東京モーターショー2017:EV搭載システム、48V対応などの電動化技術

豊田自動織機、NTN、ケーヒン、Schaeffler、Mahle、日本特殊陶業の展示

2017/11/10

要約

東京モーターショー2017
日産のプレスブリーフィングでIMxを披露

 東京モーターショー2017(会期:2017年10月25日~11月5日、会場:東京ビッグサイト)は「BEYOND THE MOTOR」をテーマに、乗用車・商用車メーカーはSUVやスポーツカー、トラックなど、各社の独自性を活かしたEVコンセプトを展示していた。

 グローバルな環境規制の強化を受けて、化石燃料を使う内燃機関車から、電気モーターとバッテリーで駆動する電気自動車へのシフトが進む機運が高まっている。従来のエンジンが不要になるEVでは、車作りのあり方が大きく変化すると見られ、特にエンジン関連部品メーカーは危機感が強いとされる。

 一方で、主要国の新車販売は、ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車が大半を占め、EVの市場規模は未だ限られている。日本の2016年新車販売台数496万台(商用車を含む)のうち、電動車(EV/HV/PHV/FCV)は約100万台、このうちEVは3.5万台。(出所:MarkLines年次販売実績データ)

 前回の東京モーターショー2015では、トヨタの4代目Priusやホンダの燃料電池車Clarityの搭載部品がサプライヤーのブースに多く展示されていた。今回のショーでは、特定のEVモデルに向けた搭載部品というよりは、今後のEVシフトに備えた開発製品の展示が多く見られたように思われる。

 各社とも自動車産業が大きな変革期にあるという認識を抱え、電動化技術に強みを持つサプライヤーは商機が拡大するとの期待感から、市場の変化に対応する製品・技術の開発が進められている。



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電動車の市場予測について、全世界の国別、モデル別予測データ(~2027年)もご案内しております。



豊田自動織機:EV対応に向けた電動コンプレッサーの高度化

 豊田自動織機は世界シェアトップのコンプレッサー事業にフォーカスし、トヨタPriusの2代目と4代目に搭載したコンプレッサーを比較する展示を行っていた。

Prius搭載コンプレッサーの新旧比較
展示パネル:インバーターの小型・軽量化

新型コンプレッサーの構成部品
(ESB20:重量 4.5kg、吐出容量 20cc)
旧型コンプレッサーの構成部品
(ES18:重量 6.9kg、吐出容量 18cc)



 同社はEV化の急速な進展を想定した電動コンプレッサーの高度化に向け、①高効率(EVの電費向上)、②静粛性(車室内の快適性アップ)、③搭載性(車両の設計自由度アップ) を目指している。(プレスブリーフィング画像:EV用コンプレッサーのニーズ

 プレスブリーフィングでは2025年頃を想定した電動コンプレッサーの将来コンセプトを紹介。現行製品に比べて体積と質量が半分になるという。

電動コンプレッサー
(ESB27:重量 5.2kg、吐出容量 27cc)
将来型電動コンプレッサー
プレスブリーフィング画像



 豊田自動織機はカーエアコン用コンプレッサーで世界シェア43%を占める。世界60の自動車ブランドに採用されており、2017年に累計生産5億台を達成。車載コンプレッサーの2016年販売台数は3,255万台、このうち電動コンプレッサーは5%程度で、内燃機関車向けのベルト駆動式が大半を占める。同社の電動コンプレッサーはトヨタPrius、Prius PHV、日産LEAFなどに採用されている。

 同社は現在、電動コンプレッサーを刈谷工場で国内生産し、ほぼ8割をトヨタなど国内メーカー向けに納入している。今後は海外メーカーによるEVの需要拡大に対応するため、国外での生産も検討すると表明した。

ガスインジェクション機能付き電動コンプレッサー
トヨタPrius PHVに採用
氷点下でもエンジンを作動させずにヒートポンプ暖房を可能にする
酸素供給エアコンプレッサー
トヨタMIRAIに採用
プレスブリーフィング画像


NTN:電動化対応のモータ・ジェネレータ機能付ハブベアリング「eHUB」

 NTNはEV向けなど電動化に対応したモータ・ジェネレータ機能付ハブベアリング「eHUB」を開発。タイヤの回転を支えるハブベアリングにモータ・ジェネレータを組み合わせたモジュール商品で、現行の足回り設計を大きく変更することなく、ハブベアリングとモータの一体化を可能とした。前輪駆動車の場合、後輪(非駆動輪)に搭載し、モータで駆動アシストしてエンジン負荷を軽減し、減速時には発電機としてエネルギーを電力に回生する。

 eHUB は、スタータジェネレータなど既に実用化された48Vマイルドハイブリッドシステムと組み合わせることで、従来のエンジンのみの自動車と比較して、最大25%の燃費向上が実現するという。また、EVクリープ走行や、すべりやすい路面(低ミュー路)での車両姿勢の安定制御に活用することも可能としている。

eHUB
展示パネル
eHUB搭載例
eHUBの外径はブレーキディスクの内径以下
ブレーキディスクの内側かつブレーキディスクと車体との間に実装できる



 同社ブースではこのほか、EVモジュールとしてインホイールモータシステムを展示。また、主力製品である軸受(ベアリング)やドライブシャフトに加え、インホイールモータシステムや電動ブレーキを含むスケルトンモデルを置き、内燃機関車/HEV/EVに搭載される同社製品を紹介していた。

インホイールモータシステム
展示パネル / 拡大画像
スケルトンモデル
展示パネル
拡大画像:インホイールモータシステム / 電動ブレーキ


ケーヒン:電動車用のパワーコントロールユニットとバッテリーマネジメントシステム

Eドライブシステム/バッテリーシステム
製品紹介資料

 ケーヒンは電動車用製品として、Eドライブシステムとバッテリーシステムを展示。出力を向上したパワーコントロールユニットや、小型・軽量化したバッテリーマネジメントシステムを紹介していた。

  • パワーコントロールユニット
    電動車のモーターを駆動させるためにバッテリーの出力を制御する部品。ケーヒンは業界トップクラスの出力密度43.6kVA/Lを達成。1CPU化、周辺部品のIC集約により、小型化を実現。高出力・小型化で搭載性が向上し、キャビンスペースを広くとった車両設計に貢献する。

  • バッテリーマネジメントシステム
    セル電圧センサー機能を内蔵した樹脂製のアッパーカバーを採用し、小型・軽量化を実現。燃費向上と車室内空間のレイアウト性向上に貢献する。また、走行用バッテリーの多セル化に対応し、航続距離の最大化を実現する。

  • セル電圧センサー
    電池電極とセンサー基板を薄いFPC(フレキシブルプリントサーキット)で接続し、ハーネス重量を大幅に削減。バッテリー監視ICの実装角度に独自性があり、セル電圧の検出精度を向上している。



 同社のパワーコントロールユニットはホンダAccordやOdysseyのハイブリッド車、バッテリーマネジメントシステムはホンダFreedのハイブリッド車などに搭載されている。

パワーコントロールユニット
昇圧機が背面(画像上部の鏡に映っている部分)に搭載されている
バッテリーマネジメントシステム


Schaeffler:48Vハイブリッドモジュールなどの電動モビリティ

Schaefflerの電動モビリティ

 Schaefflerのブースには電動モビリティのスケルトンモデルが置かれ、ハイブリッドモジュール、電動アクスル、ホイールハブ駆動を紹介する電動モビリティの展示コーナーが設置されていた。

  • 48Vハイブリッドモジュール
    48Vの電気モーターと、内燃機関/電気の駆動切り替えを行う自動クラッチを搭載。

  • 電動アクスル (Electric Axle)
    48Vモーターの出力を2段減速ギアやディファレンシャルを介してプロペラシャフトやドライブシャフトに伝達する。

  • ホイールハブ駆動 (eWheel Drive)
    電動モーター、パワーエレクトロニクス、制御装置、ブレーキ、冷却系統など、駆動や減速、安全走行に必要な部品をすべてホイールリムに内蔵。



 Schaefflerは近年、駆動システムの電動化トレンドに注力する研究開発や生産能力の増強に向けた投資を拡大している。電動アクスルやハイブリッドモジュールは、すでに中国からの受注を含む複数の量産契約を獲得している。

 2018年1月には電動モビリティ部門を立ち上げる予定。HV/EV向けソリューションを扱う独立した部門を新設し、電動化への取り組みを加速する。同社の自動車メーカー向け事業のうち、HV/EV向け製品・システムの売り上げ比率は2020年に少なくとも15%に達する見込み。

48Vハイブリッドモジュール
展示パネル
電動モビリティのスケルトンモデル
フロント拡大画像


Mahle:48Vツインパワードライブ、Renault ZOEの充電器など

 Mahleは、シティコミューターなどの小型EVやマイルドハイブリッド車への搭載を想定した電動パワートレインモジュール「48V Twin Power Drive」を出展。2つのIPMモーターとパワーコントローラー、トランスミッション、冷却機構を1つにパッケージングしたもので、48V電源で作動する。展示品の出力は20kW、最大トルクは80Nm。搭載する車両の仕様に応じて、出力40~60kW、最大トルク80~160Nmに対応する。

 同社は2017年9月のフランクフルト・モーターショーで公開したコンセプトカー「MEET (MAHLE Efficient Electric Transport)」の後輪駆動用に48Vツインパワードライブを搭載していた。

48Vツインパワードライブ
展示パネル
コンセプトカー「MEET」
(IAA2017に展示)



 同社はこのほか、RenaultのEV「ZOE」に搭載している充電器などを展示。また、電動化対応部品を含む二輪車・四輪車向け製品を紹介するスケルトンモデルを並べていた。

AC/DC車載用チャージャー
Renault ZOEに搭載
四輪車製品のスケルトンモデル
二輪車製品のスケルトンモデル


日本特殊陶業:セラミック技術を応用した全固体電池

 日本特殊陶業は全固体電池の試作品を出展した。同社が得意とするセラミック技術を応用した酸化物を使用。2020年代の実用化を目指す。

 EV用電池として現在主流のリチウムイオン電池は電解質に液体を使用する。全固体電池は電解質が固体のため、液漏れなどの危険がなくなる。また、電解質が劣化しにくいことからバッテリーの長寿命化が期待され、高密度で大容量のバッテリーを実現できる。

 全固体電池はEVの航続距離を大幅に延長する次世代電池として期待され、トヨタが今回のモーターショーで2020年代前半に実用化を目指すと発表した。トヨタが開発中の全固体電池は硫黄酸化物を利用している。

 日本特殊陶業の全固体電池は、硫黄を含まない酸化物系の固体電解質を使用するので、空気中の水分と反応して硫化水素を発生するリスクが無いとしている。


全固体電池
展示パネル


日系自動車メーカーのEV出展一覧

東京モーターショー2017 日系OEMによるEVの展示・発表内容

トヨタ Concept-愛i, 全固体電池を2020年代に実用化
ホンダ Urban EV Concept (量産モデルを2019年に欧州、2020年に日本で発売予定), Sports EV Concept, NeuV
日産 IMx, LEAF NISMO Concept
三菱 e-EVOLUTION Concept
スズキ e-SURVIVOR
ダイハツ DN PRO CARGO
日野 PONCHO EV
いすゞ ELF EV
三菱ふそう Vision ONE, eCanter, E-FUSOブランド



トヨタ Concept-愛i
内装 / 運転席
ホンダ Sports EV Concept
リア画像
日産 IMx
内装
三菱 e-EVOLUTION Concept
プレスブリーフィング画像
スズキ e-SURVIVOR ダイハツ DN PRO CARGO
プレスブリーフィング画像
日野 PONCHO EV いすゞ ELF EV 三菱ふそう Vision ONE
プレスブリーフィング画像



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キーワード
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