東京モーターショー2017:商用車メーカーの展示(1)

三菱ふそう、いすゞがEVトラックを出展

2017/12/01

要約

 東京モーターショー2017(会期:2017年10月25日~11月5日、会場:東京ビッグサイト)のプレスデー初日は、前回と同様に冷たい雨で取材を迎えたが2日目は秋晴れの1日であった。ショーテーマは「世界を、ここから動かそう。BEYOND THE MOTOR」で、「車の価値や楽しさを拡張しながら世界の最先端のナレッジ(知識)が集まり、新たなイノベーションやビジネスを生み出せるようなイベントを目指す」(事務局)というもの。来場者数は771,200人で、前回比94.9%と若干の減少となった。

(左)ショーのロゴポスターはオリンピックマークを意識してか白と黒の配色であった。
(右)新たに増設された東7号館と隣接する東ゲート。

 

 ショー全体では国内外メーカー34社、ブランド27を含む153社・団体が出展。ワールドプレミア、ジャパンプレミアを含む380台が展示された。商用車は大型トラックメーカー6社、車体メーカー11社(小型メーカーを除く)が出展。

 

 本稿では、ワールドプレミアとなるコンセプトトラックを披露した三菱ふそうトラック・バスといすゞの展示内容を報告する。三菱ふそうは大型電動トラック「Vision ONE」、いすゞは「エルフ(ELF)」ベースの小型冷蔵冷凍電動トラックおよび未来型小型集配車「FD-SI」を展示した。

 UDトラックス、SCANIA、日野、トヨタの展示内容は下記レポートをご参照ください。
 東京モーターショー2017:商用車メーカーの展示(2) (2017年12月)

 

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商用車の国内市場現況

 国内全体の総輸送量は減少傾向が続くが、普通(大型,中型)トラックの新車登録台数は2009年を底に2016年は9.5万台/年まで回復。保有台数も2012年を底に2016年末は152.7万台となり、増加傾向にある。2018~2019年がオリンピック関連で輸送量増加のピークとなる。

  1. ネット通販拡大などによる小荷物量増加。オリンピック関連建設、整備に向けた車両稼働の増加。
  2. トラックドライバーの恒久的な不足、高齢化。2017年免許制度改定による若年層増加に期待。
  3. 効率輸送対応への大型長大車投入(トレーラーなど連結車の全長規制緩和)。
  4. 平成28年ディーゼル排出ガス規制適合と、更なる車両の安全対策盛り込み対応。トラックサービス品質の向上とトラックの役割認知を荷主と社会へ向けてPR。

(自工会他資料より)

 

 

東京モーターショー2017に見る商用車全体の訴求ポイント

  1. 量産及びコンセプト電動(EV)トラックの出展と企業のEV商品化戦略訴求。
  2. 大型トラックメーカー全社・平成28年排出ガス規制適合の最新型車出展。
  3. 快適性,省燃費寄与へのAMT(自動化トランスミッション)採用車の拡大。
  4. 衝突回避など先進安全性支援機器の装備。
  5. 社会や生活へのトラック輸送PR。品質,信頼性向上とトータルサービスサポートPR。


三菱ふそう: 電動商用車ブランド「E-FUSO」、コンセプトトラック「Vision ONE」

 三菱ふそうトラック・バスは「LIGHT UP TOMORROW」を展示テーマに掲げ、人や社会のために進化し続ける商用車のダイナミックな躍動と挑戦の姿を表現。

 

 前回のモーターショーから採用した黒色イメージのコンパクトなブースで4台を展示した。

  1. 電動大型コンセプトトラック「Vision ONE」 ワールドプレミア
  2. 量産電動小型トラック「eCanter」 日本プレミア
  3. 新型大型トラクター「スーパーグレート」
  4. 大型観光バス「エアロクイーン」

 展示車両4台のうち、電動トラック2車種がメイン。業界初の電動商用車ブランド「E-FUSO」を立ち上げ、今後数年以内に全車種のトラックとバスに電動化モデルを開発すると発表した。

 

E-FUSO:The future is electric (電気の力で運ぶ未来へ)

 

 

Vision ONE 電動大型コンセプトトラック (ワールドプレミア)

 「eCanter」で量産電動トラックの先鞭をつけ、勢いに乗るDaimlerグループの「ふそう」がフル電動大型トラックの実現を目指し、披露したコンセプトモデル。



 

 1回の充電での航続距離は最大350kmで、都市内の拠点間輸送に適応する。
 主要部品はMercedes-Benz電動トラックの流用ではなく、「eCanter」部品を応用し使用しているが、今後の電動パワートレインはDaimlerグループの技術、開発資源を共用するとのこと。

 GVW 23.26トン、積載量 11.11トン、全長 11,990/全幅 2,490/全高 3,700mm。
 フルキャブ骨格と一部ボディおよびシャシーを含めたベースは既存の6×2低床のカーゴ用車両。ドア基本は流用し、外板および内装トリム類は新設計。ステップ、フェンダーカバーは新設計、フロント、ルーフおよびキャブクオーターパネルはギャップシール形状とし新設計。上手な架装のやり方。
 リアボディロアパネルも新設計。ボディ基本はパブコ製のウイングバン、モデル製作・架装はフィアロコーポレーション。デザインはMercedes-Benzデザイン商用車部門から今春に着任した新部長のもとで完成させたとのこと。


(左) 車両右側フロントアクスル後端の充電コンセント口
(右) ディスクホイールに「E-FUSO」

Vision ONEの内装: フルキャブだがベッドスペースをラウンジシート化している
(左) キャブ後端上部にサイドビューカメラ
(中) フロントピラー左右にモニターカメラを装着
(右) 運転操作の主要情報はフロントガラスのヘッドアップディスプレイ(HUD)に表示される(画像右上の丸囲み部分)
    ステアリングにはインフォテインメントモニターとダイヤル式の運転補助装置がある

 

 

eCanter 世界初の量産型電動小型トラック


(左) 充電口は車両右側キャブ後端下 (右) eCanterのキャブ内外装は日欧米とも同じ

インパネ右下にマルチファンクションキー差込口とスタート/ストップボタンがある。
センターのアクセサリースイッチはダイヤル式。 左グローブボックスに蓋はない。

 

 

新型スーパーグレート 4×2トラクター

 ふそう大型トラックの旗艦モデル。平成28年排出ガス規制適合の最新4×2セミトラクター。

 新世代ダウンサイジングエンジンと最新の12段AMT「シフトパイロット」を全車標準装備。他の新型シリーズと同様、安全性・経済性・快適性を追求したスタイリングを採用。10.7Lエンジン(428ps, 2,100Nm)、12段シフトパイロット、フロントリーフサス、リアエアサス、第5輪荷重:11.5トン。 全長5,595/全幅2,490/全高3,300mm、WB 3,160mm。燃料タンク 350L。

 出展車はハイキャブハイルーフ。365色の工場塗装オプション採用。

 

 配光特性重視、長寿命化したシグネチャーランプ付LEDランプを採用。
 バンパー、グリルは新設計、キャブは旧型を踏襲。旧型同様に、フェンダー、バンパー、ステップ周りで、ハイキャブ・ローキャブに対応。

 

 内装はシート、トリム、インパネ加飾等、「エグゼクティブ」~「エコ」まで3種類のグレードパッケージを用意。
 左ピラーにはキャブ左前直下巻き込み検知用ランプ(アクティブ・サイドガードアシスト)を設置。
 インパネ周りは一新したが、骨格は旧型を踏襲。エンジンフード上部はコンソールを設置している囲い型の形状。

 

 左レバーはパーキングブレーキ。自動ブレーキ、顔認識の居眠り予防装置、進化型オートクルーズの前方車検知で自動停止・発進するシステムなど、安全支援機能が向上している。
 AMTマルチファンクションレバーの設置に伴い、ライティングレバーは右側ダイヤル式になった。モニター、オーディオ、オートクルーズなどはステアリングスイッチ。差し込みタイプのマルチファンクションキーとスタート/ストップボタンを新設。

 



いすゞ: 電動トラック「エルフEV」、デザインコンセプト「FD-SI」

 創立80周年を迎えたいすゞの展示テーマは「運ぶの時代に、できること」。全力で「運ぶ」を支え、社会とともに未来へと進んでいくために同社ができることを提案する展示を行っていた。

 

 創立80周年を記念したアースベージュメタリック色のボディカラーを施したメイン車種を中心に8台を展示。

  1. エルフ (ELF) EV・冷凍冷蔵小型電動トラック: 参考出品・ワールドプレミア
  2. デザインコンセプトモデル 「FD-SI」 小型集配車: 参考出品・ワールドプレミア
  3. 80周年記念モデル: 大型ギガ (GIGA)、中型フォワード (FORWARD)、小型エルフ (ELF) のそれぞれに設定
  4. 6×6多目的トラック、路線バス、海外生産モデル・小型ピックアップトラックを展示
  5. エンジン、トランスミッション、LNG化促進や稼働支援パネルなども展示

 

 

エルフEV:冷凍冷蔵小型電動トラック (参考出品・ワールドプレミア)

 小型トラック市場で高評価を得ているエルフ(ELF)は、1980年代に鉛バッテリー搭載の電動トラックを試作した。
 今回のショーでは、本格的な「エルフEV」電動トラックを冷凍冷蔵バン架装にて出展した。2018年にモニター車両を市場投入する。使用実態に適した経済合理性と利便性の良さを兼ね備えたEV品質の作り込みを実施するとのこと。

 

 ベース車型: ハイキャブワイド、フルフラットロー、全長6,550/全幅2,180/全高2,935mm

 冷凍冷蔵架装可能な電動車。充電用差し込み口は車両右側。カバーはバッテリー用。

 

 モーターはキャブ下、プロペラシャフトでつなぎ後輪駆動。
 リチウムイオンバッテリーは40kWh×2=80kWhで、シャシーフレーム両側に装着。1回充電で最大航続距離は約100km。約150kW、500Nm。

 

(左) ジャンクションブロックの役割  (右) インパネ、メーターパネルは標準車と同様

 

 

デザインコンセプト 「FD-SI (Future Delivery)」 (参考出品・ワールドプレミア)

 モーターショーで恒例のいすゞがデザインサイドから未来のトラックを描くモデル。EVと思われるが、パワートレインや主たる諸元は未提示。2トンワイド小径タイヤで低床ワンフロア相当。未来の小型集配の姿は別途CGでプレゼンしていた。

 

 外形は蜂の巣をデザインモチーフにし、荷室部はハニカム構造とした。積荷は六角形の専用ボックスを重ねた荷姿にできるようにした。

 

 キャビンは1人乗りでセンターシートレイアウト。運転や操作機能はインパネ中央に集約。ステアリングは格納式で、キャビン内のドライバーの移動をスムーズにすることで、操作性、居住性、荷役性が向上するようにした。

 

 

大型トラック 「ギガ (GIGA)」 創立80周年モデル

 いすゞは創立80周年記念モデルとして、大型トラック「ギガ (GIGA)」のほか、中型トラック「フォワード (FORWARD)」、小型トラック「エルフ (ELF)」を出展。

 前回のショーでモデルチェンジデビューした「ギガ」は、今回のショーでは創立80周年記念の旗艦モデルとして新排出ガス適合車が展示された。全長11,950/全幅2,490/全高3,055mm、8×4、リアエアサス、GVW 25トン相当。エンジン出力 380ps、トランスミッションは12段AMT。

 「ギガ」 8×4低床シャシー車+荷台には、大きなNGV(天然ガス車)のPRパネルを設置。

 いすゞが先鞭をつけた総輪小径タイヤ4軸低床車は日本のトラックの代表車種で、各社こぞって大型主力車種として位置付けている。「ウイングボディ」とともに、日本の輸送業界が産み育てた世界に誇る輸送機器である。

 

  大型トラック各車の外形始末の特徴は、ヘッドランプのLED化とステップ周りに表れている。

(左) D-CORE: 大型主力車に搭載する新排ガス規制適合エンジン。
(右) 排ガス後処理装置の拡大とマフラーの大型化でフレームより外出し。エアサスと架装性は問題無し。

 9.9Lエンジン(380PS、1,814Nm)、ピストンのスチール化、リターダー内蔵。
 同時採用のスムーサーGXギアは、地図情報を活用する安全走行支援のオートクルーズ・ギア制御機能「Smartグライド+g」を追加。

記念モデル: ロゴ入り本革シート、赤色シートベルト、メッキドアハンドル等、上質さを演出。

インパネ: 基本的には当初モデルと変更無し。AMT操作(MTとしても使用可能)、パーキングブレーキは、フロアから出ているレバータイプ。
メーターパネル内に、4インチマルチディスプレイ、サイドビュー&バックアイモニターなどを装備。安全確認や運行支援情報の把握性が向上。(各車同等装備)

 

「エルフ (ELF)」 創立80周年記念モデル

 2~3トントラックで16年連続販売台数No.1(自販連)のエルフに、記念カラー施工モデルを設定。
 乗降性向上を図ったキーレスライド、サスペションシート採用で使いやすさを追求。

 サイドビューおよびバックビューを3D相当に把握、表示できるカメラとモニター

 

 

天然ガストラックの動向

 いすゞはディーゼルの効率化と併せて、CNG(天然ガス)等の燃料の多様化を進めている。

 今後は車両軽量化、架装性、走行距離等のメリットから、LNG(液化天然ガス)を採用していきたいとのPRパネル。
 LNGスタンドなどのインフラ整備が必須とのこと。

 

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モーターショー、商用車、トラック、EV、電動車、安全、三菱ふそう、いすゞ

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