デトロイトモーターショー2018:欧州メーカーの展示取材

Mercedes、BMW、VWが多様なモデルで米国市場戦略を浮き彫りに

2018/02/20

要約

Mercedes-Benz G-Classの展示

 2018年北米国際自動車ショー(NAIAS、デトロイトモーターショー)は、2018年1月14日から28日まで開催され、20日から一般公開されていた。今年は2017年をやや上回る計809,161人が来場し、来場者80万人の大台を5年連続で達成した。

 2018年デトロイトモーターショーでは、欧州のOEM各社が幅広いユーザーの様々なニーズに対応したモデルを披露した。SUV需要の増大を受けて、Mercedes-Benzのミッドサイズ・ラグジュアリーSUV、新型G-Classがそのオフロード性能を主張し、コンパクト・ラグジュアリーSUVのBMW X2ではそのドライビング・エクスペリエンスに焦点があてられた。BMWは刷新されたi8 Coupeを発表し、電動化への取り組みを改めて表明した。Mercedes-AMGは、新しい53シリーズをベースにした各種の高性能ハイブリッド車を発表した。VWは今回グローバルデビューとなったコンパクトセダンJettaで手頃な価格をアピールし、Audi A7ではその優れた快適性とテクノロジーを披露した。

 本レポートは2018年デトロイトモーターショーでの展示車両に焦点を当てた3本のレポートの第2弾で、欧州OEMのDaimler、BMW、VWの出展内容を報告する。米国OEMの展示については第1弾レポートとして掲載した。第3弾レポートではアジアOEMの展示モデルについて報告する。



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Daimler:新型G-Classを発表、AMG 53シリーズで新たなパワートレインを発表

 次世代の2019年型Mercedes-Benz G-Classは、今回のショーにおけるDaimlerのハイライトと言えるもの。プレス発表で同社が元カリフォルニア州知事の俳優Arnold Schwarzenegger氏を紹介者に起用したのも、同モデルへの意気込みを示している。メイン会場の外にもケースに収められた琥珀色のG-Classが展示され、その堅牢さや伝統がアピールされた。

2019 Mercedes-Benz G-Class ラグジュアリーSUV

 2019年型Mercedes-Benz G-Classは、同モデルが1979年に発売されて以来、初の世代交代となるもの。高いオフロード性能を持つラグジュアリーSUVとして評価を得てきたG-Classは、オリジナルの外観やスタイリングの特徴(ボクシーで無骨な外観、特徴あるドアハンドル、外付けのスペアタイヤ、プロテクティブ・ストリップなど)の多くを踏襲している。全長、全幅でそれぞれ2.1インチ(約5.3cm)、4.8インチ(約12.2cm)拡張されており、前後席が広くなった。フロントとリアのデザインもやや変更され、フェンダーがフロント部分と一体化された。

 外観とは対照的に、新型G-Classの内装には大幅な変更が施された。円形デザインがダッシュボードの共通テーマとなっていて、両サイドのベンチレーターとスピーカーは、同モデルの円形ヘッドライトに似たデザインである。ダッシュボードに組み込まれたカスタマイズ可能な12.3インチのデュアルディスプレイがオプション設定されている。触覚と音声フィードバック機能を備えたタッチパッドを通して主な車両コントロールを行う。クロームのアクセントを施されたディファレンシャル・ロックのスイッチと助手席側グラブハンドルは現行モデルを踏襲するもの。標準装備のヒーター付きシートは、オプションでマッサージと急速ヒーティングの機能が選べる。

Mercedes-Benz G-Class Mercedes-Benz G-Class 内装

 

 2019年型G-Classに搭載される4.0Lツインターボ付V8エンジンは、最高出力416hp、最大トルク450 lb-ftの性能を持ち、オフロード専用設計の9速オートマチックトランスミッションと組み合わせられる。ラダー形状のフレーム、3基の100%デフロック、オフロード用減速ギア、ダブルウィッシュボーンの独立懸架式フロントアクスルとリジッドのリアアクスルの組み合わせといった装備はすべて、オフロードでのハンドリング性能向上に貢献する。Dynamic Selectシステムは、Comfort、Sport、Individual、Eco、G-Modeの5つのドライブモードが選択でき、G-Modeを選ぶと、シャシーのダンパー調整、ステアリング、およびアクセル調整がオフロード用に最適セッティングされる。悪路走破性を示すスペックでは、最低地上高10.6インチ(約26.9cm)、渡渉深度27.6インチ(約70.1cm)の、ブレークオーバーアングル26度、デパーチャーアングル30度、アプローチアングル31度となっている。

 Mercedes-Benz G-Classは、Magna SteyrのオーストリアGraz工場で生産され、2018年6月に欧州で発売される。価格は107,040.50ユーロからの予定。米国での発売は2018年後半となる。



2019 Mercedes-AMG 53-Series

 Mercedes-AMGは2018年デトロイトモーターショーで53シリーズの3モデルを導入し、ラインナップを拡充した。展示されたモデルは、CLS-Class、E-Class Coupe、そしてE-Class Cabrioletの各バージョン。これらのモデルは、ハイブリッドパワートレインがスポーツカーの走行性能と効率性をいかに向上させるかという方向性を示している。この新たなパワートレインを持つ3モデルはすべて電子制御によってトップスピードが250km/hに制限されている。CLS 53とE 53 Cabrioletの100km/hまでの加速性能は4.5秒、E 53 Coupeは同じく4.4秒となっている。

Mercedes-AMG E 53 Cabriolet Mercedes-AMG E 53 Coupe

 

 3つのモデルのパワートレインは、電子式補助コンプレッサー、EQ Boostスターター/オルタネーターおよび48V電源システムを備えた3.0Lターボ付直6エンジンを共用している。このパワートレインは429hpの出力と384 lb-ftのトルクを車両に供給する。EQ Boostシステムは、スターターやオルタネーターとしての機能に加え、エネルギー回生、モーターによる低速時のトルク補填(load point shifting)、惰行モード、発進/停止走行時のエンジン再始動など、ハイブリッド機能のコントロールを行う。 さらに、一時的に出力21hp、トルク184 lb-ftのブーストを提供。またEQ Boostシステムからは48V電源システムに電力が供給される。

Mercedes-AMG CLS 53 Edition 1 Mercedes-AMG E 53 Cabriolet 内装

 

 53シリーズはいずれのモデルも、AMG Performance 4Matic 四輪駆動、パドルシフト付きAMG Speedshift 9速オートマチックトランスミッション、並びに5つのドライブモードを備えたDynamic Selectシステムを搭載している。3モデル共通の外観上の特徴は、ツインブレードを配した黒色格子パターンのラジエーターグリル、クロム処理のフロントスプリッター付きのエアインテークなどがある。また、クロムアクセントを配したツインテールパイプ、新設計のマッドガード、およびオプションのカーボンファイバー製スポイラーリップも3モデルに共通のもの。インテリアでは、カスタマイズ可能な12.3インチ・デュアルデジタルディスプレイを含むWidescreen Cockpitがいずれのモデルにも装着できる。

 2019年型のMercedes-AMG CLS 53、E 53 Coupe、並びにE 53 Cabrioletはすべて2018年後半の発売予定。CLS 53の生産拠点はドイツのSindelfingen工場、E 53 Coupeと E 53 CabrioletはBremen工場となる。



BMW:X2でSUV攻勢を継続、新型i8で電動化をアピール

 BMWは2018年デトロイトモーターショーにおいて2つのテーマに焦点を当てた発表を行った。2018年型BMW X2の世界初公開は、SUVを主軸とする2018年の戦略の幕開けとなるもので、年内に予定されているX4の発売と米国でのX7の生産開始へと続く。新しくなった2018年型BMW i8は、電動化へ向けた同社の継続的な取り組みを象徴するもの。

2018 BMW X2 ラグジュアリーコンパクトSUV

 デトロイトで世界初公開を果たした2018年型BMW X2は、米国に生産拠点を置くメーカーが販売するSUVの中では最小であり、機能性と高品質なドライビングエクスペリエンスを求める都市のユーザーをそのターゲットとしている。X2のホイールベースはX1と共通の105.1インチ (約267.0cm)だが、全高が2.8インチ (約7.1cm)、全長が3.21インチ (約8.2cm)短く、それぞれ60.1インチ (約152.7cm)と172.2インチ (約437.4cm)となり、伸長されたルーフラインと相まって、より滑らかな外観印象を与えるプロポーションとなっている。一方でX2は伝統のキドニーグリルの台形を底面が長くなるように逆転させ、CピラーにBMWのバッジを付けることで、従来のBMWデザインとの違いを持たせている。

BMW X2 BMW X2 エンジンルーム

 

BMW X2 内装

 2018年3月に米国で発売されるX2は、最高出力228hp、最大トルク258 lb-ftの2.0Lターボチャージャー付直4エンジンを搭載する全輪駆動車のみとなっている。標準の8速オートマチックトランスミッションとの組み合わせで、0-60mph加速は6.3秒となる。共通のエンジンとトランスミッションを搭載するX2の後輪駆動バージョンは数カ月遅れて発売される予定。またM Sport Xパッケージが追加設定され、これには低車高にセッティングされたサスペンション、調整を施されたトランスミッション、パドルシフトと大径ホイールなど、さらにパフォーマンスを向上させる機能や装備が与えられている。

 室内のディスプレイとインストルメントパネルは、人間工学的な視点でドライバーの利便性に配慮したレイアウトになっている。 発泡材を用いたインストルメントパネルはステッチが施され、視覚的にも優れ、快適な印象を与える。 他のXモデルと同様に、X2は高めの着座位置となっている。トランクの容量は470Lで、幅広い積載ニーズに対応する利便性を提供する。 BMW ConnectedとBMW ConnectedDriveの両方のサービスを利用することができる。安全機能には、車線逸脱警告、衝突警告、ハイビームアシスタント、アクティブクルーズコントロール、トラフィックジャム(交通渋滞)アシストなどが含まれる。

 2018年型BMW X2は、BMWグループのドイツRegensburgで生産され、米国では2018年3月に38,400ドルからの基本価格で発売される予定。



2019 BMW i8 クーペ

 BMWは2017年ロサンゼルスオートショーでi8 Roadsterを発表し、今回のデトロイトでは、リフレッシュされたi8 Coupeを出展した。i8 Coupeはi8 Roadsterでの改良を反映しているが、特筆すべきはバッテリーの性能アップである。新型i8 Coupeのバッテリー容量は7.1kWhから11.6kWhにアップグレードされ、電気モーターの出力は141馬力に、12馬力増強された。1.5Lターボチャージャー付3気筒エンジンとの組み合わせで、このパワートレインは合計369hpの出力と420 lb-ftのトルクを発揮する。バッテリー単独での航続距離も、15マイル(約24km)から暫定推定値18マイル(約29km)へ改善されている。

BMW i8 Coupe BMW i8 Coupe 内装

 

 パワートレインのアップグレードに加え、新型i8 Coupeにはいくつかのデザイン変更が施されている。20インチホイールがオプション設定され、またCピラーに付けられたCoupeバッジはi8 Roadsterとの外観差別化の要素となっている。インテリアの標準装備には、スポーツステアリングホイール、多機能インストルメントディスプレイ、フルレザー仕様の内装などがある。カーボントリムとセラミックのアクセントが、インテリアをよりスタイリッシュにするオプションとして用意される。また、シフトポイントを示すライト付きのヘッドアップディスプレイも選択可能。

 2019年型 BMW i8 Coupeは2018年5月の発売予定で、BMWのドイツLeipzig工場での生産となる。



VW:JettaとAudi A7で人気復活を図る

 近年のデトロイトモーターショーでVWはユーティリティビークルとコンセプトカーに重点を置いてきたが、今回はより小型の量販車に焦点を当てていた。コンパクトセダン2019年型VW Jettaは、人気モデルである同セダンの次世代型のグローバルデビューとなる。2019年型Audi A7 Sportbackも今回のショーで新テクノロジーを装備して米国デビューを果たした。VWはまた、ブランドの信頼性を強化すべく、6年/72,000マイルの保証プログラムを導入することも表明した。

2019 Volkswagen Jetta コンパクトセダン

 VW Jettaは、発売以来1,700万台以上が販売された世界で最も成功したセダンのひとつ。今回の次世代2019年型Jettaの世界初公開ではMQBプラットフォームの採用がハイライトされた。この新たなアーキテクチャにより、Jettaのホイールベースは現行から1.3インチ(約3.3cm)伸び、105.7インチ(約268.5cm)となった。全長、全幅、全高とも増加し、室内空間もより余裕あるものとなった。ショートオーバーハング、大型のフロントグリル、シャープなライン、傾斜したルーフラインなどにより、Jettaの外観は全体的にスポーティなクーペ風になっている。

 2019年型Jettaは1.4Lターボチャージャー付直4直噴エンジンを搭載し、コンパクトセダンクラスでトップの147hpの出力と184 lb-ftのトルクを発揮する。標準の6速マニュアルトランスミッション、またはオプションの8速オートマチックトランスミッションとの組み合わせを選ぶことができる。AT車には燃費を向上させるスタート/ストップシステムが付く。2019年型Jettaはすべて前輪駆動。

Volkswagen Jetta Volkswagen Jetta 内装

 

 Jettaのインテリアには、高品質のソフトタッチ素材が用いられ、ファブリック色、シートデザイン、ドアトリムが新しくなった。 ヒーター付きベンチレーテッドフロントシートとデュアルゾーンの空調システムにより、快適性が向上。上級グレードには、好みに応じた設定が可能なVolkswagen Digital Cockpitディスプレイが付く。ドライバー・パーソナライゼーション・システムではカスタマイズされた様々な設定を保存することができる。ドライバー支援機能として、前方衝突警告および自動緊急ブレーキ、後方警報付きの死角モニター、アダプティブ・クルーズコントロール、ハイビームコントロール、および車線逸脱警告などが利用できる。

 2019年型のVolkswagen Jettaは18,545ドルからの価格設定で、2018年第2四半期の発売予定。 VWのメキシコPuebla工場で生産される。



2019 Audi A7 Sportback クーペ

 第2世代となる2019年型Audi A7の今回の米国デビューでは、そのテクノロジーと快適性が重要な訴求ポイントとなった。A7の外観では広いボディパネル、彫り込まれたライン、および傾斜したルーフラインが動的な感覚を与える。長いフードとホイールベース、短いオーバーハングは身構えるアスリートを思わせる。A7のヘッドランプは12個のライティング・セグメントを持ち、テールランプは13個のセグメントから成るライトストリップ。各セグメントは個別に操作が可能で、簡単なアニメーションを表示することができる。

Audi A7

 A7発売時に搭載される3.0LのV6 TFSIエンジンは、最高出力335hpと最大トルク369 lb-ftを発揮し、Sトロニック 7速デュアルクラッチトランスミッションと組み合わせられる。さらにこのパワートレインには、効率向上のための48V電源システムを備えたマイルドハイブリッドシステムも装備されている。他のパワートレインオプションが発売後に追加される予定。A7では全輪駆動が標準となっており、車両の速度に応じて操舵比を最適化するダイナミック全輪操舵システムを特徴としている。これは、フロントアクスルの波動ギア(strain wave gearing)とリアアクスルのスピンドルドライブによって実現されたもの。

 インテリアに目を移すと、A7は近年A8に搭載されデビューしたものと同じインフォテインメントシステムが装備されている。MMIタッチレスポンスシステムの採用で、従来のダイヤルとボタンに取って替わるクリーンですっきりしたデザインとなっており、2つのタッチスクリーンは触覚と音声でのフィードバックが得られる。 Audi A7は39のドライバー補助システムを搭載しており、これらは3種類のパッケージに分けられている。これにはAudi AIリモートパーキングパイロット、燃費効率アシスタント、およびアダプティブ・クルーズコントロールが含まれる。これらのシステムをサポートするために、A7には5個のレーダーセンサー、5個のカメラ、12個の超音波スキャナー、1台のレーザースキャナーが装備されている。

 2019年型Audi A7はドイツNeckarsulm工場で生産され、2018年内に米国で発売される予定。



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NAIAS2018、デトロイト、モーターショー、メルセデス、ベンツ、Mercedes-Benz、BMW、VW

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