EV増加に対応する中国バッテリーメーカー
バッテリージャパン2018: BYDとCATLの基調講演より
2018/03/05
要約
2018年3月2日に東京ビッグサイトで開催された国際二次電池展(バッテリージャパン)の基調講演「開発が加速する次世代電池の最新事例」では、中国のバッテリー大手2社、BYDとCATLによるEV向けバッテリーの開発動向やリサイクル事業への取り組みに関する興味深い内容が紹介された。本稿ではその講演内容の概要を報告する。
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Smart Energy Week 2018 東京ビッグサイト入場口 |
バッテリージャパン展示会場 (主催フォトギャラリー資料) |
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BYDの持続的成長戦略
BYD Company LTD.、BYD Solar Managing Director Tom Zhao氏による講演の概要は以下のとおり。
電気自動車(EV)用のバッテリーはLFP(リン酸鉄リチウム)やNMC(ニッケル-マンガン-コバルト)が主流で、いずれもレアメタルのコバルトを使用する。中国におけるEV販売台数は2030年に45万台に達すると予測するが、コバルトの供給量はEV増加に追いつかない。EV普及とともに、EVバスと民生家電の台数も増え、2021年にはコバルトの供給がひっ迫する。コバルトの価格も高騰し、2017年には前年比で3倍となった。コバルト価格の上昇は、バッテリーパックの価格上昇につながる。
BYDでは今後もコバルトのひっ迫が深刻化するリスクに対応するため、多角的なEVバッテリー戦略を進めている。NMCバッテリーでは、コバルト配分量を減らしながらもエネルギー密度の向上を図る技術開発に取り組んでいる。バッテリーのリサイクルでは、深圳に大規模な蓄電施設を設置し、使用済バッテリーを回収して通信基地局などでエネルギーを再利用するといった活動を行っている。多様なリサイクル・リユースの取り組みにより、コバルトについては95%リサイクル可能という。
LFPバッテリーの使用も促進している。中国では現在、充電1回あたりの航続距離が400km以上のEVにインセンティブが与えられる。Zero Range Anxiety(充電の心配がなくなる距離)が400kmとされているためで、LFPバッテリーを搭載するBYDのEV「e6」はこの条件を満たしている。Daimlerとの合弁EVにもLFPを使用し、航続距離500km以上を目指す。まずはEVバスのフリート向けでLFPバッテリーの搭載が増えるだろう。蓄電施設やスカイトレインなどにもLFPを使用していく。
CATLによるEV用バッテリー開発戦略
Contemporary Amperex Technology Co., Ltd. (CATL)、Dean of Research Institute Chengdu Liang氏による講演の概要は以下のとおり。
中国のEV市場において、充電1回あたりの航続距離が400km以上のEVが占める割合は、2018年の21%から2022年には100%に達すると予測 (2019年34%、2020年57%、2021年67%)。
EV用バッテリーは、安全性・信頼性 (Safety & Reliability)を最優先に、航続距離を延ばすためのエネルギー密度の向上 (High energy density)、利便性を高める急速充電 (Fast charge capability)、競争力の高い価格 (Competitive price)のバランスが必要。CATLでは、セル、モジュール、パックの設計にコンピュータシミュレーションを用いて開発効率を50%向上した。
バッテリーの設計段階から安全性や信頼性を踏まえた上で、原子レベルでの材料、リサイクルを考慮した正しい材料を選択する。Design for X (Safety)と称するリチウムイオン電池 (LiB)サイクル寿命予測モデルでは、時間の経過と温度上昇を軸にした故障モデルのデータや、様々な条件下での走行データが用いられ、セルの熱安定性 (Cell thermal stability)、使用寿命 (Usage life)、サイクル寿命 (Cycle life)をシミュレーションする。
セル技術 (Cell technology)では、コバルトの供給不足に備えたバッテリー開発を進め、ニッケル配分量を (2017年の50%から2018年には80%以上に)増やしながら、エネルギー密度の向上を図る (2018年に10-15%アップ、2019年に5-20%アップ)。
急速充電では、15分の充電で航続距離300kmを目指す (480V、40kWhのバッテリーパック)。モジュールおよびパック技術として、ハウジング、冷却、BMS (バッテリーマネジメントシステム)の評価を行う。急速充電に対応したバッテリーは、タクシーなどのニッチな市場で活用できる。
価格については今のところ、政府の支援なしにICE (内燃機関)と競争できる状況にないが、スマート設計やインテリジェントな製造手法をもとに、技術革新を通じてコスト削減を図り、ICEと同等の競争力のある商品開発を目指す。
さらに、将来のセル技術研究 (Future cell technology research)では、硫黄やリチウム金属などの新素材、マグネシウム/亜鉛/ナトリウム/アルミ電池、燃料電池、全固体電池などの研究も進めている。全固体電池については2025年の導入を目指す。
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キーワード
EV、バッテリー、BYD、CATL、電動化、電動車、NMC、LFP、コバルト
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