輪
展示パネル

BMW二輪車:CFRPメインフレーム
量産中



展示パネル

鉄鋼材の場合、数枚で構成されるところ、一枚で機能を満足できる。 2ピース構造、CFRP製リムとアルミニウム製スポークをチタンボルトで内側から締結しているので、外観上は一体に見える。
(特徴1)中空フレーム

中空形状は高強度なので、より軽量化が可能。
(特徴2)金具インサート成形

ねじ締結や摩耗が心配な部位には金属が使用できる。



熱可塑CFRTP PAポリアミド 長炭素繊維強化型 (エムスケミー、本社 スイス)

 エムスケミーは本社をスイスに置く多国籍企業だが、PAポリアミド樹脂専業という。そのため、高機能性PAポリアミド樹脂の品ぞろえは多く、幅広い種類の特殊品を取り揃えている。

二輪車 CFRTPメインフレーム
欧州ハスクバーナ・250ccモトクロス車 量産中
炭素長繊維強化ポリアミド

炭素長繊維を配合し、弱点だった耐衝撃性が大幅に改善。モトクロスのような、衝撃だらけの走行にも耐えるという。 軽量化 30%減、剛性 20%アップ
部品点数削減 20点→3点



熱硬化CFRP オートクレープ工法 (東レ/東京R&D)

 抜群の強度がある伝統あるオートクレープ工法によって製作している。仕様や材料の違いで、温度や圧力等の製造条件を変えて、軽量、高強度な「熱硬化CFRP」の構造材を成形しているという。こだわりの逸品でレースに臨んでいる。バッチ炉の内寸は直径2m x 長さ5mとのことで、モノコックボデイが製作できる。オートクレープ工法は真空脱泡後、130度C x 3気圧 x 3時間の焼成が必要になり、量産には向かない。

東レ
GT500用:CFRPモノコックボデイ



展示パネル
東京R&D
ホンダRC213V-S二輪車 CFRPボデイ



展示パネル



熱可塑GFRTP PAポリアミド ガラス織布強化型 (旭化成)

 ガラス繊維を用いた織布を基材とし、熱可塑性樹脂PAポリアミドと組み合わせ、強度と生産性を兼ね備えた材料を開発。織布のため強度と剛性が大幅にアップした。熱プレス成形、またはプレス射出複合成形を選択できるが、いずれの場合でもハイサイクルで生産が可能。

熱可塑GFRTP
バンパーレインフォースメント 試作


成形後(左)、樹脂コート糸(中)、ガラス糸(右)

樹脂コート織布(左)、ガラス糸織布(右)

展示パネル:テキスタイルコンポジット PA66/GF




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キーワード
軽量化、電動化、アルミ、樹脂、プラスチック、CFRP、炭素繊維、ポリアミド、金属代替、高剛性、高強度、成形、接合、溶接、FSW、住友重機械工業、UACJ、日本発条、ニッパツ、井原精機、ダイキョーニシカワ、Magna、マグナ、三菱ケミカル、Mubea、ムベア、EMS-CHEMIE、エムスケミー、東レ、東京R&D、旭化成

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