新型軽乗用車の装備: 6車種全車が自動ブレーキを設定
スズキはAlto Lapinに全方位モニター、ダイハツはMoveに車線逸脱警報
2015/07/27
要 約
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多くの先進運転支援装備を搭載したDaihatsu Move (Response提供) |
以下は、日本の自動車メーカーが2014年11月~2015年6月に国内販売した、新型軽乗用車 (新モデルとフルモデルチェンジ車) の主要装備の概要である。本レポートで取り上げた新型軽乗用車は、ホンダ、スズキ、ダイハツの各2車種で、計6車種である。
走行性能装備では、2014年10月に軽自動車への搭載が義務化された横滑り防止装置 (ESC) が全車種に標準装備された。衝突安全性装備では、前席サイドエアバッグと前後席カーテンエアバッグの搭載が拡大した。
運転・駐車支援装備では、車両の前後左右に装着したカメラにより、車両を真上から見たような俯瞰映像を表示する全方位モニターが採用された。バックカメラの機能を強化し、俯瞰映像の表示機能を追加したシステムの設定も拡大した。また、国土交通省が2014年度から予防安全性能アセスメントで評価を開始した衝突被害軽減ブレーキ (対車両) の搭載は新型車全車種に拡大。歩行者に対する衝突警報機能や車線逸脱警報機能の採用も始まった。
視認性確保では、LEDヘッドランプの設定が拡大。快適・利便性装備では、運転席シートヒーターの採用が増加。スマートフォンと連携したナビゲーションシステムの設定が全車種に拡大した。
ホンダ、スズキ、ダイハツが新型軽乗用車に設定した主な先進装備 |
(2014年11月~2015年6月に日本で発売した新型車) |
装備 | 設定車種 | |
---|---|---|
走行性能 | ESC | 全6車種 |
衝突安全性 | 前席サイド & 前後席カーテンエアバッグ | Honda N-BOX Slash, Daihatsu Move |
運転・駐車支援 | 全方位モニター | Suzuki Alto Lapin |
バックカメラ (俯瞰映像表示機能付) | Suzuki Every Wagon, Daihatsu Move | |
低速域衝突被害軽減ブレーキ (対車両) | 全6車種 | |
衝突警報機能 (対歩行者) | Daihatsu Move | |
車線逸脱警報機能 | Daihatsu Move | |
視認性確保 | LEDヘッドランプ | Honda S660, Daihatsu Move/Wake |
快適・利便性 | 運転席シートヒーター | Honda N-BOX Slash, Suzuki Alto Lapin/ Every Wagon, Daihatsu Move/Wake |
スマートフォン連携ナビゲーション | 全6車種 |
新型車装備レポートシリーズ:
日本の新型車装備 (2015年7月掲載)、
Hyundai/Kia の新型車装備 (2015年6月)、
ドイツ3社の新型車装備 (2014年10月掲載)、欧州メーカーの新型車装備 (2015年1月掲載)、
米国の新型車装備 (2014年7月掲載)
走行性能装備と衝突安全装備:ホンダがハンドリング支援装備、ダイハツが空力フィンを採用
走行性能装備では、ホンダが軽スポーツカーのS660に、軽自動車初となるハンドリング支援システム、アジャイルハンドリングアシストを搭載。ダイハツが軽超スペースワゴンのWakeに、車両の操縦安定性に寄与する空力フィンを、ダイハツ車として初めて採用した。
衝突安全性に関する装備では、ホンダが助手席用に開発した、より長い時間圧力を保持する世界初のエアバッグをS660に搭載。また、ホンダとダイハツは、前席サイドエアバッグと前後席カーテンエアバッグの設定を拡大した。
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軽スポーツカーHonda S660 (Honda プレスリリースより) | 軽超スペースワゴンDaihatsu Wake (Response提供) |
新型軽乗用車の走行性能 (燃費向上を含む) と衝突安全性に関する装備 |
◎は全仕様に標準装備、○は一部仕様に標準装備、△はオプション設定。 |
OEM | ホンダ | スズキ | ダイハツ | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
モデル | S660 | N-BOX Slash | Alto Lapin | Every Wagon | Move | Wake | |
軽 スポーツ カー | 軽トール ワゴン | 軽ハッチ バック | 軽ワゴン | 軽トール ワゴン | 軽超 スペース ワゴン | ||
発売時期 | 15年4月 | 14年12月 | 15年6月 | 15年2月 | 14年12月 | 14年11月 | |
走行性能 (燃費向上 を含む) | ESC (ホンダはVSA、スズキはESP、 ダイハツはVSCと呼称) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
アジャイルハンドリングアシスト (下表1) | ◎ | ||||||
空力フィン (下表2) | ○ | ||||||
エネチャージ (減速エネルギー回生機構) | ○ | ||||||
CVTサーモコントローラー | ◎ | ◎ | |||||
アイドリングストップシステム | ○ | ◎ | ○ | ◎ | ◎ | ||
衝突 安全性 | 助手席用i-SRSエアバッグシステム (内圧保持タイプ) (下表3) | ◎ | |||||
前席 SRS サイドエアバッグ | △ | ◎ | |||||
前席i-サイドエアバッグシステム (容量変化タイプ) | ◎ | ○ | |||||
前後席SRSカーテンシールド エアバッグ | ○ | △ |
資料:ホンダ、スズキ、ダイハツの新車発表資料, 2015年7月上旬の各社の On-Line Catalog | |
(注) 1. | スズキは2014年12月に軽自動車のAlto、2015年6月にAlto派生車の Lapin を全面改良して発売したが、本表では発売時期が遅い方の Lapin の装備搭載状況を記載する。 |
2. | ダイハツ Move は、2014年12月に全面改良後、2015年4月に一部改良された。本表は一部改良後の装備搭載状況を示す。 |
ホンダが設定した主な先進装備
(1) アジャイルハンドリングアシスト | (軽初) 軽自動車で初採用したハンドリング支援システム。車体の動きに応じたコントロールにブレーキ制御を活用することで、旋回に入る際の応答性や旋回中のライントレース性を高める。 |
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(3) 助手席用 i-SRS エアバッグシステム (内圧保持タイプ) | (世界初) 運転席に比べてエアバッグと乗員との距離が離れている助手席用の内圧保持エアバッグ。衝突のエネルギーを吸収するために内部のガスを排出するベントホールを、乗員を受け止めるまでは開かないスリット状にすることで、より長い時間圧力を維持し乗員保護にも配慮した設計。 |
ダイハツが設定した主な先進装備
(2) 空力フィン | (ダイハツ車初) 空気の流れに着目し、空力フィンを採用することで、直進安定性を高めた。ドアミラーの根元とテールランプに装着し、車両の操縦安定性を高めている。 |
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運転・駐車支援装備:バックビューモニタと衝突被害軽減ブレーキの設定拡大
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全方位モニターを設定したSuzuki Alto Lapin (Suzukiプレスリリースより) |
運転・駐車支援装備では、スズキが軽ハッチバックのAlto Lapinに全方位モニターを設定。また、俯瞰映像の表示機能を追加したバックカメラを、スズキとダイハツが採用した。通常のバックカメラを含めると、国土交通省が2015年度から予防安全アセスメントで評価を開始した後方視界情報提供装置 (バックビューモニタ) の設定は、全車種に拡大している。
予防安全装備では、全6車種が低速域衝突被害軽減ブレーキ (対車両) と誤発進抑制機能 (前方) を設定。ダイハツの衝突回避支援システム "スマートアシスト II" を搭載したMoveは、歩行者に対する衝突警報、車両逸脱警報、軽自動車初の誤発進抑制機能 (後方) も設定した。
新型軽乗用車の運転・駐車支援に関する装備
OEM | ホンダ | スズキ | ダイハツ | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
モデル | S660 | N-BOX Slash | Alto Lapin | Every Wagon | Move | Wake | |
発売時期 | 15年4月 | 14年12月 | 15年6月 | 15年2月 | 14年12月 | 14年11月 | |
運転・駐車 支援 | 全方位モニター (下表1) | △ | |||||
バックカメラ (3モード切替機能・ステア リング連動ガイド線表示機能) (下表2) | △ | ||||||
バックアイカメラ (下表3) | △ | ||||||
バックカメラ | △ | ○ | △ | ||||
エマージェンシーストップシグナル | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
電子制御パーキングブレーキ | ◎ | ||||||
クルーズコントロールシステム | ○ | ○ | |||||
D assist 切替ステアリングスイッチ (パワーモード選択) (下表4) | ◎ | ||||||
SPORTスイッチ (下表5) | ○ | ||||||
モード切替ステアリング (下表6) | ◎ | ||||||
ECONモード | ◎ | ||||||
エコドライブアシスト照明 | ○ | ○ | ◎ | ◎ | |||
衝突回避支援システム "スマートアシスト"(下表7) | ○ | ||||||
衝突回避支援システム "スマートアシストII" (下表8) | ○ | ||||||
低速域衝突被害軽減ブレーキ (対車両) (下表9) | △ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | |
誤発進抑制機能 (前方) | △ | ○ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | |
先行車発進お知らせ機能 | ○ | ○ | |||||
衝突警報機能 (対歩行者) | ○ | ||||||
誤発進抑制機能 (後方) | ○ | ||||||
車線逸脱警報機能 | ○ |
資料:ホンダ、スズキ、ダイハツの新車発表資料, 2015年7月上旬の各社の On-Line Catalog
ホンダが設定した主な先進装備
(5) SPORTスイッチ | メーター横のスイッチを押し、SPORTモードをONにすると、より素早いアクセルペダル操作にも応えるレスポンスが得られ、ダイレクト感が向上。メーターのカラーは赤基調となり、瞬間燃料計はブースト計に切り替わる。アイドリングストップ機構は解除される。 |
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(6) モード切替 ステアリング | インストルメントパネルのスイッチで、パワーステアリングのアシスト量を切り替える機能。標準は、重めの設定でしっかりとした手ごたえのあるステアフィール。乗る人の好みにより、軽めの設定に切り替えられる 。 |
(9) 低速域衝突被害軽減 ブレーキ (対車両) | ホンダの呼称はシティブレーキアクティブシステム。約5~30km/hで走行中にレーザーレーダーで先行車を検知し、衝突する可能性があると判断した場合に作動する。 |
スズキが設定した主な先進装備
(1) 全方位モニター | 車両の前後左右4カ所にカメラを設置し、車両を真上から見たような俯瞰の映像などを7インチの大画面モニターに映し出す。前後の間隔がつかみにくい縦列駐車や狭い道でのすれ違い、左右の見通しが悪い場所からの発進時など、運転席からは見えにくい視界を補う。 |
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(3) バックアイカメラ | 後方確認を補助する2つの機能を有する。後退時左右確認サポート機能:シフトレバーをR(リバース)の位置に入れると、モニターに車両後方の映像が映し出され、左右から後方に接近してくる車や人などの移動物を検知。モニター内の表示が点滅するとともにブザーの音でドライバーに知らせる。 |
自動俯瞰(ふかん)機能:バックでの駐車時に停車位置が近づくと、モニター内の映像を、上から見たような画像に自動で切り替え、後方の距離感をつかみやすくする。 | |
(9) 低速域衝突被害軽減 ブレーキ (対車両) | スズキの呼称はレーダーブレーキサポート。約5~30km/hで走行中にレーザーレーダーで先行車を検知し、衝突する可能性があると判断した場合に作動する。先行車との速度差が約15km/h以下のときは、衝突を回避できる場合があり、約30km/h以下のときは、衝突の被害を軽減する。 |
ダイハツが設定した主な先進装備
(2) バックカメラ (3モード切替機能・ ステアリング連動 ガイド線表示機能) | 従来のノーマルビューに加え、真上から見下ろした視点で駐車時に便利なトップダウンビュー、ワイドビューに切り替えられる。また、ハンドル操作と連動し、進路方向を表示するステアリング連動ガイド線表示機能を追加。 | |
---|---|---|
(4) D assist 切替 ステアリングスイッチ | (軽初) ステアリングスイッチのワンタッチ操作で、「パワーモード」への切り替えが可能。エンジン・CVT の制御を変更することにより、アクセル操作に対するレスポンスが良くなり、出足加速時や登坂時にストレスない運転ができる。 | |
(7) スマートアシスト | ダイハツの衝突回避支援システム。レーザーレーダーとソナーセンサーを使用し、低速域衝突回避支援ブレーキ機能、誤発進抑制制御機能、先行車発進お知らせ機能を含む。 | |
(8) スマートアシストII | スマートアシスト II は、従来のスマートアシストで搭載していたレーザーレーダー、ソナーセンサーに加え、単眼カメラを新搭載し、機能追加や性能向上を図っている。 | |
機 能 追 加 | 衝突警報機能 (対歩行者) | 約4~50km/hで走行中、単眼カメラで前方に歩行者を認識し、衝突の危険性があると判断した場合に、ブザーとメーター内の警告灯でドライバーに危険を警告。 |
車線逸脱 警報機能 | 約60km/h以上で走行中、単眼カメラが車線を認識後、ウィンカーを出さずに、走行している車線から車両がはみ出しそうになると、ブザーとメーター内の警告灯でドライバーに危険を警告。 | |
誤発進抑制 制御機能 (後方) | (軽初) 後方2~3m先までに壁などの障害物があることをソナーセンサーが検知している時に、必要以上にアクセルペダルを踏み込んだとシステムが判断した場合、ブザーと警告等でドライバーの注意を喚起するとともに、約8秒間エンジン出力を抑えて急発進を防止する。 | |
性 能 向 上 | 衝突回避支援 ブレーキ機能 | 約4~50km/h (従来は約4~30km/h) で走行中に前方車両を認識し、衝突の危険性が高まった場合に、緊急ブレーキが作動し、被害軽減や衝突回避を支援 (速度差約30km/h以内で作動)。 |
衝突警報機能 (対車両) | 約4~100km/h (従来は約4~30km/h) での走行中に前方の車両を認識し、衝突の危険性があると判断した場合に、ブザーとメーター内の警告灯でドライバーに危険を警告 (速度差約60km/h以内で作動)。 |
視認性確保と快適・利便性装備:スマートフォン連携ナビゲーションの設定が全車種に拡大
視認性確保に関する装備では、ホンダがS660、ダイハツがMoveとWakeにLEDヘッドランプを設定。自動電動格納式のドアミラーの搭載も4 車種に拡大した。
快適・利便性装備では、ホンダがS660にオープンモデル用のミッドモード付エアコンディショナーを搭載。シートヒーターの搭載も拡大し、運転席では5車種が設定。ホンダのN-BOX SlashとスズキのAlto Lapinは助手席にもシートヒーターを搭載した。また、スズキはEvery Wagonの後席左側に電動オートステップを採用。スマートフォン連携ナビゲーション (車載器に対応するスマートフォンを接続して、スマートフォンのアプリケーション等を車載器で利用する) の設定は、全車種に拡大した。
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前席シートヒーターを設定したHonda N-BOX Slash ( Hondaプレスリリースより) | 電動オートステップを採用したSuzuki Every Wagon (Suzukiプレスリリースより) |
新型軽乗用車の視認性確保と快適・利便性に関する装備
OEM | ホンダ | スズキ | ダイハツ | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
モデル | S660 | N-BOX Slash | Alto Lapin | Every Wagon | Move | Wake | |
発売時期 | 15年4月 | 14年12月 | 15年6月 | 15年2月 | 14年12月 | 14年11月 | |
視認性 確保 | ディスチャージヘッドランプ | ○ | ○ | ||||
LEDヘッドランプ | ◎ | △ | ◎ | ||||
オートライトシステム | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
電動格納式ドアミラー (オート) | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
ヒーテッドドアミラー | ○ | ◎ | ○△ | ○△ | |||
ウインドシールドディアイサー | △ | ||||||
ミッドモード付フルオート・ エアコンディショナー (下表1) | ◎ | ||||||
「ナノイー」搭載フルオートエアコン | ○ | ||||||
快適・ 利便性 | 運転席シートヒーター | ○ | ◎ | ○ | △ | ○△ | |
助手席シートヒーター | ○ | ○ | |||||
ステアリングヒーター | ○ | ||||||
蓄冷エバポレータ (空調ユニット内に蓄冷材を内蔵し、 アイドルストップ中も冷風を送る) | ○ | ○ | |||||
電動オートステップ (後席左側) (下表2) | ○ | ||||||
ワンタッチウインカー/ワンタッチターン シグナル機能付方向指示スイッチ | ◎ | ◎ | ◎ | ||||
上下2段調節式デッキボード (トランクの荷物積載用) | ○△ | ||||||
ピュアサウンドブース (下表3) | △ | ||||||
サウンドマッピングシステム (上級オーディオシステム) | ○△ | ||||||
マルチインフォメーションディスプレイ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |||
メーター音声案内機能 | ○ | ||||||
ワイヤレス充電器 | ○△ | ||||||
スマートフォン連携ナビゲーション | △ | △ | ○ | △ | △ | △ |
資料:ホンダ、スズキ、ダイハツの新車発表資料, 2015年7月上旬の各社の On-Line Catalog
ホンダが設定した主な先進装備
(1) ミッドモード付フルオート・エアコンディショナー | オープンスポーツカーのための専用エアコン。夏の日差しや冬の冷気を強く受ける腿や腰、腹部周辺に向けて集中的に送風する「ミッドモード」を設定。 |
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(3) ピュアサウンドブース | ドアパネルやテールゲートパネルなどに、吸音材や制振材を埋め込む内装施工を行い、車室内の静粛性、制振性を高め、音響表現の向上と乗る人の居心地をより快適にする。 |
スズキが設定した主な先進装備
(2) 電動オートステップ | 左側スライドドアの開閉に連動して、電動オートステップが出現および格納する。ステップの地上からの高さは220mmで、後席への乗り降りがさらにスムーズになる。 |
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