第2回国際二次電池展取材報告 2 部材編

2011/04/06

要 約

第2回国際二次電池展[Battery Japan 2011](2011年3月2日~4日に東京ビッグサイトで開催)における環境対応車(ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車・燃料電池車)に関連するリチウムイオン電池に関連する部品・材料で注目すべき19社の新製品/技術を紹介する。

分野 企業 技術/製品
正極材 三菱化学 リチウムイオン電池向け正極材/負極材/セパレーター/電解液
BASFジャパン(独) リチウムイオン電池向け正極材
ユミコアジャパン(ベルギー) リチウムイオン電池向け正極材
台塑長園能源科技(台湾) リン酸鉄リチウムイオン電池向け正極材
長園科技実業(台湾) リチウムイオン電池向け正極材
昇陽國際半導体(台湾) リチウムイオン電池向け正極材
湖南瑞翔新材料(中国) リチウムイオン電池向け正極材
負極材 平松産業 / 信州大学 黒鉛不織布(LG Chem、BYD、中国企業から引合が多い)
TIMCAL Graphite & Carbon(スイス) カーボン負極材
セパレーター 三菱樹脂 リチウムイオン電池向けセパレーター
Celgard(米国) / 宝泉 リチウムイオン電池向けセパレーター
電解質 オハラ

・リチウムイオン伝導性ガラスセラミックス(固体電解質)

・全固体電池

・リチウム空気電池
関東電化工業 六フッ化リン酸リチウム(電解質)
日本ポール(米国) 電解液向けろ過フィルター
バインダー 日本ゼオン 電池用バインダー
Solvay Solexis(イタリア) / 日本ソルベイ フッ素重合体(バインダー材料)
電極箔 日本黒鉛工業

・リチウムイオン電池正負極用黒鉛粉末

・黒鉛コーティングアルミ箔

・リチウムキャパシター用多孔箔
福田金属箔粉工業

・電解銅箔「CF-LBX」

・高純度平滑ニッケル箔
古河電気工業 / 古河スカイ / 日本製箔 負極集電体用銅箔(電解、圧延)【世界トップシェア40%】

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正極材

三菱化学

総合化学メーカーの三菱化学は、リチウムイオン電池の主要4材料である正極材、負極材、セパレーター、電解液を全て供給する世界で唯一の企業である(セパレーターは三菱樹脂が製造)。同社の4大材料の開発ロードマップを下記の写真に示す。

三菱化学の考える材料開発ロードマップ


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BASFジャパン

 ドイツの世界的総合化学メーカーBASFの日本法人であるBASFジャパンは、リチウムイオン電池向け正極材(製品名:NCM-111、NCM-424、NCM-523)を展示。NCMとは、ニッケル・コバルト・マンガンの略で、リチウムとマンガンを大量に含む金属酸化物を組みあわせた複合正極材料。この特許は、米国エネルギー省(DOE)のアルゴンヌ国立研究所が取得済で、ライセンスは、BASF、GM、戸田工業に供与されている。

自動車関連の売上げは、BASF全体で約10%であるが、日本では20%近くと高く、日本市場を重要視する方針を堅持するとのこと。


BASFの自動車用リチウムイオン電池材料
(同社パンフレットから引用)

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ユミコアジャパン

機能材料メーカーであるベルギー企業Umicoreの日本法人であるユミコアジャパンは、リチウムイオン電池向け正極材として、LiCoO2(コバルト酸リチウム)、Li(NMC)O2(ニッケル・マンガン・コバルト三元系)、Li(NCA)O2(ニッケル・コバルト・アルミニウム三元系)を展示。同社は、2011年4月稼働を目指して、神戸市にリチウムイオン電池材料製造工場とテクニカルセンターを建設中(総投資額は40億円。うち6億円は、経済産業省の「低炭素型雇用創出産業立地推進事業費補助」を受ける)。

台塑長園能源科計 Formosa Energy & Material Technology 

台湾の化学メーカー台塑企業(台湾プラスチックグループ)の台塑生医とリン酸鉄系正極材メーカーの長園科技実業が合弁で2008年に設立した台塑長園能源科技は、リン酸鉄リチウムイオン電池向け正極材を展示。中国の電池メーカーBYDへ供給。米国でリン酸鉄リチウム正極材の特許を取得で技術力をアピール。日本の販売代理店は三井物産エレクトロニクス。

台塑長園能源科技の特許と生産計画
(同社パンフレットから引用)
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長園科技実業 Changs Ascending Enterprise

1997年に台湾で創立された長園科技実業は、コバルト系、ニッケル系、ニッケルコバルト系リチウム電池正極材の研究開発・生産を開始。2001年には自動化生産設備を自社開発して台湾で初めての充電式リチウムイオン電池正極材の量産メーカーとなり、2005年にはリン酸鉄リチウム系複合酸化物(LiFexMyPOz)による電池正極材の量産に成功。2009年に米国で「リン酸鉄系複合酸化物」電池正極材の特許(USPTO 7494744)を取得。同社の開発したリン酸鉄リチウム系複合酸化物正極材は、リン酸鉄リチウムとは構造が異なり、空気中でも安定する欠陥構造(defective structure)を持ったオリビン型リン酸鉄リチウムを主な特徴としており、空気中で焼結できるためにより低い温度で製造でき、原材料も純鉄が必要なくて酸化鉄で可能なので、製造コストは他社よりも低くできる。
日本の販売代理店は三洋設備で、今回は共同でリチウムイオン電池向け正極材を展示。

昇陽國際半導体 Phoenix Silicon International Corp.

台湾のテスト用再生ウエハメーカーである昇陽國際半導体は、リチウムイオン電池事業へ事業拡大を図っている。今回は、リン酸鉄リチウムイオン電池向け正極材とEV用の電池モジュール(電圧 12V、容量 60Ah/720Wh)を展示。



EV用リン酸鉄リチウムイオン電池のサンプル展示

リン酸鉄リチウムイオン電池の仕様
(同社パンフレットから引用)
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湖南瑞翔新材料 Hunan Reshine New Material

中国のリチウムイオン電池向け正極材メーカーの湖南瑞翔新材料は、LCO(コバルト酸リチウム)、LMO(マンガン酸リチウム)、NCM(ニッケル・コバルト・マンガン三元系)等の各種正極材を生産している。同社創業者で副総経理の池田一崇氏(2008年就任)は、同社が2009年6月に中国・湖南省内で輸出額最多の企業となったことにより、長沙市政府から100万元の褒賞金を受賞した。今回の出展は、日本の販売代理店である長瀬産業によるもので、リチウムイオン電池向け正極材を展示。


負極材

平松産業 / 信州大学

石川県の合繊織物染色加工メーカーの平松産業は、事業多角化のために、信州大学繊維学部の沖野教授と炭素繊維不織布負極材を共同開発(現在は試作段階:信州大学で評価中)した。この開発は、NEDO「平成21年度新エネルギーベンチャー技術革新事業」に採択され、助成金を得て行われた。特許は出願中。従来の負極材は、天然黒鉛や合成グラファイトを使っているが、同社の炭素繊維不織布負極材は、炭素材料以外は使っておらず、織物であるため高表面積による高速法充電が可能で、集電極とバインダーを使わない負極という特長がある。現在、韓国LG Chem、BYD等の中国企業から引合が多いとのこと。


炭素繊維不織布負極材の特長
(同社パンフレットから引用)


シリコン蒸着炭素繊維不織布負極材の提案
(同社パンフレットから引用)
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TIMCAL Graphite & Carbon

1908年にスイスで創業した化学メーカーであるTIMCALは、リチウムイオン電池用の合成グラファイトや天然黒鉛の負極材事業を拡大中。今回はグラファイト(製品名:TIMREX®)、カーボンブラック(製品名:ENSACOTM、SUPER PTM Li)、および導電助材を展示。


セパレーター

三菱樹脂

三菱化学と共同出展した三菱樹脂は、リチウムイオン電池向けセパレーター(3層、単層)を展示。同社は、リチウムイオン二次電池用セパレーターを2003年に開発着手。2006年から三菱化学と共同開発に取り組む。同社長浜工場(滋賀県長浜市)内にセパレーター量産設備を設置し、2009年夏から生産。販売は三菱化学が担当。

Celgard / 宝泉

米国Celgardは米国Polypore Internationalの100%子会社で、リチウムイオン電池向けセパレーター等の微細孔膜メーカーである。日本では、日本法人のポリポア(株)がCelgard®セパレーターを販売。今回は、二次電池・部材専門サービス会社の宝泉と共同で出展。


電解質

オハラ

リチウムイオン電池用セパレーターの大手メーカーであるオハラは、今回は次世代電池である全固体電池とその電解液に相当するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス(固体電解質)を展示。これらは2010年3月に開発成功。同社は、電池容量、出力、サイクル寿命の向上を目的とした開発を2010年から2011年にかけて行い、電池構成体として2012年の製品化を目指している。

さらに、このリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの焼結体は、化学的耐久性が高く、リチウムイオンは通すが、その他のイオンや水などは通さないために、リチウム空気電池の電解質として使用できることから、同社はリチウム空気電池を試作。

試作した全固体電池の部材の特性と事業化ロードマップ

リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの組成と特徴

リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの応用例としての
リチウム空気電池の特性


リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスのサンプル展示
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関東電化工業

1970年にフッ酸電解技術を国内で初めて確立した関東電化工業は、40年以上の経験と実績により、世界トップクラスのフッ素ガス製造能力を保有するに至った。同社のフッ素系製品は、それぞれ独立したプラントでフッ素ガスと原料を直接反応させて製造する点に特徴がある。同社は、市場の拡大が見込まれるリチウムイオン二次電池の材料として、電解質の六フッ化リン酸リチウムと、添加剤のフルオロエチレンカーボネート等を供給している。

電解質の六フッ化リン酸リチウムの特徴

開発中の新規添加剤の特性
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日本ポール

電解液向けろ過フィルターは、電解液中からの異物、固形電解塩成分を除去する。米国のろ過フィルターの専門メーカーPall Corporationの日本法人である日本ポールは、リチウムイオン電池セル及び部材製造工程におけるすべての流体に対してのろ過フィルター(セル工程では撹拌機とコーター向けのろ過フィルター、電解液用フィルター、セパレーター製造工程向けフィルター)を展示した。

リチウムイオン電池の製造工程とフィルターの役割


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バインダー

日本ゼオン

日本ゼオンは、正極用電池用バインダー(水系と溶剤系)と負極用電池用バインダー(水系)を展示。バインダーとは、電気を貯める役割を持つ活物質を多数電極内でつなぎとめる接着剤。同社のバインダーは、従来の電池バインダー(PVDF ポリフッ化ビニリデン)よりも使用量が少なく、より柔軟性の高いゴム系バインダーの特徴があり、より薄型の電池が実現できる。同社はまた、近年、大型リチウムイオン電池の正極材料として注目されている鉄系材料やマンガン材料向けのバインダーも事業化を進めている。

日本ゼオンの電池材料ラインナップ


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Solvay Solexis / 日本ソルベイ

イタリアのフッ素化学メーカーのSolvay Solexisは、リチウムイオン電池用のバインダー材料である半結晶性フッ素重合体(製品名:Solef® と Hylar® PVDF)を展示。

(注)PVDFとはポリフッ化ビニリデン樹脂。

リチウムイオン電池用バインダーの特徴


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電極箔

日本黒鉛工業

負極材メーカーでもある日本黒鉛工業は、正極材用集電体の電極箔である黒鉛コーティングアルミ箔(塗料から塗工まで社内一貫生産)の他、リチウムイオン電池正負極用黒鉛粉末やリチウムキャパシター用多孔箔を展示。

二次電池用多孔箔集電体の特性


電極用集電体のサンプル展示
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福田金属箔粉工業

日本で初めてプリント配線板用電解銅箔の生産に成功した金属箔・粉メーカーの福田金属箔粉工業は、今回は負極集電体用電解銅箔「CF-LBX」や高純度平滑ニッケル箔を展示。さらに、開発中の次世代リチウムイオン電池用負極集電体用の超高抗張力電解銅箔や、燃料電池用水素分離膜を参考出展した。

負極集電体用の超高抗張力電解銅箔の特性(参考出展)

燃料電池用水素分離膜の特長(参考出展)
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古河電気工業 / 古河スカイ / 日本製箔

古河電気工業グループの負極集電体用銅箔(電解、圧延)は、世界トップシェア(約40%)を占める。古河電気工業が展示した主力製品である負極集電体用電解銅箔「NC-WS」は、電解銅箔の優れた結晶構造と圧延銅箔の耐屈曲特性を兼ね備えた両面平滑な電解銅箔が特徴。

共同出展した日本製箔は、正極集電体用アルミ箔の大手で、トヨタ、ホンダへはほぼ全てを供給。また、負極集電体用圧延銅箔も生産する。古河スカイは、2003年に古河電工とスカイアルミニウムのアルミニウム事業を統合して設立された圧延アルミニウムメーカー。

負極集電体用電解銅箔「NC-WS」の特徴


(注)画像はクリックすると拡大します。                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>