日本電産 (株) 2016年3月期の動向

業績

(米国会計基準、単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,178,290 1,028,385 14.6 -売上高は4期連続の増収で過去最高を更新。
-営業利益、税引前当期利益、当社株主に帰属する当期純利益も
それぞれ3期連続の増益で過去最高を更新。
-ビジネスポートフォリオ転換の推進役である 「車載および家電・商業・産業用」
の四半期営業利益率が第4四半期で10.4%となり、初めて10%を上回った。
営業利益 124,538 110,939 12.3
税引前当期純利益 119,328 107,092 11.4
当社株主に帰属する当期純利益 91,810 76,015 20.8
日本電産
売上高 31,384 28,954 8.4 -電動パワーステアリング用モーター、デュアルクラッチトランスミッション用
モーターの需要増。
-対ドルでの円安によるプラスの影響
営業利益 18,031 14,083 28.0
日本電産サンキョー
売上高 129,068 122,711 5.2 -DCモーターの売上が減少したものの、液晶ガラス基板搬送用ロボットや
カードリーダーの売上が増加。
-対ドルでの円安によるプラスの影響
営業利益 15,052 12,686 18.7
日本電産モータ
売上高 224,786 200,040 12.4 -新規受注増加
-対ドルでの円安によるプラスの影響
営業利益 16,674 11,690 42.6
日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ
売上高 247,662 172,699 43.4 -日本電産GPMグループの影響 (2015年2月取得)
-電動パワーステアリング用等の車載用モーターの需要増。
-日本電産エレシスのADAS関連製品の需要増。
-対ドル・対中国人民元での円安によるプラスの影響
営業利益 25,368 18,614 36.3

-2015年3月期よりセグメント区分を変更。日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズには、日本電産トーソクおよび日本電産エレシスが含まれる。

事業取得

<インドネシア>
-2015年9月、子会社の日本電産サンキョーがPT. Nagata Opto Indonesiaの全株式の取得を完了し、日本電産のグループ会社としたと発表。PT. Nagata Opto Indonesiaは、車載カメラ用ガラスレンズの加工技術に強みを有している。従業員数は2015年6月末で306名。2014年12月期の売上高は393万ドルだった。(2015年9月9日付プレスリリースより)

<中国>
-日本電産の子会社であるNidec Motor (Qingdao) Corporation (NMQC) は、2015年7 月31日付で、China Tex Mechanical & Electrical Engineering (China Tex MEE) (中国モータ・ドライブ会社) のSR (switched reluctance) モータ・ドライブ事業取得の手続きを完了したと発表した。今回の事業取得に先立ち、NMQCは中国・北京に新会社 「尼得科 (北京) 伝動技術有限公司 [Nidec (Beijing) Drive Technologies Co., Ltd.]」 を設立。新会社がChina Tex MEEのSRモータ・ドライブ事業の資産を譲り受けた。新会社は、北京と山東省の淄博 (Zibo) に拠点を持ち、従業員数は88名。SRモータ・ドライブの開発・製造・販売を行う。(2015年8月3日付プレスリリースより)

<ドイツ>
-2015年2月、車載用ポンプの開発や生産を手がける独Geraete- und Pumpenbau GmbH Dr. Eugen Schmidt (GPM) の買収を完了したと発表した。日本電産グループとなり、名称を「NIDEC GPM」に変更する。本社はドイツ・テューリンゲン州に置き、非常勤の取締役に日本電産から呉文精副社長と早舩一弥専務が就く。GPMは欧州市場で高いシェアを持つ。アイドリングストップ車やハイブリッド車、電気自動車の普及により、モーター駆動の電動オイルポンプや電動ウオーターポンプの需要拡大を見込む。(2015年2月16日付日刊自動車新聞より)

成長戦略

-2016年6月、「電動化や自動運転技術の開発が進む車載分野が成長を牽引する」と述べ、同社が得意とするモーターやセンサーなどの事業を拡大し、今後も成長することに自信を示した。また、電動ブレーキ用モーターを世界の大手部品メーカーから大量受注し、18年から納入を始めることも明らかにした。日産自動車がカルソニックカンセイの株式を売却することに関し「一部(の事業)は欲しい。それは1兆円の売り上げのうち3千億円くらいだ」とした上で「投資ファンドなどが購入して、特定の部分だけ売ってくれるなら応募する」と述べた。(2016年6月21日付日刊自動車新聞より)

-2016年1月、「BoschContinentalデンソーのような企業形態に向かっている」と日独のメガサプライヤーの名前を出して車載分野を強化する方針を示した。技術革新により新規のビジネスチャンスが見込める有望領域として、車載分野では自動運転とHMI(ヒューマンマシンインターフェース)、EV(電気自動車)/PHV(プラグインハイブリッド車)を挙げた。(2016年1月23日付日刊自動車新聞より)

2020年度 新中期戦略目標

-「利益ある高成長の飽くなき追求」

  • 連結売上目標 2兆円 (新規M&A 約5,000億円を含む)
  • 内、車載売上高目標 7,000億円~1兆円
  • 連結営業利益率目標 15%以上
  • ROE (株主資本利益率) 18%以上 (株主資本比率60%を前提目標)
  • グローバル5極経営管理体制の確立 (日本、中国、アジア、米州、EMEA (欧州、中東およびアフリカ))

車載事業の新中期戦略目標
-Tier1メーカーのグローバル化、電動化、「地産地消」 体制に対応。自社製品の電動化、モジュール化、部品内製化を提案し、受注の大型化を目指す。
 中核のモーター技術を軸としたモジュール化戦略を加速し、車載部品の世界市場シェアを拡大する。電動パワーステアリング (EPS) 用モーターでは電子制御装置 (ECU) とモーターを組み付けた超小型のパワーパックを投入し、2020年度に世界シェアを50%に引き上げる。電動オイルポンプ・ウォーターポンプも20年度にそれぞれ30%、20%を目指す。同社の車載部品は車の電動化や部品共通化を背景に受注が拡大している。事業規模の拡大に伴い、部品の内製化率を高めるた めの投資を積極化し、収益率の向上も同時に進める。(2015年5月1日付日刊自動車新聞より)

-電動化部品の2020年度市場規模予想と世界シェア目標:

  • 電動パワステ用モーター: 市場規模 70百万台、シェア目標 50%
  • 電動デュアルクラッチ用モーター: 市場規模 10百万台、シェア目標 70%
  • 電動オイルポンプ: 市場規模 11百万台、シェア目標 30%
  • 電動ウォーターポンプ: 市場規模 34百万台、シェア目標 20%

-モジュール化:

  • 電動パワステ用パワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製ECU)
  • 電動オイルポンプパワーパック (日本電産製モーター、日本電産エレシス製インバーター、日本電産トーソク/Nidec GPM製ポンプおよびケース)

-パワートレイン系への展開:

  • 油圧から電動への変革期が到来。パワトレ市場への本格参入を狙う。
  • 製品例として、SiCインバーター内蔵SRモーター:モーターの小型・軽量化・低消費電力化に成功。

-中国の低速電気自動車 (LSEV) 用駆動システムの主要コンポーネントを受注。

  • モーター、ギアボックス、コントローラー、バッテリーチャージャー
  • 中国の4輪車両とインド・東南アジアの3輪車両に注力。


-部品内製化: プレス部品、樹脂成形、ダイキャスト、シャフト加工、ハウジング加工などを内製化。

-LiDAR (Laser Imaging Detection & Ranging) の適用用途拡大 (自動運転等)

-ADAS市場向け売上は、2020年目標を2年前倒しで達成予定:
 2015年7月、2015年度第1四半期決算説明会で、子会社の日本電産エレシスの売上高について「20年に1千億円を掲げたが、おそらく2年ぐらい前倒しで超える」との見解を示した。第1四半期は大幅に計画を達成し、利益改善も急ピッチで進むエレシスで、好調なのがADAS (先進運転支援システム) 事業。「従来のEPS (電動パワーステアリング) とは異なり受注から搭載までの期間が短い。今後は車載事業の売上高と利益でADASが大きな比重を占める」と成長に期待を込めた。(2015年7月28日付日刊自動車新聞より) 

-グローバル化: 自動車メーカーおよびTier1サプライヤーの「地産地消」、メガプラットフォームによる大型受注に対応

  • 日本電産: インド生産拠点は2015年7月稼働開始
  • 日本電産トーソク: メキシコ生産拠点は2015年5月稼働開始
  • Nidec GPM (2015年2月に買収): ドイツ、ブラジル、中国・蘇州に生産拠点を保有

2017年3月期の見通し

(米国会計基準、単位:百万円)
2017年3月期
(予想)
2016年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 1,250,000 1,178,290 6.1
営業利益 130,000 124,538 4.4
税引前当期純利益 130,000 119,328 8.9
当社株主に帰属する当期純利益 98,000 91,810 6.7


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 51,978 45,179 37,808
-日本電産 22,523 17,982 19,896
-日本電産サンキョー 4,689 5,384 3,919
-日本電産トーソク* - - 831
-日本電産モータ 6,020 5,411 4,689
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 7,336 5,201 1,491

* 2015年3月期より、日本電産トーソクは日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズに含まれている。

-2017年3月期の研究開発費は全社で55,000百万円と予想。(米国会計基準)

研究開発体制

-中央モーター基礎技術研究所、シンガポールモーター基礎技術研究所、台湾モーター基礎技術研究所:全社的なモーター全般の要素技術研究を行い、グローバル技術開発戦略の中核となる要素技術研究の一層の高度化を推進している。

-けいはんな学研都市(京都府精華町)に新設する「生産技術研究所」の新棟の建設計画を発表した。新棟は敷地面積が約2万7千平方メートルで、建物(4階建て)床面積は約3万7千平方メートル。土地と建物、設備などの総投資額は約200億円。2016年10月に着工し、2017年12月の完成を予定する。生産技術や先行開発の技術者を集約し、研究員には外国人を含む外部人材も登用することで、最終的に1千人体制を目指す。(2016年1月12日付日刊自動車新聞より)

<日本電産>
-滋賀技術開発センター: HDD用を除く精密小型DCモーターおよびファンモーター、並びに自動車のパワーステアリング用をはじめとする各種車載用モーター等に関する新製品および新機種量産化、製品の品質向上を目的とした研究開発を行っている。

研究開発活動

<日本電産>
-車載用モーターでは、先進国市場のほか、中国、インド、ブラジルといった新興国市場向け新製品の開発を強化。
-開発案件は以下の通り:

  • 小型・高性能次世代のパワーステアリング用モーター
  • パワーステアリング以外のアプリケーション (シート、ブレーキ、サンルーフ等) 用のモーターおよび付帯するECU (電子制御ユニット)
  • 油圧・電動システムに使用されるブラシレスモーター等
  • モーターをセンサー、制御装置と組み合わせたパッケージ


<日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ>
-車載用モーター: ドイツ、スペイン、日本を中心に車載用モーターの高寿命化、小型化および軽量化に向けた研究開発を行っている。

  • シート、サンルーフ用モーター: レアアース不要な小型ブラシ付きモーターの商品化
  • エンジン冷却用モーター: 小型で軽量なブラシ付ファンモーターの開発

-シャシー制御領域 (ブレーキ、ステアリング):

  • ブレーキ: 回生協調ブレーキシステム用ECUの商品化 (量産) 開発、横滑り防止装置用ECUの商品化 (量産) 開発
  • 電動パワーステアリング: ブラシ付きモーター用とブラシレスモーター用ECUの開発が完了、機能安全対応を盛り込んだブラシレスモーター用ECUの先行開発を行っている。

-先進安全領域 (カメラ、ミリ波レーダー):

  • カメラ: 単眼カメラECUの開発を行った。

-その他の研究開発領域:

  • 自動変速機 (A/T)、無段変速機 (CVT) 用のコントロールバルブASSYの高機能化と高性能化
  • 電動オイルポンプ:グループ会社の技術力を最適に組み合わせて実施
  • トランスミッション用電動油圧アクチュエーター


<日本電産サンキョー>
-ステッピングモーター: 車載への用途展開において、小型化、高性能化、コストパフォーマンスの改善に向けて開発を進めている。

<日本電産モータ>
-車両駆動用モーター: レアアースを使わないSRモーター技術をベースにエンコーダーとのモジュール化を行い、建機・農機など大型車両のハイブリッド化・電気化に向けた開発を行っている。

<日本電産コパル>
-東京技術開発センターにおいて、車載用レンズ、車載用モーター等のシステム機器関連の要素技術、製品開発を行っている。

  • 光学製品: デジカメ用からポートフォリオの転換として、車載用レンズやモバイル製品の開発に力を入れている。
  • モーター: デジカメ用からモバイル、車載、医療への移行を進めている。

製品開発

ハプティクス (触覚技術)
-運転者の居眠りを振動で警告するアクチュエーターを初受注した。車内の表示機器で物理的ボタンのないタッチパネルが増える中、視線移動のない操作が可能なハプティクス製品は今後の伸長が見込まれる。運転者への伝達手段としても応用できるなど、安全運転に貢献する製品として提案を強化する考えだ。(2015年12月4日付日刊自動車新聞より)

主な設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 81,918 58,042 40,297
-日本電産 735 140 232
-日本電産サンキョー 7,949 5,790 3,712
-日本電産モータ 9,321 4,475 3,817
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 17,637 13,797 12,769


-2017年3月期の設備投資額は全社で110,000百万円と予想。(米国会計基準)

設備の新設計画

(2016年03月31日現在)
事業所名 所在地 設備内容 投資予定総額
(百万円)
着手および完了年月
着手 完了
同社
生産技術研究所
京都府
相楽郡
基礎・応用研究施設 20,000 2016年12月 2018年
1月
同社
本社ANNEX グローバル研修センター
京都府
南区
社員研修センター 4,300 2016年
1月
2017年
3月
日本電産コパル (株) 東京都
板橋区
電子・光学部品、機器装置製造設備 6,214 2016年
4月
2017年
3月
日本電産自動車モータ (浙江) 有限公司
[Nidec Automobile Motor
(Zhejiang) Corporation]
中国
浙江省
車載用製品製造設備 5,861 2016年
4月
2017年
3月
Nidec Motors & Actuators (Germany) GmbH ドイツ
バーデンヴィュルッテンベルグ州
車載用製品製造設備 4,494 2016年
4月
2017年
3月