デリーモーターショー 2014 (2):現代自、欧米メーカー、部品サプライヤーの展示
SUVコンセプトカーを各社が初披露
2014/03/10
要 約
![]() India Expo Martの様子。真ん中の建物がTata Motorsの展示会場。 |
本レポートは、第12回デリーモーターショー「12th Auto Expo 2014」の取材報告の後半で、現代自動車と欧米自動車メーカーの展示を取り上げる(インド・日系メーカーを取り上げた前半はこちらをご覧下さい)。
現代自はコンパクト・ハッチバック Grand i10 のセダンバージョンXcentを発表した。欧米メーカーでは、小型SUVのコンセプトカーの初披露が相次ぎ、GMがChevrolet Adra を出展し、VWはTaigunを、RenaultはKWID Conceptを、FiatはAvventuraを世界初公開した。
つづいて、自動車メーカーとは別会場、ニューデリー中心部のPragati Maidanで開催された部品サプライヤーの展示「12th Auto Expo 2014 Components」を、写真を中心に取り上げる。
主要サプライヤーの展示会取材の詳細情報はこちらをご覧ください。
最後に、展示会場とその周辺の様子を簡単にお伝えする。
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現代自動車:小型セダンXcentを初披露
現代自動車は、中央の広場正面にあるマルチ・スズキのブースの奥、Hall 3にマルチ・スズキと同規模のブースを構えた。中央ステージで目立っていたのが、コンセプトカーHND-9。その他に、小型セダンXcentを初披露し、Verna、Sonata、Elantra、Santa Fe、Grand i10、さらにWRCレース仕様のi20 WRCも出展した。
小型セダンXcent | 現代自は小型セダンXcentを初公開。 2013年9月に発売したサブコンパクト・ハッチバック Grand i10のセダンバージョン。インドで税制上の優遇措置が適用される全長4m以下に抑えた。搭載エンジンは1.2L直4エンジンと1.1Lの4気筒ターボディーゼルエンジンの2種類で、5速MTまたは5速ATと組み合わせる。インド国内で2014年3月に発売する予定。 |
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小型セダン Xcent |
プレミアムクーペのコンセプトカー HND-9 |
GM: SUVコンセプト ADRAを展示
GMは、マルチ・スズキと現代自動車に挟まれたHall 5に、ホールの半分を使用し展示。Chevrolet Adraを世界初公開するとともに、EnjoyやBeat、そしてSailのカスタムバージョン等も展示され注目されていた。その中でもひときわ目立っていたのは、最新型のChevrolet Corvette、Chevrolet Camaroであった。
SUVコンセプトADRA | GMはコンセプトカーChevrolet Adraを世界初公開。全長4.0m未満のクロスオーバーSUVで、インド人デザイナーを起用し、インドのGMテクニカルセンターが開発。 |
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Chevrolet Enjoy | 7名/8名乗りの新型MPV。上汽GM五菱 (SAIC-GM-Wuling) の五菱宏光 (Wuling Hongguang) をベースとする。中国からキットを輸入し、Gujarat 州 Halol 工場で組み立てる。2013年5月に発売された。 |
SUVコンセプトADRA |
Chevrolet Enjoy |
Ford: Bセグメントカー Figo Conceptを出展
Fordは、中央広場からは遠いが、VIP入口からは真正面となるHall 1に出展。Hall 1には、いすゞとDC Designが出展していた。メインステージ上には、Figo ConceptとFiestaも展示。さらに、ディーゼル1.5Lとガソリン1.0LのEcoBoostエンジンのカットモデルを展示していた。フロアには、「インドにおいて自動車メディアから最も表彰された車」として、Figoに各媒体のロゴを貼り展示した。
BセグメントFigo Concept | Bセグメントの新型コンパクトカーFigo Conceptを出展。Fiestaよりも小さいサブコンパクトカーで、2013年11月にブラジルで発表された「Ka」と同じくグローバルモデルとして、新興市場向けに開発した。高級感のあるデザインを取り入れ、広々としたキャビンに車載エンターテイメントシステムを充実するなど、コンパクトカーとしての次世代機能を備えるとしている。 |
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BセグメントFigo Concept |
Ford Fiesta |
VW:小型SUVコンセプトカーTaigunを初公開
VWは、中央の広場からは一番離れた、Hall 12の奥に、Skoda、日産と同じ会場に出展した。正面には、インド国内で開催されているPoloのワンメイクレース仕様R Cupを展示、奥のステージ上のSUVコンセプトカー Taigunとともに注目を集めていた。
小型SUVコンセプトカーTaigun | VW、小型SUVのコンセプトカーTaigunのオフロード仕様を初公開。Taigunは小型車 up!をベースとするSUVで、2012年10月にサンパウロ・モーターショーで初披露されていた。今回のオフロード仕様では、後部にスペアタイヤを装備し、リアゲートの開閉方法も変更されている。 |
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ボディサイズは、全長3,859×全幅1,728×全高1,570mm、ホイールベース2,470mmで、車両重量は998kg。直噴1.0 L直列3気筒ターボエンジン(最大出力110ps、最大トルク17.8kgm)を搭載し、燃費性能は4.7L/100km。 |
小型SUVコンセプトカーTaigun |
小型SUVコンセプトカーTaigunの後部 |
Renault:小型SUV KWID Conceptを初披露
Renaultブースは、Hall 5をGMと分け合う形で出展。ブース側面には、Lotusのレース車両を配置するとともに、レーシングカー用エンジンと、FluenceやDuster等に搭載されている1.5L cCi 110エンジンのカットモデルを展示した。展示フロアには、Megane R.S.、FluenceやDuster、Pulse、Scala、充電器につながれたZoeを置き、メインステージ上ではSUVのコンセプトモデル KWID Conceptを初公開した。
小型SUV KWID Concept | ルノーは小型SUVのコンセプトモデル KWID Conceptを初公開した。欧州以外で発表された同社初のコンセプトカーで、インドをはじめ世界中のデザインチームが参加し、設計した。陽気で力強いデザインに加え、優れたコネクティビティー機能を備える。 |
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シートは車内中央に配置され、3人掛けシートの中央にドライバーが座る。最新世代1.2L ガソリンターボエンジンとDCTを搭載するPHVで、モーターによるEV走行も可能。ルーフ後部に収納された、業界初の無線操縦の超小型ヘリコプターFlying Companionが、道路状況を把握するなどをして、楽しく安全な運転をサポートする。 |
小型SUV KWID Concept |
小型SUV KWID Concept |
Fiat:小型SUV コンセプト AVVENTURAを展示
Fiatは、奥にMahindra & Mahindraが陣取るHall 10に、小規模な展示を行っていた。ブース入口には、赤と白2台のAbarth 500が展示されていた。ステージ上には中型セダンLinea、フロアには小型SUV Avventura、Punto等が展示されていた。
小型SUV Avventura | Fiatは小型SUVコンセプト Avventuraを初披露。小型ハッチバックPuntoをベースに車高を185mmから200mmに変更、外観をクロスオーバーSUVスタイルに仕上げている。 |
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中型セダン Linea | 新興国向けの中型セダン Linea の新型モデルを出展。 こちらもPuntoがベース車。前席エアバッグやクルーズコントロール機能を装備。ガソリン車およびディーゼル車を用意し、販売価格(税抜き)は69万9,000~97万2,000ルピー。 なお、旧型も並行販売する。 インドでは2014年3月から発売を開始している。 |
小型SUV AVVENTURA |
中型セダン Linea |
部品メーカーの展示会は引き続きニューデリー中心部で開催
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デリー・モーターショー部品展示会「12th AUTO EXPO 2014 COMPONENTS」は、同月6日~9日にニューデリー中心部のPragati Maidanで開催された。
今年から、自動車メーカーの展示がIndia Expo Martに移されたこともあり、サプライヤー出展社数は、2012年に開催された前回から4百社ほど減少した模様で、1,100社前後となった。インドの大手サプライヤーMotherson GroupやBosch、ZF等が出展を見送った。
来場者数も同様に、自動車メーカーとの併催時からは大幅に減少したとみられる。一方で、入場に際しては前回までのチケット制から、業界向けの登録制(無料)へと変わっている。このため、一部には「商談ができる質の高い来場者が増えた」 (出展社) との声も聞かれた。
会場のPragati Maidan内には20棟前後の常設パビリオンが設置されているが、今回はその敷地の半分ほどが使用された。常設の建物によるホールは、大きいものが6棟、ハンガーと呼ばれる仮設のテントが8棟ある。一部ハンガーは国ごとのパビリオンとなっており、中国パビリオンが複数あった。その他、韓国パビリオン、ドイツパビリオンの規模が大きく、その存在感を示していた。中国パビリオンに出展しているサプライヤー各社をみると、二輪車用のアフターマーケット部品をラインナップしている企業が多い。日本のサプライヤーは、それぞれ個別に常設パビリオンへ出展していた。
(主要サプライヤーの展示会取材情報はこちらをご覧ください。以下の社名のリンクからも、各社毎の展示会取材情報をご覧頂けます)
インドのサプライヤーでは、 Amalgamations Group、Anand、Rane Group、Sona Group、TVS等が提携する世界のサプライヤーの製品を出展した。Amalgamations Groupは、グループ会社TAFEの樹脂部品を展示。ドアトリムやピラーガーニッシュがトヨタ Innovaに搭載されている。
Anandは、Behr、Dana、Faurecia、Haldex、万都、タカタ、Valeoなど世界の大手ティアワン サプライヤーと合弁企業を設立している。万都は、インド市場で大きな市場シェアを握る現代自動車のインド生産モデル全般にステアリングおよびサスペンション部品を納入しており、ブレーキ部品ではTata Motors、マルチ・スズキでの採用も進んでいるという。
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「12th AUTO EXPO 2014 COMPONENTS」の入り口風景。入場時の荷物検査等、セキュリティは非常に厳しい。 | ドイツのパビリオン。17社が出展している。Huf Hulsbeck & FurstやLeoni、オーストリアMibaがこちらに出展していた。商用車向けの部品展示が多い中、Hufは、欧州高級車に搭載されている部品を紹介した。 |
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手前左側に見えるのは中国サプライヤーのパビリオン、奥の建物は最大のHall 6。右にはアフターマーケット部品のサプライヤーが屋外展示を行っていた。 |
Hall 6の会場風景。2階建てとなっており、2階にはデンソーがブースを構えている。 |
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Anandグループのブース。Behr、Dana、Faurecia、Haldex、万都、タカタ、Valeoなど世界の主要サプライヤーがAnandを介して集結しているような構成。 | Rane Groupのブース。TRWや日本精工が同社と提携を結びインド市場に参入している。 |
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Sona Groupは提携するジェイテクトと隣り合うブースで出展。 | 複数ある中国パビリオンの一つ。 |
日欧のサプライヤーの展示
ドイツパビリオンには、17社が出展。Huf Hulsbeck & FurstやLeoni、オーストリアMibaが同パビリオンに出展していた。商用車向けの部品展示が多い中、Hufは、欧州高級車に搭載されている部品を紹介した。BorgWarnerやEaton、Key Safety Systems等が単独で出展。Behr、Mahle、Dana、Faurecia、Haldex、Valeo等のグローバルサプライヤーは提携するインドの大手サプライヤーブース内での展示となった
日本のサプライヤーでは、デンソーが2回目の出展。同社は、今回、歩行者衝突検知センサーやヘッドアップディスプレイなど、最先端の技術を正面に据え技術力を訴求した。前回は、大きなバスの屋根用エアコンを展示していた。アイシン精機は、アドヴィックス、アイシンAW、アイシン高丘など、グループ会社とともに展示。今回は初めて、触媒を生産するキャタラーも同ブースに出展した。アイシングループとしてインド市場向けに、アフターマーケット部品の展示を充実させていた。
日立オートモティブシステムズは、今回が初出展。会場ほぼ中央のハンガー6で展示。アフターマーケット部品のブランドTokikoやHucoを紹介した。日本精工は、Rane Groupのブース内にステアリング部品を出展。クラリオンはOEM向けのカーオーディオを展示。マルチ・スズキやTata MotorsのIndigo、日産のMicraに搭載されている(主要サプライヤーの展示会取材情報はこちらをご覧ください)。
長野県商工労働部と長野県中小企業振興センターは、長野県下の自動車部品向けで独自の技術を有する企業を引き連れ、今回が初めての出展となった。長野鍛工、ジャパンマグネット、NiKKi Fron、マイクロストーンが長野県ブース内に出展した。長野鍛工はターボチャージャー用部品やバルブ等のエンジン部品を生産し、同社部品は三菱重工経由でBMWや、IHI・チャージング・システムズ・インターナショナル (ICSI) 経由でFerrariに納入されているという。
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デンソーのブース。同社は、今回、歩行者衝突検知センサーやヘッドアップディスプレイなど、最先端の技術を正面に据え技術力を訴求した。前回は、大きなバスの屋根用エアコンを展示していた。 | アイシン精機は、アドヴィックス、アイシンAW、アイシン高丘など、グループ会社とともに展示。今回は、キャタラーも同ブースに触媒を展示した。 |
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アイシン精機の小容量FF 4速AT。GMの世界戦略モデル Sparkやトヨタ Viosに搭載されているもの。 |
アイシン精機のアフターマーケット部品の展示。 |
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正面に見えるのが、仮設のハンガー6。日立オートモティブシステムズが出展している。 | 日立オートモティブシステムズのブース。アフターマーケット部品のブランドTokikoやHucoを紹介。 |
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長野鍛工のブース。長野県商工労働部と長野県中小企業振興センターが主導し、長野鍛工、ジャパンマグネット、NiKKi Fron、マイクロストーンがインドの展示会に初出展。日本の地方自治体で、このような形で展示会に出展し技術をアピールしているのは非常に稀なケースだという。 | 長野鍛工の製品の一部。ターボチャージャー用部品を製造し、大手部品サプライヤー各社に納入している。 |
(参考)会場周辺写真
(以下の写真は拡大いたしません)
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自動車メーカーの展示会がIndia Expo Martで開かれるのは、今年が初めてで、ニューデリー中心部から南西におおよそ40kmほど行った新興の工業団地内にある。ニューデリーからの移動は車でおおよそ1時間ほど、良く整備された片側4車線の有料道路で行くことができる。この有料道路では、会場から20km以上離れた橋やジャンクションからAUTO EXPO 2014を意識した広告が目立った。一番大きな橋の欄干は、Chevroletのロゴで覆われ、かなり手前から展示会を盛り上げた。 | India Expo Martに近づくと渋滞に見舞われたが、ほぼ全ての車が展示会場に隣接された有料駐車場へと吸い込まれていく。前回までの会場Paragati Maidanには駐車場はなく、一方で、India Expo Martには公共交通機関は見受けられない。今回から大多数の来場者がマイカーにより来場したことになる。その他、Tata Motorsなどが顧客の送迎にチャーターバスをニューデリーから走らせていた。 |
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India Expo Martの中央広場。正面に見えるのが、Tata Motorsのブースが入るHall 14。 |
India Expo Martのホール間の通路。終始、人の波が絶えることはない。どのホールも入口が混みあっており、入場に時間がかかる。 |
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「12th AUTO EXPO 2014 COMPONENTS」の会場内。展示会関係者のものとみられるスズキKizashiが駐車されていた。ニューデリー市街においても、走っている自動車は小型車から中型車へと大型化が進んでいるように見受けられた。Kizashiも数多く走っている。 |
<自動車産業ポータル、マークラインズ>