欧州自動車メーカーの自動運転戦略:自動運転車のコンセプトカー、モデル計画

自動運転技術のメリットと開発競争

2017/01/06

概要

Volkswagen I.D. Concept at the 2016 Paris Motor Show. Source: Volkswagen
パリモーターショー2016で公開されたフォルクスワーゲンI.D.コンセプト。
出典:フォルクスワーゲン

  自動運転技術の到来は、自動車業界に大きな影響を与えている。自動運転車は安全性の向上、個々のモビリティの増加、混雑緩和、生産性の向上を実現する可能性を秘めている一方、配車サービスやライドシェアリングなどの新しいビジネスモデルにチャンスを与えるものになる。車両の機能としての自動運転技術の潜在的な市場性および同セグメント内での競争こそが、欧州の自動車メーカーが自動運転技術の開発への投資を拡大している要因である。

  2016年、ドイツの主要自動車メーカー3社すべてが、彼らの将来に不可欠なものとなる自動運転技術に重点を置いた事業戦略を発表した。自動車メーカーは、自動運転技術の開発が進むにつれて、他の機関と提携しながらパイロットプログラムおよび試験プログラムを継続してきた。欧州の自動車メーカーも、引き続きさまざまな先進運転支援システムを搭載した新モデルを予告し、開発し、発売した。

 本レポートでは、自動運転技術の急速な発展に寄与している背景を挙げ、自動運転技術に関する欧州自動車メーカーの最近の動向をまとめる。その中では、現行モデルおよび将来のモデル、ならびに、その考え方と、自動運転システム、戦略、目標などを紹介する。




SAEによる自動運転レベルの概要

自動化レベル 定義
レベル1 - 運転補助 システムが環境情報に基づいて走行中の運転操作のハンドル操作、あるいは加減速補助を行うとともに、ドライバーはシステムによって補助されないすべての運転操作を行う。
レベル2 - 部分的な自動運転 システムが環境情報に基づいて走行中の運転操作のハンドル操作と加減速補助を行うとともに、ドライバーはシステムによって補助されないすべての車両の制御を行う。
レベル3 - 条件付き自動運転 自動システムからの要請にドライバーが適切に対処するという条件のもと、走行中のすべての運転操作を自動システムが行う。
レベル4 - 高度な自動運転 自動システムからの要請にドライバーが適切に対処できなかった場合でも、走行中のすべての運転操作を自動システムが行う。
レベル5 - 完全自動運転 ドライバーが対応可能ないかなる条件のもとでも、自動システムが走行中のすべての運転操作を実行する。



関連レポート:

米国NHTSA:自動運転車へのガイダンスを発表 (2016年11月)
日産とボルボカーズの自動運転:TU Automotive Japan 2016から (2016年11月)
自動運転向け三次元地図:標準化や更新のあり方の検討が進む (2016年9月)
自動運転車の展望:TU-Automotive Detroit 2016より (2016年7月)



自動運転技術の発展の背景

  電気自動車へ移行していく流れは、政府による規制やフォルクスワーゲンの排ガススキャンダルなど、主に外部からの圧力によって促進されている。それに対し、自動車産業における自動運転技術への流れは、それを売り物にしようとする企業および業界固有の競争によって促進されている。

自動運転技術の市場性

  自動運転の安全性に関するメリットについてよく引き合いに出されるのが、車両衝突の約90%が少なくとも何らかの人的ミスによって引き起こされるという主張である。2005年から2007年に米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が実施した調査によると、車両の最初の衝突につながった状況を作り出した直接の原因の94%はドライバーにあると推定している。“Tri-Level Study of the Causes of Traffic Accidents”という別の調査では、車両衝突事故のうち、約93%が明かに人的ミスによって引き起こされた事故、または人的ミスによって引き起こされたと推定される事故であると述べている。自動運転技術によって、車両操作で人的ミスが発生する可能性が低くなる。そのため、自動車メーカーが、事故件数を減らし、車両の安全性を向上させるための切り札として自動運転技術を宣伝することも少なくない。



Crash Reason Pie
衝突事故の主な原因(2005~2007年の調査)
出典:米国NHTSA
Accident Cause Venn Diagram2
3レベル調査による事故原因を示すベン図
出典:Institute for Research in Public Safety



  自動運転車には安全性以外にも、個々のモビリティを増加させるという潜在的なメリットがある。高齢者や身体障がい者のような通常自力でクルマを運転できない人々が、完全自動運転車によって、クルマを利用しやくなるであろう。これにより、自動車メーカーがこれらの人々にさらに多くのクルマを販売する機会が生まれる。もう1つのメリットは、自動運転車によって、ドライバーが運転に費やす時間と精神的なエネルギーを運転以外の活動に活用できるため、ドライバーにとっての快適さおよび利便性が向上するという点である。そのため、自動車メーカーは、自動運転技術のメリットの完全な実現に関心を持つ顧客に訴求できる自動運転技術を開発している。

競争が自動運転の技術開発を促進

  自動車メーカーは、自動運転技術のメリットを実現するにつれて、その自動運転技術を自社の車両、特に高級モデルに採用している。しかし、自動車メーカーが自社モデルと競合モデルとの差別化を図る必要に迫られたことより、自動運転技術にさらに多くの時間と資源を投入して、装備率の向上を促進させるという、ポジティブなフィードバック効果が生まれた。さらに、自動車メーカーはテスラなどの自動車業界内の企業だけでなく、アップルやGoogleなどの自動車業界外の企業との競争に直面している。

  競争の効果は、2016年のパリモーターショーの開催期間中にダイムラーおよびフォルクスワーゲンが発表したモデルに見受けられる。両社はそれぞれMercedes-BenzジェネレーションEQとフォルクスワーゲンI.D.において、自動運転機能を搭載したEV、と言うコンセプトカーを発表した。さらに、ドイツの主要自動車メーカー3社は2016年に、自動運転技術を重視した事業戦略、ダイムラーのCASE、フォルクスワーゲンのTOGETHER-2025、BMWのNUMBER ONE戦略をそれぞれ打ち出している。Volvoがテストプログラムを発表し、ジャガーランドローバーがそれまで躊躇していた自動運転車の研究に着手するなど、他の欧州自動車メーカーも自動運転技術における取り組みを進めている。

  この自動運転の開発において注目に値する競合メーカーが、オートパイロット機能を推進しているテスラである。オートパイロットシステムは2015年10月に導入され、「現在実用化されているなかでも、最も高度なレベル2のドライバー支援機能」といわれるいくつかの機能を備えている。2016年10月、テスラは、完全自動運転機能に必要なハードウェアを同社が今後生産する全モデルに搭載すると発表。自動運転車初の死亡事故がオートパイロット機能で走行するテスラ車で起きたことで、同社のイメージが損なわれたが、自動運転技術の搭載を推進したことで大きな反響を呼び、他の自動車メーカーもこれに対応せざるを得なくなっている。

Tesla Front Cameras
テスラのオートパイロットシステムに使用される3台のフロントカメラ
出典:テスラ
Tesla Model
デトロイトショー2015に出展されたテスラモデルS


注目の自動運転技術搭載モデル:E-Class、7 Series、A4、S90

  多くの欧州の自動車メーカーは、すでにさまざまなレベルの自動運転システムを搭載した車両モデルを発表している。

欧州の自動運転機能搭載主要モデルに取り付けられているセンサーの概要 (テスラモデルSは、比較のために記載)

Mercedes-Benz
E-Class
BMW 7 Series Audi A4 Volvo S90 Tesla Model S
レーダー 前方長距離レーダー(200m)1個、リアバンパーとフロントバンパーのコーナー部に短距離レーダーをそれぞれ2個(30m)、リアバンパーにマルチモードレーダー(80mと30m)を搭載 3個のレーダーセンサーで進行方向を走査(150m)、リアバンパーのコーナー部分にレーダー2個 前方レーダーセンサー2個、後方レーダーセンサー2個(70m) レーダーセンサー4個(フロントセンサー2個、リアセンサー2個)、マルチビームレーザースキャナ(150m、140°) 前方レーダー(160m)
カメラ ステレオマルチパーパスカメラ(前方距離50m、最大500mの範囲まで認識可能)、広角リアビューカメラ、マルチカメラサラウンドビューシステム 前方ステレオカメラ、リアビューカメラ、サラウンドビューカメラシステム フロントガラス取り付け式フロントカメラ(100m)、リアビューカメラ、全方位パークアシストカメラ 140°フロントカメラ、サイドミラーカメラ、リアビューカメラ、フロントグリルに全方位カメラシステム用カメラを搭載 ナローフォワードカメラ(250m)、メインフォワードカメラ(150m)、ワイドフォワードカメラ(60m)、フォワードフェーシングサイドカメラ(80m)2個、リアサイドフェーシングサイドカメラ(100m)2個、リアビューカメラ(50m)
超音波センサー パーキングパイロットシステム用の複数のセンサー パーキングシステム用センサー フロントおよびリアに超音波センサーをそれぞれ6個搭載 超音波センサー12個 超音波センサー12個(8m)



「最もインテリジェントな高級セダン」と謳われるMercedes-Benz E-Class

  デトロイトモーターショー2016で披露されたMercedes-Benz E-Classは、ネバダ州で自動試験走行が認可された初の量産車である。オプションのドライバーアシストパッケージプラスに搭載されたドライブパイロットシステムにより、E-Classはカメラとレーダーを使用して、先行車との設定車間距離を自動的に維持し、最高210km/hまでの追従走行に対応。さらに、E-Classは車線が不明瞭な場合でも、ステアリングパイロットシステムにより、最高130km/hまでステアリング操作に積極的に介入することができる。トラフィックサインアシストシステムは、カメラを使用して制限速度標識の画像を読み取り、これをシステムが処理して制限速度を解釈し、この速度をクルーズコントロールシステムの上限として設定する。

Mercedes-Benz E-Class
デトロイトモーターショー2016で発表されたMercedes-Benz E-Class
Mercedes-Benz E-Class Lane Change
アクティブレーンチェンジングアシストシステムの図
出典:Mercedes-Benz



  E-Classに搭載されているもう1つの半自動システムは、アクティブレーンチェンジアシストシステムである。このシステムでは、レーダーとカメラを使用して、車線変更を自動的に行う前にその車線にクルマが走行していないかを確認する。またE-Classには、クロストラフィック機能付きアクティブブレーキアシストも装備している。この機能は、車両のレーダーシステムを使用して、交差点などで左右から接近してくる車両を検知し、必要に応じてブレーキをかけるというもの。アクティブブレーキアシストは、最高69km/hまでの事故を回避することができる。最後に、E-Classには世界初の完全統合V2X通信システムも搭載されている。このシステムにより、他のE-Class車またはインフラとの通信が可能である。

リモートコントロールパーキングを装備したBMW 7 Series

BMW 7-Series
BMW 7 Series
出典:BMW

  BMW 7 Seriesは、リモートコントロールパーキングシステムを搭載した初の量産モデルである。このシステムにより、ドライバーは車外から駐車区画に駐車できる。このシステムでは、駐車スペースに駐車する前と駐車中にセンサーを使用して、車両の周囲に人やものが無いか確認する。

 7 Seriesに搭載されているもう1つの自動機能は、ストップアンドゴー付きアクティブクルーズコントロールである。この機能では、3つのレーダーセンサーを使用することによって、先行車が停止しても、先行車との間に一定の車間距離を維持することができる。ステアリング&レーンコントロールアシスタントは複数のレーダーシステムとステレオカメラを使用することによって、車両が車線の中央付近を走行するように維持する。アクティブクルーズコントロールとステアリング&レーンコントロールアシストは両方とも最高210km/hまで作動する。




アウディA4のドライバー支援システムでは多様なセンサーを使用

  アウディA4ラグジュアリーセダンに搭載されている支援システムの1つが、トラフィックジャムアシストを含むストップ&ゴーシステム付きアダプティブクルーズコントロールである。このシステムは、2個のフロントフェーシングレーダーと1台のカメラを使用して、ドライバーが設定した車間距離を維持する。渋滞した道路を走行時にトラフィックジャムアシスト機能がレーダー、超音波センサーおよびフロントカメラを使用して最高65km/hまで車両を制御するが、この間、ストップ&ゴー機能がブレーキをかけて完全に停止したり、走行を再開したりできる。プリセンスシティシステムは、85km/h以下で走行中に、フロントカメラを使用して、車両前方最大100mの範囲内に他の車両や歩行者がいないかを走査する。最後に、パークアシストシステムはフロントおよびリアの超音波センサーを使用して、縦列駐車や車庫入れの際にステアリング操作を支援する。

Audi A4
アウディA4
出典:アウディ
Audi A4 Traffic Jam
トラフィックジャムアシストに使用されているアウディA4のシステム
出典:アウディ




ボルボS90に標準装備されているさまざまな半自動技術機能

  ボルボS90は、パイロットアシストシステムやシティセーフティシステムなどの半自動システムを標準装備した初のモデルという点で注目に値する。パイロットアシストシステムは、フォワードフェーシングレーザーレーダーおよびカメラを使用して最高130km/hまで先行車を必要とせずに、さまざまな状況で制動、加速、および操舵を行うことができる。シティセーフティシステムは、S90の進路に存在する車両、サイクリスト、歩行者、および大型動物を検出し、車速が4km/hを超えると有効になる。このシステムによってドライバーに衝突の危険性が警告される。回避行動がとられない場合は、S90は自動的に制動を行い、低速域の衝突を回避したり、高速域での損傷を軽減したりする。S90のオプション装備には、車両付近の物体の検出に使用可能な全方位カメラシステムが含まれる。

Volvo S90
デトロイトモーターショー2016で発表されたボルボS90
Volvo Intellisafe Sensors
ボルボのシステムに使用されているセンサーのオーバーレイおよびそのシステムでカバーされるエリア
出典:ボルボ


欧州の主要自動車メーカーの自動運転コンセプト、将来のモデル、および戦略

  現在、ドライバー支援機能および半自動機能を搭載した車両が導入されているが、多くの自動車メーカーが完全自動運転車の発売を目指しており、これらの機能の確立はこれらのメーカーにとって一つの一里塚にすぎない。

Summary of key future autonomous vehicle plans and goals
将来の主な自動運転車の計画および目標の概要



ジェネレーションEQコンセプトに見られるダイムラーのCASE戦略

  パリモーターショー2016で発表されたMercedes-BenzジェネレーションEQには、自動運転、コネクティビティ、様々な利用形態、電動システムのコンセプトを融合した、ダイムラーのCASE戦略が現れている。この電動SUVコンセプトは、スピードとドライビングダイナミクスに合わせてセンサーヒュージョン能力を強化し、HERE社のマップを利用できるようにし、さらにインフラおよび他の車両との情報交換を可能にするV2X通信技術によって、現在実用化されている自動運転技術を進化させたものである。ジェネレーションEQの量産モデルは、2020年からドイツ ブレーメン工場で生産される予定。

Mercedes-Benz Generation EQ3
Mercedes-BenzジェネレーションEQ
出展:Mercedes-Benz
Mercedes-Benz F 015
北米国際オートショー2015で発表されたMercedes-Benz F015 Luxury in Motionコンセプト



 ダイムラーは、2020年までに完全自動運転が可能な量産モデルの生産を開始するという目標を達成するために、すでに多数のコンセプトカーおよびテスト車両を開発している。CES 2015で発表されたF 015 Luxury in Motionコンセプトは、自動運転車の将来像を表している。同社はこれまで、自動運転機能を乗用車と商用車の両方でテストおよび実証するために、Mercedes-Benz S500インテリジェントドライブ、E‐Class、およびFreightliner Inspirationトラックなどを製作してきた。

フォルクスワーゲンとアウディは自動運転技術へそれぞれ異なるアプローチを取る

  パリモーターショー2016で発表されたフォルクスワーゲンI.D.コンパクト電気自動車のコンセプトは、完全自動運転機能を備えたクルマを予感させるものだった。I.D.コンセプトは、自動運転技術が2025年に実用化された際にI.D.パイロットモードで完全自動運転に対応できるように開発された。I.D.パイロットモードは、ステアリングホイールのフォルクスワーゲンのロゴを3秒間押すと起動する。このモードでは、I.D.はルーフに取り付けられた4つのレーザースキャナーのほかに、超音波センサー、レーダーおよび各カメラを作動させてデータを収集する。この突起状のレーザースキャナーは、間接照明によって照らし出されて、I.D.が自動走行モードで走行中であることを知らせる。フォルクスワーゲンは、2020年までにI.D.の量産車の生産を開始する予定で、価格は約30,000米ドルと見込んでいる。

  2016年6月に開かれたフォルクスワーゲングループの年次総会で、フォルクスワーゲンのCEO Matthias Muller氏が自動運転車に関する一連の発表を行った。同氏が行った発表で最も注目すべきものは、フォルクスワーゲングループが2021年までに完全自動運転車を発売し、その自動システムの開発を自社で行うことである。アウディは、2018年にトラフィックジャムパイロットを搭載した、世界初のレベル3自動運転システムを導入することを発表した。2020~2021年には、アウディはトラフィックジャムパイロットの機能を拡張したハイウェイパイロット機能を導入する予定。

Volkswagen ID Concept3
フォルクスワーゲンI.D.パリモーターショー2016で公開されたコンセプト
出典:フォルクスワーゲン
Audi A7 pilot drive
アウディA7の自動運転コンセプト
出典:アウディ



  アウディは現在、A7パイロットドライブコンセプトを研究用車両として使用して、自動運転技術の開発を進めている。A7自動運転車は、2015年のシリコン・バレーからラスベガスまでの550マイルの試験走行も含めて、さまざまなテストを実施した。Auto Expressによると、新型アウディA8は、長距離レーダー、12個の超音波センサー、レーザースキャナー、および高解像度ビデオカメラを装備し、レベル3自動運転技術を搭載する初の量産車両となる。アウディA8では、デトロイトモーターショー2016に出展されたアウディh-tronクアトロコンセプトに搭載された自動運転技術および駐車技術を使用する。

iNextモデルを中心としたBMWの自動運転戦略

BMW i Vision Concept
BMW iビジョンフューチャーインタラクション車両
出典:BMW

  BMWのプロジェクトiではBMWiブランドが創設され、都市型EVが開発されたのに対し、プロジェクトi 2.0では、完全にネットワーク化された自動運転の開発に主眼が置かれた。プロジェクトi2.0の具体的な研究分野には、ハイビジョンデジタルマップ、センサー技術、クラウドテクノロジー、および人工知能が含まれる。これらの取り組みはすべて、2021年のBMW iNextの発売をもって完了する。

 BMW iNextは同社の自動運転戦略の基礎となるものであり、レベル3以上の自動運転機能を実現することになる。2016年7月、BMWはiNextの開発においてインテルおよびMobileyeと提携することを発表した。これらの提携企業は2017年には、さらに高度な自動運転プラットフォームによるテスト走行を実施する予定である。

  また、BMWはBMWiビジョンフューチャーインタラクションカーコンセプトをCES 2016に出展した。これは、BMW i8コンセプトスパイダーをベースとしたコンセプトで、車両のユーザーインターフェースの未来像を示唆している。例えば、ビジョンフューチャーインタラクションのステアリングホイールは状況に応じて異なる色で点灯し、高度に自動化された走行モードのときは青、ドライバーが車両を制御する必要がある場合は赤でそれぞれ点灯する。高度に自動化された走行モードに切り替えると、ステアリングホイールが前に移動し、シートがセンターディスプレイを向くように回転して車内のスペースが拡がる。ビジョンフューチャーインタラクションの制御要素は数の上では限られているが、最も重要なのがドライブセレクタースイッチであり、これにより、マニュアル、アシスト、または高度に自動化された走行モードに切り替えることができる。

ボルボのビジョン2020の理念で自動運転の開発を鼓舞

  ボルボのビジョン2020では、「新しいボルボ車での交通事故による死亡者や重傷者をゼロにすること」と述べており、この理念こそがボルボの安全性重視の姿勢を促進し、同社のクルマに自動運転技術を導入する主な理由である。ボルボはDrive Meテストプロジェクトの一環としてスウェーデン、ヨーテボリにある専用工場でXC90半自動モデルを開発した。ボルボのエンジニアがこれらのモデルのテストを終了した後、車両はヨーテボリの一般ユーザーに引き渡され公道での走行テストを行う。2018年には、このプロジェクトは完全自動運転機能を搭載した試験車両100台を含む規模にまで拡大される。ボルボは、2021年までに完全自動運転技術を市販車へ導入することを目指している。

他の欧州自動車メーカーも自動運転の戦略を発表

Renault Trezor Concept 2
ルノートレゾアコンセプトカー
出典:ルノー

  2016年1月、ルノー日産アライアンスは2020年までに自動運転技術を10モデル以上に搭載すると発表した。ラグジュアリーモデル向けの自動運転技術の開発に重点を置いていた他の欧州自動車メーカーと異なり、ルノー日産は、手ごろな価格帯の量販モデル向けの自動運転機能を提供することを目標とするという点で注目に値する。この哲学の一方で、ルノー日産は自動運転技術を他の車両セグメントに搭載する意欲を見せている。例えば、ルノーは、パリモーターショーで自動運転モードを搭載したトレゾアコンセプトスポーツカーを発表している。トレゾアは、自動運転モードで走行中、エクステリアライティングシグニチャが変化して周囲の人々に自動運転モードが作動していることを示す。

  PSAのPush to Pass戦略は、車両の使用方法の変化を予測することによって、顧客の移動要求を満たすことを意図している。PSAはロードマップを提示し、自動運転に向けて実用化の準備を進めている具体的なドライバーアシスト技術を示している。2018年、同社は、ドライバーの監視下で自動運転を実現するシステムをトラフィックジャムアシストのかたちで提供する予定。このシステムでは、混雑した道路で特定の速度以下での走行が可能になる。2020年までに、PSAは完全自動運転機能、「ハンズオフ」ドライブを導入する。この機能により、車両の完全制御が可能になる。さらにPSAは、2021年に「アイズオフ」自動システムの導入を検討しており、このシステムでは、ドライバーは道路を注視し続ける必要がなくなる。



自動運転技術開発を促進するための欧州自動車メーカーの活動

  欧州の自動車メーカーはこれまで、自動運転車の技術開発を促進するための大規模な投資、提携、多数のテストおよび試験的プログラムを行ってきた。

ドイツの自動車メーカーは自動運転技術を支援するさまざまな対策を発表

  2013年8月、Mercedes-Benz S-Classをベースとした、ダイムラーのS500インテリジェントドライブ研究車が、マンハイムからプフォルツハイムまでの100kmを自動走行した。また2015年9月には、ダイムラーはカリフォルニア州の公道で自動運転車の試験走行を行う許可を受けた初の自動車メーカーとなった。さらに、2015年10月以降、ダイムラー初の自動運転量産トラック、Mercedes-Benzアクトロスがドイツの公道試験走行を実施している。ダイムラーは試験プログラム以外の活動では、2015年にアウディおよびBMWと共同で、ノキアのHEREデジタルマッピング・ロケーションサービス事業を約28億ユーロで買収している。

Mercedes-Benz S 500 Intelligent
Mercedes-Benz S500インテリジェントドライブ研究車
出典:Mercedes-Benz
Mercedes-Benz Actros
公道走行試験を実施するMercedes-Benz アクトロス
出典:Mercedes-Benz



  フォルクスワーゲングループの自動運転車開発における活動はこれまで、グループ内の投資および組織再編に集中としたものであった。CEO Matthias Muller氏は、2016年6月のフォルクスワーゲンの年次総会で、フォルクスワーゲンが自動運転技術およびソリューションに対して総額で数十億ユーロを投じると発表した。同社はまた、自動運転技術の開発を支援するために、約1,000名のソフトウェアの専門家を雇用する予定である。ロイターによると、フォルクスワーゲンの最高デジタル責任者、Johann Jungwirth氏は、フォルクスワーゲングループが自動運転技術を含めて、新しい技術およびサービスの取得を計画していると述べている。フォルクスワーゲングループのアウディも、自動運転車の開発に特化したSDS Companyという子会社設立を計画している。

  BMWはHEREの以外に、iNextを2021年までに開発することを目的として、インテルおよびMobileyeと提携した。2016年6月のロイターの記事では、同社はiNextの開発を支援するために、2021年までに30,000名の研究開発職員のうち、ソフトウェアエンジニアの比率を20%から50%に増員すると伝えている。さらに複数の情報筋によると、BMWはミュンヘンに自動運転車用の試験センターを新たに建設し、そこに約2,000名の従業員を雇用すると発表した。Business Insiderの記事によると、BMWは、2017年に自動運転車約40台による試験走行をミュンヘン都心部で開始し、将来試験走行の範囲を他の都市にも拡大する予定。

自動運転の開発においてさまざまな段階にある他の欧州自動車メーカー

Volvo XC90 Drive me
Drive Meプロジェクトで使用されるボルボ XC90自動運転車
出典:ボルボ
Citroen C4
シトロエンC4ピカソ試験車
出典:PSA

  ボルボは、自動運転技術の開発に向けたさまざまな企業との協力を発表し、これには、2015年11月のマイクロソフトとの提携、2016年8月のUberとの提携、および2016年9月のオートリブとの合弁会社設立が含まれる。ボルボはまた、V40、S60、XC60などのモデルで、Inrix Trafficアプリケーションを含む、Inrix社のサービスおよび分析と連携させ利用してきた。これらのサービスでは、完全な通行量データを提供する。

 ボルボはこれまでDrive Meテストプロジェクトにも注力してきたが、これは自動運転のXC90のユーザーから利用状況のデータを収集するプロジェクトである。Drive Meテストプロジェクトは2016年9月に、スウェーデンのヨーテボリのトースランダ工場でこのプロジェクトで使用される自動運転車の第1号車が完成したのを皮切りに開始され、2017年には自動運転車としては最大規模の試験走行をロンドンの公道で実施し、さらには中国でも実施する予定。ロンドンでのDrive Meプロジェクトは、2018年までに、使用する完全自動運転車を最大100台にまで拡大して実施する。

  ルノーとPSAは他の自動車メーカーほど、自動運転車の技術に主眼を置いていなかったときでも、両社とも開発における取り組みは行っていた。2016年6月、ルノー日産のCEO、カルロス・ゴーン氏は、ルノー日産アライアンスが自動運転技術を含めた、先進技術に特化した部門を新設し、そこで300名以上の技術専門家を雇用することを検討中であると発表した。2016年11月、ルノーは、ビジョンセンサーおよびコンピュータービジョンソリューションを開発するChronocam SAと提携。2016年9月、PSAは特定の自動運転機能を搭載した4台のシトロエンC4ピカソ試験車が2015年半ば以降、レベル2自動運転での走行距離が60,000kmに達したと発表した。

  最後に、2015年6月にジャガーランドローバーのリサーチ・テクノロジー担当ディレクター、Wolfgang Epple氏が同社は完全自動運転車に関心を持っていないと述べたが、ジャガーランドローバーは自動運転技術の開発に着手した。2016年7月、同社はコネクテッドビークルおよび自動運転技術のテストを実施するために、2020年まで100台以上の研究車を導入する計画を発表。初回の試験走行は、コベントリー(Coventry)とソリハル(Solihull)の周辺の幹線通路および都市部の公道を使って41マイルに渡って実施された。またジャガーランドローバーは、数百万ポンドを投じてオフロード自動走行用のシステムおよび技術も開発。さらにジャガーランドローバーは、自動運転車の開発および試験を行う企業コンソーシアム、「MOVE-UK」に共同出資する。


------------------
キーワード
Mercedes-Benz, BMW, Volvo, VW, Audi, 自動運転

<自動車産業ポータル マークラインズ>