【ものづくり】第22回 機械要素技術展:自動車産業の課題に応える技術

軽量化マグネシウム技術、ハイドロフォーミング、バルブボディ非破壊検査機、画像検査人型ロボット

2018/06/26

要約

 第22回機械要素技術展M-Tech(会期:2018年6月20日~6月22日、会場:東京ビックサイト)はリード エグジビジョン ジャパン主催で、歯車、ベアリング、ねじ、ばねなどの機械要素や、金属、樹脂に関する加工技術を一堂に集めた専門商談会として開催された。今年は過去最多の2580社が出展した。また、最新レベルの技術動向が学べる技術シンポジウムが同時開催され、設計・開発、製造・生産技術部門を中心とした製造業関係者が多く来場し、出展企業と商談を行っていた。

 特徴としては、全国ほとんどの都道府県の工業振興会の展示ブースがあり、町工場の技術の博覧会のような様相でもある。また海外からの出展も420社あった。とくにタイ企業のブースではコモディティ化した自動車部品がずらりと並べられ、購買関係者が製品を手に取って品質の品定めをしている様子も見かけられた。海外製部品の採用拡大が感じ取れる。そういった中で自動車産業の課題に応える日本固有の技術の展示を取材した。

第22回機械要素技術展 2018
会場風景 (都道府県のブースが多い)
第22回機械要素技術展 2018
タイのブース (自動車部品が多い)



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軽量化マグネシウム技術

 自動車の軽量化は、ハイテン鋼板や、アルミニウム合金の多用、合金鋼の強度アップ等で行われているが、さらに進んだマグネシウム合金の展示がいくつかあり取材した。マグネシウムは比重1.7でアルミの2/3、鉄の1/4と軽く、強度もアルミ合金以上である。昔からレース用のホイールやブレーキなどで使用されていたが、すでに欧州では量産車に対しての採用が進んでいるようだ。日本でも一部の高級車で採用が始まっていて、高価な部品とのイメージがあるが、話を聞くと、マグネシウムの材料はアルミニウムよりも安価だという。実際にプレス溶接構成のスチール製部品に対しての置き換えでも、軽量化とコストダウンの両方を実現させたという。また、内装部品に使用する際にはメッキ処理が必要であり、表面処理加工メーカーからも話を聞くことができた。

 

<出展会社概要>

会社名 展示品 機能
ネクサス(株)
(熊本県南関町)
量産品:マグネシウム射出成形品
 フォルクスワーゲン:運転席インストパネル
 ダイムラー:運転席インストパネル
 レクサスLC500:ラゲージブラケット、パドルスイッチ
マグネシウム合金の射出成形
加飾研磨
(株)会津技研
(福島県会津若松市)
自動車ベンチレーショングリル
マグネシウム製品への三重メッキ
  表層:クロームメッキ(黒)
  第二下地:電解銅メッキ
  第一下地:化学メッキ
マグネシウムへのメッキ
鋼へのメッキ
クロームメッキ
化学ニッケルメッキ
金メッキ、錫メッキ



マグネシウム合金の射出成形 (ネクサス)

 ネクサス社が得意としているのは「チクソモールド」と呼ばれるマグネシウムの射出成形である。マグネシウム合金は半溶融状態ではシャーベット状でプラスチックと近い粘性のため、プラスチック同様の射出成形機で量産に対応できる。材料はマグネシウム90%のアルミ亜鉛添加合金。成形時間は60秒以内で樹脂よりややサイクルが遅い程度で、コストも決して高くないそうだ。さらにマグネウムは電磁遮蔽性に優れているため、装着方法によっては、電子制御ECUの金属筐体のコストダウンが可能になるかもしれない。
 展示品のパドルスイッチは研磨仕上げであった。マグネシウムは発火しやすい特性があるが、微粒子では発火しないという。

レクサスLC500
ラッゲージブラケット、パドルスイッチ (研磨加工)

マグネシウム射出成形品
フォルクスワーゲン
運転席インストパネル (裏面)

マグネシウム射出成形品

ダイムラー
運転席インストパネル

ラッゲージブラケットはスチールのプレス溶接構成からの置換品。軽量化とコストダウンを実現。 展示パネル 展示パネル 展示パネル:チクソモールド法



マグネシウム製品へのメッキ処理 (会津技研)

 会津技研が得意としているのは、マグネシウム合金へのメッキ処理といえる。
 メッキの処理で重要なのは前処理だが、マグネシウムの場合は反応性が高く、容易に腐食するため表面処理が難しく、色々とノウハウがあるという。また下地が二重メッキのため、メッキ工程は全部で三重となり、コストは高くなる。

マグネシウムへのメッキ工程
 脱脂
 ↓
 エッジング
 ↓
 活性化
 ↓
 中和
 ↓
 下地無電解メッキ
 ↓
 下地電解メッキ (展示品 銅)
 ↓
 各種メッキ (展示品 黒クロム)





ハイドロフォーミングによるコストダウン技術

 ハイドロフォーミングとはチューブの内径に高圧の油圧をかけて、外径型にプレス加工する技術で、バルジ加工ともいう。もともとは自転車の継ぎ目に使う部品に応用されている技術で、日本で生まれた技術だという。日本から自転車産業が台湾に移転し、ハイドロフォーミングの会社も少なくなってしまった。自動車部品ではラジエータまわりの部品で多く使用されるが、ビジネス規模も大きくないため、ハイドロフォーミングを得意とする会社は意外と少ない。また、その中でも簡単な部品は海外調達に移管され、さらにビジネス規模が小さくなり、難しい部品だけが日本に残っている。そのような背景から、つい最近も高い技術を持ちながら、会社の存続をあきらめた会社もあった。しかしながら、コストダウンという視点では有効な技術である。自動車部品を手掛ける2社の展示があり取材した。

 

<出展会社概要>

会社名 展示品 機能
日工産業(株)
(東京都葛飾区)
ラジエータパーツ スチール製
排気系パーツ スチール製
ミラーステイ スチール製
プレス
スウェージング
ハイドロフォーミング
武州工業(株)
(東京都青梅市)
ラジエータパーツ アルミニウム製
オイルクーラーパーツ アルミニウム製
ヒーターパーツ スチール製
マフラーパーツ ステンレスSUS304製
プレス
スウェージング
ハイドロフォーミング



ラジエータパーツ (日工産業)

 日工産業は1950年操業と歴史は古い。当初は自転車部品を手掛けていたが、自転車産業が台湾に移ってしまい、非自転車展開した結果として自動車部品を手掛けている。そういった背景から低コスト体質で、歴史に裏打ちされた技術もある。本社工場は東京都葛飾区、主力工場は福島県にある。

ラジエータパーツ スチール製

ハイドロフォーミング工法
排気系パーツ スチール製

ハイドロフォーミング工法
ミラーステイ スチール製

ハイドロフォーミング工法



ラジエータパーツ (武州工業)

 武州工業は、ハイドロフォーミングでも比較的小径のものを製作できる技術がある。油圧の原理で、細いパイプにいくら高い圧力をかけても、鋼材を変形させるほどの荷重がでないのがハイドロフォーミングの弱点でもあるが、内径8mmから16mmの加工ができるとしている。

 また、コストダウン率50%超を実現できる部品もあるが、それは大量生産品である。少量の場合は高額なハイドロフォーミング金型が償却できないため、コストダウンの対象外となる。同社ブースにはコストダウン事例の展示が多くあったので参考になる。

ラジエータパーツ アルミニウム製

プレス工法
左:コストダウン事例 (切削品→プレス工法)
右:高難度プレス加工 (板厚減少させずにフランジ出し)
オイルクーラーパーツ アルミニウム製

ハイドロフォーミング工法
左上:R2mmの直角曲げで管径は確保している
(通常プレスは管径と同じR20mmになる)
マフラーパーツ ステンレス SUS304製

細径製品
ヒーターパーツ スチール製

端部加工、曲げ、溶接





バルブボディ深孔非破壊検査機、外観画像検査人型ロボット

 自動車部品用の非破壊検査機の展示があり取材した。非破壊検査機が普及してくると、従来、始業検査や抜き取り検査であったものが全数検査に置き換わり、トレーサビリティ品質が向上する。

 

<出展会社概要>

会社名 展示品 機能
三菱商事テクノス(株)
シグマ(株)

「穴ライザー」レーザー傷検査装置
「FOCUS」統計ツール
「穴ライザーV」穴径測定機能付

非破壊非接触検査装置

深穴検査

(株)三明
(株)デグシス
「外観けんた君」
外観画像検査人型ロボット
目視検査
ピッキング
並び替え
(株)光子発生技術研究所
(滋賀県草津市)

高エネルギーX線CT分析
X線透過厚 鉄300mm、アルミ800mm
鋳物、3Dプリンター製品の内部欠陥調査

受託検査



「穴ライザー」レーザー傷検査装置+「FOCUS」統計ツール (三菱商事テクノス/シグマ)

「穴ライザー」レーザー傷検査装置

 目視検査できない深穴加工に対して、インラインで全数検査できる。保証精度は0.2mmで、キズ、鋳巣、クラック、バリ、欠け、ビビリが検査できる。検査速度は100mmが4秒と速い。原理は画像式でなく、レーザー式によりプローブ(計測端子)が1万回転を超えるスピードで回転しながら計測する。トランスミッションメーカーを中心に、250台の市場実績があるという。機械検査の場合は過剰検査になる傾向があるが、バルブボディの場合、1次検査で使用し、2次検査で人間が救済を行う。1次検査の合格率は99%程度ということで、大幅な検査工数削減、コストダウンになっているという。

「FOCUS」統計ツール

 また、計測したビックデータから統計を取り、傾向分析に活用する。トレーサビリティの向上はもちろんのこと、時系列的に検査データが蓄積されることから、傾向値や変化点が分かり、不良の予知が可能になってきている。予防保全に活用できる。

 

新商品:レーザー穴径計測装置「穴ライザーV」

 「穴ライザー」レーザー傷検査装置の機能に穴径計測、真円度計測機能を追加した新商品。

「穴ライザー」レーザー傷検査装置
「FOCUS」統計ツール
「穴ライザーV」レーザー傷検査装置
バルブボディの検査風景
バルブボディ用によく売れるので、他に「穴ライザーSPI」という専用機もある
非破壊非接触検査装置
インラインでの欠陥検査と穴径計測、真円度計測を同時に実現



「外観けんた君」
外観画像検査・人型ロボット

「外観けんた君」外観画像検査・人型ロボット (三明/デグシス)

 目が2つあり、腕の動きと手の動き、ワークの回し方など、人間と同じ操作ができ、検査作業が人間と互換できるのが特徴。見ていて違和感がない。

 製造ラインから流れてくるワークを形状に合わせてチャッキング後、ワークを回したり持ち替えたりしながら全面検査を行い、段積みや箱詰め等、お客様の仕様に合わせ並び替えも行う。ロボットハンド交換が容易なため、吸着や内径/外径チャック等、様々なチャッキングができる。手の動きは実際に人(教官)がロボットの手を取って教え込めるようで、将来はプログラム不要になるかもしれない。

<特徴>
・人との共存
・人と同じ動作

<人より優れた機能>
・目視で困難だった部分も画像検査
・安定した検査品質
・24時間稼働

<人の関与>
・教え込み (プログラミング)
  動作フローチャート、手の動き、NG判定



高エネルギーX線CT分析 (光子発生技術研究所)

 X線CT検査機を工業用に強力化し、鉄の場合は800mmの厚さも透視できる。最近は3D加工したものの内部検査の依頼が多くなってきているという。X線CT検査機は販売もしているが高価なため、受託検査を行っている。建物も1m以上の厚さのコンクリートで作られており安全性には問題ない。開発や市場回収品の調査に活用できる。

検査事例
展示パネル



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キーワード
ものづくり、軽量化、マグネシウム、アルミ、ハイドロフォーミング、射出成形、メッキ、プレス、非破壊検査、画像検査、外観検査

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