【ものづくり】第5回燕三条ものづくりメッセ2018:刃物の町の自動車部品展開

鍛冶屋100年企業、高精密加工、ロストワックス、機械加工レスMIMバルブ、積層コアなど

2018/11/01

要約

 燕三条ものづくりメッセ2018(会期:2018年10月24日(水)~10月26日(金)、会場:燕三条地場産業振興センター)は、公益財団法人燕三条地場産業振興センターの主催。今年で5年目となり、地方都市では有数の工業専門展示会となっている。261社が出展し、ものづくりネットワークを活かした展示商談会が行われた。

 ものづくりのまち燕三条は、新潟県のほぼ中央に位置する「燕市」と「三条市」。両市の「ものづくり」の歴史は江戸時代の和釘づくりが始まりとされている。その後、きせるから刃物へと先人達から引き継がれた「ものづくり」の歴史と鍛治屋の伝統が継承されている。近年の加工技術の高度化にも追従し、世界有数の高度な技術集積地として進化を続けている。刃物・洋食器が有名だが、自動車部品の量産も行われており、自動車産業の課題に応える技術の展示を取材した。

燕三条ものづくりメッセ2018
入場口風景
燕三条ものづくりメッセ2018
会場風景

 

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鍛冶屋100年企業(熱間鍛造)

 燕三条では明治・大正からの工場があり歴史は長い。今回の展示会では熱間鍛造の量産品の展示があり取材した。ハンマー式の熱間鍛造はテレビで放映される刀鍛冶のシーンでよく見る真っ赤な鉄を叩く光景そのもので、ものづくりの原点のような環境である。老舗企業も現在では建機、ミシン等の部品の生産が主力だが、自動車部品の生産も多い。

 

(出展会社概要) 鍛冶屋100年企業など

会社名 展示品 特徴

㈱丸富五十嵐製作所
(新潟県新潟市)
創業1897年(明治30年)
創業120年企業

自動車小物熱間鍛造品
二輪車フレームブラケット

自動車・二輪車30%
建機40%、その他30%

1~30kg
ハンマー(0.5~3トン)7台
鍛造プレス(30~300トン)10台
NC旋盤 10台
マシニングセンター 3台
北陸工業㈱
(新潟県三条市)
創業1927年(昭和2年)
創業90年企業

建機用スプロケット

自動車21%
建機58%、農機13%、産機8%

3~100kg
ハンマー(1.7~10トン)8台
鍛造プレス(80~2500トン)21台
㈱山岸鍛工
(群馬県みどり市)
創業1962年(昭和37年)
ティア1

自動車電磁クラッチプーリ―

自動車55%
建機17%、その他28%

2~80kg
ハンマー(1~8トン)5台
鍛造プレス(2500トン)3台

 

丸富五十嵐製作所

 120年企業、創業1897年(明治30年)。工場は新潟県新潟市。1トンハンマーが主体で、中物が得意。主力は建機だが自動車および二輪車部品も多く手掛けている。新潟県次世代自動車産業振興協議会にも参画し、自動車部品の受注に前向きに取り組んでいる。熱間鍛造工場は騒音問題があるが、同社の工場は畑の中なので鍛造は夜9時まで操業できるという。展示品は二輪車フレームブラケット。熱間鍛造ながら、高精度薄肉のため主要部分は後工程無しで使用可能。多少の機械加工が残っても、後工程の機械加工設備もあり完成品で納入できる。

量産:自動車二輪車・小物熱間鍛造品 量産:二輪車フレームブラケット
展示パネル(会社案内) 展示パネル(設備状況)

ハンマー式の熱間鍛造は真っ赤な鉄を叩く

 

北陸工業

 90年企業、創業1927年(昭和2年)。工場は新潟県三条市。燕三条駅前のワシントンホテルも所有する三条市の代表的企業。本業は大物の熱間鍛造。超大型の10トンハンマー、2500トンプレスを有する。小松製作所との合弁でグローバル展開も行っている(1992年にインドネシア、2007年に中国山東省の2拠点を設立)。工場は山中にあり、24時間操業で鍛造加工ができる。

量産:建機用スプロケット 展示パネル(会社案内)

下に置いたボールペンと比べると大きさが分かる。

 

山岸鍛工

 56年企業、創業1962年(昭和37年)。工場は群馬県みどり市で、郊外にあり鍛造は夜9時まで操業という。主力は自動車部品で、自動車メーカー向けとティア1向けがあるという。8トンの大型ハンマーがあり建機にも対応する。

量産:自動車電磁クラッチプーリ― 展示パネル(会社案内)

熱間鍛造の自動ラインの様子



新潟県内の自動車部品の展示(高精密加工、旋削、ロストワックス、順送プレス)

 燕三条地区や近隣には当地で完結する各種加工の企業が集積し、自動車部品専門メーカーも多い。今回の展示会では自動車部品専門メーカーの展示はなかったが、出展企業の中から、本業以外に自動車部品も扱う会社を取材した。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
㈱佐文工業所
(新潟県新潟市)
創業1918年(大正7年)
創業100年企業

量産:ミシン部品「カマ」
量産:自動車部品

自動車部品10%

高精密切削加工・一貫生産
切削、研削、バフ、ブレージング(ろう付け)、バレル、ブラスト、
浸炭、黒染め(四三酸化鉄皮膜)
㈱カドクラ
(新潟県燕市)
ティア1

量産:商用車配管部品

商用車部品50%
その他50%

旋盤加工
NC旋盤 37台
マシニングセンター 6台
㈱カトメ
(新潟県新潟市)

二輪車ケーブルガイド

自動車部品10%

ロストワックス月産 200トン
高周波溶解炉 4基
成形機 12台
㈱野崎プレス
(新潟県三条市)

量産:ワイパーアーム

自動車部品10%

金型設備一式
順送プレス 3台
単発プレス 21台

 

自動車部品の切削加工(佐文工業所)

 100年企業、創業1918年(大正7年)。工場は新潟県新潟市。主力はミシンのボビンケースなど心臓部品。「Koban」ブランドで世界に供給している。展示品は「カマ」と呼ばれるミシン部品。毎分12,000回転で回る設備で1000分の1mmの高精度で作成され、またすべての部分が糸が絡まないように丸みを帯びたつるつるの鏡面仕上げになっている。製造設備はボビンケースを作るのに必要な工程をそろえている。このラインで作成できる自動車部品も受注しており、今回の展示会にも出展していた。織物産業の繋がりからトヨタ生産方式は1983年と35年前から導入しており、生産性も高い。

量産:加工品サンプル 自動車部品

各種加工が内製できる

高精度加工
上段:ブレージング(ろう付け)、浸炭熱処理、ブラスト処理、黒染め(四三酸化鉄皮膜)
下段:複合旋盤・M/C加工、熱処理品複合旋盤・M/C加工、バレル加工
切削→浸炭焼入→研削
量産:ミシン部品 “カマ” 展示パネル(会社案内)

精巧な組立部品

信頼の「KOBAN」ブランド

 

自動車部品の切削加工(カドクラ)

 カドクラが得意としているのは外径φ10mm~φ100mmのNC旋盤による旋削加工。商用車部品の生産が主力のティア1メーカー。自動車部品は加工時間が短いことが重要なポイントで、生産性の低いマシニングセンターなどを使用せず、生産性の高い旋盤加工で行うことが基本になっている。カドクラは、NC旋盤が37台、マシニングセンター6台を備え、生産性が高く、自動車部品の量産に適した設備を整えている。

量産:商用車配管部品 展示パネル(会社案内)

先端部はめあい部・高精度切削加工

ティア1メーカー

 

ロストワックス精密鋳造(カトメ)

 カトメはロストワックス精密鋳造の専門工場。自動車部品の生産は多くないが、工場には高周波溶解炉が4基あり、月産200トン以上と生産能力は大きい。ロストワックス法は、ワックスで製品と同じ形状を作り、周りを砂で覆い固め、ワックスを溶かしてできた空洞に金属を流し込む精密鋳造法。25mmなら±0.25mmと高い寸法精度を得ることができ、鋳肌の表面粗さも良く、機械加工できない複雑な形状も製作できる。

 カトメでは、後工程の機械加工がある場合、グループの機械加工メーカー加藤製作所と連携して完成品を供給できる。加藤製作所では、NC加工機(複合旋盤・マシニングセンター)、3次元測定機などの最先端の精密加工機・測定機をそろえ、約200基の加工機・設備があることから、機械加工の生産能力も大きい。

 自動車部品は製品にもよるがロストワックス部品はあまり多く使用されていない。自動車ティア1各社の調達部門は協力会を組織しているが、ロストワックス精密鋳造に関する専門の協力企業がないことがある。また、ロストワックスメーカーを探そうとしても近隣には意外と少なく、調達部門が商社に依頼することもある。そのようなメーカーにとって同社はよい調達先となりうる。

展示品:ロストワックス精密鋳造 展示パネル:ロストワックスの製造工程

量産:二輪車ケーブルガイド
ロストワックス品・切削加工レス
高精度±0.25mm(10~25mm)

 

自動車プレス部品(野崎プレス)

 プレス金型設計・製作、金属プレス加工、溶接、組立まで一貫した生産体制を整え、幅広い要望に応える。また燕三条地域の企業集積の特色を活かし、塗装・メッキ・樹脂成形品などの外注品をまとめて請負う商社活動もできるという。

量産:ワイパー金具 展示パネル(会社案内)

順送プレスの見本



新潟県外の自動車部品の展示(機械加工レスMIMバルブ、積層コア)

 新潟県外からも83社と多くの企業が参加していた。燕三条の企業とは別のパビリオンがあり、県外企業の集中展示となっていた。自動車部品では金属粉末射出成形(Metal Injection Molding: MIM)とモーターの積層コアの展示があった。どちらも高難度な製品であり取材した。

会社名 展示品 特徴

岩機ダイカスト工業㈱
(宮城県亘理郡山元町)
創業1968年(昭和43年)
ティア1

量産:自動車バルブ
(MIM工法)
量産:自動車ストラット
(インサートダイカスト)

自動車部品70%
金属粉末射出成形(MIM)
ダイカスト(コールド、125~650トン)25台
ダイカスト(ホット)16台
スクイズ(250~350トン)9台
億典企業股份有限公司
I-DEAN ENGINEERING CO., LTD.
(台湾・台中市)
量産:自動車モーター用積層コア 大阪のティア1メーカーに輸出

 

金属粉末射出成形・バルブ (岩機ダイカスト工業)

 岩機ダイカスト工業では全ての工程を社内で行う一貫生産体制を整え、コスト競争力を備えている。主力は自動車産業向けで、自動車メーカー向けとティア1向けがあるという。

 展示品は最新技術の金属粉末射出成形(Metal Injection Molding: MIM)によるバルブと、通常ダイカストによるインサート成形のストラット。MIMは、鉄・ステンレス系の材料を使用し、従来の加工法では困難な三次元複雑形状部品を、±0.5%(10mmの場合±0.05mm)と高精度に加工でき、熱処理も可能。昔からある粉末冶金法に樹脂などの流動するバインダを混合して射出成形できるようにした新工法。通常のダイカスト鋳造法による成形品の展示製品は、ボールベアリングを鋳込んでいる。

 このほか、シリンダーなど耐圧強度や気密性が必要な部品には、スクイズダイカスト鋳造法(高圧鋳造)が選べる。鋳巣の発生を抑え、熱処理も可能となり、その結果、高強度製品を提供することができる。岩機ダイカスト工業ではダイカスト機41台に加えて、高価なスクイズダイカスト機も9台あり、十分な生産能力を備えている。

量産:自動車バルブ(金属粉末射出成形MIM) 量産:自動車ストラット

精度は±0.5%(10mmの場合±0.05mm)
キー溝も切削加工レス

アルミダイカスト・インサート成形品
ボールベアリングがインサートされている 拡大画像
量産:自動車バルブ(金属粉末射出成形MIM) 展示パネル(会社案内)
 

 

自動車モーター用積層コア(億典企業股份有限公司)

 海外からの参加は6社と少ない中、億典企業は台湾から出展。1965年創業の積層コアの専業メーカー。2011年に新工場を建て受注拡大を目指している。材料の電磁鋼板は日本製と中国製が選べる。積層コアは薄い鉄板を重ねると渦電流による発熱を抑えることができるためモーターで使用される。自動車の電動化を背景に今後需要が伸びる。自動車向けの納入先には大阪圏のティア1メーカーもあるという。

量産:モーター用積層コア 展示パネル(会社案内)
0.1mmの薄板を積層している
拡大画像
 工場:台湾・台中市
<工程>高速連続プレス
積層:油圧カシメ、TIG溶接


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キーワード
ものづくり、燕三条ものづくりメッセ、精密加工、機械加工、鍛造、切削、旋削、プレス、射出成形、ダイカスト、鋳造、MIM、ロストワックス、積層コア

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