ZF Friedrichshafen AG 2014年12月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万ユーロ) |
2014年 12月期 |
2013年 12月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
グループ | ||||
売上高 | 18,415 | 16,837 | 9.4 | -売上高は過去最高。北米および中国での乗用車向けATとアクスルシステムの高い伸びが主因。 |
営業利益 | 897 | 756 | 18.7 | - |
事業概況
<自動車関連部門別>パワートレインテクノロジー部門
-2014年12月期の売上高は、前年比18%増の6,742百万ユーロ。特にアジア、米国でアッパーミドルサイズのモデルと高級車向けの売り上げが伸びた。また、米サウスカロライナ州Gray Courtで新型AT工場を立ち上げたことも寄与。
シャシーテクノロジー部門
-2014年12月期の売上高は、前年比7%増の5,885百万ユーロ。欧州、米国、中国での量産開始が寄与。
商用車テクノロジー部門
-2014年12月期の売上高は、前年比7%減の3,036百万ユーロ。ブラジルでの市場低迷、ウクライナ危機に起因するロシアでの販売減、為替差損が背景。
TRW買収
概要-2014年9月、米TRWの買収で合意に達したと発表。買収額は12,400百万ドル、買収は2015年上半期に完了する予定。
合併後の事業規模

(注) ドル換算レートは1ユーロ=1.2155ドル (2014年12月30日時点)、1ドル=119.48円 (2015年3月25日時点)
買収の狙い
-先進運転支援システム (ADAS) や自動運転に不可欠なセンシング技術とソフトウェアの確保。TRWが持つカメラ、レーダー、ブレーキコントローラーなどの技術を同社のシャシーやトランスミッションなどと組み合わせることでこの分野でキープレーヤーになることを目指す。同社はシャシーコントロールのハードウェア技術を保有しているが、今後は自動運転技術関連のシステムサプライヤーが主導権を握り、アクスルやショックアブソーバーなどの仕様をも決めることになる。このままでは同社は自動運転の分野でTier-2の地位を脱することができないため、TRWが持つ電子制御のステアリング、ブレーキコントロール、運転支援システム、センサーなどの技術を取り込む必要があったと、同社のCEO、Stefan Sommerはコメントしている。
買収後の統合プロセス
-統合は3~5年をかけて4段階に分けて行う。
フェーズ | 内容 |
フェーズ 1 | 買収完了後の「Day 1」 (初日) に向けての準備期間 |
フェーズ 2 | TRWを第5部門として統合 (ただし、TRWは独立事業法人として存続) |
フェーズ 3 | プロジェクトベースでの協調体制を計画 |
フェーズ 4 | 販売、アフターサービス、購買を最優先に組織統合を実施 |
売却
<ZF Lenksysteme (ZFLS)>-2015年1月、Robert Boschとの折半出資合弁会社ZF Lenksysteme (ZFLS) の持株 (50%) をすべてRobert Boschに売却。旧ZF LenksystemeはBosch Automotive Steeringに社名変更。独Schwabisch Gmundを本拠とする旧ZFLSは、8カ国に従業員13,000名超を雇用している。乗用車・商用車向けステアリングシステムの開発・生産・販売をグローバルで行っており、2013年の売上高は約41億ユーロ。主要市場に20拠点を保有し、欧州、米国、中国のほか、インド、ブラジル、マレーシアにも拠点を持つ。
<防振ゴム&プラスチック事業>
-2014 年9月、防振ゴム&プラスチック事業 (Rubber & Plastics business unit) を株洲時代新材料科技股份有限公司 [Zhuzhou Times New Material Technology (TMT)] に売却。同事業は2013年12月ベースで従業員は約3,300名、売上高は推定700百万ユーロ。
<南アフリカ子会社>
-2014年1月、南ア子会社Auto Industrial Brake & Chassis Holding Johannesburg (AIBC) を南アのプライベート・エクイティ・ファンドTrinitasに売却。AIBCはブレーキディスクなどの四輪車用部品を生産。ヨハネスブルグを本拠地とし、従業員は約900名、売上高は推定71百万ユーロ。
合弁
-同社は北京汽車工業 (BAIC) と乗用車用シャシーシステムの開発・組立を行う合弁会社を設立すると発表。同社が51%を出資するこの合弁会社は、北京経済技術開発区に設立される予定。2015年に建設を開始し、生産設備の設置準備を行う。シャシーモジュールの組み立てはその翌年に開始する計画。従業員約200名を雇用し、フロントおよびリア用シャシーモジュールをジャストインシークエンス方式で生産する。新工場の面積は16,000平方メートルで、当初の生産能力は20万ユニットを予定。BAICグループのさまざまなブランド向けに納入する。新工場への投資額は、両社あわせて10百万ユーロ超となる。同社は現在、中国で生産されるDaimler 「Mercedes-Benz C-Class」、「E-Class」、「GLK」 向けに、フロントおよびリアシャシーモジュール一式を納入している。(2014年10月9日付プレスリリースより)生産終了
-独Saarbrucken拠点において、乗用車用6速オートマチックトランスミッション (6HP) の生産を終了。同拠点では13年間にわたって700万基超を生産。その間、16の自動車メーカーが6HPを採用し、高級リムジン、SUV、ミッドサイズコンバーチブル、スポーツカーなどに搭載していた。今後は、第2世代となる8速オートマチックトランスミッション (8HP) が効率性や性能において新たなスタンダードになるという。なお、同社の上海工場では、引き続き中国市場向けに6HPの生産を行う予定。(2014年3月31日付プレスリリースより)受注
-2014年の主な受注OEM | モデル | 製品 |
上海GM | K211 (開発コード) | コラム式電動パワーステアリングシステム 「EPSc」。供給元は上海采埃孚転向系統 (武漢) 有限公司 [ZF Shanghai Steering Systems (Wuhan)] |
BMW | 「520d」 | 8速AT (8HP) |
ホンダ | 「Civic Tourer」 | 電子制御式アダプティブダンピングシステム 「CDC 1XL」 |
Chrysler | 「Jeep Cherokee」 | 9速AT (9HP) |
「200」 | 9速AT (9HP) | |
Land Rover | 「Range Rover Evoque」 | 9速AT (9HP) |
Iveco | 「Daily」 | 8速AT 「8HP」、6速MT 「Ecolite」 およびクラッチシステム、ダンパー、ステアリングポンプ (旧ZF Lenksysteme製)、ステアリングコラム (旧ZF Lenksysteme製) |
受賞
部門 | 受賞名 |
パワートレインテクノロジー | Automotive Newsより 「PACE Awards」 を受賞 |
シャシーテクノロジー | 現代・起亜より 「Technology 5-Star Award」 と 「2013 Supplier of the Year Award」 を受賞 |
欧州および米国においてGMより 「Supplier Excellence Award」 を受賞 | |
Volvo Carsより 「Quality Excellence Award」 を受賞 | |
現代モービスより 「Customer Recommendation」 を受賞 | |
Rayong (タイ) 工場においてFordより 「Q1 Award」 を、GMより 「Supplier Quality Excellence Award」 を受賞 | |
Eitorf (ドイツ) 工場においてPSAより 「Best Plant 2014」 を受賞 |
開発動向
研究開発費 |
(単位:百万ユーロ) |
2014年12月期 | 2013年12月期 | 2012年12月期 | |
合計 | 891 | 836 | 770 |
研究開発体制
-2014年12月期末で約6,539名が世界各国の開発拠点に従事。このうち約1,000名がグループの研究開発本部 (独Friedrichshafen) に、350名がチェコ共和国のPilsen、上海、東京に勤務している。-主な研究開発拠点
- Friedrichshafen (ドイツ) :研究開発本部。チェコ共和国のPilsenと東京の拠点をコーディネート。
- Dielingen (ドイツ)
- Passau (ドイツ)
- Schweinfurt (ドイツ)
- Pilsen (チェコ共和国)
- 上海
- 東京
- Detroit (米国ミシガン州)
-日本で初めて開発専用の拠点を開設する。場所は東京近郊で、年明けまでに用地を確保し、早ければ2015年内にも稼働する。トランスミッションやシャシー、制御システムなど幅広い部門のエンジニアを50人程度配置し、日系自動車メーカーとの共同開発がしやすい環境を整える。同社の日系自動車メーカーとの取引は、ショックアブソーバーなどシャシーシステムが中心で、13年の売上高は4億ユーロ (約548億円) となっている。日本での開発体制を強化することで、グローバルで販売を伸ばす日系自動車メーカーへの採用拡大に結びつける。(2014年10月22日付日刊自動車新聞より)
<チェコ共和国>
-チェコのZF Engineering Pilzenを拡張すると発表。同拠点ではグループおよび各部門向けに開発・試験を行っている。今回建設する7階建ビルの総床面積は3,500平方メートル。投資額は4百万ユーロとなる。今回の拡張により、約200名の増員を見込んでいる。拡張は2014年末に完了する予定で、まず70名の開発担当者が入居する。(2014年3月25日付プレスリリースより)
<ドイツ>
-本社における研究開発能力を強化し、2015年から2016年にかけて、Graf-von-Soden-Platzに位置するR&Dセンター内にトランスミッションの試験センターを建設する。R&Dセンターの西側に建設される予定で、試験台や作業場などを備えるという。また、現在Friedrichshafenにおいて複数のオフィスに点在している開発部門をこのR&Dセンターに集約することも計画している。(2014年2月24日付プレスリリースより)
<中国・アジア太平洋地域>
-中国・上海に位置する同社の中国およびアジア太平洋地域本社を大幅に拡張すると発表。オフィス、実験室、試験台などのスペースを加え、面積は現在の11,000平方メートルから54,000平方メートルへ約4倍になる見込み。また、同拠点には現在、約400名の従業員が勤務しているが、今回の拡張によりさらに900名の増員が可能になるという。建物の建設は2015年末に完了する見込み。今後5年間で同プロジェクトに約50百万ユーロを投じる計画。新たに建設する建物では、乗用車用ドライブラインおよびシャシーシステムや、商用車・建設機械用トランスミッションの試験を行うことができる。さらに、新型の9速オートマチックトランスミッションの試験設備も導入する。同社は、2017年に中国でもこのトランスミッションの生産を開始する計画。(2014年7月23日付プレスリリースより)
製品開発
9速ATベースのハイブリッドシステム-9速オートマチックトランスミッション (AT) をベースとしたハイブリッドシステムを開発。横置きエンジン搭載車向けのシステムで、FF車やFFベースの4WD車へ搭載していく。トルクコンバーターの代わりにモーターを搭載することで、既存の9速ATと同じサイズに収めた。縦置きエンジン車向けに8速ATベースのハイブリッドシステムを展開している同社では、9速AT用にもハイブリッドシステムを用意し、電動化への対応力を強化して付加価値を高めることで、ATの受注拡大に結びつける狙いだ。(2014年12月4日付日刊自動車新聞より)
設備投資
設備投資額 |
(単位:百万ユーロ) |
2014年12月期 | 2013年12月期 | |
パワートレインテクノロジー部門 | 576 | 541 |
シャシーテクノロジー部門 | 156 | 158 |
商用車テクノロジー部門 | 96 | 113 |
インダストリアルテクノロジー部門 | 61 | 50 |
電子システム部門 | 41 | 32 |
ZFサービス部門 | 10 | 14 |
グループ研究開発、グループ本社、サービス会社 | 65 | 46 |
グループ合計 | 1,005 | 954 |
海外投資
<インド>-インドPuneで新工場の建設を開始。新拠点には、乗用車パワートレインテクノロジー (Car Powertrain) 部門、商用車テクノロジー (Commercial Vehicle Technology) 部門、インドのZF Servicesを集約する予定。さらに、ZF Indiaのエンジニアリングおよび管理部門の本社としての役割も担う。新建屋の建設は、Puneから約20km北に位置するChakan工業団地内において数週間前に開始された。敷地面積は、85,000平方メートル (21エーカー)。完成は2014年末から2015年はじめの予定で、従業員約350名が勤務するという。新工場への投資額は、約20百万ユーロ (15億ルピー) となる。(2014年3月21日付プレスリリースより)
<米国>
-米国で横置きエンジン用9速ATの新工場建設の検討を開始。2013年7月に約600億円を投じ米サウスカロライナ州に開設した新工場は年間40万基の9速ATを生産できるが、旺盛な需要を受けて第2、第3の工場建設が必要と判断した。米既存工場は15年までに40万基分の能増が決まっている。中期的には米国で年間200万基の生産規模を確保したい考え。(2014年3月3日付日刊自動車新聞より)
<ロシア>
-同社とKamazの合弁会社ZF Kamaは、ロシア連邦のタタールスタン共和国Naberezhnye Chelnyに新工場を開設。商用車用トランスミッション「Ecomid」および「Ecosplit」を生産する。新工場への移転により、工場面積は4,000平方メートルから約20,000平方メートルと約5倍になった。生産能力は、これまでの年間2万基から2016年には最大5万基へ増強される予定。また、同社とKamazは2016年までに約90百万ユーロを同拠点に投じる計画。ZF Kamaは2005年に設立され、出資比率はZFが51%、Kamazが49%。16速の「Ecosplit」と9速の「Ecomid」を生産しており、そのうち95%をKamazに納入している。(2014年1月23日付プレスリリースより)
<中国>
-中国子会社「上海采埃孚転向系統 (武漢) 有限公司 [ZF Shanghai Steering Systems (Wuhan) Co., Ltd.]」の建設を開始。同子会社は2013年11月に設立。資本金は50百万元。武漢江夏経済技術開発区金港新区 (Jingang New District, Jiangxia Economic & Technological Development Zone, Wuhan) に位置し、GM武漢工場に隣接している。第一期建設の投資額は3.5億元。主に電動ステアリングコラム、油圧式ステアリング、機械式ステアリングコラム、機械式ステアリングを生産する。(2014年1月13日付け各種リリースより)