ZF TRW Automotive Holdings Corp. (旧 TRW Automotive) 2015年12月期の動向

業績

-2015年12月期の売上高は14,385百万ユーロ。このうち、ZFによる同社買収完了後の売上高は8,941百万ユーロ。

ZFによる同社買収

-2014年9月、ZF Friedrichshafen AGが同社を12,400百万米ドルで買収する契約を締結したと発表。買収取引は2015年5月に完了。同社はZFの 「アクティブ&パッシブセーフティテクノロジー (Active & Passive Safety Technology)」 部門として統合される。統合プロセスには3~5年かかる予定。統合後の会社規模は売上高300億ユーロ、従業員数13万名を超える。(2015年5月15日付プレスリリースより)

事業再編

リンケージ・サスペンション事業をTHKに売却
-2015年4月、リンケージ・サスペンション事業を直動 (LM) システムメーカーのTHKに売却すると発表。売却金額は400百万ドル。これにより、THKは欧州および北米での事業拡大を図る。売却対象事業の年間売上高は約550百万ドル。手続きは2015年第3四半期に完了する。(2015年4月21日付プレスリリースより)

エンジンバルブ事業をFederal-Mogulに売却
-2015年2月、Federal-MogulはTRWのエンジンバルブ事業の買収に関して、大部分の手続きが完了したと発表した。買収金額は309百万ドル。今回買収された事業はドイツのBarsinghausenを本拠とし、世界に約4,000名の従業員を雇用している。同事業の合弁会社 (ベネズエラを除く) は買収対象に含まれていないが、9カ国15カ所の生産拠点、北米、欧州、アジアにおける3カ所の技術センターが含まれる。さらに、Federal-Mogulが受注した日系自動車メーカーからの売上高の大半が含まれている。買収による増収分は年間約500百万ドルで、将来的にも成長が見込まれる。(2015年2月9日付プレスリリースより)

フジオーゼックスとの業務提携解消

-2015年6月、フジオーゼックスはTRWグループとの4つの業務提携、TRW Automotive U.S. LLC、TRW Automotive GmbH、TRW Automotive J.V. LLC (TRW JV)、TRW Asia Pacific Co., Ltd.を解消すると発表した。合弁事業に関しては、フジオーゼックスが保有するTRW Fuji Valve Inc.とTRW Fuji Serina Co., Ltd.の全株式をTRW JVに譲渡し、TRW APが保有する富士气門 (広東) 有限公司 [Fuji Valve (Guangdong) Corporation] の全株式をフジオーゼックスが譲り受け、完全子会社化する計画。ただし、新韓バルブ工業 [Shin Han Valve Ind. Co., Ltd.] および新韓 (北京) 汽車配件系統 [Shinhan Beijing Automobile Parts System Co.] については、合弁解消に向け交渉中。現状では合意に至っていないため、当面は合弁事業を継続する。また、業務提携の解消に伴い、TRW JVが2014年4月にフジオーゼックスに対して提起した損害賠償請求訴訟に係る訴えを取り下げることにも合意する予定。(2015年6月30日付プレスリリースより)

事業動向

-2015年10月、次世代統合ブレーキコントロールシステム「IBC」の量産を2018年に開始すると発表した。IBCシステムは、バキュームブースターやセンサー、電子制御ユニットなどで構成されるESC (横滑り防止装置) と、ペダルからの入力を電気信号化してモーターで制御する電子制御ブレーキを一体化。従来のブレーキシステムに比べて25~30%の軽量化を達成した。加えてモーター制御により、150マイクロ秒以下で1Gの減速が可能な制動圧を実現し、制動距離の短縮を図った。IBCシステムは従来型ブレーキならびに半自動ブレーキの双方に使用可能で、あらゆるサイズの車両に搭載することができる。(2015年10月15日付日刊自動車新聞より)

受注

-2015年8月、北米および欧州の自動車メーカー2社から第2世代のセーフティドメインECU 「SDE 2」 を1件ずつ受注したと発表した。2018年に欧州と米国で発売される予定。(2015年8月27日付プレスリリースより)

-2015年7月、先進運転支援システム (ADAS) 向けカメラシステムの生産を拡大すると発表した。第3世代カメラシステム 「S-Cam(エスキャム)3」 を4種類のグローバルプラットフォームで受注、2015年内に量産を開始する。また、第4世代カメラ 「S-Cam 4」 も欧州自動車メーカーから初受注、2018年から供給を始める。カメラとレーダーを組み合わせた統合システムも欧州およびアジア市場への投入に向けて2017年から生産を開始する。(2015年7月6日付日刊自動車新聞より)

-2015年6月、電動パーキングブレーキ (EPB) キャリパーの累計生産台数が6,000万台に達したと発表した。同社のEPBシステムは、BMW 「X4」および「i8」、Chrysler 「Jeep Renegade」、Fiat 「500X」、Ford 「F150」、ホンダ 「Accord」、日産 「Qashqai」、Land Rover 「Range Rover Evoque」などに搭載されている。(2015年6月24日付プレスリリースより)

-2015年4月、同社のGlobal Electronics部門が次世代のビデオカメラセンサー 「S-Cam 3」 を2016年初めに中国に初めて導入すると発表した。この製品は、大手北米自動車メーカーの複数の中国モデルに搭載される予定。生産は上海の安亭 (Anting) にあるTRWのエレクトロニクス工場で行う。「S-Cam 3」 は現行製品に比べて6倍の処理能力と高い検出性能を備える。また、車線維持支援や歩行者や車に対する自動緊急ブレーキなど複数の安全機能も提供する。(2015年4月20日付プレスリリースより)

-2015年4月、「2015 World Car of the Year」 の最終選考にノミネートされた10モデルのうち、9つのモデルにTRWの製品が搭載されていると発表した。前方監視カメラ、長距離レーダー、ブレーキ、ステアリングホイール、シートベルト、セーフティエレクトロニクスおよびセンサーなどの安全技術および運転支援システムのほか、今回初搭載となった新型Bag-in-Roofエアバッグが含まれる。「2015 World Car of the Year」 の最終候補となったモデルは、BMW 「2 Series Active Tourer」、Citroen 「C4 Cactus」、Ford 「Mustang」、現代 「Genesis」、Chrysler 「Jeep Renegade」、マツダ 「Mazda2」、Daimler 「Mercedes-Benz C-Class」、BMW 「Mini 5-door」、日産 「Qashqai」、Volkswagen 「Passat」。(2015年4月2日付プレスリリースより)

-2015年3月、欧州車の2種類のプラットフォーム向けに、デュアルステージポンプの生産を開始したと発表した。このポンプは、2つのポンプの機能を1つの小型ハウジングに統合できるため、湿式デュアルクラッチトランスミッション (DCT) に適しているという。1段目では、湿式クラッチをオイルで冷却・潤滑するための低圧ポンプとして機能し、2段目は、油圧でクラッチやシフトフォークなどを作動させる高圧ポンプとなる。電気モーターがさまざまな速度でポンプを動かし、必要な場合にのみ作動するため摩擦損失を低減させることができるという。(2015年3月12日付プレスリリースより)

-同社は軽量で多機能の同社の電動パーキングブレーキ (EPB) を小型トラック市場に導入する。2017年より北米仕様の量産型プラットフォームに初めて搭載する計画。EPBは、従来のドラムインハットパーキングブレーキに比べて、トラックやSUV1台あたり20ポンド超の軽量化を実現し、燃費向上・CO2排出削減に貢献する。この技術は先進運転支援システム (ADAS) にも活用される。(2015年3月4日付プレスリリースより)

-2015年1月、PSA Peugeot Citroenに運転支援システム (DAS) を供給すると発表した。次世代の 「AC1000」 レーダーおよび 「S-Cam 3」 カメラの発売に伴い、それらの製品が個別またはデータ融合システムとしてPeugeot、Citroen、DSの車両に搭載される予定。2017年に生産を開始する。同社はセンサーの供給以外にもシステム一式の統合や機能開発も担当する。(2015年1月6日付プレスリリースより)

受賞

-インドRane Groupとの合弁会社であるRane TRW Steering Systemsは、Tata Motorsより 「Recognition of Long Association」 を受賞した。Tataとの25年にわたる150百万ルピー (約2.2百万ドル) 超の取引実績が評価されたもの。Tataからはさらに 「Special Citation of Distinction」 も受賞している。(2015年10月発行プレスリリースより)

研究開発拠点

-2015年12月末時点、世界全体で技術センターは22拠点、テストトラックは13拠点。

研究開発活動

-2015年7月、ドイツBerlinのテストコースにおいて、半自動運転による高速走行支援システムのデモンストレーションを実施すると発表した。このデモ走行では、ドライバーは時速40km以上で走行しながら、自動ステアリング、自動ブレーキ、自動加速を可能にする高速走行支援機能を体感できる。今回のデモで使用する車両には、ZF TRWの 「AC1000」 レーダーや 「S-Cam 3」 ビデオカメラセンサー、ベルトドライブ式電動パワーステアリング (EPS BD) のほか、アダプティブクルーズコントロール (ACC) 機能と車線逸脱警告 (LCA) 機能を統合した横滑り防止装置 「EBC 460」 が搭載されている。(2015年7月1日付プレスリリースより)

-2015年2月、年内に自動運転システム開発のエンジニアリングチームの規模を倍増すると発表した。同社では将来的な需要の拡大が見込める自動運転技術の開発に注力している。同技術ではセンサーやコントローラー、アクチュエーターなどシステムの統合技術が不可欠となるため、自動車メーカーとの連携を強化している。(2015年2月12日付日刊自動車新聞より)

製品開発

センターエアバッグ
-側面衝突を考慮したセンターエアバッグを開発。シートバックの内側に内蔵され、展開時にフロントシートの乗員の頭部や肩、胴部を保護する。ドライバーと助手席の乗員の間にエアバッグクッションを展開することで、「遠いサイド (ファーサイド)」と「近いサイド (ニアサイド)」の両方の側面衝突から乗員を保護することができるという。対向車や障害物がドライバーと反対側の車両側面に衝突するファーサイドの衝突の際、センターエアバッグはドライバーの体が移動しないようにサポートする。ドライバーの移動を最小限にすることで、助手席の乗員や周囲の内装部品との接触の危険を軽減できる。(2015年11月19日付プレスリリースより)

横滑り防止装置 (ESC) モジュール 「EBC 460」
-ソフトウエア統合機能を強化した横滑り防止装置 (ESC) を開発。自動運転機能や安全システム、シャシー、ドライブトレインなどの機能を制御するアルゴリズムを搭載し、統合ハブとして機能する。新開発の6ピストンポンプESC 「EBC 460」 は、ESCの処理能力を強化し、より多くのソフトウエアの統合を可能にした。2015年後半に欧州の大手自動車メーカーhへの供給を開始する。(2015年9月25日付日刊自動車新聞より)

第2世代セーフティドメインECU
-北米および欧州の自動車メーカー2社から第2世代のセーフティドメインECU 「SDE 2」 を1件ずつ受注した。2018年に欧州と米国で発売される予定。統合ハブとして機能する 「SDE 2」 は、車両の状態や周囲の状況に関する何百万バイトものデータを処理できる。ステアリングやブレーキ、ドライブトレインシステムなどと連携することで、制御ユニットの数を減らしながら電気アーキテクチャを簡素化し、多数の機能を実現する。同社は 「SDE 2」 に関して、安全度水準の最高レベル「ASIL D」を達成したことでさらに機能安全性を高めた。前世代の製品に比べて、レーダーやカメラを含むシステムおよびセンサーから、さらに多くのデータを統合することができ、これにより車両の周囲360度の検知を可能にするという。(2015年8月27日付プレスリリースより)

クラウドを活用したADAS搭載コンセプトカー
-ZFは米グーグルと連携して開発したクラウドを活用した先進運転支援システム(ADAS)を搭載したコンセプトカー 「Smart Urban Vehicle」 を公開した。ZFが自動運転関連の技術を手がけるのは今回が初めて。クラウドデータを用いてカーブの走行スピードを自動的に調整するなど、危険回避や予測運転を可能とした。さらにTRWが開発した多機能ステアリングホイールを組み合わせた。(2015年7月7日付日刊自動車新聞より)

ミリ波レーダー
同社は2015年から日本国内でミリ波レーダーの適合開発を開始する。同社は日系メーカーの単眼カメラで2割弱のシェアを持っている。一方でミリ波レーダーは欧州先行で開発しており、これまで国内では開発に携わっていなかった。高度運転支援システムで今後普及が見込まれるカメラとミリ波レーダーのセット装着を提案できる体制を整えることで、受注に結び付けていく。同社のミリ波レーダーは、主力の欧州市場ではC、Dセグメントでの採用が中心となっている。ただ、日本ではBセグメントの販売台数が多いため、同クラスでも運転支援システムが欧州以上に普及すると見ている。このためBセグメント以上を対象として採用活動を展開していく。(2015年4月17日付日刊自動車新聞より)

次世代シートベルトバックル
-2015年3月、次世代シートベルトバックル 「RNS5s」 を発表した。従来製品に比べて、パッケージで約15%の軽量化、約20%の小型化を実現。バックルやアンカープリテンショナーを装備したフロントおよびリアシート向けとなる。同社、この製品の生産を2015年はじめに欧州で開始する予定。(2015年3月26日付プレスリリースより)

エアバッグECUおよび運転支援カメラECU
-同社は日系自動車メーカー向けにエアバッグや運転支援カメラなどの電子制御装置 (ECU) のソフトウエアを日本で開発する。2020年をめどに、日本のエンジニア数を倍増し、開発体制を強化する。同社では日系メーカー向けにエアバッグや電子制御部品の提案を強化している。日本でソフト開発を行うことで、適合開発などで日系メーカーと連携しやすい体制を整え、受注に結びつける狙い。(2015年3月23日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

-2015年初より4月3日まで3カ月間の設備投資額は95百万米ドル。2015年12月期の設備投資額は650~690百万米ドルと見られる。

-新設された 「Active & Passive Safety Technology」 部門の設備投資額は、北米、欧州、アジアで増大。特にドイツAuerbachおよびDiepholzにおける8速、9速トランスミッション制御ユニットの生産能力拡大に充てられた。このほか、ドイツDiepholz、中国瀋陽、メキシコJuarezにおけるシフトバイワイヤーの組立・試験設備に充てられている。

海外投資

<中国>
-2015年11月、江蘇省張家港 (Zhangjiagang, Jiangsu) にブレーキシステムと乗員安全システムの2つの工場を建設し、それぞれ操業を開始したと発表した。ブレーキ工場は敷地面積約23,000平方メートル。主に電動パーキングブレーキ (EPB) 統合パーキングブレーキシステム、フロントブレーキキャリパー、バキュームブースターを生産するほか、ハウジング加工、キャリア加工、アクチュエーション加工および組み立てを行う。2016年に750名以上を雇用する計画。乗員安全システム工場は敷地面積約16,000平方メートル。主に運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグを生産するほか、「FS1」 および 「SPR4」 リトラクター、ロックシステム、フードリフターなどの組み立てを行う。2016年末までに500名以上を雇用する計画。(2015年11月2日付け各種リリース)

-2015年4月、陝西省西安 (Xi'an) に乗員安全システム (OSS) 工場を開設すると発表した。2016年7月よりインフレーターの現地生産を開始する計画。(2015年4月20日付プレスリリースより)

<インド>
-Rane Groupとの折半出資による合弁会社Rane TRW Steering Systemsの乗員安全 (Occupant Safety) 部門は、インドChennaiのSingaperumal Koilにエアバッグ工場を開設した。同じ敷地内にあるシートベルト工場に隣接して建設され、Fordの工場から数キロの距離に位置する。両工場の従業員数は約450名。新たに開設したエアバッグ工場の面積は1,800平方メートルで、運転席および助手席用エアバッグモジュールの組立を行う予定。最初の生産能力はエアバッグ約50万ユニットで、今後の市場拡大に応じて工場の拡張が可能になる。(2015年8月24日付プレスリリースより)