RDE(実路走行排気)試験の導入状況

リアルワールドの空質改善状況

2016/08/01

要約

(PEMS=車載式排出ガス分析計:2016人とくるまのテクノロジー展)
(PEMS=車載式排出ガス分析計:2016人とくるまのテクノロジー展 横浜)

 VWのディーゼル排気問題から欧州ではRDE試験(Real Driving Emission=実路走行排気)導入が決定している。車両にPEMS(=Portable Emissions Measurement System=車載式排出ガス分析計)を取付け外気温度や走行モードを決め、認証試験値との倍率を規制する。2017年の9月1日(新型車)より、NOx(窒素酸化物)はディーゼル・ガソリン車共に認証試験値の2.1倍以下に規制される。さらに2020年1月1日には1.5倍に強化される。

 日本でも国土交通省がディーゼル乗用車等検査方法を研究中で2017年春を目標に試験法の見直し検討が進んでいる。米国は台上排気認証試験モードを4種類もっている。使用過程車のサ-ベイランス制度も整備されており、必要に応じRDE試験で補完する模様である。本レポートでは人とくるまのテクノロジー展2016 横浜のセミナー「リアルワールドでの空質改善に対する自動車影響を考える」の内容を中心にRDE試験の導入状況とその背景をまとめた。


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欧州のRDE規制:2017年9月から導入

東南アジア3カ国での両社シェア
(国土交通省・環境省 欧州・米国における検査方法見直し資料からMarkLines作成)

 上表は欧州におけるRDE規制(NOx値)を表にまとめたものである。RDEのCF値(適合係数)は認証試験EUR6cの2.1が実走行時には許容される。(実走行の方が、EURO6の認証試験の走行条件よりも排出ガスが多く出る為)

 新型車が2017年9月1日(継続生産車は2019年9月1日)から規制が始まる。さらに2020年1月1日(継続生産車は2021年1月1日)にはCF値1.5に強化される予定である。ディーゼル車だけでなく、ガソリン車も規制される。実際の路上走行は下図パターンを走行し常時、排出ガスの濃度を測定しながら走行試験が実施される。トリップ全体かつ市街地単独で規制値の倍率以内でなければならない。



東南アジア3カ国での両社シェア
(国土交通省・環境省 欧州・米国における検査方法見直し資料からMarkLines作成)


米国のRDE規制:必要に応じて実施

 米国における通常の新車台上認証試験として現在下記の4種試験が実施されている。

1)FTPモード:市街地走行における常温時と低温時(-7℃)の環境下の排出ガス測定
2)US06モード:高速・高加速時の排出ガス測定
3)SC03モード:エアコン作動時の排出ガス測定
4)高地試験:高度1300m条件下での排出ガス測定

 今後の新車認証試験の動向として

●VWの排出ガス不正事案を受け、認証の際に、当局が必要に応じ追加で台上試験 及び路上走行試験(RDE)を実施
●自動車メーカーによる事前対策を防ぐことを目的に試験方法は非公表となっている。



サーベイランス制度

 また米国では使用過程車の排気性能をチェックする為、サーベイランス制度が実施されている。下記にEPA、CARBが設定しているサーベイランス制度の内容を記す。

EPA(米国環境保護庁)

試験実施者 自動車メーカー
抜き取り車両台数 ①走行距離10000マイル以上の車両
(当該モデル年の終了後1年以内)
・2台(販売台数:~50000台/年)
・3台(販売台数:~250000台/年)
・4台(販売台数:250000台~/年)
②走行距離50000マイル以上の車両
(当該モデル年の終了後4年~5年以内)
・4台(販売台数:~50000台/年)
・5台(販売台数:~250000台/年)
・6台(販売台数:250000台~/年)
試験項目 FTPモード、 US06モード
合格基準 排出ガス基準値x1.3を平均で超えないか又は超えた車両の台数が全体の50%未満であること
*この他、EPAが自らサーベイランスを行う。1モデルあたり3台の試験を行い、そのうち基準値を満たさないものがあれば、追加で2台の試験を行う。(年間140~150台実施)



CARB(加州大気資源局)

試験実施者 自動車メーカー
抜き取り車両台数 ①走行距離10000マイル以上の車両
(当該モデル年の終了後1年以内)
・2台(販売台数:4500~15000台/年)
・3台(販売台数:~25000台/年)
・4台(販売台数:25000台~/年)
②走行距離50000マイル以上の車両
(当該モデル年の終了後4年~5年以内)
・4台(販売台数:4500~15000台/年)
・5台(販売台数:~25000台/年)
・6台(販売台数:25000台~/年)
試験項目 LA#4モード、 US06モード
合格基準 排出ガス基準値x1.3を平均で超えないか又は超えた車両の台数が全体の50%未満であること
*この他、CARBや試験機関がサーベイランスを行う。10台の同一エンジンファミリー、テストグループの加州登録車について試験を行い、排出ガス関連の同一部品の故障が2つ以下で、かつ、測定結果の平均値が基準値以下であることを確認する。
(国土交通省・環境省 欧州・米国における検査方法見直し資料からMarkLines作成)

 したがって米国ではあくまで現認証制度の中で、テスト結果に疑義が生じた時に補完的にRDEでチェックを行う方向だと思われる。



日本のRDE規制:2017年4月決定予定

 日本ではRDE試験導入については「排出ガス不正事案を受けたディーゼル乗用車等検査方法見直し検討会」を基に運輸当局が規制の方向を決める予定で作業が進んでいる。

 中環審(環境省中央環境審議会) 第11次答申(報告)でPEMSを検討中であるとの報告がなされ、 第12次答申(2015年2月報告)で「PEMS適用可能性を含めて検討を進めることが適当」との報告がなされている。ただJARI(Japan Automobile Research Institute=一般財団法人日本自動車研究所)によると実務上の課題として、PEMS装置の車両への搭載性、計器の計測精度、排気試験のルート選定、試験の条件、試験するユーザー車の保護、法規・法令(道路交通法、保安基準、高圧ガス保安法)対応などが必要となる。規制の方向性は2017年4月には決まる予定で検討が進められている。

東南アジア3カ国での両社シェア
(2016.5.26自技会フォーラムJARI相馬氏資料よりMarkLines作成)



ディーゼル乗用車の少ない日本で何故RDE導入するのか

 日本では市販ディーゼル乗用車に欧州、米国で判明した種類の排気性能を認証試験時と40倍乖離させる程不正に制御するソフトウエアーの存在は確認されていない。しかしながら、不正と別問題である路上走行排気値と認証試験値の乖離(スリップ率=走行条件の差)問題は万国共通に実在する。そのスリップ率を収集・把握しRDEを実施するには時間が必要である。排気試験モードがJC08から2018年にWLTC(国際協調モード)に変更される中、RDEの位置付けを不正ソフトの発見ツールと割り切って実施するか、実走行時のスリップ率を規制する為に導入するか、2017年4月に方向性が明確となる。



日本の大気空質状況:オゾンとPM2.5が環境基準値オーバー

 人とくるまのテクノロジー展2016 横浜のセミナー「リアルワールドでの空質改善に対する自動車影響を考える」において現在の日本の大気汚染の状況報告がなされたので紹介する。

 下記は日本の大気環境常時測定局(一般局と自動車排気局)での2014年3月時点の大気環境基準の達成率を示す。日本での喫緊の課題は数の少ないディーゼル車からのNOxよりもPM2.5とオゾンの環境基準値の未達が課題であることがわかる。

大気環境基準の達成率

一般環境大気測定局 自動車排出ガス測定局
SO2 99.7 100
CO 100 100
SPM * 97.3 94.7
NO2 100 99
PM2.5 16.1 13.3
Ox(オゾン等) 0.4 0
*Suspended Particulate Matter:浮遊粒子状物質
(2016.5.26自技会フォーラムJARI森川氏資料よりMarkLines作成)

PM2.5

 PM(=Particulate Matter=粒子状物質)は粒子径の範囲で分類される。スギ花粉が約30μm、黄砂4μm、ガソリン車等が排出するPMの粒子径は0.005~0.2μmである。

 PM2.5は粒子径が2.5μm以下の粒子でスギ花粉より細かく、体内の奥に入りやすく、ぜんそく、気管支炎を誘発する。日本では環境規制値の未達が散見され、その発生源と発生のメカニズムが研究されている。PM2.5の成分は大気中に排出された一次粒子と大気中のVOC(Volatile Organic Compounds=揮発性有機化合物)やNH3(アンモニア)成分から生成されたイオン成分が混ざり合ったものである。

(2016.5.26自技会フォーラムJARI森川氏、本田相川氏資料を元にMarkLines作成)
(2016.5.26自技会フォーラムJARI森川氏、本田相川氏資料を元にMarkLines作成)
(2016.5.26自技会フォーラムJARI森川氏、本田相川氏資料を元にMarkLines作成)

 PM2.5の発生源を豊田中研で測定したデータがある。2012年の学会発表資料であるが、豊田中研が位置する中京圏、長久手圏内からと、日本国外からの長距離輸送分に硫酸イオンを分けて測定し識別した。5月終りから6月にかけ、長距離輸送分が多く観測されている。

 またJATOP(Japan-Auto-Oil program)研究資料によると2000年から2012年で自動車からのPM2.5は大幅に減少している。製造業、船舶、農業、巻き上げやタイヤの粉塵起因のPM2.5も減らす必要がある。

(GVC搭載車と通常車両の比較) (G-Vectoring Controlのコンセプト)
(2016.5.26自技会フォーラムJARI森川氏資料を元にMarkLines作成)

オゾン

(GVC搭載車と通常車両の比較) (G-Vectoring Controlのコンセプト)
(2016.5.26自技会フォーラム日産自動車岡山氏、JARI森川氏資料)

 オゾン等のOx(酸化オキシダント=上グラフの赤の線)はNOxとVOCの混合ガスに太陽光があたり生成される。所謂光化学スモッグと呼ばれるものであるが、その生成原因の一つは自動車等の移動発生源から排出されるNOxと、NMHC(Non-methane HC=非メタン炭化水素=VOC)が2000年以降低下してきたにも関わらず、Oxは低減していない。これは自動車(移動排出源)からのNOxやNMHCが減っても、その他工場・事業所等の固定排出源から発生するVOCも減らす必要があるという事を示唆する。

自動車への更なる対策:タイヤ、ブレーキからの粉塵も低減を研究

排出ガス規制の他にも、自動車からの排出物質の排出実態の把握と低減方策が研究されている。

1) 燃料蒸発ガス:VOC
2) ブレーキ粉塵:PM
3) タイヤ粉塵:PM

(2016.5.26自技会フォーラム日産自動車岡山氏資料) (2016.5.26自技会フォーラム日産自動車岡山氏資料)
(2016.5.26自技会フォーラム日産自動車岡山氏資料)

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>