CES 2020:変化をとげる車室内体験
BMW i Interaction EASE、Audi AI:ME、トヨタ紡織 MX191 など
2020/02/28
要約
CES 2020は、2020年1月7日から10日にかけて米国ネバダ州Las Vegasで開催された。今回のショーでは、290,000平方フィート(約27,000平方メートル)以上のスペースが自動車関連の出展に充てられた。来場者は17万人を超える。
BMWとAudiは、インテリアの快適性や利便性の向上を設計の狙いとする複数のコンセプト・モデルを出展した。BMWは自動運転車用のBMW i Interaction EASEコンセプト・コックピット、ZeroG Loungerコンセプト・シート、そしてi3 Urban Suiteインテリアなどを紹介した。AudiからはAI:MEコンセプト、Intelligence Experience自己学習支援システムのデモユニット、3D複合現実(mixed reality)HUD、透明ディスプレイ・オンデマンド・システム、そして室内のヒューマン・セントリック・ライティング・プロジェクトが披露された。
FCAのAirflow Visionコンセプトは、HMI(human-machine interfaces)に焦点をあて、乗客と提供される情報との間でどのようなやりとりが行われるかを紹介するもの。Mercedes-Benzからは、その考え方をさらに進化させたVision AVTRコンセプトが披露された。この未来的なコンセプト・モデルでは、同社の「ヒューマン‐マシン融合(merged)インターフェイス」が唯一の物理的なコントロール・システムとして機能する。
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BMW i Interaction EASE concept | FCA Airflow Vision concept |
VisteonとMarelliが出展したディスプレイやシステムは視覚的な美しさと、ドライバーにとっての視認性を高める要素を備えるもので、プレミアム・インテリアへの採用を念頭に設計された。Faureciaが紹介するシート・システムは、デジタルサービスの利用やエクササイズなど健康促進にコネクティビティを活用するのが特長で、さまざまな素材の表面にコントロール機能を付与する技術も披露された。Veoneerからは、ドライバーの体調や気分を分析する先進的なドライバー監視システムが紹介された。
トヨタ紡織のMX191コンセプト・インテリアは、自動運転車の室内空間についての新たな提案となるものであり、SamsungのDigital Cockpitはコネクティビティがもたらす車室内の利便性を訴求する。さらに、トヨタ紡織、Continental、三菱電機の各社は、それぞれMOOX、Continental Urban Mobility Experience (CUBE)、Emirai-Sを出展した。これらはいずれもフレキシブルな共有空間をテーマとするコンセプトである。現代が提起するコンセプトはシェアリング・モビリティのビジョンを拡張するもので、フレキシブルに活動するPurpose Built Vehicles(PBV)をPBVの集中保管施設であるHubに接続することで、カスタマイズされたPBVをサポートする。
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Toyota Boshoku MX191 concept | Samsung Digital Cockpit 2020 concept |
このレポートでは、CES 2020の自動車関連の展示の中で、特に車室内体験に重点を置いたシステムや車両について報告する。今年のCESに関するレポートとしては、これまでにサステナビリティ、自動運転技術、ならびに日本の主要メーカーによる展示をテーマとした報告を行っており、それらも併せて参照されたい。
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BMW:快適性とドライバーとのインタラクションをテーマにインテリアを紹介
BMW i Interaction EASE concept コックピット
BMW i Interaction EASEコンセプト・コックピットは、完全な自動運転車が普及する将来を見据えたもの。シート、ダッシュボード、フローリングに使用された高級素材と独特の室内デザインが高級感を演出する。Intelligent Personal Assistantが車に近づく乗客を認識し、車内照明もそれに反応して乗客を迎え入れる。シートを覆う快適な3Dニットにはスマート素材が埋め込まれていて、コントロール面としての役割も持つ。完全な透明だったi Interaction EASEの窓ガラスが暗くなって不透明なガラスに変化するといった調整もできる。
このコンセプトは、タッチ・コントロール、ジェスチャー・コントロール、自然音声認識など、市販のBMWモデルに採用済みの様々なコントロールモードを搭載している。i Interaction EASEでの新しいシステムとしては、人工知能を利用した視線追跡システムがある。視線追跡は、ジェスチャー・コントロールと音声認識システムとの組み合わせで、乗客がどこを見ていて、どのような指示を出したかを判断する。人工知能は、それらの情報と、時間、場所、運転状況といった他の関連情報とを合わせて指示に応える。このシステムには、さらにフロントガラスの全幅にわたるパノラマ・ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)の機能が加わる。乗客が、例えば周囲にあるレストランに視線を向けると、その店に関する詳細な追加情報が表示される。
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BMW i Interaction EASE concept | BMW i Interaction EASE conceptのシートと表面コントロール機能のデモ |
自動運転車のインテリアとして、i Interaction EASEは、Explore、Entertain、Easeの3つの操作モードが選択できる。Exploreモードでは、BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントがパノラマHUDを使い乗客が関心を持つ周囲の情報を表示する。乗客は、視線探知、およびジェスチャー・コントロール・システムを介して追加の詳細情報を取得できる。Entertainモードでは、サイドガラスが暗くなり、そこにパノラマHUDがテレビ番組や映画を映す。Easeモードでは、シートがリクライニングして「無重力」ポジションになり、窓ガラスはさらに暗く不透明になると同時に、照明と心地よいサウンドがリラックスした雰囲気を作り出す。
BMW i3 Urban Suite インテリア・コンセプト
i3 Urban Suiteのインテリアは、プレミアム・クラスのサステイナブルな車を利用する乗客のあらゆるニーズに応えるべく設計されている。標準的なi3モデルのインテリアと比較すると、運転席とダッシュボードを除く全てに変更が加えられている。リアベンチシートとフロント助手席は、リアラウンジチェアと電動可変フットレストに置き替わり、乗客のレッグルームは約4フィート(122cm)に広がる。ラウンジチェアの左側には、ワークスペースとして使用できる小型の木製テーブルとタッチ・コントロール式ランプが配置されている。室内各所には充電コンセントも配置されている。テーブルとラウンジチェアの間には余裕をもってバッグやラップトップPCを収納できるトレイがあり、ジャケットやコートを掛けるハンガーも備わっている。
i3 Urban Suiteではコネクティビティが重要な役割を持つ。CES 2020では、同コンセプトのデモンストレーション・ユニットも披露された。利用者は自分の電話を使って車を呼び寄せ、また乗車する場所や行き先をインプットすることができる。車内に入ると、携帯電話をワイヤレスで車につないだり、天井の格納式スクリーンに携帯電話の画面を映し出すことができる。i3 Urban SuiteはAmazon Fire TVを搭載しており、Alexaを介した音声コントロールによって、映画、テレビ番組、その他のメディアを楽しむことができる。
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BMW i3 Urban Suite concept | BMW i3 Urban Suite conceptの格納式スクリーン |
BMW X7 ZeroG Lounger seat
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BMW X7 ZeroG Lounger 出典:BMW |
ZeroG Loungerシートは、乗客に最大限のフレキシビリティと快適さを提供すべく設計された。そのポジションに応じて最大40度または60度後方にリクライニングが可能。フルにリクライニングさせて、天井に組み込まれた格納式スクリーンで車載エンターテインメントを楽しむことができる。走行中に進行方向が変わるとスクリーンに表示が現れ、それが乗り物酔いを軽減させる。
安全性の点では、シートに組み込まれたシートベルトがフルリクライニングの状態でも乗員をしっかりと保護する。その他の安全装備としては、シート内部にあって事故発生時には乗員を包み込む「繭(cocoon)」型エアバッグや、衝撃を吸収するように設計されたシートレールなどがある。 BMWは、今後数年の間にZeroG Loungerシートの量産を開始するとしている。
Audi:AIベースのシステムとコンセプト、各種ディスプレイ技術を紹介
Audi AI:ME concept
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Audi AI:ME concept |
AIを搭載するAudiの一連のコンセプト・ビークルのなかで、AI:MEは、主に市街地での自動運転走行を想定したもの。同コンセプトは、乗客が何を欲しているかを学習し予測する人工知能によってサポートされており、Audiは利用者にとっての「第3のリビング・スペース」と表現している。特徴として乗客ひとりひとりの視線を検知する視線追跡システムを装備している。コックピットの全幅に広がる3D OLEDモニターとドアレールに配置されたタッチ・コントロールを利用して、前席の乗客はアクティビティ・メニューから選んで、レストランにオーダーすることなどができる。さらに音声認識機能も備わっている。
Audi AI:MEには、乗客が仮想体験を楽しむためのVRゴーグルが2セット装備されている。ここでは、車両の実際の動きを仮想環境に反映するHolorideのVRテクノロジーを搭載していることが特筆される。AI:MEのオーディオ・システムと組み合わされたノイズ補正システムがアクティブ・ノイズ・コントロールの機能を持ち、外部ノイズをキャンセルする。AI:MEのシート類は人間工学に基づいて設計されており、ラウンジチェアを思わせるフロントシートには湾曲した形状の背もたれが備わり、リアベンチはカーブを描いて車室両サイドにフィットする。
Audi Intelligence Experience デモユニット
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Audi Intelligence Experienceデモユニット |
AudiのIntelligence Experienceは、ドライバーや乗客とAI機能を備えた将来の車両との間でどのようにやりとりが行われるかに着目する。特にこのデモユニットでは、車両の各所に配置されたセンサーと人工知能が一体となって、ユーザーの習性や嗜好を観察、そして学習する。乗車が繰り返された後は、システムがユーザーに合わせて車両をパーソナライズし、例えばシート・ポジション、空調、メディア、照明などが事前設定される。自己学習をするナビゲーション・システムは、過去の運転パターンや時間、交通状況データを組み合わせて、頻度の高い目的地を保存したり、走行ルートを提案したりする。将来的には、車内センサーが乗員の体調をモニターし、疲れている、あるいはリラックスする必要があるといった場合に適切な刺激が与えられるようになる。
Audiのディスプレイ・テクノロジー
Audiは今回のCESで2種のディスプレイ・テクノロジーを紹介した。透明のディスプレイ・オン・デマンド、並びに3D複合現実(mixed reality)HUDである。透明ディスプレイ・オン・デマンドは、高さ5.9インチ(15cm)、幅48インチ(122cm)のスクリーンで、インストルメントパネルに一部が組み込まれている。高さを最大10インチ(25.4cm)まで拡張することができ、乗客は21インチのスクリーンで16:9フォーマットの映画やショーを楽しむことができる。ディスプレイは、透明なOLEDディスプレイと追加の黒色レイヤーの二層構造になっている。広域のコントラストを得られることに加えて、ディスプレイの使われていない部分が透明のままになるので道路の全景を見渡すことができる。使用される領域はふたつのレイヤーが組み合わされて黒色が濃くなり視認性を高めている。
Audiの3D複合現実HUDは、ドライバーの視野内に関連情報を提供するもので、奥行きが巧みに表現されるのが特徴である。インストルメントパネルに組み込まれた同システムは、わずかに異なる2種の画像をフロントガラスに投影することで3次元効果を生み出す。HUDは、視線追跡カメラを利用して両眼への画像をそれぞれ正確に作り出す。3D HUDによって投射された画像は26~230フィート(8~70m)先にあるように見えるため、ドライバーは情報を読み取るたびに目の焦点を合わせ直す必要がない。
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Audiの透明ディスプレイ・オン・デマンド・ユニット | Audiの3D複合現実HUDデモユニット |
改良されたモジュラー・インフォテインメント・プラットフォームとヒューマン・セントリック・ライティング
Audiは、今回のCESで第3世代となる新たなモジュラー・インフォテインメント・プラットフォーム(MIB 3)の仕様を発表した。MIB 3のメインプロセッサは前世代の10倍もの処理速度を持ち、すべてのコネクティビティ機能を担う。MIB 3は、2020年半ば以降に発売されるAudiの各市販モデルに採用される予定。その時点で、同プラットフォームはより精度の高いルートガイダンス機能を備え、交通状況を予測、反映した走行ルートの最適化、ならびに車線レベルのローカライゼーションが可能になるとしている。
さらにAudiは、室内照明を利用して乗客に働きかけ、刺激を与えるヒューマン・セントリック・ライティングのプロジェクトを紹介した。このシステムでは、例えば冷たい青みがかった白色光が疲れている乗客を元気づけ、暖かい赤白光はストレスを和らげる役割をする。このようなライティング・プロジェクトを今後数年内に市販車へ導入することも検討されている。
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Audiの第3世代モジュラー・インフォテインメント・プラットフォーム | Audi ヒューマン・セントリック・ライティング・プロジェクトのデモユニット |
FCAとMercedes-Benzはコンセプト・カーでHMIを紹介
FCA Airflow Vision concept
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FCA Airflow Vision concept 内装 |
FCAのAirflow Visionは、ユーザー体験とユーザー・インターフェイスの利用が将来どのように進化するかを示すコンセプト。同コンセプトは6種のタッチスクリーン・ディスプレイを搭載しており、これらのスクリーンを除けば、コントロール機器は車のスタートボタンとステアリング・ホイール上のナビゲーション・キーのみとなる。ディスプレイ類には、調和と視認性を重視した多層の高コントラスト・グラフィックスが採用されている。ユーザーはメニューを見ながら、機能のグループ化、表示の整理、あるいは設定のパーソナライズなどを行ってディスプレイをカスタマイズすることができる。また、ディスプレイ上に表示された情報をスワイプすることで別のディスプレイに移動させることもできる。
Airflow Visionのコンセプトは、Chrysler Pacificaプラグイン・ハイブリッドと同じサイズのフラットなフロアを持ち、オープンで広々としたインテリアを確保している。インテリア全体を覆うスエードとレザーがシンプルなレイアウトに高級感を加えている。同コンセプトのシートは台座の上に載ったスリムな形状になっていて、最大のレッグルームとショルダースペースを実現すると共に、収納スペースも確保している。
Mercedes-Benz Vision AVTR concept
映画「アバター」の製作チームとのパートナーシップにより開発されたMercedes-Benz Vision AVTRコンセプトは、映画からインスピレーションを得て、車両、乗員、そして自然との間の新しいインタラクションのあり方を提起するもの。このコンセプトの内部・外部デザインの背景にある考えは、乗客に没入型の体験を提供すると同時に知覚の対象領域を拡張する、というものである。
ドライバーは、センターコンソールにある格納式のマージ・デバイスと呼ばれるマルチファンクショナル・デバイスを介して車をコントロールする。ドライバーが手を添えると、同デバイスはそれを検知してドライバーのパルスに同期する。デバイスのシフトや回転によって、加速、ブレーキング、および操舵をすることができる。手のひらを上に向けた手をかざすと、独自のジェスチャー・コントロール・システムが起動し、インフォテインメント・オプションのメニューが投影され、乗客は様々なジェスチャーによってオプションをスクロールし選択する。
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Mercedes-Benz Vision AVTR concept | Mercedes-Benz Vision AVTR concept 内装 |
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Mercedes-Benz Vision AVTR コンセプトのマージ・デバイス |
フロントシートに挟まれたセンターコンソール部分は、湾曲したディスプレイ・モジュールとなって前面に伸び、通常ダッシュボードがあるエリアに入り込んでいる。ディスプレイは3Dグラフィックスによって、車両周囲のリアルタイム画像、必要な関連情報、その他のエンターテインメント・オプションを表示。3Dサウンドシステムとシート面からの触覚フィードバックが、乗客の感知する音や事象に方向性を与える。たとえば、川が車両のどちら側に流れているかを音の指向性と振動によって知ることができる。
インテリア全体にわたって、自然からインスピレーションを得た流れるような曲線のデザインが採用されている。フロントシートは、「アバター」に出てくる葉のハンモックをイメージしたもの。センターコンソール・エリアは拡張してAピラーと湾曲したルーフ部分に至り、さらに後方に広がり分岐して個々に分かれたリアシートにつながっている。
サプライヤー各社によるインストルメントパネル、ディスプレイ、インテリア・システムの展示
MarelliとVisteonの車載ディスプレイ、インストルメント・クラスター、インターフェイス
MarelliとVisteonからは、独自のデザインと機能を持つ数々のインテリア・システムやコンセプトが出展された。ハイパーバイザーを使ったMarelliのマルチディスプレイe-CockpitとVisteonの新しいSmartCoreシステムは、複数のスクリーンに情報を表示しながら、インフォテインメント、インストルメント・クラスター、コネクティビティなど複数のドメインを同時に管理するコックピット。いずれのソリューションにも、ホストシステムを介して仮想機器を操作するハイパーバイザー・テクノロジーが採用されている。またMarelliとVisteonからは、デザイン上の美しさと警告の視認性を両立させる3Dデジタル・インストルメント・クラスターも紹介された。
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ハイパーバイザーを利用したMarelliのe-Cockpit | VisteonのGAC向けSmartCoreシステム |
Marelliのブースでは、2種の多機能スイッチが紹介された。ひとつは半透明のインターフェイス薄膜を使い、加飾された表面にスイッチとディスプレイの機能を埋め込んだHMI。オフ状態では半透明の膜がラベル類を隠し、革、メタル、あるいは木の表面のような使い方ができる。もうひとつは透明で多機能スイッチを設定できるシステムで、光学技術を活用してディスプレイに複数の機能が表示される。
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半透明の皮膜を備えたMarelliのHMI (オフ状態) | 半透明の皮膜を備えたMarelliのHMI (使用時) |
今回のCESでVisteonから出展されたその他のシステムとしては、Android Display Audioソリューション、Android後部席エンターテインメント・システム、統合型音声認識システムなどのインフォテインメント・ソリューションがある。それらの情報ディスプレイ機器には以下が含まれる。
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microZoneディスプレイ技術を採用するVisteonのモジュラー・コックピット |
- Digital Lite再設定可能(reconfigurable)クラスター:フルデジタルのインストルメント・クラスター。サイドポッドで拡張してディスプレイを拡大することができ、トリムレベルに応じた差別化に対応できる。
- microZoneを搭載したモジュラー・コックピット:microZoneディスプレイ・テクノロジーはOLEDディスプレイに取って替わるもので、低コストでありながら同等の品質とより優れた耐久性を持つとしている。
- 湾曲形状のデュアル・ディスプレイ:2面のスクリーンによる湾曲画面はディスプレイ・デザインにおけるVisteonのフレキシビリティを示すもの。冷間加工によるガラスレンズが比較的低コストでの湾曲デザインを可能にした。
- フレキシブルな折り曲げ可能ガラス・コックピット:湾曲デザインのディスプレイを拡張するものとして、コックピットのヒンジ部分からディスプレイの一部を前方に15度、後方に5度まで折り曲げることができる。
- クラスターに組み込まれたドライバー監視システム:インストルメント・クラスターに配置されたDMS(ドライバー監視システム)により、ドライバー視線モニターの機能が向上した。 DMSフレームワークはクラスター・プラットフォームの一部となっている。
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Visteonの折り曲げ可能フレキシブル・ガラス・コックピット | Visteonの折り曲げ可能フレキシブル・ガラス・コックピット |
Faurecia インテリア・システム
CES 2020において、Faureciaは独自のブースを設け、同社のシステムを紹介する展示を行った。そこではコネクティビティ、没入感、およびパーソナライズの3つが主要テーマとなっている。Microsoftとのパートナーシップによって開発されたコネクテッドビークル・プラットフォームも今回のハイライトのひとつであり、これによるデジタル・コネクティビティのデモンストレーションが行われた。このプラットフォームは、音声コマンド、ロータリー式のコントロール、および顔認識システムを特徴とし、利用者は車内の座席間や異なる車両間でパーソナライズされた設定を持ち運ぶことができる。このコネクティビティ機能によって、Microsoft Teamsを使った会議や音楽、映画、ゲームを始めとするメディアのストリーミングなど各種サービスへのアクセスが可能となる。
今回紹介されたもうひとつのシステムは、シートと組み合わされたコネクテッド・ウェルネス・システム。着座した乗員は埋め込まれたセンサーを介してエクササイズの状況がモニターされる。Faureciaのインテリア内装のコンセプト・システムでは、触れる、音を出す、圧力を加える、あるいは一定の距離内に入る、といった刺激に対するインタラクティブな反応を実証するデモンストレーションが行われた。自動スライド付き、回転可能、そしてマッサージ機能付きのシートフレームと座席も紹介された。
またFaureciaは、アクティブ・ノイズ・コントロールシステムも出展した。このシステムは、カメラによって乗員の姿勢や頭の動きを探知し外部ノイズの低減を助けるもの。さらに同社は、将来のコックピットとしてFord F-150のインテリア・デモンストレーション・ユニットを紹介した。ここでは同社のブースで展示された他の技術と結び付け、複数の乗客が同時にそれぞれのエンターテインメントや快適設定の選択ができるようにした。
Veoneerのドライバー監視システム
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Veoneerによるテストドライブでのドライバー・プロファイル情報 |
CES 2020でのVeoneerの展示は、専用コースならびにLas Vegasの公道でのデモ走行を中心とするもの。テストドライブにおいては、同社の先進運転支援システムと高度なドライバー監視システムを紹介していた。ドライバー監視システムは、ドライバーの視線方向を始め、認知負荷、注意力、ストレスのレベル、眠気など、さまざまな特性をモニターする。ドライバーに係わるこれらの情報は他の車載センサーから得られる情報と合わせて個人プロファイルとなり、その運転パターンと習性がトラッキングされる。
サプライヤーによるインテリア・コンセプトの展示
トヨタ紡織 MX191コンセプト・インテリア
MX191コンセプトは、自動運転車用のインテリアとして、快適性、安全性、そして楽しさをテーマに設計された。同コンセプトは、シフト/回転可能なシート、各乗客の空調コントロール、キャビン内の空気清浄、シート組込み型オーディオ、シート内蔵モーター、シート内蔵セーフティ機能、などのシステムを備え、乗客を6種の方法でもてなすとしている。
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トヨタ紡織 MX191 concept 内装 |
- 乗車前システム:空気清浄システムがキャビンから臭気、ほこり、その他の粒子を除去し、その間にシート類は乗車しやすい形に調整される。
- コンフォート・コントロール・システム:スマート・ウィンドウがセットされたレベルまで暗くなり、シートから音楽が流れる。シート内蔵のヒーターと空調ユニットが設定に従って室温を調整する。
- アクティブ眠気防止システム:MX191は、音楽や、シートの振動、送風、あるいは温度調整によってドライバーの眠気を払い、注意力を維持させる。
- 安全監視シート・アレンジメント・システム:シートアレンジを変更する前にシートベルトが振動して警告を発する。これは室内カメラ監視システムが、シートアレンジの変更によって座席と人がぶつかることのないよう働くもの。
- 多彩なスペース活用システム:可動/回転式シートが、さまざまなシート配置を可能にする。
- 乗員保護安全システム:衝突時にはシート一体型シートベルトとエアバッグが乗員をとらえ、前方への飛び出しを防止する。
Samsung Digital Cockpit 2020 concept
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Samsung Digital Cockpit 2020 concept |
CES 2020でSamsungが発表したDigital Cockpit 2020は、車内、車外のコネクティビティがもたらす利便性を訴求するDigital Cockpitコンセプトのプレゼンテーションとして3回目となるもの。2020年バージョンでは、2基のディスプレイが追加となり、コックピットに配されたディスプレイの数は合計8基となった。またデジタル・コックピットには8個のカメラが装備されており、乗員を検知/認識し、それぞれの個人設定に基づいて自動的に車両のセッティングが行われる。2020コンセプトでは、さまざまなモバイル・デバイスがSamsung DeXを介してワイヤレスで車両とつながり、センタースクリーンが補助的な画面としての役割をする。後席の乗客は、タブレットをデジタル・コックピットとつなげ、空調、室内照明、音量などをコントロールできる。シート埋め込み型のスピーカーはヘッドレストに位置しパーソナライズされたオーディオ・ゾーンを創り出す。さらに同社のパーソナル・アシスタント機能であるBixbyは、ドライバー監視システムと一体となってドライバーをモニター、アシストすると共に、自宅にあるスマートデバイスとのコネクティビティも実現する。
トヨタ紡織 MOOX concept
MOOXコンセプト・ビークルはトヨタ紡織からすでに発表済みだが、今回のCES 2020での出展にあたりフレキシビリティの向上を図るアップデートが施された。 MOOXには何本かのレールが取り付けられており、これらを使ってシートの配置調整を始め、ストレッジ・エリア、テーブル、スクリーン、カメラなどの各種の車室内モジュールを迅速かつ容易に取り付けたり、交換したりすることができる。このモジュール性により、MOOXはさまざまな異なる目的(ワークスペース、フードサービス、モバイル・ショップ、ゲーミング、エンターテインメントなど)に供することができる。トヨタ紡織はさらにVRデモンストレーション・ユニットを使って改良版のMOOXの生体認識/感情検知システムの紹介も行った。このシステムは、乗客の体調や気分に応じて、例えば賑やかなナイトクラブ、あるいは静かな自然歩道など、異なる空間を創り出す。
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トヨタ紡織 MOOX concept 内装 | トヨタ紡織 MOOX concept 内装 |
Continental Urban Mobility Experience concept
Continentalの展示ハイライトは、自動運転車による都市型のラストマイル・ソリューションであるContinental Urban Mobility Experience(CUBE)シャトル。これには、フラッシュ・ライダー、2基の指向性レーダー、そしてフロント部に配されたカメラ、ライダー、レーダーといったセンサー類が搭載されている。利用者は、スマートフォン上で配車サービスのアプリケーションを通して車両にアクセスし、乗車ポイントと目的地をセットする。CUBEは、到着すると外部ディスプレイにピックアップしようとしている客のプロフィール画像を表示するので、客はこれで正しい車であることを確認し、スマートフォンからCUBEにアクセスをする。CUBEでの移動中には、列車の出発時刻を始めとした便利情報など乗客の状況に応じたオプションが表示される。
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CUBE (Continental Urban Mobility Experience) concept | CUBE concept 内装 |
三菱電機 Emirai-S concept
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三菱電機 Emirai-S concept 内装 |
コックピット・コンセプトEmirai-Sは、「サービスとしてのモビリティ」に焦点を当て、改善が進む乗車中の車とのインタラクションや安全システムを紹介するもの。安全システムのひとつであるドライバー監視システムは、近赤外線カメラと温度センサーを利用してさまざまな生体認識データをトラッキングする。これらのセンサーはドライバーの心拍数や体温を検出し、疲労または眠気のレベルを診断する。Emirai-Sは、カメラと複数のマイクを組み合わせて複数の人の声を聴き分ける音声検出システムも備えており、車両が音声コマンドをより正確に聞き取れるようにする。ドライバーには、ワイド・クロスイメージ・ディスプレイが、浮遊感・奥行き感のある3Dイメージを提供する。ディスプレイのコントロールはリング型のノブによって行う。
現代はモビリティ・コンセプトを拡張
現代は今回のCESにおいて、Personal Air Vehicle(PAV)、Private Built Vehicle(PBV)、およびコネクティングのためのHubエリアから成る3部構成のSmart Mobility Solutionを紹介した。PAVは電動VTOL(垂直離着陸)飛行機であり、地上の交通を避け移動時間の短縮を図る。PBVは車両の内部、外部のカスタマイズが可能なフル電動のモジュラー・ビークル。PBVのボディとシャシーは調整や分解をすることができ、全長を4~6メートルの幅で変更可能である。内部もカスタマイズ可能で、モビリティを確保しながら、レストラン、ホテル、あるいは診療所などの施設にサービスを提供することができる。
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Hyundai PBV concept | Hyundai PBV concept 内装 |
HubはPAVおよびPBVの集中保管施設となる。ルーフにはPAV用のスカイポートがあり、地上レベルにはPBV用のドッキング・ステーションを複数備える。フレキシブルに活動するPBVに対応しHubの中央部はドックに入った各PBVのニーズをサポートするよう設計されている。たとえばPBVが健康・医療サービスを行っている場合には、Hubは集中医療施設として機能する。
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