第28回 Aachen Colloquium:自動車・エンジンテクノロジー

内燃機関(ICE)とxEVパワートレインの技術プレゼンテーション

2019/11/14

要約

  自動車・エンジン技術に関する第28回アーヘン・コロキウム(The 28th Aachen Colloquium Automobile and Engine Technology Aachen Colloquium)は、2019年10月7日から9日にかけてドイツのAachenで開催された。このイベントは、アーヘン工科大学の自動車工学研究所(ika)のLutz Eckstein教授、および内燃エンジン研究所(VKA)のStefan Pischinger教授の指導の下に運営され、自動車技術分野で世界をリードする重要な会議のひとつである。

  自動車業界は、モビリティの未来へ向けて多くの課題(より厳しい排気規制、気候変動に中立な再生可能エネルギー源と新しい動力システム、自動運転のための車載機能の向上など)に直面している。今回のイベントでは、これらのテーマについて科学者や自動車メーカー、エンジニアリング・プロバイダー、サプライヤーの専門家によって議論された。

  10月8日から9日にかけて100の技術プレゼンテーションが、同時進行する5つのセッションに分かれて行われ、各分野の専門家およそ1,800人が参加して「モビリティの未来形を描く(Shaping the Future of Mobility)」というグローバル規模の課題について意見交換がなされた。また10月7日の夕方からは、イベント参加者のために約70の出展者による技術展示が行われた。さらに、プレゼンテーション開催日にはアーヘン工科大学のテストトラックでの試乗イベントが開かれ、革新的なコンセプト車やプロトタイプを実体験することができた。

Main conference room of Eurogress filling up technical exhibition at Aachen Colloquium 2019
準備中のEurogressのメイン会議場 アーヘン・コロキウム2019における技術展示の一部

(執筆者撮影、以下同様)


  パワートレインの分野では、さまざまな要件や使用条件(市街地、中/長距離の走行、低/高負荷など)に合わせて多種多様なソリューションがすでに提供されている。すべてのニーズを満たす単一のアーキテクチャは存在しない。次々に新しいソリューションが市場に導入される一方で従来からある技術は洗練を増して存在し続け、自動車業界は極めて複雑な技術領域へ足を踏み入れている。内燃機関(ICE)を持つ従来型の車のグループと、電気自動車(BEV)のもう一方のグループとの間に、ハイブリッド車(HEV)の大きなグループがいる。これらのハイブリッド車はまだICEを搭載しているため、業界では更なる燃料効率と排ガス性能の向上を目指してエンジンを改善するために多大な努力を続けている。ハイブリッド・パワートレインでは、システム電圧、パワートレイン・アーキテクチャ、エンジンとトランスミッションの最適な組み合わせといった分野での改善が継続的に行われ、複雑なHEVパワートレインのコストを削減する目的も持っている。さらには、燃料電池システムがもうひとつの分野として注目度が増しつつあり、その独自の強みと課題に向けて多くの研究開発活動が展開されている。

  本レポートでは、今回のイベントから16のプレゼンテーションについて報告する。

 

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本レポートで取り上げるプレゼンテーション

  ここでは100の講演から16のプレゼンテーションを取り上げた。 本イベントでの講演はいくつかのテーマに分類されており、本編でカバーされたプレゼンテーションは次の5つのグループのいずれかに属している。

     a) ガソリンエンジン

     b) 燃料電池およびバッテリーシステム

     c) ハイブリッドおよび電気駆動

     d) ガソリンエンジン燃焼プロセス

     e) 48Vマイルドハイブリッド

  本イベントの全体アジェンダは https://www.aachener-kolloquium.de/en/ をご参照方。

グループ 講演タイトル 講演者 会社名
2019年10月8日
a 新型BMW M 直6ガソリンエンジン – 未来対応型ハイパフォーマンス・パワートレイン Juergen Poggel BMW M GmbH
a EA211 TSI (R) evo – Volkswagenの新型3気筒ガソリンエンジン Norbert Becker Volkswagen AG
a マツダ SKYACTIV-X 2.0L ガソリンエンジン 中井英二 Mazda Motor Corporation
b AVL 燃料電池コンセプトカー - KeyTech4EV William Resende AVL List GmbH
b 燃料電池の大型トラック向けアプリケーション:コンセプトからシステム検証まで Marius Walters FEV Europe GmbH
b HVバッテリーハウジング向けモジュラー・ツールボックスのアジャイル開発: flextric – 新しいモジュラー・バッテリー・ボックス Andrea Tuksa voestalpine AG
b HVバッテリー:車両内通信の最適化アプローチ Martin Lenz Valmet Automotive Engineering GmbH
c RenaultのBセグメント車向け新型プラグインハイブリッド・ドライブトレイン Pascal Caumon RENAULT
c MAHLEモジュラー・ハイブリッド・パワートレイン Michael Bassett MAHLE Powertrain Limited
c 専用ハイブリッド・ドライブ – 包括的システムアプローチに基づくハイブリッド・コンセプト Joerg Gindele Magna Powertrain
2019年10月9日
d 燃料噴射遅角、超高圧化、噴射ノズル開発によるノッキング防止 Peter Richardson DENSO Automotive UK Ltd
d 45%の正味熱効率を実現する次世代高効率ガソリンエンジンの開発 Roscoe Sellers Ricardo UK Ltd
d 未来のハイブリッド専用エンジン - 超高効率のガソリンエンジン Philipp Adomeit (*注) FEV Europe GmbH
e 48Vマイルドハイブリッド電気自動車に関する比較研究: 燃料経済性の面でのモーターの能力制約 Youngki Kim represented by Jason H. Lee University of Michigan-Dearborn / Hyundai-Kia America Technical Center Inc. (HATCI)
e ライトeモビリティの将来コンセプトにおける48V Vernierマシン Bernhardt Lueddecke Vitesco Technologies (formerly Continental Powertrain)
e 48Vハイブリッド・ドライブトレインのCO2分析と評価 Matthias Werra Technische Universitat Braunschweig

(*注) 予定されていたAramco Research Centerによるプレゼンテーションはキャンセルされ、代わってFEV EuropeのAdomeit氏の講演が行われた。



a) ガソリンエンジン(BMW、Volkswagen、マツダ)

BMW:新型BMW M 直6ガソリン・エンジン

講演者: JUERGEN POGGEL, BMW M GmbH
BMW presentation
BMWのPoggel氏によるプレゼンテーション

  Poggel氏は、2つの独立したモノスクロール・ターボチャージャーを備えた現行BMW M 直列6気筒ガソリンエンジンの後継モデルを開発する狙いについて述べた。これは将来のハイパーフォーマンス車へ搭載されるエンジンであり、法規制や排ガス、車両性能に求められる要件の変化がその開発の背景にある。さらに、排気量当り出力、標準的なデイリーユースでの利便性、そしてレースでのパフォーマンスにおける新たな基準を作ることも開発の狙いのひとつである。

  車両(駆動力、俊敏性、走行性能、精度/運転性能、レース性能)、並びにエンジン(最高出力/最大トルク、動力伝達/応答性、冷却/オイル・システム、重量/重心、耐久性)について、開発目標が説明された。提示されたグラフでは、「ベース」仕様とより強力な「コンペティション」仕様のいずれにおいても、現行モデルと比較してエンジン出力の増加が見て取れる。比較は、現行のM3/M4モデルの最高出力が、「ベース」、「コンペティション」で、それぞれ317kW、331kWであるのに対し、新型のX3M/X4Mモデルではそれぞれ356kW、375kWとなっている。

 

新型BMW M 6気筒エンジンの主要スペック
先代エンジン (M) 新型エンジン (M)
最高出力 331kW @ 5500rpm 375kW @ 6250rpm
最大トルク 550Nm @ 2350-5500rpm 600Nm @ 2600-5950rpm
排気量 2979ccm 2993ccm
ストローク/ボア 89.6 / 84mm 90 / 84mm
圧縮比 10.2 9.3
ブースト圧 Up to 1.3bar Up to 1.2bar
燃料消費率 <237g/kWh


  ガス交換と燃焼プロセスを改善するために様々な手法が採用された。例えば、燃焼室の設計自由度を高めるため圧縮比を低減し、ノッキング抑制を図り火炎伝播を均一にする、ガスの流れをスムーズにするため吸気ポートのスロットルの絞りを減らす、など。これらによりブースト圧とエグゾースト背圧の低減を実現した。

  コンロッドの設計変更に合わせたピストンピンの大径化や他の形状変更によって、負荷が均一になり、エンジン出力増加と高速化への対応が可能となった。鍛造製のクランクシャフトは最適な改良が施され、0.6kg軽量化が実現した。

  グラビティ鋳造によるアルミニウム製のクランクケースは、高度の機械的、熱的な負荷に耐えるように改良された。シリンダーはスリーブ無しのものだが、スプレーコーティングされて摩擦と摩耗を減らしている。

  動弁装置にはいくつかの調整が施され、アジャスタブル・カムシャフト、可変バルブタイミング、そして排気側の2つの高圧燃料ポンプを特徴とする。チェーンドライブはエンジンの背面にあり、一体化されたドライサンプ・ギアオイルポンプも駆動する。これにより、およそ1.2Gの高速コーナリング走行においても安定したオイル供給が確保される。このために、メインの後方オイルサンプに繋がる2つのオイル吸引ラインが追加された。

  このような高出力エンジンでは内部冷却システムの開発が極めて重要であり、従来の6気筒エンジンや現行のMモデルに変更が加えられている。高出力のこのエンジンには分割式の冷却システムは採用されていないが、クロスフロー・シリンダーヘッドと改善したウォータージャケットにはピーク温度を下げるための最適な調整がされている。たとえば、シリンダーヘッドにおけるより大きな流路の断面積、特殊なフローガイドなどがあり、さらにウォータージャケットと燃焼室を詰めることによって燃焼室上端温度を20K以上下げることができた。エンジン前面を循環する冷却ポンプは最大毎分300リッターを供給する機械式のベルト駆動である。これは必要な性能を持つ電動式のものがないためである。全体的な冷却システムは、2つのメインラジエーター(高温/低温に対応)、2つの小さな二次ラジエーター(高温/低温)、水冷のチャージエア・クーラー、空冷のトランスミッションオイル・クーラー、そして空冷のエンジンオイル・クーラーから成っている。冷却循環路には、エンジン停止後でもターボチャージャーを冷却できる電動ポンプもある。チャージエアを冷却するための冷却液には、別に専用の電動ポンプが使われている。

  高圧燃料システム(350bar)では、排気側カムシャフト上に高圧ポンプが配されている。より高い燃料流量に対応するために2次ポンプもここに取り付けられ、合わせて直噴式の6基のインジェクターに燃料を送る。

  改良された吸気システムや触媒をエンジンに近づけた排気システムにより、400mbar以上のブースト圧の低減と600mbar以上の背圧低減を可能にした。これには、排気ポートを非対称に作るための3Dプリンターによる鋳造コアと、断面積を大きく変えることなく配管できる直径70mmの排気管も貢献している。

 

VW:EA211 TSI (R) evo – Volkswagenの新型3気筒ガソリンエンジン

講演者:NORBERT BECKER, Volkswagen AG
VW presentation
VWのBecker氏によるプレゼンテーション

  VWからはEA211シリーズの新型3気筒エンジンの発表がBecker氏によって行われた。 同氏によると、4気筒1.5リッターエンジンの下により小排気量のエンジンを設定する目的は、81kWまでの出力領域をカバーすること。このエンジンは、新しい走行試験サイクルと将来の法規制下でのより厳しいCO2と汚染物質削減の要求に応え、またベルト駆動スターター・ジェネレーターと代替燃料の使用にも備えるものである。 2017年に導入された4気筒1.5リッターエンジンの出力は96 kWと110 kWである。

 

TSI (R) evo 3気筒1.0リッターエンジンの主要スペック
1.0L, 81kW 1.0L, 70kW 1.0L, 66kW
出力 81kW @ 5500rpm 70kW @ 5000-5500rpm 66kW @ 5000-5500rpm
最大トルク 200Nm @ 2000-3000 rpm 175Nm @ 1600-3500rpm 175Nm @ 1600-3000rpm
排気量 999ccm
ボア/ストローク 74.5 / 76.4mm
圧縮比 11.5


  開発のあらゆる段階で各種プロセスを数値化して扱う仮想プロトタイプの手法により、開発時間を短縮することができる。とりわけこの手法では、騒音・振動・ハーシュネス(NVH)の予測や、数値流体力学(CFD)に基づくシリンダー内の混合気生成、燃焼プロセスの複雑なシミュレーションなどを行うことができる。

  4気筒エンジンと比較すると、新型の3気筒エンジンは、改良されたTSI(R) evo燃焼プロセス、可変ジオメトリー・ターボチャージャー(VGT)、シリンダーの大気プラズマ溶射法(APS)によるコーティング(アルミ製ハウジング内に鋳造のシリンダーライナーは無い)を特長としている。その他に採用された技術を以下に紹介する。

  燃焼プロセスでは高い圧縮比と高いチャージ圧を目指し、熱管理が細心の注意を要する課題となる。対策のひとつとして、インテーク・マニホールドの外側に取り付けられた水冷チャージエア・クーラーがある。それは大型にすることも可能で、アウトレットの温度差が15K以下の場合にチャージエアの冷却性能がより高まる。シリンダーヘッドには、熱伝導性の高い特製のバルブシートが採用されている。シリンダーヘッドの新設計の2ピースのウォータージャケットは燃焼室に近接して配置され、これがノッキングの軽減に貢献する。クランクケースとピストンの冷却方法としては、2番目のオイルギャラリーにオイルジェットが付けられ、そこからエンジンオイルがピストンの冷却システムに注入される。これは、Volkswagenがこれまではディーゼルエンジンに限って用いてきた技術である。マップ制御冷却モジュール(バルブと一体となった機械式冷却液ポンプ)が1.5リッターエンジンから流用され、これがエンジン・ウォームアップに必要な時間の短縮、各種の冷却ニーズへの対応、車室の暖房効果改善による快適性の向上をもたらした。排気ガス後処理システムは、床下に配された三元触媒コンバーターと、エンジン近くの一体型のガソリン微粒子フィルター付き四元触媒から構成されている。これは、セラミック製触媒内の特殊な流動パターンにより、高い再生能力を備えている。摩擦を最適化するためにも、次のような様々な方策が取られている:前述のAPSシリンダーコーティング、ラッカーコーティングを施された低張力のピストンリング、そして直径42mmのコンロッドおよびクランクシャフト・ベアリング。

  様々な改良を施すことで、新しい3気筒1.0リッターevoエンジンは前世代との比較でエンジン音が最大2.3dB低減された。さらに高負荷の運転では3〜5%の燃費削減、部分負荷による運転では同じく最大10%の燃費低減を実現した。

 

マツダ:Mazda SKYACTIV-X 2.0 Lガソリン・エンジン

講演者:中井英二、Mazda Motor Corporation
Mazda presentation
マツダの中井氏によるプレゼンテーション

  マツダは、理想的な内燃機関の開発という点にフォーカスしている。可能な限り目標に近づくために、同社はガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方について7つのコントロール・ファクターを定義した。すなわち、圧縮比、比熱比、燃焼期間、燃焼タイミング、壁面熱伝達、吸気と排気の圧力差、そして機械的摩擦である。中井氏は、マツダの3段階ロードマップの第2段階、SKYACTIVE-X(独自のスパーク制御点火(SPCCI)によるガソリンエンジン)の進捗について説明した。

  SKYACTIVE-Xエンジンの特徴としては、16.3の圧縮比、70MPa(700bar)の高圧燃料噴射システム、ベルト駆動のルーツ型スーパーチャージャーによる給気、燃焼圧センサー、冷却EGRシステム、およびエンジン近くに装備されたガソリン微粒子フィルター(GPF)付き三元触媒がある。さらにこのパワートレインには、一体型のスターター・ジェネレーター(ISG)を備えたマイルドハイブリッド・テクノロジーも採用されている。

  ロードマップの最初のステップ(現行のSKYACTIVE-Gエンジン)で、高い圧縮比が実現された。新たな第2ステップでは、希薄燃焼と圧縮着火の開発と適用により、比熱比(熱効率)が向上した。予混合圧縮着火(homogeneous charge compression ignition HCCI)は、短時間での希薄混合気の完全かつ安定した燃焼のために開発されたもの。HCCI燃焼では、シリンダー内温度変化を数ケルビンという狭い幅に抑える必要がある。というのは、シリンダー内の温度が高いと大きな燃焼ノイズが発生し、温度が低いと燃焼が不安定になるからである。完全な圧縮着火のためには、極めて短い時間で圧縮比の大きな変化に対応して温度と圧力をコントロールする必要がある。解決策として説明されたのはSPCCIである。16.3:1の基本圧縮比では、火花点火によって一部で起きた燃焼が他の部分の混合気をさらに圧縮し、シリンダー温度と圧力が高まって圧縮着火が起きる。中程度の負荷での均一な希薄混合気の場合、スプリット噴射がなされ、これがNOx排出の削減に貢献する。高負荷下では、より強い旋回流とスプリット噴射により点火プラグゾーンに最適ミックスの(リーンすぎない)混合気が作られる。始めの点火に続いて自着火が起きる。燃焼は、エンジン回転数、エンジン負荷、吸気温度、シリンダー壁温度に合わせて制御される。スパーク点火では、ラムダ= 1で、リーンG/F SPCCI、或いはリーンA/F SPCCIが適用される。

  さらに、熱管理の考え方についても言及された。これは、エンジンのウォームアップを速め、ソークを遅らせることで、燃費を改善し、また駐車後の再始動する際の温度を高く保つためのものである。エンジンカバー、エンジン・コンパートメントの上部/側面/下部のカバー、アクティブ・グリルシャッターなどでエンジンを包み込む対策がとられ、これによる燃費改善は最大5%になるとしている。

  これらの対策の総合的な効果として、SKYACTIVE-Gエンジンと比較し、全回転域にわたってトルクが10%以上増加し、燃料消費量が10~20%削減された。特に、実走行で日常的に使用される低速域と低~中レベルのエンジン負荷でSKYACTIVE-Xはその性能を発揮する。この新しいエンジンは新型Mazda 3に搭載される。

 



b) 燃料電池およびバッテリーシステム(AVL、FEV、voestalpine、Valmet)

AVL:燃料電池コンセプトカー - KeyTech4EV

講演者:WILLIAM RESENDE, AVL List GmbH
AVL presentation
AVLのResende氏によるプレゼンテーション

  Resende氏は、プレゼンテーションの始めに燃料電池に関するAVLの高い専門性を紹介した。AVLは3つの技術センター(欧州に2カ所、カナダに1カ所)に150人の燃料電池エンジニアを擁し、プロトン交換膜(PEM)および固体酸化物形燃料電池(SOFC)に係わる17年の経験を持ち、乗用車、トラック、バス、鉄道、船舶、航空および設置型アプリケーションの分野でのプロジェクトは150以上を数える。同社が提供するサービスは、サブコンポーネント、アセンブリ、システム、さらにそれらの統合に至る分野でのシミュレーション、エンジニアリング、試験による検証に及んでいる。

  KEYTECH4EV燃料電池車プロジェクトの目的は、手頃な価格のファミリーカー・プラットフォームを開発コストと部品コストを節減しながら実現することであり、7社とのパートナーシップのもと、オーストリア政府の資金提供を受けて進められている。最初の開発ステップはコンポーネント選定のための車両レベルでのシミュレーションで、水素消費量と航続距離、0-100 km/hおよび80-120 km/hの加速性能、160 km/hの最高速度といった観点での検証が行われた。AVLのCAMEOツールを使用してシステムの継続的な最適化がされ、常温と寒冷環境それぞれでの起動とシャットダウン、および緊急システム停止で機能の働きが検証された。このコンセプトカー用にはVolkswagen Passat GTEが選ばれ、60kWの燃料電池、VW e-Golfの100kW電気駆動系、9.9kWhのバッテリー、そして3基の水素(H2)貯蔵タンクを搭載すべく改造された。エジェクターとトンネルエリアの3番目の水素タンクを除き、すべてのコンポーネントは既製品が使われた。他のシステム・コンポーネントは、バッテリー充電器、電動冷却液ポンプ、冷却液バルブ、および脱イオン装置から成っており、それらについても概要が紹介された。燃料電池システムのコンポーネントは様々なサプライヤーから供給を受けている。

 

コンセプトカーの主要コンポーネント
コンポーネント サプライヤー
燃料電池スタック ElringKlinger
FCエア・コンプレッサー Garrett
FC コントロールユニットとモニタリング AVL
パッシブ・アノード再循環 Hoerbiger, HyCentA
熱管理の最適化 AVL, IESTA
リアの水素貯蔵器 MAGNA Steyr Engineering
トンネル部水素貯蔵器 MAGNA Steyr Engineering
DC/DC コンバーター BRUSA

 

AVL PEM fuel cell stack
AVLブースのPEM燃料電池スタック(60-120kW対応)

  サブシステム・コンポーネントのテストの結果にも言及された。エア・コンプレッサーがマッピングされ(質量流量に対する圧力比)、NVHと音への対策としてサイレンサーが開発された。インジェクター/エジェクターユニットでテストが行われ、アノード再循環でのH2含有量が調査された。水素は700barの圧力で貯蔵されるため、トンネルエリアの新たな貯蔵器は860barまで、マイナス60℃からプラス85℃の温度範囲でテストされた。

  燃料電池コントローラは、AVLの汎用エンジン・コントローラである高速プロトタイプ・エンジン管理システム(Rapid Prototype Engine Management System、RPEMS)により、ソフトウェアの迅速な変更が可能で、今回のアプリケーション向けにプログラムされている。この装置はセンサー信号を処理し、それをアクチュエータに送ることで燃料電池の作動モードが決定される。診断装置はシステムが正常であるかを常にモニターする。その他、内蔵された様々な機能の働きによって60kW燃料電池システムでのコントローラの性能が確認された。

  当プロジェクトの次のステップは、引き続き調整作業と運用方法の最適化を進めFCシステムの効率と耐久性をさらに向上させることである。車両レベルのキャリブレーション、実走行や耐久性の試験も行われる。

 

FEV:燃料電池システムの大型トラック向けアプリケーション

講演者:MARIUS WALTERS, FEV Europe GmbH
FEV presentation
FEVのWalters氏によるプレゼンテーション

  Walters氏のプレゼンテーションは、ゼロエミッション動力による長距離輸送用商用車向けの燃料電池の利用に焦点をあてたもので、アーヘン工科大学のVKA研究所の活動についても言及された。Walters氏は電動化を牽引するいくつかの主要な要素に言及した。例として挙げられたのは、各種インセンティブ(例えばドイツとスイスの通行料金免除)、経済効率の悪い架空送電線に代わる鉄道線路の電化、パワートレインの重量と積載量でディーゼルトラックに匹敵する大型トラック、交代制で運行される市バスとその航続距離のフレキシビリティ、長距離バス、エネルギー変換と再生可能エネルギーの貯蔵など。

  商用車アプリケーションにとって重要なのは、車両所有に係わる総コスト(TCO)である。そのため、様々な使用パターンやパワートレイン・コンセプトのTCOが検証され、コスト、効率、信頼性、耐久性の向上を狙った燃料電池やバッテリーのスケーリング解析がされた。結果としてシナジー効果とコスト最適化のためのモジュール化が行われ、また市場投入までの時間短縮とコスト削減を図るモデルベースのFC制御ユニットが選定された。

  大型トラック向けには、内燃機関(ICE)、電気自動車(BEV)、および燃料電池式(FCEV)のパワートレインが、走行距離などの利用者固有の要件と併せて検討された。その結果は、BEV、ディーゼル、FCEV別の曲線グラフを使って説明され、そこでは1日の平均走行距離に基づく2030年の輸送コストと、その距離を走行するトラックの割合が示された。ディーゼル、電気、水素、バッテリーについては2030年時点での利用価格が想定された。引き出された結論としては、720kmの航続距離を持つ大型バッテリーを備えたBEVパワートレインは現実的とは言えず、水素価格が5ドル(約540円)/kg以下になると燃料電池が競争力のあるものとなる。

 

FEV fuel cell concept
FEVの燃料電池コンセプト(同社ブースに展示)

  想定したアプリケーションやその使用ケース例の概要が説明され、その中では低電力/短距離から中電力/短距離、そして高電力/長距離に及ぶ様々な燃料電池システムが検証された。

  コンポーネント・シミュレーションの結果は、システム・シミュレーションと燃料電池制御ユニット(FCCU)の先行キャリブレーションに用いられ、これによりテストコストとキャリブレーション作業を削減することが可能になった。全体的なシステム開発計画の一部にモデル・イン・ザ・ループ・テストを含めることで、FEVは仮想的環境と実車でのシステムのテスト時間を短縮できることを確認した。

  紹介された燃料電池システムは、ElringKlinger NM5燃料電池スタック、エアフィルター、電動ラジアル・エアーコンプレッサー、チャージエア・クーラー、加湿器、マフラー、シャットオフ・バルブ、圧力調整器、イオン交換器、冷却液ポンプ、そしてサーモスタット・バルブ。システムは、ヒューズボックス、配電ボックス、DC / DCコンバーター、およびエア・コンプレッサー用のインバーターと一緒にフレームに収めて大型トラックに取り付けることが可能である。

 

voestalpine:HVバッテリーハウジング向けモジュラー・ツールボックスのアジャイル開発

講演者:ANDREA TUKSA, voestalpine AG
Voestalpine presentation
voestalpineのTuksa氏によるプレゼンテーション

  Tuksa氏は、スチールなどの金属を利用した製品やシステム・ソリューションを主に提供するグループであるvoestalpineの概要を紹介した。「flextric」と呼ばれるモジュラー・バッテリーボックスの開発は、バッテリーハウジングが安全性、構造上・熱管理上の要件に応える重要な要素であり、それは可能な限り低コスト、軽量で提供されなければならない、という考えに基づいており、fka GmbHとの協力によりプロジェクトが進められた。

  循環アジャイル開発プロセスは4つのステップで紹介された。まず始めに、熱管理要件、衝突および衝撃試験、およびその他の業界基準といった関連法規制の分析が行われた。次のステップは、いくつかのソリューションを想定した概念設計、レイアウト案とアイデアの議論、そして最後は詳細にわたる組み上げ作業になる。検証は3番目のステップで、設計の分析、(将来の)シミュレーション、およびテスト結果の評価を含むハードウェア・テストが行われる。最後の最適化のステップでは、設定された複数の目標の入れ替えが行われる。ここで挙げられたのは、軽量設計と究極の衝突性能の相反、という事例であった。そこからまた上記の4ステップのサイクルを回すことになる。

  諸要件のリストでは次の例が挙げられた;規制の衝突/衝撃試験(例:GB/T 31467.3、ECE R100)、考えうるユーザー固有の要件(例:20kNの底部衝撃)、およびバッテリーセルの温度均一性要件(15~40°Cの範囲、セル間の温度差<5K)。

  取り上げられた事例は2つの側面から検証と最適化がなされた。第1はメカニカルな側面で、ここではCADモデルからデータが転送される有限要素法(FEM)か、もくしは製品のx、y、z軸の達成度と耐衝撃性に着目する。冷却システムに関しては、通常稼働時の圧力だけでなくバーストを想定した圧力抵抗も検証される。第2番目として挙げられたのは熱管理の側面であり、ここではCADデータが計算流体力学(CFD)の解析へインプットされる。温度分布、冷却回路での圧力損失、そして冷却システムの重量の間でトレードオフの関係も考えられる。顧客の要件とニーズに合わせたソリューションに対応できるよう3つの基本的なバッテリーボックスが開発された。トレイの設計では最大の安全性と気密性が図られ、スチールとアルミニウムの取り合わせが可能な限りの軽量化をもたらし、さらにフレームがモジュール性を最大限に高めるよう設計された。

  熱管理、ケーブル類、接続バーなどの構造や組付けをより良く理解するために、それら3つの異なるバッテリーボックス設計の詳細図が紹介された。また、それとは別に3つの冷却ソリューションの概要が示された。

 

冷却ソリューションの長所と短所
トップ冷却 統合レベルの低い冷却 モジュール冷却
熱管理、並びにメカニカルな面は機能統合されている → (同左) 高いモジュラー性
内部の配管を回避 → (同左)
回路のスペース制約による複雑な冷却液配分 → (同左) 容易な調整と均一な冷却液配分
複雑でサービス性が悪い
(カバーを取り外す必要)
衝突に対するフォーム構造が弱くなる 内部の配管が漏出の危険性を高める
復水の排出が難しい 重量が増す


 次のステップとして、冷却性能、メカニカルな作動、製造面の検証、そしてハードウェア試験の確認を計画している。

 

Valmet:HVバッテリー - 車両内通信の最適化アプローチ

講演者:MARTIN LENZ, Valmet Automotive Engineering GmbH
Valmet presentation
ValmetのLenz氏によるプレゼンテーション

  プレゼンテーションの冒頭でLenz氏はValmet Automotiveグループについて、4カ国に6,000人を超える従業員を抱える会社であると紹介した。同社の事業は、自動車の受託製造、ルーフおよびキネマティック・システム、エンジニアリングサービス、および電気自動車向けシステムに及んでいる。電気自動車関連では、高電圧(HV)バッテリーシステムを複数の大手自動車メーカーへ供給している。 2年前には、中国のリチウムイオン電池メーカーであるCATLが少数株主に加わった。

  近距離無線通信(NFC)を利用した同社のインテリジェントHVバッテリーのソリューションの説明に先立って、Lenz氏はHVバッテリーとバッテリー管理システム(BMS)の主な要件について述べた。バッテリーにとっての要件としては、電力の正確な充電/放電、最適なスペースと重量を実現する高い電力密度、低コスト、充電/放電サイクルの時間と回数を含めた長寿命、そして安全性などがある。BMSに関しては、電圧、電流、温度の各箇所でのモニタリング、そして充電状態(state-of-charge, SoC)、機能状態(state-of-function, SoF)、健康状態(state-of-health, SoH)などバッテリー性能を予見することが挙げられた。その他の要件としては、ドライブトレインと充電器とのコミュニケーション、バッテリー履歴の記録、さらにバッテリー寿命の最大化、熱管理、各セル電圧のバランスなどの項目がある。

 

Valmet BMS demonstrator
Valmetのブースでの、インテリジェント・セル、NFCコミュニケーションを備えたBMSのデモンストレーション(48V)

  現在、BMSには様々なアーキテクチャが存在するが、膨大な数のセルと、それに伴う大量のデータを使用する自動車用アプリケーションでは、いわゆる、モジュラーBMSトポロジが主要なソリューションとなっている。ここでは、セルモジュールのマスターコントローラーと多数のスレーブコントローラーがバスシステムを介して相互に通信している。

  このような通信をワイヤによって行うのが現在の標準的な自動車用のソリューションであることは、シンプルなインターフェイスと、確実なエラー検出能力といった利点によって実証されている。しかしながらLenz氏はそのマイナス面として、ケーブル長による制約、ガルバニック絶縁(高価)の必要性、データ転送速度の限界、温度センサー数の制約、および並列配置で個別の各セルの電流と電圧を測定できないことを挙げた。別のソリューションで独自の長所と短所を持つものとして電力線通信(PLC)がある。これはデータ効率が高くワイヤリングハーネスが削減され、全国の送電網やビル内部にも見られるもの。光通信についても言及された。これはガルバニック絶縁を必要とせず、電磁干渉に強く、安価である。最後にLenz氏が挙げたのはワイヤレス通信で、これは文字通り無限数のセルモジュールと、バッテリーパックのコスト削減を可能にするものである。しかし、ソリューションは電磁干渉に対して堅牢とは言えず、センサーのワイヤイングの削減効果は無く、またBluetoothやMESHなどの無線プロトコルが必要となる。

  Valmetが提供するソリューションは、インテリジェントセルと近距離無線通信を組み合わせたもの。各セルは、オンボード・プロセッサとオンボード処理および永久メモリ用ソフトウェアを組み込まれた6x6mm CMOSチップを備えている。利点は、温度、電圧、電流が24時間7日体制で継続的に監視されること。充電状態と充電履歴、健康状態、そしてセルの全ライフを通しての履歴を処理することもできる。さらに、個々のセルのパッシブ・バランシングが可能になる。信号を強力で予測可能なものにするため、セル上に配備されたバスアンテナにより各セルは個別に常時モニターされBMSとの通信を行う。このようなアーキテクチャは、配置方法に係わらず任意のセル数に合わせてスケーラブルであり、センスワイヤを要しない。

  最後に、セルメーカー(例:保証の改善)、パック・アセンブラー(例:サイズ、重量、コストの削減)、およびパック・ユーザー(例:早期予防保守、再生使用での改善)ごとの長所がグループ化されて説明された。

 



c) ハイブリッドおよび電気駆動(Renault、Mahle、Magna)

Renault:Bセグメント車向け新型プラグインハイブリッド・ドライブトレイン

講演者:PASCAL CAUMON, Renault
Renault presentation
RenaultのCaumon氏によるプレゼンテーション

  Caumon氏は、Renaultのハイブリッド電気自動車(HEV)へ向けた取り組みについて説明した。これは一般には出遅れたと言われているが、同社はディーゼルおよびガソリン内燃エンジン(ICE)、およびバッテリー電気自動車(BEV)では成功を収めている。例えばZoe Z.Eは欧州のベストセラーEVの1つである。Renaultの哲学によれば、優れたハイブリッドを作る前に、BEVテクノロジーを完全に理解する必要がある。また、ハイブリッド車は1つの車両に2種のパワートレイン・テクノロジーを搭載しているためコストが課題となる。従って、Renaultの目標は幅広いユーザーに受け入れられる手頃な価格のハイブリッド車とされた。同社は「全ての人のためのハイブリッド」を主張する。E-Techプラグイン・システムの特徴は、専用設計のハイブリッド・トランスミッション(DHT)と9.8kWhのバッテリーである。フランスのAVL LMMが開発をサポートしている。

  最初にコンセプトの主要なパフォーマンス目標が設定された。コストの観点から、新しい車両/パワートレインは、Euro 6d対応のディーゼルエンジンを搭載したBセグメントおよびCセグメントの車と同レベルのものでなければならない。CO2排出量と燃料経済性の観点からは、クラッチおよびシンクロのないマニュアル・トランスミッションが必要となる。ユーザー観点では、車は真のEV感覚で運転を楽しめるものでなくてはならず、これは、敏捷性、高い応答性、滑らかな走行を意味する。最後に言及されたのは、新しいハイブリッド・パワートレインを搭載する車種モデルへのパッケージングである。これにはBセグメントではClioとCaptur、そしてCセグメントではMeganeが選ばれた。

  これらのモデルは前輪駆動であり、横置きエンジン/トランスミッションのパッケージに収まるには、電気モーターが組み込まれた専用設計の新しいハイブリッド・トランスミッション(DHT)は同じ幅に収まらなければならない。そのために、クラッチとシンクロ機能が取り除かれ、駆動は常に電動モードで始動される。

  燃料効率の目標を達成するために、専用設計ハイブリッド・トランスミッションにはトルク伝達効率を向上させる従来型のマニュアル・トランスミッション・ギアが使われている。摩擦を避けるために、いわゆるドッグ・クラッチが選ばれた。ICEの使用にあたっては、スイッチング操作の頻度を減らすために4つの速度(ICE1-ICE4)のみが設定された。EVについては、電動モーターのサイズを小型化しながら高効率の領域で利用するために2つの速度(EV1とEV2)が設定された。ハイブリッド・スターター・ジェネレーター(HSG)は、ICEの始動または発電に使用されるだけでなく、EV1とEV2の間のシフティング時のトルク中断を回避するためにも使われるように配備されている。ICEおよびEVギアボックスは、ドラッグロスを防ぐためのニュートラル・ポジションも持っている。

  Caumon氏は、内燃エンジンを始動させずに、1回のバッテリー充電で2種類の国際調和ライトビークル・テストサイクル(worldwide harmonized light vehicle test cycles, WLTC)を純粋な電気モードで走行できることをグラフで示した。eモードでの走行を伸ばすにはより大型のバッテリーが必要となるが、価格への影響は避けられない。スタート加速は競合他車の2倍の応答性があるとされ、ドライバーにとっては、EVの「fun to drive」が楽しめる。摩擦クラッチが取り除かれたため、駆動は常に電気モーター(メインeモーターかHSG、またはその両方の組み合わせ)で始動される。3つの動力源(49kWおよび205Nmのメインe-Motor、HSGおよびICE)を合わせれば、スポーツモードを使って0-100km/hを9秒で、80-120km/hを6秒で加速することができる。電気駆動の2番目のギアの最高速度は135km/hに達すると思われる。ほぼすべての走行環境でEV1からEV2へのギアシフトを感じとることはない。これはシンクロとトルクの欠如を補うためシフト中にHSGを使用しているためである。

  新型Renault Captur(Bセグメント)は2020年にE-Techプラグイン・システムと共に、Renault Meganeに続いて発売される予定。

 

Mahle:モジュラー・ハイブリッド・パワートレイン

講演者:MICHAEL BASSETT, MAHLE Powertrain Ltd.
Mahle presentation
MahleのBassettによるプレゼンテーション

  Bassett氏からは、P-HEVアプリケーション向けのMahleモジュラー・ハイブリッド・パワートレイン(MMHP)の背景についてCO2規制を含めた説明がなされた。次の10年間にすでに決まっている欧州の目標値、2021年の95g CO2/kmから2030年の59gCO2/kmへの削減に対応するためにはハイブリッド化を一層進めることが求められる。内燃エンジン(ICE)でのみこれを達成するには、平均的な正味熱効率を2倍にする必要がある。同氏が提起したもう1つの点は、法定のガス排出量がゼロに近づいていく将来の見通しであった。本当にゼロになるかという疑問も呈された。「ゆりかごから墓場まで(車両生産から廃車のリサイクルまで)」のライフサイクルCO2排出量の全体像を見れば、ICE、BEV、FCEVといった様々なタイプの車両が現在排出しているCO2の状況をより良く理解できる。これは、「井戸からタンク(エネルギー生成から流通、貯蔵まで)」と「タンクから車輪まで」をカバーし、文字通り車両の使用全体を表すものになる。

  最初の問題は、ライフサイクルの観点から見たP-HEVの最適なバッテリーサイズは何かということである。前提として、車両重量1400kg、NEDCテストサイクル、ライフ走行距離150,000km、バッテリー自体のCO2使用量175kg/kWh、そして電気のCO2含有量(英国グリッドの292g CO2/kWhと見た)の仮定が置かれた。 Mahleの結論では、100 km程度の電動航続距離のバッテリー容量が最も妥当であった。航続距離を200、400、さらには600kmにまで伸ばすと、ライフサイクルでのCO2排出量が大幅に増加する。

  続いてBassett氏からは、専用ハイブリッドエンジン(DHE)を搭載するMahleモジュラー・ハイブリッド・パワートレインと、インテグレーテッド・エレクトリック・パワートレインと呼ぶ2基の電気モーターが組み込まれた2速デュアルモードEVパワートレインについての説明がされた。高電圧(HV)ジェネレーターはエンジンとトランスミッションの間にP1配置され、HVトラクションeモーターはP3配置で駆動に直接供される。ニュートラルの選択ではエンジンが駆動系から切り離されるので、クラッチレスの仕様になっている。このデュアルモード・アーキテクチャにより、並列および直列のハイブリッド走行が可能になり、サイズと重量、シンプルさ、コストの面で優位性を持っている。

  DHEは2シリンダーエンジンで、以下の特徴を持つ:振動を最小限に抑える逆回転バランサー、シリンダーあたり2つのバルブは固定バルブタイミングでシングル・オーバーヘッドカムシャフト(SOHC)で作動、ポート燃料噴射、低圧EGRシステム、そしてミラーサイクルが採用されている。これらの結果、DHEは低排出ガスで好燃費、コンパクト・軽量で費用対効果の高いエンジンとなった。正味燃料消費率(BSFC)は207g/kWhを下回り、正味熱効率(BTE)は40%以上になるとしている。

  MMHPの拡張性は、3種類の車両の例を使って説明された。

 

Mahle モジュラー・ハイブリッド・パワートレインの拡張性の例
コンパクト コンパクト・クロスオーバーSUV 大型4x4 SUV
専用ハイブリッドエンジン(ICE) 60kW 60kW 90kW
トランスミッション 1速 2速または4速 4速
トラクションeモーター
(継続的な駆動力)
75kW 127kW 190kW

 

Mahle Modular Hybrid Powertrain Mahle Modular Hybrid Powertrain
Mahle モジュラー・ハイブリッド・パワートレイン(左:前面/右:背面)の展示
展示パネル:Modular Hybrid Powertrainの詳細

 

Magna:ハイブリッド専用パワートレイン

講演者:JOERG GINDELE, Magna Powertrain
Magna presentation
MagnaのGindele氏によるプレゼンテーション

  Magnaからのプレゼンテーションは、ハイブリッド専用トランスミッション(DHT)とハイブリッド専用エンジン(DHE)との組み合わせによるハイブリッド専用パワートレイン(DHP)に関するもの。Gindele氏はこのアプローチの背景には、今後のCO2排出目標があるとした。Magnaは、2025年に世界で販売される乗用車とライトトラックのおよそ40%に電動パワートレインが搭載されると予測する。ただし、生産される全車両の95%は依然として内燃エンジンを搭載し、完全な電気駆動車は5%に留まるであろう。これらの純粋なEVが市場シェアを伸ばすのにはさらに何年もかかることから、MagnaはDHPコンセプトを、いずれもメインドライブに電動モーターを使用するフル/プラグイン・ハイブリッドと純粋なEVの間に位置付けている。しかしながらDHPはコストを低く抑えたものとなる。

  この新型パワートレインは前輪駆動用に配置されており、このシステムに合わせて設計された内燃エンジン、必要な機能に特化した専用トランスミッション、eモーターそしてインバーターで構成されている。必要に応じて、追加搭載のリアeアクスルが稼働する。

  Gindele氏は、各種パワートレインに対するMagnaのコスト/価値評価を、Cセグメント車両を例に説明した。

 

コストと価値評価の要点
ICE 48V HEV HV HEV BEV Magna DHP
車両 Cセグメント、4WD
内燃エンジン 1.5L 直列3気筒ターボ --- 1.5L 直列3気筒 自然吸気
トランスミッション 7DCT300
(Magna dual clutch)
7HDT300
(Magna hybrid dual clutch)
1速 e-drive DHT
e-Motor --- 18.5kW, 48V 90kW, HV 110kW, HV 90kW, HV
バッテリー --- 1kWh 14kWh 60kWh 14kWh
EV航続距離
(calculated @ 200€/kWh)
--- --- 60km 500km 60km


  結論として、BEVソリューションは大きなバッテリーを要すことから最もコスト高になるが、DHPはHV HEVのコストをはるかに下回る。これを支えるのは、ターボチャージャーや可変バルブなしのシンプルなICE、リバースギアの無いトランスミッションを始めとする様々な単純化の手法である。車両の発進は常に電動モードで行われる。ギアボックスに組み込まれたeモーターも使用され、ICエンジンの負荷を調整してCO2排出量の削減に貢献する。さらにエネルギー回生効率も高めている。

  様々な種類のパワートレインのシミュレーションが行われ、駆動力、性能、コスト/CO2削減の関係が比較分析された。全体総括の中でGindele氏は、DHPコンセプトで今後解決すべき課題を指摘した。そこでは、低バッテリー充電状態でのリバースeドライブと車の始動、高速走行での安定的な出力、エンジン始動のコントロール、そしてシフトに伴うトラクション中断時のエンジンとeモーターのコントロールが挙げられた。Gindele氏は、Magnaの専用ハイブリッドパワートレイン・コンセプトは、エンジンをよりシンプルにすることで低コストでのCO2削減を実現する高い可能性があると結論付けた。90kWのeモーターを備えた専用のハイブリッド・トランスミッションと63kWのエンジンは、組み合わせとして妥当なものである。ICエンジンをさらにスケールダウンすれば、直列ハイブリッド、或いはレンジ・エクステンダーが必要になるかもしれない。一方でリアeアクスル・ドライブを追加することで容易にパフォーマンスを向上できる拡張性も備えている。

 



d) ガソリンエンジン燃焼プロセス(デンソー、Ricardo、FEV)

デンソー:燃料噴射制御によるノッキング防止

講演者: PETER RICHARDSON, Denso Automotive UK Ltd.
Denso presentation
デンソーのRichardson氏によるプレゼンテーション

  Richardson氏は、CO2排出量を削減する研究について発表した。これは、圧縮比を高めた内燃機関(ICE)の熱効率の改善と、内製のノッキング防止燃料噴射装置(FIE)によって達成される。調査は次の2つの方法で行われた; ひとつは、3Dシミュレーションを利用するなどの計数的なアプローチ、もうひとつは、燃焼反応を画像化するためのレーザー誘起蛍光(LIF)法などの実験的アプローチである。

  ノッキング防止のための3つの要素が挙げられたが、これらはすべて、燃料噴射遅角の方策による。a)燃料が冷え、シリンダー内のガス温度が低下する。 b)噴射を遅らせることで、酸化反応と自着火の時間が短くなる。 c)スプレーのエネルギーが乱流を増加させ燃焼伝播の高速化に寄与する。これらのメカニズムは、例えば、35、60、および120MPaの噴射圧でのテストによって調査、確認されていた。噴射孔の数、角度、燃焼室の形状を変えて、インジェクタの噴霧パターンを調査した。目標は、不均一な混合気の形成と内壁との衝突時の拡散エネルギーの損失を回避することである。不均一な噴霧設計の10孔インジェクタによる噴霧と拡散が燃焼室内の形状と力学に最適に働き、噴射遅角の効果が高まり、均質な混合気の速やかな形成が実現した。1基のインジェクタの場合と比較して、2基のインジェクタによる噴霧浸透のコントロールが混合気拡散を最適化にする;長いインジェクタが外側の領域に混合気を生成し、点火プラグに隣接して中央部分に配された非常に短いもうひとつのインジェクタが点火直前に噴霧する。

  前述の噴射遅角の改良がノッキングを防止し、熱効率改善の目標が達成された。理想的な混合気の生成を目標に、噴霧圧力、形状、そしてタイミングのさらなる研究に取り組む。

 

Ricardo:45% BTEを実現する次世代高効率ガソリンエンジン

講演者:ROSCOE SELLERS, Ricardo UK Ltd.
Ricardo presentation
RicardoのSellers氏によるプレゼンテーション

  Sellers氏のプレゼンテーションでは、現在進展を続けるパワートレインの電動化、すなわち内燃エンジンとの組み合わせによるハイブリッド化が取り上げられた。これは化石燃料の使用を減らすために必要なことである。CO2排出量とコストを削減し、より競争力のある量産型のパワートレインを生み出せる可能性がある。電動化のレベルは、12-48Vマイクロおよびマイルドハイブリッドから、モジュール式や専用設計のHEVおよびPHEV、さらにシリーズハイブリッドやレンジ・エクステンダーにおよぶ。内燃エンジンの技術の方向性については、超高効率に向かっていると言える。Ricardoは、このような先進的な内燃機関(ICE)をシリーズハイブリッドへのアプリケーションとして評価していくために吉利(Geely)との協力関係を築いてきた。

  スライドを使って、Geely Automotive Power Follower(GAPF)の要件が示された。ハイブリッド・アーキテクチャを持つGAPFのエンジンは限られた航続距離で走行している。

 

GAPFの要件に対応したエンジンスペック
排気量 1.5L
シリンダー数 3
出力 68kW
エンジン回転数 4,000rpm
最大トルク 167Nm
最大正味熱効率 エンジン中速域で目標45%
排出ガス規制 Euro 6d


  Sellers氏からは、ハイブリッド・パワートレインの大幅な効率改善を狙ったRicardoのMagma xEVエンジンのコンセプトが説明された。ロング・ストロークによる高圧縮比が熱効率を高める。45%の正味熱効率(BTE)と186g/kWhの正味燃料消費率(BSFC)の目標が掲げられ、その達成のために、均一なリーン燃焼、ウォーターインジェクション、そしてコロナ放電イグニッションなどの技術が取り入れられた。このエンジンには、機械的に作動する補助装置は採用されておらず、ボア/ストローク比は0.7、圧縮比は17:1となっている。ポートおよびシリンダーに直接水を噴射するウォーターインジェクションが採用されているのも特徴である。

  1Dシミュレーションでは、ボア/ストロークと圧縮比、バルブタイミングと開度、摩擦などのパラメーター変動をすばやく評価することができる。1Dモデルに基づいて、3Dシミュレーションの境界条件が定義される。ここでは、エンジンサイクルでのシリンダー内混合気の動きがシミュレーションされた。たとえば、ウォーター・インジェクションはどのタイミングと位置で冷却効果がより高くなるか、といった検証をする。また、コロナ放電点火とその燃焼作用への影響もシミュレーションされた。

  前ステップで開発された様々な構成要素をテストするためにRicardoの単気筒エンジンが使われた。個々のパラメーターとそれらの組み合わせが順次テストされ最適化された後、最終的に比較評価される。例えばカムとイグニッションのタイミング、燃料/ウォーター・インジェクションの起点、EGR率、スパーク対コロナ点火、など。結果として、コロナ点火が最良の燃焼特性と高いラムダ値を示すことが明らかになった。高いラムダを得たことで、ノッキングが軽減され、ウォーター・インジェクションが不要となった。テストの結果は目標とされた燃料消費率が達成されたことが示していた。 排出ガスへの影響も確認された。ラムダ値の増加でリーン燃焼でのNOxが減少し、排気の後処理コストが軽減された。

  Sellers氏は、引き出されたテスト結果によって最大正味熱効率45%という目標達成に向けたMagma xEVエンジンの機能と性能を確認できると結論付けた。

 

FEV:未来のハイブリッド専用エンジン

講演者:PHILIPP ADOMEIT, FEV Europe GmbH
FEV presentation
FEVのAdomeit氏によるプレゼンテーション

  予定されていたプレゼンテーションはキャンセルされたが、その時間枠にAdomeit氏が超高効率ガソリンエンジンに関する講演を行った。FEVは、2030年にガソリン・ハイブリッド車が欧州で乗用車の主力パワートレインになるだろうと予測する。同社は、ベース・シナリオで内燃エンジンとのハイブリッドが65%以上になるとし、ハイブリッド・シナリオではICEとのハイブリッドが80%以上に達するとしている。

  従来のICエンジンは、国際調和ライトビークルテストサイクル(WLTC)への最適化を念頭に設計されてきた。しかしながらすでに、熱効率が40%の新しいP2ハイブリッドエンジンが間もなく量産され、さらに新しいシリーズハイブリッドエンジンが42%を超える熱効率を達成する見込みである。

  FEVはシリーズハイブリッド・アーキテクチャをレンジ・エクステンダーと考えていたが、そうした中国での動きが欧州にとっても有効であるか疑問を呈している。パワートレインの差異を視覚化するために、3種のハイブリッド・アーキテクチャ(パラレル(並列)ハイブリッド、シリーズ(直列)ハイブリッド、直列‐並列ハイブリッド)が示された。シリーズ方式は、強力なeモーター、インバーター、大型のバッテリーが必要で高価になる。一方で直列-並列方式は、効率性を重視して適正サイズの専用ハイブリッド・エンジンを搭載し、コストとCO2の面で優位性を持つ。ハイブリッド・アーキテクチャ内で内燃エンジンを最適化し電動モーターを使用することで、エンジン曲線上の高効率な中間領域でエンジンを活用することができる。妥当なエンジンのコスト水準で、CO2排出量では大幅に改善される。高効率を達成する方策には、ニーズに合わせた最適な排気量の選択、ストローク/ボア比のアップ、冷却した低圧EGRの使用などがある。リーン燃焼が燃料経済性をさらに改善する。炭化水素やNOxなどの排出ガスへの対策としては、混合比率とその燃焼室内の分布を最適化する必要がある。

  Adomeit氏は、自身のプレゼンテーションを締めくくるに当って、ラムダ= 1で45%の熱効率が可能であり、リーンバーンでは48%、将来的には排気の廃熱を利用することにより50%を超えることも可能性であると述べた。

 



e) 48Vマイルドハイブリッド(University of Michigan、Vitesco、TU Braunschweig)

University of Michigan:48Vマイルドハイブリッド電気自動車に関する比較研究

講演者: YOUNGKI KIM, University of Michigan - Dearborn; presented by JASON H. LEE, HATCI
University of Michigan / Hyundai presentation
Lee氏によるUniversity of Michigan / Hyundaiのプレゼンテーション

  予定されていたプレゼンターであるミシガン大学のKim氏が欠席であったので、現代起亜アメリカテクニカル・センター(HATCI)のLee氏が準備された資料を使って講演を行った。今日欧州では、P0アーキテクチャによる多数の48Vマイルドハイブリッド(MHEV)が走行しているが、米国ではわずかである。その市場では、P0 + P4 MHEVアーキテクチャが魅力的なものとなる。追加のトルク・アシスタンスとエネルギー回生能力の向上により、P0のみの場合に比べて燃費が良くなる可能性があるためである。P0のみに対してP0 + P4が実際にどの程度燃費が向上するかは不明確であり、今回のシミュレーションを使用した分析研究はそれを明らかにするために行われた。

  燃料消費量を比較するための車両モデリングに先立って、運用上の制約が確認された。電気モーターに関して制限としては、モーター自身の能力(最大電力と電圧)、および低速でのエネルギー回生能力に起因するものがある。構造面では、P0システムでのベルトスリップによって生じるトルク・アシスタントに限界がある。P4システムでは車両の動的特性でエネルギー回生に制約が生じる、これはタイヤのブロッキングまたはスリップに起因する。さらに、バッテリーはその充放電可能電力(SOP)での制約がある。

  車両とパワートレインのモデリングでは、市販のP0 MHEV現代Tucsonのデータをベースとして使用した。さらに、P4リアeアクスル・モジュール用にパワートレイン・モデルが製作された。さらなる検討事項は、加速および減速時の荷重移動のダイナミクス、および最適なトルク分割に係わるものであった。

 

車両モデルの基本データ
パワートレイン 2.0Lターボディーゼル、6速MT
モーターサイズP0 11.5kW (ベルト駆動)
モーターサイズP0+P4 11.5kW および 23kW
48Vバッテリー 9.7Ah


  燃費比較のシミュレーションは、3種のテストサイクル(UDDS、WLTP、HWFET)および3つのケース(P0での最大モータートルク、P0のすべての制約、P0およびP4モーターのすべての制約)で行われた。結論として引き出されたのは、モーター作動上の実際の制約は、燃料経済性にマイナスの影響を及ぼし、それは無視できないほど大きいということだった。エネルギー回生機能を持つP4モーターを追加すると回生能力の向上によって、燃費が5.8%(UDDS)、3.4%(WLTP)、1%(HWFET)改善する。P4モーターの回生ブレーキについては、タイヤのスリップと車両の安定性の問題があり、追加のシミュレーションが必要である。

 

Vitesco:ライトeモビリティの将来コンセプトに向けた48V Vernier Machines

講演者: BERNHARDT LUEDDECKE, Vitesco Technologies
Vitesco presentation
VitescoのLueddecke氏によるプレゼンテーション

  Vitesco Technologies(旧Continental Powertrain)のLueddecke氏は、ErlangenのFriedrich-Alexander大学の支援を受けて取り組んでいる研究プロジェクトの中間報告を行った。課題は、42億人が生活する都市部の大気汚染と混雑である。電動化は大気汚染の緩和に役立つが、電動二輪車には都市の混雑を緩和する可能性がある。VitescoとContinentalはすでに幅広い製品ラインアップでeモビリティ向けのソリューションを提供している。それらは、電動アシスト自転車/e-バイク(48V、0.25kW)、e-スクーター(48V、0.25-4kW)、e-モーターサイクル(48V、4-13kW)から、ピープルムーバー(48V、4-20kW)などの軽量電気自動車、さらにマイルドハイブリッド(48V)および20kW以上の高電圧ソリューションを搭載した乗用車に及ぶ。今回のプレゼンテーションでは、eスクーター、Vernierマシン向けの独自のeモーターの設計について説明された。

  Lueddecke氏はこの研究はeスクーターに着目することから始まったと述べた。従来のeモーターはインナーランナー型であり、既製品を利用することができるが、速度とトルクを得るためにギアが必要となる。重量とNVHも付随する課題である。対照的にアウターランナーのeモーターは、車輪の不可欠な部分になる可能性があり、ドライブチェーンやベルトを必要としないため、新しい設計が可能になる。今回の検証では、低速での高トルクと極めて高い対質量トルク比を備えることから、Vernierマシン -永久磁石を備えたアウターランナー-が選ばれた。

  標準的なアウターランナーマシンとVernierマシンの違いは、いわゆる磁束変調極を使って説明さた。示された例では、永久磁石を備えたアウターローターには24極のペアが付いている。内側の固定子には9本の主極アームがあるが、それぞれに端に3極ペアがあり、結果的に27のいわゆる磁束変調極になっている。有限要素計算により、標準的なアウターローターとVernierのアウターローターが比較評価され、その結果、磁束変調により内部ギア比が有効になった。

  L1eクラスのeスクーター(最大速度45km/h)へ搭載可能なVernierの様々な仕様を検討するために、重量、ホイール直径、加速性能などの車両パラメーターが設定された。結果として導き出されたVernierパラメーターは2-4kWの公称電力と100-150Nmの公称トルクであった。最終的に、3.5kWの電力と125Nmのトルクが要件を満たすものとして確認された。目標とされる実際の使用シナリオに合わせ、機械の直径を広げ、深さを縮め、電源ユニットやブレーキシステムのパッケージングが可能なものとした。

  Lueddecke氏はプレゼンテーションの最後に、Vernierマシンの設計、最適化、およびプロトタイプ化が完了し、今後はテストベンチでの試験と、eスクーターへの組み込みが次のステップになると語った。

 

TU Braunschweig:48Vハイブリッド・ドライブトレインのCO2分析と評価

講演者: MATTHIAS WERRA, Technische Universitat Braunschweig
University of Braunschweig presentation
University of BraunschweigのWerra氏によるプレゼンテーション

  Werra氏によるプレゼンテーションのテーマは、いくつかのテストサイクルのもとでの様々な48Vハイブリッド・ドライブトレインのシミュレーションと、それによる最大限のシステム効率と燃費効率の確認というものであった。そのためにはモジュラー・シミュレーションモデルが活用された。

  解析を行うために5つの48Vドライブトレイン構造が定義された。それらは、P0、P2、P3、P0 + P3およびP0 + P4である。パラメーターの変数が、電動機器類の出力、ギア比、バッテリー容量、およびその他の要件に基づいて設定された。使用された走行テストサイクルは、国際調和ライトビークル・テストサイクル(WLTC)、3つの異なる路上走行試験(RDE)(マイルド、平均、スポーティー)、そして顧客ベースの走行サイクルである。

  結果は、パラメータ変数、パワートレイン構造、および走行サイクルの変化が燃費に影響を与えることを示していた。WLTCシミュレーションの1つの例は、バッテリー容量が1kWhのとき、動力源の電力を10kWから20kWに増やすと燃料節約の可能性が最も大きくなるということであった。

 

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キーワード
ドイツ、電動化、エンジン、燃料電池、バッテリー、48V、モーター、ジェネレーター、インバーター、トランスミッション、アクスル、BMW、VW、マツダ、AVL、FEV、Voestalpine、Valmet、Renault、Mahle、Magna、デンソー、Ricardo、Vitesco、Braunschweig

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