日野自動車:基幹部品は日本で集中生産し、周辺部品はアセアンで調達・生産

国内工場を再編し、タイ・インドネシアなどを地域中核拠点として強化

2014/07/23

要 約

いすゞの販売台数 本レポートは、「ものづくり改革」を中心とした、日野自動車の最近動向を報告する。

 商用車事業には、多品種少量生産という特性があり、日野自動車は多品種少量生産を効率的に実施するためのものづくりの改革を進めている。

 そのため、グローバル生産体制として、世界共通のコア部品(基幹部品)を日本で集中生産し、現地固有の周辺部品は、タイ・インドネシアなどの地域中核生産拠点で調達・生産する体制を構築する。同時に、モジュール発想による車づくりを進めている。

 国内では、古河新工場を建設中。日野工場内のKD工場の移転を最優先で進め、2012年5月に古河工場のKD工場が稼働開始した。またユニット工場である新田工場に新機械工場を建設中で、2014年度前半に稼動開始する。併行して、タイ・インドネシアでも設備増強が進められている。

 新しい生産体制とモジュール発想により開発・生産される新型第1号車が、早ければ2014年度中に市場投入される見込み。

 2014年度に、設備投資へ前年度比34.4%増の890億円を充当し、古河工場や新田工場の整備を進める。また研究開発費に12.3%増の520億円を投資して、モジュール化、地域適格車の開発、安全装備の開発を進めるとしている。


関連レポート
いすゞ自動車:タイに新興国向けトラック開発統括拠点を設置 (2014年7月掲載)
いすゞ・日野の中期計画:タイ/インドネシアを中核拠点へ (2012年10月掲載)



ものづくり改革で多品種少量生産を効率化

 日野は、グローバル市場の様々な顧客ニーズにきめ細かく応える商品の提供を目指す。これを効率的に行うために、グローバル生産体制の再編とモジュール発想による車両開発・生産を進めている。

 早ければ2014年度内に、これらの方針のもとに開発・生産される車両が投入される見込み。

日野のものづくりの仕組み改革

グローバル生産体制  これまでは、日本からCKDまたは完成車を各国に輸出してきた。今後は、日本からタイ・インドネシアなどの地域中核生産拠点に世界共通のコア部品を送り、そこで現地固有の周辺部品を調達・生産して完成し、最終的に各国に輸出する体制を構築する。
 上流工程(コア部品生産)での世界共通部品の種類数は、大幅に削減する。しかし下流工程で調達・生産する周辺部品は必要な種類数を維持し、車型数(=顧客ニーズへの対応)は減らさない。
モジュール発想に
よる車づくり
(注)
 あらかじめ設定した標準モジュールを組み合わせることにより、顧客のニーズに適した車両として完成させる。
 しかし、一連の部品群を大きな塊(モジュール)としてまとめる乗用車メーカーのモジュール戦略とは異なり、日野が推進するモジュール化は、
・日本国内・海外拠点の生産分担を考慮した構造とする(組み合わせが容易なことなど)。
・顧客要望に、幅広く迅速に対応することが目的であり、より細かい単位でのモジュールを設定していく。

資料:日野中期経営計画 2012.4.26、日刊自動車新聞 2013.7.15/2013.11.30/2014.4.26
(注)2014年度内に、新しい「ものづくり」で開発・生産した車が投入される予定。その時点で、より具体的な内容も明らかにできるであろうとのこと。

 

 



グローバル生産体制構築のため、国内生産体制を整備

 日野自動車は、グローバル生産体制構築に向けて、国内で古河工場を新設し、新田工場を拡張している。日本のものづくり力を活かしてコア部品(基幹部品)を、日本で集中生産する体制を構築する。

古河工場(茨城県古河市)

位置づけ  新工場は、日野が海外中心に販売台数を伸ばし成長していくための、生産供給体制の基盤となる。また日本のモノづくり技術を、世界中の日野の工場に発信するマザー工場の役割も担う。総投資額は、約500億円を予定する。
2011年10月  古河工場の起工式を実施。
2012年5月  KD工場が稼動開始。
2014年  アクスルモジュールの生産を開始。
2015年  大型・中型トラック組立工程を順次日野工場から移転し、生産を開始。組立工程は、2016年に全面稼動させる計画。
新田工場(群馬県太田市)
位置づけ  新田工場は、ユニット工場として、エンジン、トランスミッション、デフキャリアの生産工程を集約し、一貫生産(鋳造、機械加工、熱処理)を行う。また内製粗型材(エンジンブロックなど鋳造部品で加工前のもの)を海外へ供給する基地としての役割を担う。
新機械工場  2013年1月に、新機械工場(通称:デフセンター)の起工式を行った。2014年度前半に稼動開始し、日野工場と新田工場に分散している大中小デフの生産を集約する。

 

2012~2014年度中期経営計画

 現在3年目に入っている、2012~2014年度中期経営計画(2012年4月発表)の骨子を下記にまとめた。

日野自動車の中期計画(2012~2014年度)の骨子

世界市場の区分と
位置づけ
 ホームマーケットである日本と並んで、「豪亜、中南米、アフリカ」を最重点市場として、経営資源を集中投入する。なかでもアセアン地域で顕著な伸びを見込む。
 日本、豪亜(タイ、インドネシア、マレーシアを重視)は収益の柱となる「基盤市場」であり、磐石にする。需要は大きく伸びているが、中国・韓国メーカーが進出し、競合が激化している。
 中南米を「育成市場」とし、次の基盤市場へ育成する。中近東・アフリカも、「育成市場」とし、販売台数拡大を目指す。
 その他に、北米は「個別市場」と位置づけ、中国・ロシア極東は「拡販市場」としている。
生産供給体制  日本:国内工場の工程再編により供給体制増強。またアジアでの能力増強をサポートする(詳細は前出)。
 アジア:海外中核拠点としてタイとインドネシアを強化(日本から送るコア部品以外は原則現地化する)、
タイ:
・アセアン域内の中型トラック中核生産拠点(タイで生産する「中型トラック」は、荷台長や積載能力からは、日本の「大型トラック」に相当する車両を含む)
・中型エンジン機械加工・組立拠点、・デフキャリア組立拠点。
インドネシア:
・小型トラック(新興国向け市場適格モデル)生産拠点、・自国向け中型トラック組立拠点、
・アセアン域内小型エンジン機械加工・組立拠点、・アクスルモジュールを生産。
環境技術への取組  電気エネルギー車:PHV、EV、燃料電池車。
 代替燃料車:GTL(Gas-to-Liquids:天然ガスを原料に製造する液体燃料で、クリーンなエネルギーとされる)、バイオ燃料。

 

 2012年4月の中期計画発表後の活動としては、マレーシアに新工場を建設し、2014年4月に生産を開始した。

 またケニア市場に参入、パナマに中南米地域のサービス拠点を設置した。日野は中南米やアフリカを「育成市場」と位置づけ、今後の販売拡大を計画している。

マレーシア新工場で生産を開始

マレーシア  日野自動車はマレーシアに新工場を建設し、2014年4月に生産を開始した。年産能力は2直で約1万台。HINO 500(日本名レンジャー)、HINO 300(同デュトロ)やバスを組立てる。日野車販売で提携しているMBM Resources Berhadから42%の出資を得て、Hino Motors Manufacturing (Malaysia)を設立。マレーシアをタイおよびインドネシアに続く成長市場と位置付け、拡大する需要を取り込む。これまでは、トヨタ車の組立を行っているAssembly Servicesに日野車の組立を委託していたが、全面移管した。
 稼働開始当初は、日本の古河工場から供給する部品の組立てを行う。将来的には、インドネシアおよびタイの地域中核拠点化の進捗に合わせて、これらの国からの供給に順次切り替えていく計画。これにより、アセアン域内の生産供給体制の最適化を図るとしている。

 

「育成市場」のアフリカと中南米を強化

ケニア  日野自動車は、2013年6月からケニアで中型トラック「HINO 500シリーズ」を中心にトラックの販売を開始した。トヨタLand Cruiserの組立を受託している現地のAVA社(Associated Vehicle Assemblers)に組立を委託し、豊田通商が出資する現地トヨタ車販売店が販売とアフターサービスを担当する。
中南米  日野は2013年4月、パナマにサービス支援拠点「日野自動車中南米事務所」を開設した。中南米市場におけるサービス活動支援および現場の技術レベル向上を推進する。海外における日野直営サービス支援拠点としては、2009年にアラブ首長国連邦に開設した拠点についで2カ所目となる。スタート時の従業員数は4名。
 市場での日野車保有台数増加に伴い、顧客に満足を提供できるアフターサービス体制確立を目指す。日野は、中南米市場を「育成市場」と位置付け、今後豪州・アジア地域に次ぐ基盤市場へ育てる方針。

 

環境技術への取り組み

 日野は、中期計画において、環境技術への取り組みを重点課題の一つとしている。ハイブリッド車は、1991年に世界初の市販HV車である大型HVバスを発売した実績があり、現在小型トラック「デュトロ」、中型トラック「レンジャー」および大型バスにHVを設定している。EV商用車についても、街中での配送トラックや路線バスなどの短距離走行中心の用途に向くとしている。

 

プラグインハイブリッドバス
中型バス「日野メルファ」をベースとする
プラグインハイブリッドバス
(東京モーターショー2013)
日野ポンチョ・ミニ
日野ポンチョ・ミニ(EVバス)
小型EV商用車プラットフォームをベースにコンパクトなバスボディを載せた(東京モーターショー2013)

 

電動車両の開発

電動式
冷凍システム
 日野自動車は、デンソーと共同でハイブリッドシステムを活用した「電動式冷凍システム」を開発し、2013年10月の東京トラックショーに出展。2014年2月、大型トラック・プロフィアに搭載し発売した。HVシステムは、小型トラック・デュトロが搭載するシステムを活用する。
 冷凍車は、通常冷凍機専用に追加搭載したサブエンジンまたは走行用メインエンジンによりコンプレッサーを駆動する。新システムではハイブリッドシステムのエネルギーを走行に使わず、電動式冷凍システムの駆動にのみ活用することで、より安定した冷凍・冷蔵性能と車両の燃料消費量の低減(6年間で500万円程度と見込む)をもたらす。初年度180台の販売を目指す。
PHVバス  日野自動車は、2013年10月、中型バス「日野メルファ」をベースとしたディーゼル・プラグインハイブリッドバスを開発し、東京モーターショー2013に出展した。容量40kWhのリチウムイオン電池と175kWのモーターを搭載し、2015~2016年の実用化を目指す。
 スクールバスやコミュニティバスとして、市街地や短距離走行の場合はEVとして走行し(15kmのEV走行が可能)、長距離走行や高台への登坂時にはディーゼルエンジンも稼働させてHVバスとして走行する。災害時の非常用電源としても有効で、100Lの軽油で体育館(400Wの水銀灯20灯を想定)の照明を30時間点灯することができる。
電動(EV)
小型トラック
 日野自動車は2013年2月に、超低床・前輪駆動の小型EVトラックを開発した。コンパクトなモーターをキャブ下に搭載し、前輪を駆動する。リチウムイオン電池を荷台床下のフレームの内側に搭載し、それ以外の電動ユニットは殆どキャブ下に収めたEV専用プラットフォームにより、後輪駆動では実現困難であった超低床を実現させた。
 2013年3月から、ヤマト運輸、日野自動車、トヨタの3社が共同で実証運行を開始した。荷台には3社が共同開発した冷凍冷蔵バンを架装し、「クール宅急便」としての使用も可能。容量28kWhのリチウムイオン電池を搭載し、最大積載量は 1トン、最高速度は60km/h(速度リミッターで制御)、1回の充電で最大約100kmの走行が可能。
日野
ポンチョ・ミニ
 上記の前輪駆動小型EV専用プラットフォームをベースに、コンパクトなバスボディを載せたコンセプトモデル。11人乗り。東京モーターショー2013に出展した。

 

 



グローバル販売台数:海外販売は2014年度も拡大

 日野のグローバル販売は、リーマンショック後の2009年度を底に回復・拡大し、2013年度は国内で5.2万台、海外で11.4万台、グローバルで16.6万台を販売し、年度として過去最高を更新した。

 海外ではアジアが最大市場であるが、中南米、アフリカ、中近東も拡大しており、日野はこれらの地域を「育成市場」と位置づけている。2014年度の海外市場は、タイ市場は低迷が続くが他の地域でカバーし、2013年度の11.4万台から12.7万台へ拡大すると見込む。

 

日野自動車の地域別販売台数

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
予想
日本 34,737 26,976 30,008 36,915 43,702 52,193 49,500
アジア 33,195 37,690 54,088 60,550 73,875 72,821 127,100
中南米 10,002 8,638 11,098 11,278 11,503 13,407
北米 5,465 4,279 4,841 6,281 8,223 9,389
欧州 3,197 2,831 4,869 6,233 2,246 2,569
アフリカ 6,053 6,327
オセアニア 5,989 5,063 4,663 4,039 5,207 5,158
中近東 4,917 2,847 3,329 3,170 3,874 4,377
海外小計 62,765 61,348 82,888 91,551 110,981 114,048
合計 97,502 88,324 112,896 128,466 154,683 166,241 176,600
トヨタ 132,239 125,136 158,685 153,264 185,791 186,614 157,900

資料:日野の決算発表資料
(注)トヨタへの販売は、トヨタ車の受託生産(ランドクルーザープラド、FJクルーザー、ダイナなど)、タイ工場でIMVのピックアップトラックが搭載するリヤアクスルの生産などのユニット事業他。

 

国内市場:2013年度は過去最高実績、5年連続で国内シェアを拡大

 国内トラック市場の、全体需要と日野の販売(登録)を下表に示す。日野のシェアは5年連続で上昇し、2013年度は28.9%となった。日野は、大中型トラックではシェアトップ。小型トラックでは後発であり、2010年度まではシェア20%未満であったが、ここ2~3年シェアアップし、2013年度実績は22.3%、2014年度は23.3%を見込んでいる。

 2014年度の見通しとしては、日本では総需要、日野の販売とも減少すると見込む。消費増税駆け込み需要の反動減に加え、人手不足も影響するとしている。

国内トラック全体需要と日野販売台数(2~3トンクラス以上)

2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
予想
全体需要 133,100 90,500 105,900 124,600 144,100 171,400 159,000
日野販売台数 31,800 23,200 27,700 34,600 41,100 49,200 46,400
日野車シェア
大中型トラック 32.5% 34.8% 34.9% 35.7% 36.1% 36.1% 36.2%
小型トラック 16.3% 17.7% 17.8% 20.6% 21.7% 22.3% 23.3%
全体シェア 23.9% 25.6% 26.2% 27.8% 28.7% 28.9% 29.2%

資料:日野の決算発表資料
(注)バスの台数を含まないため、前項「地域別販売台数」の日本地域と合致しない。

 

 



日野自動車決算:2013年度は過去最高の利益、2014年度は減収・減益の見込み

 日野は、2008~2010年度の3年間最終赤字を計上したが、その後業績は順調に拡大している。2013年度連結売上高は1兆6,996億円、営業利益1,122億円、当期純利益891億円で、売上高および全ての利益段階で過去最高を更新した。

 2013年度売上高を2008年度と比較すると、国内売上高は1.28倍だが、海外売上高は1.88倍に拡大した。またトヨタへの受託生産などの売上は連結売上高のほぼ1/3を占め、日野の業績を下支えしている。

 2014年度業績予想については、海外売上高は2013年度5,358億円から5,500億円に拡大するが、日本国内の売上およびトヨタへの売上高が減少するとし、連結売上高は1兆6,000億円(5.9%減)、営業利益は900億円(19.8%減)と予測している。

 また、2014年度は設備投資に前年度比34.4%増の890億円を投資して、国内古河工場や新田工場の整備を進める。また研究開発費に520億円(12.3%増)を投資して、モジュール化、地域適格車の開発、安全装備の開発を進めるとしている。

日野自動車の連結決算

(100万円)
2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度
予想
売上高 日本 452,700 381,200 415,500 469,200 510,700 581,000 560,000
海外 285,100 259,100 352,300 394,000 463,600 535,800 550,000
トヨタ 331,700 383,200 474,900 451,400 567,100 582,800 490,000
連結 1,069,488 1,023,495 1,242,691 1,314,588 1,541,357 1,699,573 1,600,000
営業利益
経常利益
(19,448)
(30,446)
1,132
(1,914)
28,902
25,058
37,527
34,577
65,118
66,922
112,185
109,141
90,000
86,000
当期純利益 (61,839) (3,011) (10,041) 16,303 47,685 89,127 58,000
設備投資
減価償却費
研究開発費
58,400
47,500
40,900
28,500
45,200
38,100
30,000
45,700
41,100
42,900
43,500
40,400
49,900
40,800
43,400
66,200
37,900
46,300
89,000
41,000
52,000
為替レート(円/US$) 101 93 86 79 82 100 100

資料:日野決算発表資料

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