中国の日系部品メーカー(上):華南・華中・西南での動向

既存工場の生産能力増強、新生産拠点建設、営業・開発強化

2015/01/08

要 約

 本レポートは、中国における日系部品メーカーの、華南・華中・西南などでの動向をまとめた。(2014年2月から2014年11月までの約10ヵ月間を収録)

 日系部品メーカーは、広東省では既存工場の生産能力増強を、湖北省・湖南省・河南省・重慶市などの内陸では新会社・工場建設を主に進めている。また、各地で営業・開発・品質保証などの体制強化の動きも見られる。既存納入先の日系メーカーに加えて、欧米系メーカー、中国メーカーからの受注獲得も活発化している。

華南周辺
華南周辺
(クリックすると拠点マップが開きます)
華中・西南周辺
華中・西南周辺
(クリックすると拠点マップが開きます)
生産能力増強
(*は新品目も生産)
生産ライン・
設備等の増設
【広東省】曙ブレーキエイチワン河西工業サンコール、タイガースポリマー、日信工業日鍛バルブパイオラックス古河電工ユタカ技研ユニプレス*
【湖北省】エイチワンパイオラックスユタカ技研
工場増設 【広東省】アーレスティテイ・エス テック(移転に伴う拡張)、ユニプレス
新会社設立・工場建設/稼働
(*は新品目生産)
【湖北省】ケーヒン小糸製作所、JSP、タチエス(大連市でも稼働)、古河AS
【湖南省】アステア、太平洋工業*
【河南省】日立化成*
【重慶市】矢崎総業
営業/開発/品質保証などの体制強化
(  )は所在地
鬼怒川ゴム(広州)、三遠機材(広州)、ショーワ(広州)、日信工業(重慶)

日系部品メーカー動向関連レポート:

・ インド編 (2014年11月)
メキシコへの新規進出 (2014年10月)、メキシコでの工場拡充・ブラジルでの動向 (2014年10月)
タイ編 (2014年9月)
インドネシア編 (2014年6月)、ベトナム/マレーシアなど編 (2014年6月)、欧州編 (2014年7月)、米国編 (2014年3月)
中国編(下):華南・華北・東北などでの動向 (2014年3月)、中国編(上):華東・華中地域の動向 (2014年3月)



華南:広東省での動向

広東省

アーレスティ
広州市に第3工場が2014年9月に竣工
アーレスティは、2014年9月に広州阿雷斯提汽車配件有限公司(Guangzhou Ahresty Auto Parts Co., Ltd.) の新第3工場が第1工場隣接地に竣工。レンタル工場だった旧第3~第5工場を新第3工場に集約する。物流効率や人材面での無駄を省くとともに、生産量の増加に対応。自動車用エンジン向けダイカスト部品の月産能力は2600トンに拡大。また、同社は2014年6月に中国のVW系メーカーへの量産納入を開始。
曙ブレーキ
広州工場でキャリパーの3ライン増設
曙ブレーキは、ディスクブレーキやドラムブレーキなどを製造する広州曙光制動器有限公司(Akebono Corporation (Guangzhou))のキャリパーの生産ラインを3本増設し、2015年夏までに7ライン体制にする。月産能力を2014年前半の20万個から35万個に高める。主要取引先の日産系メーカーに加え、GM系や他の日系メーカーなどからの新規受注に対応する。
エイチワン
広東省の2工場の生産能力増強
エイチワンは、清遠愛機汽車配件有限公司(QH Auto Parts Industries Inc.(広東省清遠市))に約27億円を投入し、1500トンプレス機2台などを導入し生産能力を増強。2015年4月に稼働予定。また、広州愛機汽車配件有限公司(GH Auto Parts Industries Inc.)には約17億円を投じて3000トンサーボプレス機を設置し、2016年8月に稼働予定。更に、広州地域での溶接能力増強のため約16億円を投じて高効率溶接ロボットラインを導入し、2014年10月に稼働。ホンダ系メーカーの増産計画に対応し、ボディパネル・フレーム部品を増産する。高ハイテン材採用部品の増加にも対応。
河西工業
広州の工場で成形天井の生産体制整備へ
河西工業は、三和工業(広島市)と共同出資の広州艾司克汽車内飾有限公司(Guangzhou S.K. Automoive Interior Co., Ltd.)に、日産系メーカー向けの成形天井の生産体制を整備するため、プレス機、部品組み付け用設備を2017年までに導入する。現在は、スペインの内装部品メーカー、アリントン(GA)が広州の日産系メーカー向けに供給している。しかし、河西工業はGAとの提携を解消したため、次期車での受注に向けて供給体制を整える。
鬼怒川ゴム
広州の生産拠点で品質対応体制を強化
鬼怒川ゴムは、中国で部品の設計開発から品質保証まで一貫して対応できる体制を構築する。その一環として、鬼怒川橡塑(広州)有限公司(Kinugawa Rubber and Plastic Guangzhou Co.,Ltd.)で、2014年度に数千万円を投じて試験設備を増強。欧米メーカーの品質要求性能も現地で確認できる体制を構築する。併せて検査員教育も拡充し、主要顧客を中心に日系・欧米系メーカーへの車体シール部品の拡販を強化する。
三遠機材
広州に販売子会社設立
三遠機材は、2004年3月に三遠(広州)商貿有限公司(SANEN (Guangzhou) CO.,LTD.)を設立。資本金は5000万円。主要取引先の日系変速機メーカーの現地工場に無段変速機(CVT)向け部品を供給する体制を強化する。
サンコール
広州拠点で弁ばね、リングギアの生産能力を拡大
サンコールは、2014年度中に広州新確汽車配件有限公司(Suncall (Guangzhou) Co., Ltd.)の生産ラインを増設し、エンジン部品の生産能力を引き上げる。2015年3月までにエンジン用弁ばねを前年度比2倍の月産200万個に、リングギアを同2.5倍の月産18万個に拡大し、日系メーカーの生産増加に対応する。投資額は3億円。
ショーワ
広州で研究開発拠点を新設
ショーワは、昭和汽車零部件研究開発(広州)有限公司(Showa (Guangzhou) Auto parts R&D CO.,LTD.)を2014年8月に設立。資本金は約2億円。顧客の新車種投入に対応したショックアブソーバーなどの新機種開発、現地調達、品質対応を含めた開発力の強化や迅速化を図り、販売拡大のための基盤を構築する。海外では初の研究開発拠点。
タイガースポリマー
広州の拠点でエンジン用空気清浄装置の生産ライン拡張
タイガースポリマーは、広州泰賀塑料有限公司(GUANGZHOU TIGERS POLYMER CO.,LTD.)のエアクリーナーフィルターの生産ラインを2014年度に拡張し、清浄用のフィルターを入れる樹脂ケースの成形機を4台増設する。空気清浄装置の年産能力は2013年度比2倍の100万個に増加。
テイ・エス テック
広州市増城区政府の要請で2016年に同区内に移転
テイ・エス テックは、広州市増城区の都市開発計画に伴う要請を受けて、2016年7月に広州提愛思汽車内飾系統有限公司(GUANGZHOU TS AUTOMOTIVE INTERIOR SYSTEMS CO.,LTD.)工場を同区内の北東約12キロメートルに移転する予定。新しい敷地面積は現状の約2倍、建屋面積は約1.6倍だが、四輪車用シートの年産能力は現状とほぼ同規模の50万台とする計画。工場内物流の効率化や使用エネルギーを抑えた環境配慮型の新工場とする。
日信工業
広東省中山市の工場を拡張し、ブレーキシステムの生産能力増強
日信工業は、2014年度からの新中期経営計画で中国への設備投資を重点的に増強する。ブレーキ製品を生産する広東省の中山日信工業有限公司(Zhongshan Nissin Industry Co., Ltd.)に新工場建屋を建設し、ブレーキシステムの生産能力を増加させるほか、組み立てのみだった横滑り防止装置の一貫生産を2014年度から本格化させる。ハイブリッド車の回生協調ブレーキの現地生産も視野に入れている。
日鍛バルブ
広州工場のエンジンバルブ生産能力拡張へ
日鍛バルブは、広州日鍛汽門有限公司(GUANGZHOU NITTAN VALVE CO.,LTD.)でエンジンバルブの年産量を2018年度までに2013年度の2000万~2500万本から7000万~8000万本に増大させる計画。2015年春にも既存工場の生産ラインを10本から12本に、2017年度までに15ラインに増強する。2017~18年度には、10ラインを備えた新工場を建設する計画。
ニッパツ
広州のシート部品子会社を清算
ニッパツは2014年3月、広州日発汽車零部件有限公司(NHK SEATING (GUANGZHOU) CO.,LTD.)を解散し、2015年3月末までに清算する予定と発表。シート構成部品の製造販売を目的に2011年に設立したが、当初の目的達成が困難と判断。広州で行っている開発設計業務は、湖北日発汽車零部件有限公司(NHK SEATING (HUBEI) CO.,LTD. 湖北省襄樊市)で継続する。
パイオラックス
中国で生産能力を8割増、東莞工場と武漢工場で品目毎に集中生産
パイオラックスは、2014~16年度に約30億円を投じて中国での生産能力を2013年度比約8割引き上げる。広東省の東莞百楽仕汽車精密配件有限公司 (DONGGUAN PIOLAX CO., LTD.)では、近隣工場をリースで確保し、生産スペースを1.5倍に拡張。金属部品や組立設備を中心に生産能力を増強する。武漢百楽仕汽車精密配件有限公司(WUHAN PIOLAX CO., LTD.)も樹脂部品の生産能力を増強し、東莞工場から一部樹脂部品の生産移管を開始。上記2工場で品目毎の集中生産体制を整備し、日米欧・韓国・中国メーカーの現地生産に対応する。
古河電工
深センの工場でバッテリーステートセンサーの生産ライン増設
古河電気工業は、アイドリングストップシステム用電池の充電状況などを感知するバッテリーステートセンサー(BSS)の受注拡大に対応し、古河電工(深セン)有限公司(Furukawa Electric (Shenzhen) Co,. Ltd.)で2014年夏に生産設備を1ライン増設し2ラインとした。2015年以降も更なる増設を検討。
ユタカ技研
佛山市の工場のAT用部品の生産能力増強
ユタカ技研は、佛山優達佳汽配有限公司(FOSHAN YUTAKA AUTO PARTS CO., LTD.) のトルクコンバーターの生産ラインを1ライン増設し、3ラインに拡張する。新ラインは2015年1月に稼働予定。生産台数は2014年の90万台分から2016年に130万台分に増える見通し。なお、年産能力を2014年の50万台分から、76万台分に引き上げる、との報道もある。投資額は約9億円。ホンダ系メーカーの生産拡大に対応。一方、排気系部品も同工場および湖北省の武漢金豊汽配有限公司(WUHAN JIN FENG AUTOPARTS CO., LTD.)で徐々に生産能力を増強。
ユニプレス
広州の工場で新たにトルクコンバーター生産、中国統括会社の新社屋も建設へ
ユニプレスは、広州優尼精密有限公司(Unipress Precision Guangzhou Corporation)の工場の一部を拡張し、新たに受注したトルクコンバーターの生産ラインを2014年11月に設置。量産開始は2015年8月(予定)。また、クラッチパックやサンギアなどの自動変速機用部品の従来製品についても、受注増に対応し2014年に隣接地に用地を取得。2016年秋までに工場を増設する。売上高は、2013年度の約70億円から2016年度までに100億円以上に拡大させる。この他、新工場の敷地内に中国子会社を統括管理するユニプレス(中国)(優尼冲圧(中国)投資有限公司:UNIPRES (China) Corporation、広州市)の新社屋も建設する。

 

 



華中:湖北省・湖南省・河南省での動向

湖北省

エイチワン
湖北省武漢工場の生産能力増強
エイチワンは、2014年に武漢愛機汽車配件有限公司(WH Auto Parts Industries Inc)第2工場の溶接ラインに最新鋭ロボットを26台追加して自動化率を上げ、骨格部品の生産能力を増強。投資額は約4億円。さらに、プレス工場に3000トンサーボトランスファープレス機を増設し2016年8月に稼働予定。投資額は約17億円。主要取引先の増産計画に対応する。
エフテック
湖北省武漢工場で日産・ルノーの共用部品のペダルを供給
エフテックは、偉福科技工業(武漢)有限公司(F.tech (Wuhan) Inc.)で日産・ルノーの部品共用化構想(CMF)第一弾車種用のペダルを2014年に生産開始。納入先は、米国、中国、英国の日産の現地工場。2016年に稼働予定の東風ルノー汽車(武漢)のCMF用ペダルを同工場から供給する見通し。
ケーヒン
湖北省仙桃市にカーエアコンの室内ユニットの新会社設立
ケーヒンは、2014年7月にカーエアコンの室内ユニット(HVAC)を生産する京濱(武漢)汽車零部件有限公司(Keihin (Wuhan) Automotive Parts Co; Ltd.略称KWH,仙桃市)を設立。資本金は3090万元(約5億円)で、広東省の東莞京濱汽車電噴装置有限公司(Dong Guan Keihin Engine Management System Co., Ltd.略称KDG)が100%出資。工場はレンタルで、2015年末に年産能力40万台で生産開始。2016年には、設備投資のために資本金を6630万元(約10.9億円)に引き上げる。ケーヒンの中国でのHVACの年産能力は、KDGの40万台と合わせ80万台になる。
小糸製作所
湖北省孝感市に4拠点目となるランプ新子会社設立
小糸製作所は中国で4拠点目となる自動車用ランプ生産子会社、湖北小糸車灯有限公司(Hubei Koito Automotive Lamp Co., Ltd. 孝感市)を2014年9月に設立。資本金は10億円だが工場建設、設備導入の進捗状況により増資する。工場の稼働は2016年7月予定。年産能力は、自動車用前照灯、標識灯が各々50万台。納入先は、華中地域の日系メーカー1社が確定しており、その他に順次他社からの受注拡大も図る。中国全体での年産能力は、既存3拠点と合わせて前照灯が710万台、標識灯が740万台。
JSP
湖北省武漢市に4拠点目となる発泡ポリプロピレンの新会社設立を発表
JSPは2014年11月、発泡ポリプロピレンの製造販売会社の杰斯比塑料(武漢)有限公司(JSP Plastics (Wuhan) Co., Ltd.)設立を発表。約12億円を投じて新工場を建設し、2017年1月に稼働予定。年産能力は3000トン。JSPは、既に江蘇省、広東省、重慶市の3拠点で同じ製品を生産しているが、生産能力に余力がないことや輸送費の軽減を図るため、新会社で華中・西南地区での需要拡大に対応する。
タチエス
湖北省襄陽市と遼寧省大連市のシート新工場が2014年に稼働
タチエスは、東風日産乗用車公司の新規生産車種での受注に伴い、2013年に設立した襄陽東風李爾泰極愛思汽車座椅有限公司(TACHI-S Lear DFM Automotive Seating (Xiangyang) Co. Ltd.、と大連東風李爾泰極愛思汽車座椅有限公司(Lear DFM TACHI-S Automotive Seating (Dalian) Co. Ltd.)でシート生産を2014年10月から順次開始。年産能力は襄陽が11万台、大連が18万台。
古河AS
湖北省武漢市のワイヤーハーネス工場が生産開始
古河ASは、中国で6拠点目となる自動車用ワイヤーハーネス生産会社の武漢古河汽車系統有限公司(Wuhan Furukawa Automotive Systems Co., Ltd.)の新工場が2014年7月に稼働。投資額は14億円。東風日産乗用車、東風ホンダなどの日系メーカーに供給。2017年度をめどに50億円の売上を目指す。

 

湖南省

アステア
長沙市に自前の工場建設、2015年に稼働
アステアは、長沙阿斯亜伍享汽車零件有限公司(Changsha Asteer WuuShiang Auto Parts Co., Ltd.)でボディの骨格となる金属プレス部品をレンタル工場で生産しているが、新たに自前工場を建設し、2015年春に稼働予定。新工場は約5万平方メートルで、生産能力は倍増する見通し。投資額は10数億円。既存取引先の三菱系メーカーに加え、FCA系メーカー向け受注も内定。今後も更なる供給先の拡大を目指す。
太平洋工業
長沙市にプレス一貫工場建設
太平洋工業は、2014年9月に長沙太平洋半谷汽車部件有限公司(Changsha Pacific Hanya Auto Parts Co., Ltd.)の新プレス工場が完成。広汽三菱にプレス部品を納入開始。加えて、ハイブリッド車用バッテリーケースも生産開始。日系メーカーやバッテリーメーカー向けに拡販する。2018年度の売上高は30億円を予定。

 

河南省

日立化成
河南省鄭州市の新会社で樹脂バックドアを生産開始
日立化成は、日立化成工業(鄭州)汽車配件有限公司(Hitachi Chemical Automotive Products (Zhengzhou) Co., Ltd.)の新工場で鄭州日産汽車有限公司の新型車種向けに樹脂バックドアを2014年4月に生産開始。日立化成グループは、中国で鉛バッテリー、摩擦材、粉末冶金製品などの自動車部品を生産してきているが、鄭州工場は内外装樹脂成形品の生産拠点の位置づけ。

 



西南:重慶市での動向

日信工業
重慶市に購買・開発拠点を設置
日信工業は、広東省で四輪車用のブレーキ、クラッチ等の部品を生産する中山日信工業有限公司(Zhongshan Nissin Industry Co., Ltd.)の重慶分公司(Nissin R&D China ‐Chongqing)を設置し、2014年7月に業務を開始。中国内陸部での市場ニーズを先取りした商品展開を図り、既存顧客への提案を強化すると共に、中国現地メーカーなどの新規顧客獲得を目指す。従来、二輪車用部品の生産拠点だった山東日信工業有限公司(Shandong Nissin Industry Co., Ltd.、山東省乳山市)でも2014年から四輪車用部品を新たに生産し、2拠点での供給体制を整備する。
矢崎総業
重慶市の新工場でメーターを生産開始
矢崎総業は、重慶矢崎儀表有限公司(Chongqing Yazaki Meter Co., Ltd.)の新工場で2014年7月に乗用車やピックアップトラック用メーターを生産開始。2014年は95万台分を生産し、売上高目標は3.6億元(約60億円)。販売先は日系メーカーや中国メーカー。2020年には年産300万台分の生産体制を構築し、売上高は12億元(約200億円)を目指す。
資料:各社広報資料, 各紙報道

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