FC EXPO 2019:FCVの実用化・普及に向けたOEMの取組み・戦略

Daimler、Audi、GM、現代、ホンダ、トヨタの講演より

2019/03/25

要約

  FC EXPO 2019(水素・燃料電池展、会期:2019年2月27日~3月1日、会場:東京ビッグサイト)における「FCVの実用化・普及に向けたOEMの取組み・戦略」と題した専門技術セミナーでは、OEM6社による燃料電池車および水素インフラの普及に向けた取り組みが紹介された。本稿では講演内容の抜粋と、各社の燃料電池(FC)事業に関する最近の動向を報告する。

  OEM各社はグループの中長期電動化戦略を策定する中で、車両サイズや走行距離に応じて、EV領域、HV・PHV領域、FCV領域と、それぞれの特性に合わせた電動車の展開イメージを示している。今回のセミナーで講演した自動車メーカーは、次世代のゼロエミッション車(ZEV)として電気自動車(EVまたはBEV)と燃料電池車(FCVまたはFCEV)、両方の開発に取り組んでいる。
  ガソリン車並みの走行距離が特長のFCVは乗用車から商用車への展開を目指し、まずは乗用車で燃料電池技術の性能向上と原価低減を進め、一方で水素消費量が多い商用車を普及させることで水素需要を拡大し、インフラ整備を促進する。さらに、水素技術は自動車以外にも多様なモビリティで活用できるとし、フォークリフトなどの産業機器、鉄道、船舶、飛行機、ドローンなど、FCスタックの多用途展開を図るとしている。

  各社がFCVの開発を継続する背景は共通しており、世界中で環境規制が厳しくなる中、FCVが持続可能な究極のクリーン性能を備える自動車と見ているためである。FCV最量販車であるトヨタMIRAIでもグローバル累計販売は7,700台(2014年末~2018年末)と未だ限定的だが、今後はグローバルで年間3万台以上、日本では年間1万数千台程度を目指すとしている。
  次世代自動車の環境対策をWell to Wheelで考えた場合、再生可能エネルギーで発電した電力を水素ステーションに供給し、水しか排出しないFCVを利用することで、持続可能なエネルギー、温暖化対策(CO2削減)、大気汚染対策(NOxなどの排ガス削減)の課題に取り組むとしている。FCVや水素インフラの普及に向けては、官民での協力、他社との協業が必要とし、OEM各社からは様々な取り組みが紹介された。

燃料電池自動車の特徴 水素社会実現に向けた取り組み
燃料電池自動車の特徴
(資料:トヨタ)
水素社会実現に向けた取り組み
(FC EXPO 2019 環境省の展示)


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