第4回 クルマの軽量化技術展取材報告 (1)

高張力鋼板と軽金属の利用、3Dプリンター

2014/02/13

要 約

ホンダFitのホワイトボディ
エイチワンが展示した、ホンダFitのホワイトボディ

 第4回 クルマの軽量化技術展が、2014年1月15日-17日にかけて東京ビッグサイトでオートモーティブ ワールド 2014の一環として開催された。会場は昨年開催時より来展者が多く、盛り上がりが感じらた。特に、会場入り口付近に設けられていた樹脂関連のブースでは非常に多くの人が集まっていた。

 本レポートでは、超高張力鋼板を使ったフレーム部品などを展示したエイチワンとArcelorMittalの展示、をまず取り上げる。また、マグネシウム、アルミニウムなどの軽量な金属に関する展示と、3Dデータによる積層造形法(3Dプリンター)を中心に報告する。

 第2回目として、樹脂化による軽量化について近く報告する予定。

関連レポート:
第5回 EV・HEV 駆動システム技術展 取材報告(2014年1月)

2013年の展示報告
第3回クルマの軽量化技術展取材報告
(1):積層造形法と軽量金属(2):樹脂化による軽量化



超高張力鋼板:エイチワンとArcelorMittalの展示

エイチワン

Fitのホワイトボディ エイチワンはホンダの三代目Fitのホワイトボディ(ドア、フードを含む)の内、部品点数で34%、重量占有率で30%を受注。今回はそのうち、車体左前部分を展示した。
Fitのホワイトボディ Fitのホワイトボディのフロントホイールハウス部分
三代目ホンダFitのホワイトボディの一部 Fitのホワイトボディのフロントホイールハウス部分。スポット溶接を1つ多くすることで(定規を当てている部分)、板厚を0.1mm薄くすることが可能となった。
フロントサイドフレーム
フロントサイドフレームはテーラードブランク工法で異なる強度をもつ鋼板を組み合わせている。真ん中にある薄い黒い線の左側(車両前方側)は590MPa材を、右側(車両後方側)は780MPa材を利用。

 

超高張力鋼板の冷間加工技術 また、エイチワンは、超高張力鋼板(UHSS)を冷間加工する技術を訴求。展示ではBピラーにUHSSを適用してきている事例を紹介。
2004年モデルでは590MPa材を使用しており補強材も必要であったため、Bピラーの重さは約5.8kgであった。
2010年モデルでは980MPa材を利用することで補強材が不要になり、37%の軽量化を図り約3.7kgとした。
現在は、1180MPa材の適用を検討しており、その場合さらに10%の軽量化も可能。試作品として、1470MPa材を用いたBピラーも展示。冷間加工は ホットスタンプに比べて成形時間が5倍近く短いのが特徴。
エイチワンが展示した1470MPa材を用いたBピラーの試作品
エイチワンが展示した1470MPa材を用いたBピラーの試作品。割れは発生していないが、精度はまだ出ていないとのこと。

 

ArcelorMittal

S-in Motion ArcelorMittalが提案する、自動車部品を軽量化する鉄鋼部品やソリューションを集めた商品群。Cセグメント車向けに43のソリューションを持つとしている。
S-in Motion Bピラー レーザー溶接ブランク工法を用いた、ホットスタンプで成形したBピラー。約11%の軽量化を図り、重量は4.9kg。上部には強い強度を持った鋼材(Usibor)を、下部にはエネルギー吸収性に優れる鋼材(Ductibor)を利用して、高強度と衝撃吸収性を両立させた。
ドアフレーム ホットスタンプで成形したフロントドアのフレーム。4つの異なる厚さ、強度の鋼材を用いている。ホンダのAccord、Acura MDXへ供給。
軽量鋼鉄ドアの開発 現行のフロントドア(18.3kg)に比べて27%軽量な軽量ドア(13.3kg)を開発。1300MPa以上の超高張力鋼板を全体の14%を用いるなどして軽量化。S-in Motionシリーズのドア(14.5kg)よりも軽量。さらに12kgまで軽量化を図るドアも開発中。
S-in Motion Bピラー フロントドアフレーム
S-in Motion Bピラー フロントドアフレーム

 



マグネシウムの利用:NNH、栗本鉄工所の展示

NNH:マグネシウムダイキャスト製品

マグネシウム
ダイキャスト製
ステアリング芯金
NNHは主に電気製品向けなどにマグネシウムダイキャスト製品を供給している。自動車部品ではステアリングの芯金を展示。トヨタ プリウスや日産車、ホンダ車へ供給している。
同社によれば、マグネシウムはアルミニウムに比べ軽く、加工性も良く、振動吸収性にも優れているとのこと。弱点は耐食性を持たせるには表面処理が必要なことと、溶解したものと切子が燃えやすいということ。なお、材料費はアルミの約1.5倍と高くなる。

マグネシウム ダイキャスト製 ステアリング芯金

マグネシウム合金の特性
  比重 切削加工に要する動力差 曲げ強さと剛性 耐くぼみ性
マグネシウム(合金)
1.8
Mg合金=1
アルミニウム(合金)
2.7
Al合金=1.8
7.9
鉄=6.3
×
×

(資料):NNH社配布資料よりMarkLines作成

 

栗本鉄工所:開発中の鋳造用難燃耐熱マグネシウム合金

鋳造用難燃耐熱 マグネシウム合金 栗本鉄工所は難燃性、耐熱性を持たせたマグネシウム合金を開発。200℃までの耐熱性と、1千℃前後の発火温度を持ち、溶解状態でも発火しない。アルミ材料やエンプラの代替材として提案。実用化に向けた課題はコストと耐久性の確認とのこと。
鋳造用難燃耐熱 マグネシウム合金
鋳造用難燃耐熱 マグネシウム合金の説明パネル




その他金属部品の軽量化技術:深井製作所と大同工業の展示

深井製作所:エンボス成形技術 embrella

金属板向け
ハニカム配列
エンボス成形技術 embrella
深井製作所は、金属板にハニカム(蜂の巣状)のエンボス加工を施すことで、板厚を薄くしつつ剛性を保つ技術embrellaを訴求。厚さ0.5mmの平板と、同加工を施した厚さ0.35mmの板を比較すると、質量は70%の水準に軽量化を図りつつ、剛性は97%の水準を保つことができる。薄い板を使うことで材料費も抑えられる。
平板で作る部品の金型に少し隙間を取ることでこの加工ができるようになるとのこと。アルミだけでなく、鉄、ステンレスでも同じ加工をすることが可能。同社はこの技術で特許を取っており、ライセンスの提供も行っていきたいとしている。
富士重工のXV HYBRIDのバッテリーカバー、三菱のOutlander PHEVの床下遮熱板等に採用されている。また、インドのAshok Leylandにライセンスを提供することで、同社の小型トラック Dostの遮熱板にも採用。
富士重工のXV HYBRIDのバッテリーカバー Ashok Leylandがライセンス生産する小型トラック Dostの遮熱板
富士重工XV HYBRID向けに供給するバッテリーカバー Ashok Leylandがライセンス生産する小型トラック Dostの遮熱板

大同工業:サイレントチェーンの軽量化と低フリクション化

サイレント
チェーンの
軽量化
エンジンのカムシャフトを駆動するタイミングチェーンに使う、サイレントチェーンを軽量化。従来の製品に比べて、強度あたりの重量を約15%削減。チェーンのピン部品に特殊表面処理を行い、プレート部品の板厚・形状・生産方法を最適化することで、チェーンを軽量化した。このサイレントチェーンは第一汽車のハイエンドセダン紅旗H7に搭載の2.0L直4ターボエンジンのタイミングチェーン、オイルポンプチェーンに採用されている。
低フリクションチェーン さらに、チェーンの背面に丸みを帯びさせる加工(R形状)を施すことや、研磨仕上げすることで摩擦抵抗を低減した低フリクションチェーンも開発。ホンダの軽自動車N-BOX、N-ONE、N-WGNに搭載されている660ccエンジンに採用されている。
大同工業は第一汽車の2.0Lターボエンジンへチェーンシステム一式を供給。右端は同社のサイレントチェーン一覧。 DXE シリーズ
大同工業は第一汽車の2.0Lターボエンジンへチェーンシステム一式を供給。右端は同社のサイレントチェーン一覧 ホンダの軽自動車Nシリーズに供給している低フリクションチェーン

 

 



3Dデータによる積層造形法

アスペクト

アスペクト社では、自社開発した大型粉末焼結積層造形装置RaFaElの販売と、それを用いた造形サービスを行っている。同社のRaFaElシリーズで利用可能な材料はナイロン12とそれにガラスビーズ、ガラス繊維、炭素繊維を配合したもの。他に、ナイロン11、ポリプロピレン、ポリスチレン、合成ゴム等が利用可能。チタン合金材料での試作品も展示したが、まだ精度は出ていないとのこと。
同社の担当者によれば、3Dプリンターで作成した製品は、あくまで試作での形状確認、少量生産品向けとのこと。量産車向けの部品、金型の生産には向いていないとしている。

粉末床溶融結合装置

製品名 ワークサイズ CO2レーザービーム径 備考
RaFaEl 550 550×550×500 0.48mm ワークサイズを大型化したため、ホイールやインテイク・マニホールドなどの大型製品を分割せずに一体造形可能。ワークサイズを大型化することで、造形エリアの温度管理が困難になるが、新たにベースヒーターを設置するなどで対応した。
RaFaEl 300 300×300×400 0.30mm CO2レーザービーム径を0.30mmとすることで、高精細な造形を可能とした。電子機器、コンピュータなどがターゲット市場。
RaFaEl 150 150×150×200 0.18mm ワークサイズを小型化することで、CO2レーザービーム径を0.18mmと小径化し、さらに高精細な造形を可能とした。
RaFaEl で造形したドアトリム RaFaEl で造形したインパネ
ドアパネルとインストルメントパネルは3Dプリンターで造形後、磨いて塗装したもの。共にナイロン12製。
ホンダ Accord PHV 外部給電インバーターボックス
3Dプリンターで造形したインテークマニホールド。素材はナイロン12にカーボン繊維を加えたも。高強度で熱変形温度が高い。 3Dプリンターで造形した、チタン合金製のサンプル品。

 

コイワイ

コイワイは2007年より3Dプリンター積層砂型鋳造サービスビューローを開設。従来の砂型の製造方法に比べて3分の1の時間で作成することができ、IHIや三菱重工にサンプルを提供しているとのこと。
また、金属積層造形機を用いた、金属粉末積層品の造形の受託サービスも行っている。現在は試験機関向けなどの受託があるとのこと。
積層砂型のサンプル品 金属粉末積層品のサンプル
積層砂型のサンプル品 金属粉末積層品のサンプル

 

アルテック

アルテックは、米国とイスラエルの両国に本社を持つ3Dプリンターメーカー Stratasys社の販売代理を日本で行っている。Stratasys社は2つの異なる方法の3Dプリンターを販売。
一つはポリジェット方式のOBJETシリーズ。一層毎に、液体の樹脂をインクジェット方式で噴射して紫外線ランプで硬化させて造形を行っていく。最小で16ミクロンの積層ピッチで造形を行うことができるため、精細な造形が可能。2つの異なる樹脂を同時に使うことも可能。使う樹脂はゴムやABSやPP系など。造形されたものが熱に弱く、柔らかいという弱点がある。
二つ目は、熱溶融積層法(Fused Deposition Modeling: FDM) のFORTUSシリーズ。熱可塑性樹脂を半液体状に溶かしたものを積層していくことで、立体形状を造形していく。工業用に用いる熱可塑性樹脂を用いるため、堅い部品を作ることができる。
ポリジェット方式のOBJETシリーズで作成した試作品。 FDM方式のFORTUSシリーズを使ったランプカバーの試作品。

ポリジェット方式のOBJETシリーズで作成した試作品。手のひらの試作品は2つの樹脂を使うことで、透明な手のひらの中に骨が造形されている。

FDM方式のFORTUSシリーズを使ったランプカバーの試作品。半透明のABS樹脂製。
FORTUSシリーズを使ったチャイルドシートの機能プロトタイプ
FORTUSシリーズを使ったチャイルドシートの機能プロトタイプ。91×61×91cmを一体成形した。

 

シーメット

シーメットは光造形装置Rapid Meisterを販売している。液体状の光硬化性樹脂に紫外線レーザーを照射し、一層毎に硬化させて立体物を生成する。同社は光造形装置に使う、耐熱性を持つ透明な樹脂(TSR-884)を開発。この樹脂を使った、透明なエンジンブロックのモデルを光造形して、内部の液体の流れを確認する等の用途に対応する。
また同社は、ロストワックス製法に替わる、鋳型の製造法「光造形精密鋳造法」も開発。燃やした後にガス化し、灰が残らない樹脂TSR-883を利用して、光造形でマスターモデルを作成し、そこから鋳型を作成する。 ロストワックス製法で必要な金型の製作が不要になり、特に少量生産の場合、コスト/リードタイムの大幅な削減が可能になるとのこと。
透明耐熱樹脂で製作したエンジンブロック。 透明耐熱樹脂で製作したカーランプ。

透明耐熱樹脂で製作したエンジンブロック。形状確認、機能評価モデル。

透明耐熱樹脂で製作したカーランプ。
光造形精密鋳造法で作成したマスターモデル(透明)と鋳造部品(灰色)。
光造形精密鋳造法で作成したマスターモデル(透明)と鋳造部品(灰色)。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>