The Battery Show Europe 2019: リチウムイオンバッテリーの熱管理テクノロジー

バッテリーおよびハイブリッド/EVの先進技術、バッテリーセル冷却ソリューションの展示取材

2019/07/08

要約

  ドイツのStuttgartにおいて2019年5月7日から9日にかけて「The Battery Show Europe(欧州バッテリーショー)」並びに「Electric&Hybrid Vehicle Technology Expo(電動/ハイブリッド車テクノロジー・エキスポ)」が合同開催された。3日間に及ぶ展示会とカンファレンスのひとつのテーマは、メーカーやサービス・プロバイダーによる先進バッテリー技術であり、様々なバッテリーシステム、それらを構成するコンポーネント、テスト、更にはリサイクルに至るまでが紹介された。一方で、革新的ソリューションの適用技術がもうひとつのテーマとして取り上げられ、そこでは電動パワートレイン、バッテリー管理システム、材料、そしてハイブリッド車やフル電動乗用車/商用車用向けの装備が披露された。

  電動モビリティの初期段階ではニッケル水素(NiMH)電池が使用されていたが、市場は急速にリチウムイオン(Li-ion)電池に変わっていった。これはスマートフォンやタブレットまたはラップトップなどのモバイル電子機器が最適ソリューションとして同電池に行きついたのと同じ理由(高いエネルギー密度 (Wh/kg)、およびメモリー効果がほとんど回避できること) によるものである。しかし自動車への適用においては、あらゆる使用環境、気候条件下でリチウムイオン電池の熱管理をすることが大きなチャレンジとなる。

Keihin cooling system
ケーヒンの冷却システム
(The Battery Show Europe 2019、執筆者撮影)

  このレポートでは、温度に対してセンシティブなリチウムイオンバッテリーを自動車に搭載する際に、最高の性能と耐久性を引き出すためにいかに熱管理を行うかというテーマを扱う。バッテリーセルを冷却する(外気温が低い時は温める場合もある)方法は顧客のニーズ、セルのタイプ、設置スペースおよびバッテリーモジュールのデューティサイクル(duty cycles)によって様々である。バッテリーの性能と寿命の鍵となるのは、バッテリーパックあるいはモジュールのすべてのセルから均等に熱を取り出すこと。熱は外部からセルに伝わることもあるが、多くの場合はセル内部での高い充/放電電流によって発生する。

  内燃エンジンの冷却液は~90℃に達し、電気駆動装置や動力用エレクトロニクス内で循環するいわゆる低温冷却液は~60℃になる。いずれの冷却液も、約10℃から35℃の範囲にあるのが理想的とされるリチウムイオンバッテリーには高温すぎる。そのため、リチウムイオンセルを35℃以下に保って性能低下や不可逆的な経年変化を防ぐため、様々な対策が商品化され、また開発途上にある。これらの問題は低温下でも起こり、その場合にはセルを加熱する必要がある。

  リチウムイオンバッテリーが自動車に使われた初期段階では、熱管理はまったく行われていないか、あるいは空冷によるものだった。現在の最先端技術は、アクティブに冷却が行われるバッテリーシステムであり、それはバッテリー熱管理が車両の熱管理システムや空調システムに組み込まれたものとなっている。より温度への抵抗性が強い素材を使ったバッテリーが市場に登場するまでは(全固体バッテリーが量産段階になる2030年頃と業界の専門家は見ている)何らかの熱管理が必要になるだろう。

 

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