タイ: EVに加えHV・MHV・PHVにも税制優遇措置
中国メーカーはEV生産拡大、長安・奇瑞は新工場稼働へ
2025/05/12
- 要約
- タイ政府:HV・MHV・PHVにも税制優遇措置
- タイにおける2024年のEV販売は減速、HVは1.5倍に拡大
- 中国メーカー:EVモデルに加え、HV・PHVモデルも投入
- 中国メーカー:BYD、広汽埃安がタイでEV工場の稼働開始
- 2025年のタイ生産は前年比2%増の150万台の見込み(FTI予測)
- タイの国内市場:1トンピックアップトラックの販売が38%減
- GlobalData生産予測:タイの生産台数は2028年に182万台となる見通し
要約
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BYDのミッドサイズSUV「Sealion 6 DM-i」 (2025年3月のバンコク国際モーターショー2025で発表) |
タイ政府は2030年までに国内自動車生産の30%を電気自動車(EV)とする方針を掲げてEV生産を拡大してきたが、2024年半ば頃からEV販売が減速。ハイブリッド車(HV)の需要が拡大してきた。タイ政府は将来の市場を牽引するパワートレインが確定するまではEVのみに注力するのではなく、世界の潮流に合わせた政策が必要だとして、2024年7月にHVに対する税優遇措置を決定。プラグイン・ハイブリッド車(PHV)やマイルドハイブリッド車(MHV)の物品税も引き下げた。
タイ市場におけるEV販売台数は2022年に前年の約5倍、2023年に約7倍と急拡大したが、2024年には7万1,645台で、前年から8.3%減少。一方、HVは前年の約1.5倍の12万6,629台に拡大した。EV・PHV・HVを含めた電動車合計は20万7,646台で、自動車合計に占める電動車のシェアは2023年の20.7%から32.7%に拡大した。
中国メーカーはタイ政府のEV普及支援策やASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)による0%関税を活用し、EVの輸入販売を進めてきた。また、タイ市場における最近のハイブリッド車需要の高まりを受け、HV・PHVモデルも投入している。
中国メーカーの多くはタイ政府のEV補助金を利用してEVを輸入販売しているため、一定数のEVの現地生産が義務付けられている。2024年にはBYDと広汽埃安(GAC Aion)が新工場を稼働し、五菱(Wuling)は現地メーカーに生産を委託した。2025年には長安汽車、哪吒汽車、奇瑞汽車等がタイで生産を開始する予定である。
タイ政府はEVの重要部品であるバッテリーの生産についても優遇措置を講じている。EV用バッテリーの物品税を8%から1%に引き下げ、製造支援に240億バーツの補助金を支給する。2024年にはタイのBanpu NEXTとシンガポールのDurapowerとの合弁工場、タイのEnergy AbsoluteがEV用バッテリーの量産を開始。2025年には中国のSunwodaが新工場を稼働する見込み。
タイ工業連盟(FTI)が2025年1月に発表した予測によると、2025年の自動車生産は前年比2.1%増の150万台の見込み。内訳は輸出向けが100万台(前年比1.9%減)、国内販売向けが50万台(同21.2%減)。輸出向け生産台数については、今後、トランプ米大統領が実施する関税引き上げの影響も受けると予測される。
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