SUBARU:2022年央までにトヨタと共同開発のEV SOLTERRAを投入

新世代アイサイトは全周囲検知可能、新型車投入や工場拡張で米国事業を強化

2021/09/09

要約

BRZ
2022年に発売予定のEV SOLTERRAの内装
(出典:SUBARU)

  SUBARUの電動化戦略では、2030年までに世界販売の40%以上を電動車(電気自動車(EV)とハイブリッド車(HV))とすることを目標としている。2022年には、トヨタと共同開発するCセグメントクラスSUVのEV SOLTERRAを日本、北米、欧州、中国で発売する。2020年代前半には、トヨタのTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)を採用したストロングハイブリッド車を投入する計画。

  SUBARUは運転支援システム「アイサイト」のステレオカメラを広角化するとともに、従来は後部バンパーの左右にしか搭載していなかったミリ波レーダーを前部バンパーの左右にも搭載し、周囲360度の検知を可能として、安全性を進化させた。この「新世代アイサイト」を、2020年10月投入の新型Levorgから搭載。また、同モデルには高度運転支援システム「アイサイトX」も初搭載する。3D高精度地図データとGPS・準天頂衛星「みちびき」等からの情報を組み合わせて自社位置を正確に把握し、レベル2の自動運転を可能とする。今後の「アイサイト」にはAIの判断能力を融合させる計画で、AIに特化した開発拠点を開設している。

  新型Levorgには、SUBARU独自のコネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」も導入。24時間365日コールセンターとつながることで、事故やトラブルが発生した際に、より迅速に救命活動を行い、SUBARUの目標である死亡交通事故ゼロを推進する。

  SUBARUは電動化、自動化、コネクティッドなど次世代技術「CASE」に対応するため、開発体制を刷新。2024年には群馬製作所内に研究開発施設を開設し、分散していた研究部門を統合する。

  SUBARUの重点市場である米国では、2021年秋にトヨタと共同開発したスポーツクーペBRZを投入。2021年にはこのほか、セダンの新型WRXを投入する。2022年にはSUVのCrosstrekとセダンのImprezaをフルモデルチェンジ、トヨタと共同開発するEVのSOLTERRAを投入する計画。米国での販売は2021年上期に前年同期比20.3%増の32.1万台となり、回復基調にあるが、新車在庫が8月初頭時点で7日分と少ないことが課題である。

  SUBARUの2020年度の業績は、新型コロナウイルス感染拡大や半導体不足による販売台数減少により、売上収益は前年度比15.4%減の2.8兆円、営業利益は51.3%減の1,025億円となった。SUBARUの営業利益率は2017年度まで10%台を維持していたが、検査不正対策やリコール費用、設備投資拡大等により2018年度以降は6%前後、2020年度には3.6%に低下。利益率の低い状態が続いている。SUBARUが2021年8月に発表した2021年度通期業績見通しでは、世界販売台数は前年度比11.6%増の96万台、売上収益は16.6%増の3.3兆円、営業利益は95.2%増の2,000億円、営業利益率は6.1%とした。


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電動化戦略:2022年にトヨタと共同開発のEV、2025年までにストロングハイブリッドを投入

SOLTERRA
トヨタと共同開発するEV SOLTERRA
(出典:Subaru Norge AS)

  SUBARUは2021年5月11日、トヨタと共同開発を進める新型電気自動車(EV)の名称を「SOLTERRA(ソルテラ)」に決定し、2022年央までに発売すると発表した。SOLTERRAは、トヨタと共同開発したEV専用プラットフォーム「e-SUBARU GLOBAL PLATFORM」を採用した初めてのSUBARU車で、CセグメントクラスSUVのEVである。SUBARUの電動化戦略は他社に遅れをとっていたが、トヨタとの連携で加速化を図る。2020年2月、トヨタがSUBARUへの出資比率を20%に引き上げ、持分法適用子会社とし、2021年1月、SUBARUもトヨタ株を取得して出資比率を0.3%とした。関係強化により、両社は電動化など次世代技術の開発でより緊密に連携していく。

  SUBARUが2020年1月に発表した、CO2削減に向けたロードマップでは、2030年までに世界販売台数の40%以上を電動車(EV+HV)とすること、2050年までにWell-to-WheelでCO2排出量を2010年比で90%削減することを目標とする。

  電動車のラインアップでは、2018年に日本でForesterとSUBARU XVのマイルドハイブリッド車、2020年にImpreza Sportのマイルドハイブリッド車を発売(欧州でも発売)。米国では2018年にCrosstrekのPHVを発売した。今後の予定では、2022年央までにトヨタと共同開発するEVのSOLTERRAを日本、北米、欧州、中国で投入し、2020年代前半にストロングハイブリッド車を発売する計画。トヨタとの連携を活用してEVやHVの技術開発を加速させる一方で、SUBARU GLOBAL PLATFORMやシンメトリカルAWD、水平対向エンジンなどSUBARU独自のコアテクノロジーも進化させ、活用していくとしている。

 

SUBARUのCO2削減に向けたロードマップ(2020年1月発表)

オフィス・工場で排出するCO2 2030年度 2016年度比30%削減(総量ベース)
2050年度 カーボン・ニュートラルを目指す
商品の使用時に排出するCO2 2030年まで 世界販売台数の40%以上を電動車(EV+HV)とする。
2030年代前半 生産・販売する全車に電動技術を搭載。
2050年 Well-to-Wheelで新車平均(走行時)のCO2排出量を、2010年比で90%以上削減する。

 

SUBARUの電動車ラインアップ(発売時期は、特記されない限り日本での発売時期)

モデル 発売時期 概要
XV e-BOXER 2018年 2018年10月に日本で、2019年秋に欧州で発売。マイルドハイブリッド車。5人乗りコンパクトクロスオーバーSUV。スバルグローバルプラットフォーム採用。群馬・矢島工場で生産。
Forester e-BOXER 2018年 2018年9月に日本で、2019年秋に欧州で発売。マイルドハイブリッド車。5人乗りコンパクトクロスオーバーSUV。スバルグローバルプラットフォーム採用。群馬・矢島工場で生産。
Crosstrek Hybrid 2018年(米国) 2018年12月に北米で発売。PHV。5人乗りコンパクトクロスオーバーSUV。THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)を導入。群馬・矢島工場で生産。
Impreza SPORT Advance 2020年 2020年10月に日本で発売。マイルドハイブリッド車。5ドアコンパクトハッチパック。欧州でも販売する。群馬・矢島工場で生産。
SOLTERRA 2022年 2022年央までに日本、米国・カナダ、欧州、中国等で発売予定。トヨタと共同開発を進めるEV。トヨタと共同開発したEV専用プラットフォーム「e-SUBARU GLOBAL PLATFORM」を採用した初めてのSUBARU車で、CセグメントクラスSUV。
同プラットフォームはフロント・センター・リアなど数種類のモジュールやユニットを組み合わせることで、様々なバリエーションのEVを効率的に展開することが可能。SUBARUのAWD技術とトヨタの電動化技術を活用するなど、両社がそれぞれの強みを持ち寄る。
ストロングハイブリッド車 2020年代前半 THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)とハイブリッド専用水平対向エンジンを組み合わせる。


新型Levorgに「新世代アイサイト」、SUBARU初採用となる「アイサイトX」を搭載

  SUBARUは2020年10月に日本で発売したステーションワゴンの新型Levorgの全車に、安全性を進化させた運転支援システム「新世代アイサイト」を標準装備した。従来のアイサイトには、先行車との衝突を回避する「プリクラッシュブレーキ」や、自動車専用道路で先行車に追従走行・車線中央維持を行う「ツーリングアシスト」等の機能があるが、新世代アイサイトは広角化したステレオカメラと前後4つのレーダーにより、周囲360度の検知機能を実現。見通しの悪い交差点での出会い頭の衝突回避や、ブレーキ制御だけで衝突回避が困難な場合にステアリング制御による衝突回避のサポートを行う。

  さらに新型Levorgには、SUBARU初採用となる高度運転支援システム「アイサイトX」を搭載したグレードを新たに設定した。自動車専用道路で3D高精度地図データとGPSや準天頂衛星「みちびき」などの情報を組み合わせ、自車位置を正確に把握。滑らかな車線変更のアシストや、渋滞時にステアリングから手を離すハンズオフ走行および発進アシストにより、運転負荷を大幅に軽減する。

 

新世代アイサイトの概要と新たな機能

概要 広角化した新開発のステレオカメラに加えて、前後4つのレーダーを組み合わせることで周囲360度の検知機能を持たせた。ソフトウェアの性能向上や、電動ブレーキブースターの採用などにより、これまで以上に幅広いシーンで運転をサポートする。ステレオカメラのサプライヤーは、日立オートモティブシステムズからスウェーデンのVeoneerに変更(後述)。
前側方プリクラッシュブレーキ 見通しの悪い交差点や店舗の駐車場などから出庫する際に、前側方レーダーによって前側方から接近する車両を検知。出会い頭の衝突回避をサポートする。
前側方警戒アシスト センターディスプレイにフロントビューモニターを表示させている場合、見通しの悪い交差点などで前側方レーダーによって接近車両を検知すると、映像内にインジケーターで通知する。
緊急時プリクラッシュステアリング プリクラッシュブレーキの制御だけでは衝突回避が困難な場合、システムが周囲に回避スペースがあると判断すると、ステアリング制御もあわせて行い衝突回避をサポートする。
エマージェンシーレーンキープアシスト 約60km/h以上で走行している場合、隣接車線の後方車両が接近しているにもかかわらず、車線変更を行おうとした場合や車線からはみ出しそうになった際、音と表示でドライバーに注意を喚起するとともに、ステアリング操作をアシストして車線からの逸脱を抑制する。

 

新世代アイサイトにVeoneerのステレオビジョンシステムを採用

スウェーデンに本社を置く自動車技術供給会社のVeoneerは2020年10月1日、SUBARUとの提携を発表した。提携により、Veoneerは新型Levorgに搭載される新世代アイサイト向けにステレオビジョンシステムを供給する。SUBARUはVeoneerのステレオビジョンシステムの知見と光学機械設計能力を評価し、サプライヤーとして選定した。新世代アイサイトは広いベースラインに2台のカメラを設置することで、交差点やカーブした道路で歩行者や車両をより正確に検知できる。システムは前バージョンと比較して視界が2倍になり、解像度が大幅に向上、さらに検出性能を改善する光学的ロバスト性と機械的剛性を強化している。

 

アイサイトX(高度運転支援システム)の概要と機能

概要 一定の条件を満たした自動車専用道路で、GPSや準天頂衛星「みちびき」などからの情報と、車線単位の情報を持つ3D高精度地図データを組み合わせることで、自車位置を正確に把握。運転支援機能を大幅に拡張する。幅広いシーンでアクセル・ブレーキ・ステアリング操作のアシストを行い、快適なロングドライブをサポートする。
渋滞時ハンズオフアシスト 自動車専用道路上での渋滞停止時(0km/h~50km/h)、一定の条件を満たすと、ステアリングから手を離すことが可能になる。
渋滞時発進アシスト 自動車専用道路上での渋滞時、ドライバーが前を向いているなど一定の条件が揃えば、スイッチ操作をすることなく発進する。
カーブ前速度制御 自動車専用道路を走行中、進入するカーブの曲率に合わせて、適切な速度に制御する。
料金所前速度制御 料金所の手前で、ETCゲートを安全に通過できる速度まで減速。通過後はセット車速まで加速する。
アクティブレーンチェンジアシスト 自動車専用道路での高速走行時(約70km/h~120km/h)、ドライバーが方向指示器を操作し、システムが作動可能と判断すると、ステアリングを制御して車線変更をアシストする。
ドライバー異常時対応システム ツーリングアシスト作動中に長時間ステアリングから手を放しているとシステムが判断した場合や、渋滞時ハンズオフアシスト作動中に脇見や居眠りを検出した場合、警告する。それでもステアリングを握らないと、ドライバーに異常が発生したと判断。徐々に減速・停止し、ハザードランプやホーンで周囲に知らせる。

 

AI開発拠点を渋谷に開設

SUBARUは2020年12月にAI開発拠点「SUBARU Lab」を東京都渋谷区に開設すると発表。「アイサイト」の技術をさらに引き上げるために、AIに特化して技術開発を進める場所としている。「アイサイト」にAIの判断能力を融合させることで、安全性をさらに向上させる。IT企業集積地として進化を続ける渋谷に拠点を置くことで、AI開発に必要な人材の採用やIT関連企業との連携などを可能とし、開発を加速させる。


コネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」で交通事故ゼロを推進

  新型Levorgには、SUBARU独自のコネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」も採用された。大型センターインフォメーションディスプレイやGPS、車載通信機等を搭載し、24時間365日コールセンターとつながることで、事故やトラブルが起こった時にサポートする。SUBARUは2030年に死亡交通事故ゼロ(SUBARU車乗車中およびSUBARU車との衝突による死亡交通事故ゼロ)を目指しているが、コネクティッドサービスにより救命活動が早まり、死亡率が大幅に低減されるとしている。

  SUBARUはコネクティッドの領域でKDDIとパートナーシップを構築。新型Levorgから、KDDIの「グローバル通信プラットフォーム」を活用したコネクティッドサービスを展開していく。また、次世代車載通信機の技術仕様について、SUBARU、スズキ、ダイハツ、トヨタ、マツダは2021年4月、5社で共同開発することに合意した。

 

コネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」を採用

概要 11.6インチセンターインフォメーションディスプレイやGPS、車載通信機などを搭載し、24時間365日コールセンターとつながることで、交通事故やトラブルが発生した際にサポートする。
基本機能(無料) 車両を安全に利用する上で重要な案内(リコール等)をセンターディスプレイに表示する。
SUBARUつながる安心パッケージ(5年間無料、6年目以降は有料)
先進事故自動通報(ヘルプネット) エアバッグが作動するような衝突事故が発生した場合に、自動的にコールセンターにつながり、警察や消防、医療機関等と連携。より迅速に救命活動が行われるようサポートする。
SUBARU SOSコール 急な体調不良など運転が困難な場合に、専用ボタンを押すとコールセンターにつながる。専門スタッフからアドバイスを受けたり、必要に応じて救急に対する出動要請を行う。
SUBARU iコール(安心ほっとライン) 車両故障など突然のトラブル時に専用ボタンを押すとコールセンターに接続。ロードサービス窓口への取次や状況に応じた適切なアドバイスなど、24時間体制でサポートする。
故障診断アラート、セキュリティアラート 車両の盗難警報装置が作動した場合や、警告灯が点灯するような車両故障が発生した場合には、専用アプリやEメールで通知する。

 

KDDIとコネクティッド領域でパートナーシップを構築

SUBARUは2020年12月8日、KDDIとコネクティッド領域でのパートナーシップを構築したと発表。既に販売を開始した新型Levorgを皮切りに、KDDIの「グローバル通信プラットフォーム」を活用したコネクティッドサービス「SUBARU STARLINK」の展開を推進していく。同プラットフォームは車載通信機を搭載した車両の位置情報から、国や地域ごとに選定した通信事業者への自動的な接続と、通信状態の監視を統合的に行う通信基盤。KDDIは79の国と地域で同プラットフォームによるサービスを提供する。SUBARUは2022年までに主要市場において8割以上の新車をコネクティッドカーへ切り替える計画。

 

SUBARU、スズキ、ダイハツ、トヨタ、マツダ、次世代車載通信機の技術仕様を共同開発

SUBARU、スズキ、ダイハツ、トヨタ、マツダは2021年4月27日、5社で次世代車載通信機の技術仕様を共同開発し、通信システムの共通化を推進することに合意したと発表した。今回の合意内容では、トヨタが開発した車載通信機技術をベースに、SUBARU、スズキ、ダイハツ、マツダが保有する技術を盛り込みながら、車両からネットワーク、車載通信機センターまでの接続仕様を共通化した次世代コネクティッドカー向けのシステムを構築する。

 

CASE対応へ開発体制を整備

SUBARUは電動化や自動運転、コネクティッド等の次世代技術「CASE」への対応が求められる中、開発組織を整備している。2021年1月に自動車部門の技術統括本部にCTO(最高技術責任者)室を新設。設計や開発に関わる経営資源の配分や技術に関わる経営戦略の立案を担う。7月には、設計や研究部門など細分化していた研究開発組織を統合。2024年には群馬製作所内に約300億円を投資し、新たに研究開発施設を建設する。これまで3カ所に分散していた約3,000人の技術者を集めるほか、サプライヤーや大学との共同開発に使用するスペースを設ける。外部連携により、新機能の開発や商品投入スピードを上げる狙い。


米国市場:2021年にトヨタと共同開発する新型BRZ、2022年にEVのSOLTERRAを投入

BRZ
トヨタと共同開発したスポーツクーペ BRZ
(出典:SUBARU)

  SUBARUは重点市場である米国で、2021年秋にトヨタと共同開発したスポーツクーペBRZを投入。「スバルグローバルプラットフォーム」の開発から得たノウハウを取り入れ、フロント横曲げ剛性やねじり剛性大幅に向上させた。2021年にはこのほか、セダンの新型WRXを投入する。2022年にはSUVのCrosstrekとセダンのImprezaをフルモデルチェンジ、トヨタと共同開発するEVのSOLTERRAも投入する。

  2020年の米国での販売台数は、下期に回復傾向を示したものの、上期に新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けたため、2020年通年では前年比12.6%減の61.2万台となった。2021年上期には米国は回復基調にあり、半導体供給不足の影響はあったが、販売台数は前年同期比20.3%増の32.1万台となった。SUBARUの米国での新車在庫は2021年8月初頭時点で7日分しかなく、販売機会を逃した可能性があるとされる(Automotive News 2021.8.3付)。

  米国のインディアナ工場では、2020年7月から1億5,800万ドルを投じて拡張工事を開始。同工場では現在、Legacy、Outback、Impreza、Ascentおよびエンジンを生産しているが、新たにトランスミッション組立工場を増設する計画。

 

米国での新型車投入計画

モデル 投入時期 概要
新型BRZ 2021年 トヨタと共同開発したFRレイアウトのスポーツクーペ。トヨタの「GR 86」とベースを共有する。「スバルグローバルプラットフォーム」の開発から得たノウハウを取り入れ、「インナーフレーム構造」や「構造用接着剤」などの採用によりボディを再構築することで、フロント横曲げ剛性やねじり剛性大幅に向上。パワートレインには排気量を拡大した2.4L水平対向4気筒エンジンに6速MTまたは6速ATを組み合わせる。運転支援システム「アイサイト」をAT車に標準装備。群馬・本工場で生産。
新型WRX セダン。群馬・本工場で生産。
新型Crosstrek 2022年 ImprezaベースのクロスオーバーSUV。群馬・矢島工場で生産。
新型Impreza コンパクトサイズのファミリーカー。現行モデルはインディアナ工場で生産。
SOLTERRA トヨタと共同開発するCセグメントSUVのEV。
新型Outback 2024年 ミッドサイズクロスオーバーSUV。現行モデルはインディアナ工場で生産。
新型Ascent 3列シート7/8人乗りミッドサイズSUV。現行モデルはインディアナ工場で生産。
新型Forester コンパクトクロスオーバーSUV。現行モデルは群馬・矢島工場で生産。
新型Legacy ミッドサイズのスポーティセダン。現行モデルはインディアナ工場で生産。

資料:MarkLines車種別投入計画 - SUBARU米国販売モデル

 

米国市場モデル別販売台数

(台)

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2020年
1-6月
2021年
1-6月
BRZ 5,296 4,141 4,131 3,834 2,334 2,267 962 721
Impreza 100,519 55,238 86,043 76,400 66,415 43,628 18,620 17,165
Legacy 60,447 65,306 49,837 40,109 35,063 27,240 11,901 12,921
WRX 0 33,279 31,358 28,730 21,838 21,178 10,333 14,272
乗用車計 166,262 157,964 171,369 149,073 125,650 94,313 41,816 45,079
Tribeca/Ascent 0 0 0 36,211 81,958 67,623 31,397 28,373
Forester 175,192 178,593 177,563 171,613 180,179 176,996 85,860 95,965
Outback 152,294 182,898 188,886 178,854 181,178 153,294 62,304 87,619
Crosstrek 88,927 95,677 110,138 144,384 131,152 119,716 45,732 64,214
小型トラック計 416,413 457,168 476,587 531,062 574,467 517,629 225,293 276,171
合計 582,675 615,132 647,956 680,135 700,117 611,942 267,109 321,250

資料:MarkLines Data Center

 

1億5,800万ドルを投じてインディアナ工場を拡張

インディアナ州経済開発公社は、SUBARUが2020年7月22日に1億5,800万ドルを投じるインディアナ工場の拡張工事に着手したと報じた。820エーカーの敷地を拡張し、新しいサービス部品倉庫を建設するとともに、470万平方フィートの工場建屋にトランスミッション組立工場を増設する。工場拡張に伴い、SUBARUは2023年末までに最大350名を新たに雇用する計画。インディアナ工場の年産能力は41万台。2020年7月時点で6,000名超を雇用する。


2020年度の営業利益は51%減の1,025億円、2021年度は95%増の2,000億円の見込み

  SUBARUの2020年度の連結販売台数は、第2四半期以降、主力の北米を中心に販売が回復傾向となり、第3四半期は前年を上回る水準で推移したものの、第4四半期は半導体供給課題の影響を受け、通期として前年度比16.8%減の86万台となった。2021年度第1四半期(2021年4-6月期)の連結販売台数は、半導体供給不足による生産制約はあるものの、重点市場である米国を中心に自動車全体需要は回復基調にあり、前年同期比31.7%増の17.5万台となった。

  2020年度の売上収益は、販売台数の減少等により前年度比15.4%減の2兆8,302億円。連結損益については、前年度に比べ販売管理費の圧縮や保証修理費の減少により諸経費等が減少したものの、販売台数の減少による売上構成差等の悪化により、営業利益は前年度より1,079億円減少となる1,025億円となった。2021年度第1四半期の売上収益は、販売台数の増加による売上構成差の改善と為替レート差により39.0%増の6,352億円、営業利益も295億円の黒字を確保した(前年同期は157億円の赤字)。

  SUBARUの営業利益率は2017年度まで10%台と高水準を維持していたが、2018年度は5.8%、2019年度は6.3%と低下。完成検査不正対策や大規模リコール、設備投資拡大等により費用が増加し、利益率が下がった。2020年度の営業利益率は3.6%と大幅に低下。2021年4-6月期は4.6%と回復傾向にある。

  2021年8月にSUBARUが発表した2021年度通期業績見通しでは、半導体供給不足による生産制約を考慮し、世界販売台数は5月の発表値に対して4万台減の96万台(前年度比11.6%増)に修正。売上収益や営業利益は、想定為替レートの見直しや販売奨励金の抑制などによる改善を見込み、5月発表値を据え置いて、売上収益は16.6%増の3兆3,000億円、営業利益は95.2%増の2,000億円、営業利益率は6.1%とした。

地域別連結販売台数 SUBARUの業績推移
地域別連結販売台数 SUBARUの業績推移

(出典:SUBARU資料よりMarkLines作成)

 

地域別連結(卸売)販売台数

(1,000台)

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度予測 2020年
4-6月期
2021年
4-6月期
5月時点 8月時点
日本 136 126 102 - - 19 24
米国 660 702 612 - - 91 117
その他 205 206 146 - - 23 34
連結 1,001 1,034 860 1,000 960 133 175

資料:SUBARU連結決算参考資料

 

連結業績

(100万円)

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度予測 2020年4-6月期 2021年4-6月期
5月時点 8月時点
売上収益 3,156,150 3,344,109 2,830,210 3,300,000 3,300,000 456,998 635,171
営業利益 181,724 210,319 102,468 200,000 200,000 (15,671) 29,535
営業利益率 5.8% 6.3% 3.6% 6.1% 6.1% - 4.6%
税引前利益 186,026 207,656 113,954 203,000 203,000 (10,735) 34,257
当期利益 141,418 152,587 76,510 140,000 140,000 (7,700) 18,514
研究開発支出 102,700 118,700 101,600 120,000 120,000 25,400 27,100
設備投資 114,000 126,000 86,200 100,000 100,000 15,400 19,200
減価償却費 89,100 96,100 95,000 100,000 100,000 23,000 22,800
為替レート USD 111円 109円 106円 108円 109円 107円 109円
EUR 129円 121円 123円 128円 130円 118円 131円

資料:SUBARU 連結決算参考資料
(注) 1. SUBARUは2019年度より国際財務報告基準(IFRS)を採用した。2018年度実績はIFRSにしたがって再計算した数値で、2019年度と比較可能にした。
2. 当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益。

 

半導体供給不足による生産への影響

日本・群馬製作所 本工場および矢島工場(完成車工場)、大泉工場(エンジン・トランスミッション工場)を2021年1月15-16日に操業停止。
矢島工場を2021年4月10-27日に操業停止(13稼働日)。4月21日より一部ラインで操業再開。5月10日より全ラインで操業再開。(4月28日-5月9日は長期連休。)減産規模は約10,000台。
本工場および矢島工場を2021年7月16日に操業停止する。
米国・インディアナ工場 インディアナ工場で2021年1月に減産する。
インディアナ工場で2021年4月19-30日に全2ラインを停止する。同工場ではOutback、Ascent、Impreza、Legacyなどを生産している。減産規模は約15,000台。


LMC Automotive販売予測:SUBARUの2024年販売台数は104万台の見込み

LMC Automotive, 2021年第2四半期)

SUBARU販売予測

  LMC Automotiveの販売予測(2021年第2四半期)によると、2021年のSUBARUライトビークル世界販売台数は、前年比11.4%増の97.6万台となる見込み。2019年の販売台数と比べると、2021年の販売は新型コロナウイルス感染拡大前の台数をまだ5.6%下回っている。世界販売は2022年以降徐々に増加し、2024年には104万台となり、コロナ前の水準に回復すると予測される。

  SUBARUの最大市場である米国での販売台数は、2021年に前年比8.9%増の66.6万台となる見通し。2022年以降、米国での販売はゆるやかに増加し、2024年に70.8万台となると予測される。

  日本では、2021年の販売台数は前年比25.9%増の13.3万台となる見込み。2022年以降、販売台数は増えたり減ったりし、2024年には12.0万台となると予測される。LMC Automotiveの現時点での予測では、日本市場が新型コロナウイルス禍と世界の半導体不足の影響から解放されるのは2022年以降となる。中・長期的には、日本の急速な高齢化と若い消費者達のクルマ離れ(車の運転・所有に対する無関心)がライトビークル販売を低下させるため、日本市場での販売は徐々に下降線をたどる見込み。

  SUBARUは2021年にBRZのモデルチェンジを行う計画を発表した。北米市場向けの新型車は2021年秋に発売される予定だが、日本市場向けの新型車はそれより数カ月早く投入される。また、SUBARUは2021年5月、新たに投入する電気自動車(EV)の名称をSOLTERRAとすると発表した。同モデルはトヨタと共同開発するもので、EV専用プラットフォームも共同開発している。

 

SUBARUのライトビークル販売予測 (LMC Automotive, 2021年第2四半期)

(台)

COUNTRY 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
Total 1,059,277 1,037,718 876,838 976,400 974,484 1,008,382 1,040,879
USA 680,135 700,117 611,938 666,286 668,237 675,418 707,622
Japan 148,473 131,313 105,574 132,941 118,954 127,228 119,779
Canada 58,070 57,524 52,129 53,628 53,967 57,167 60,821
Australia 50,015 40,007 31,501 36,805 35,142 42,293 40,750
China 24,649 24,648 21,832 23,571 27,635 28,914 30,300
Chile 8,397 6,685 4,092 6,065 6,215 7,892 8,214
Russia 8,032 7,686 6,240 6,153 6,978 7,468 7,842
Germany 7,295 5,876 5,408 4,614 5,716 5,907 5,621
Mexico 1,184 1,287 1,444 2,053 2,140 3,266 5,137
Israel 5,734 4,515 3,763 5,289 4,560 4,687 4,870
Sweden 4,884 5,327 1,658 2,704 3,221 3,502 3,512
Switzerland 4,681 4,021 2,102 2,186 3,320 3,438 3,310
Chinese Taipei 7,780 6,191 3,860 3,437 3,163 3,184 3,242
Thailand 2,260 3,649 1,715 2,679 2,167 2,396 3,115
Italy 3,421 2,827 2,125 2,056 2,462 2,589 2,501
Malaysia 5,175 2,864 1,222 1,879 1,929 2,014 2,138
New Zealand 3,641 3,477 2,434 2,436 2,007 2,066 2,086
Spain 3,118 2,496 1,576 1,574 1,853 2,044 2,080
UK 3,141 2,997 951 1,365 1,588 1,896 1,918
Philippines 3,035 2,752 784 1,428 2,248 2,150 1,851
Peru 1,549 1,613 1,195 1,628 1,647 1,716 1,760
Colombia 1,114 1,412 788 1,128 1,409 1,515 1,618
Ukraine 890 710 611 786 1,134 1,405 1,605
Vietnam 152 1,463 955 1,157 1,215 1,256 1,435
Poland 1,990 1,357 765 1,154 1,286 1,383 1,434
Norway 1,706 733 955 483 1,242 1,383 1,397
Kazakhstan 742 710 644 751 917 1,173 1,236
Singapore 3,196 1,261 740 1,190 1,493 1,249 1,146
Turkey 1,471 658 673 997 1,035 1,025 1,079
Czech Republic 1,370 979 701 676 847 914 951
Estonia 917 877 341 618 734 808 876
South Africa 1,031 1,050 619 638 628 738 806
Brazil 815 586 325 660 602 851 786
Finland 1,238 715 410 559 641 645 650
Egypt 401 1,606 1,191 411 536 600 635
United Arab Emirates 259 200 125 282 362 444 532
Netherlands 661 573 273 360 451 505 520
France 758 555 131 253 447 518 508
Indonesia 0 0 0 153 553 439 494
Latvia 318 283 188 254 329 363 403
Austria 742 499 435 331 336 376 373
Oman 443 302 120 214 261 303 360
Morocco 149 222 254 414 376 358 355
Lebanon 284 221 73 89 167 253 348
Lithuania 377 330 120 255 281 304 339
Belgium 563 381 309 342 301 332 327
Slovakia 459 352 304 242 281 291 301
Argentina 434 438 188 153 175 188 210
Saudi Arabia 96 88 79 124 165 179 199
Qatar 91 112 114 103 128 154 176
Denmark 389 176 128 139 168 179 173
Ireland 205 100 73 31 108 161 162
Hungary 175 130 89 96 117 141 159
Belarus 94 124 64 71 106 124 155
Kuwait 175 154 78 97 104 99 114
Kenya 189 45 35 53 68 88 110
Bahrain 170 124 115 78 78 85 103
Uruguay 139 75 68 107 86 96 96
Luxembourg 125 73 70 55 56 60 57
Greece 47 63 39 39 36 54 55
Bulgaria 86 55 38 33 34 41 47
Slovenia 58 38 29 29 26 39 41
Nigeria 18 0 8 1 10 24 26
Iran 0 0 0 0 0 3 9
Jordan 0 0 0 1 6 1 4
Romania 71 16 30 16 0 0 0

Source: LMC Automotive "Global Light Vehicle Sales Forecast (Q2 2021)"
(注) 1. データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2. 本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。

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