中南米の日系部品メーカー(下):メキシコでの生産能力増強とブラジルでの動向

河西工業、鬼怒川ゴム、ジヤトコ、タチエス、デンソー、エフテック、KYBなど

2014/02/27

要 約

本レポートは、中南米における日系部品メーカーの動向レポートの後編。メキシコにおける生産能力向上などの動向、ブラジルにおける動向についてまとめた(収録対象は、2014年2月上旬までの約9カ月間)。メキシコにおける新規進出の動向についてまとめた前編でこちら

ブラジルの、2013年の自動車生産台数は371万台(前年比9.1%増)、販売台数が377万台(同0.1%増)、輸出台数が56万台(同26.5%増)であった。2014年1月は、生産台数が29万台(前年同月比18.7%減)。販売台数は31万台で同0.4%増だが、輸出台数がアルゼンチンのブラジル製品輸入規制の影響から同28.9%減の3.6万台となり、各社は過剰在庫の調整を行っている(アルゼンチン政府は外貨流出を防ぐために、自動車の輸入台数を2013年は27.5%削減すると2012年末に発表)。しかし、米欧メーカーの多くは生産能力の増強、日本メーカーもトヨタ、日産が工場を新設し新モデルの投入を進めている。

日系部品メーカーでも市場拡大を見込み、新規進出、生産能力拡充の動きが見られた。

[メキシコでの生産能力拡充・事業体制強化]
既存工場の設備増強 鬼怒川ゴム、日本精機、日立化成、ユニプレス、リョービなど
新会社・工場等の増設 新会社設立:ブリヂストン、タチエス
第2工場建設:エクセディ、河西工業、ジヤトコ、タチエス
第3工場建設:デンソー、
第4工場建設:ミツバ
新たな事業拠点設立 R&D拠点:河西工業(計画)、生産体制再編:日立金属(計画)、販売会社:東洋ゴム

[ブラジルでの新たな事業展開]

新会社(新工場)設立 旭硝子、住友ゴム、西川ゴム、古河電工
生産能力増強 KYB、東洋紡(新たに工場建設)、日清紡(新工場へ移転)、ブリヂストン

日系部品メーカー動向関連レポート:
中南米の日系サプライヤー(上):米州をカバーする工場をメキシコに新設 (2014年2月)
タイ編(上) (2014年1月)
タイ編(下) (2014年1月)ASEAN編 (2013 年11月)欧州編 (2013年10月)インド編 (2013年8月)
中国 (華北/東北/西南地域) 編 (2013年8月)
中国 (華南/華中地域) 編 (2013年7月)中国 (華東地域) 編 (2013年6月)
米国編 (2013年7月)メキシコ・ブラジル編 (2013年5月)



メキシコ グアナファト(Guanajuato)州、ケレタロ(Queretaro)州での生産能力増強など

会社名 活動内容
河西工業

第2工場を2013年12月に立ち上げて内装部品増産へ、研究開発センター設置も

河西工業は、Kasai Mexicana, S. A. de C .V(Guanajuato州)の第2工場を2013年12月末に立ち上げた。投資額は約27億円。2014年度にフル稼働させ、自動車用内装部品を増産し、メキシコでの日産の増産計画に対応する。また、米国での大型車生産増加への対応も図る。また、同社は2014年度にメキシコで研究開発拠点を設け、顧客近くで試作や実験などを手掛ける計画。
鬼怒川ゴム

車体シールの増産、防振部品、ホースも生産開始へ

鬼怒川ゴムは、マツダがメキシコで生産開始する新型「アクセラ」向けの車体シールを初受注し、2014年1月からKinugawa Mexico, S. A. de C .V(Guanajuato州)で生産・納入を開始した。同部品の生産能力を順次拡張するほか、防振部品やホースの生産も2014年5月から開始予定。ホンダなど、主要取引先の日産以外への納入先を広げる方針。
デンソー

第3工場が13年10月稼働、さらに追加投資で事業拡大

デンソーは、約56億円を投じたDenso Mexico, S. A. de C .Vの第3工場(Guanajuato州)が2013年10月に稼働し、カーエアコンを生産開始。2014年1月からは、ラジエーター、各種ウオッシャーシステムも生産。これらはGM、フォード、ホンダなどが納入先。
さらに、約51億円を追加投資して同工場を拡張する。トヨタ、フォード、クライスラーなどから新たにオルタネータ―を受注したためで、新建屋や生産ラインを用意する。生産開始は2014年10月の予定。
東洋ゴム

防振ゴムの現地販売会社を2013年10月に設立

東洋ゴムは、2013年10月に自動車用防振ゴムの販売会社TOYO AUTOMOTIVE PARTS DE MEXICO, S.A. DE C.V. (Guanajuato州)を設立し、2014年1月から営業開始。資本金は約3,000万円。同社の自動車部品事業のグローバル成長・拡大計画の一環。売上高は2016年度に約10億円を目指す。
日立金属

旧日立電線の現地工場で、日立金属の自動車関連部品生産を検討

日立金属は、2013年7月に合併した旧日立電線の海外生産体制を再編する。メキシコでは旧日立電線の子会社HC Queretaro, S.A. de C.V.(Queretaro州)でブレーキホースやABSセンサーなどを生産しているが、日立金属の自動車関連部品の生産も検討する。資産を有効活用して投資を抑制しつつ、供給体制を強化する。
ブリヂストン

自動車シート用ウレタンフォーム工場を新設、2015年に量産開始

ブリヂストンは、2013年7月にBridgestone Automotive Products de Mexico S.A. de C.V.(Guanajuato州)を設立。設備投資総額約14億円で新工場を建設し、2015年上期に自動車シート用ウレタンフォームの量産を開始予定。年産能力は最大で乗用車36万台分。メキシコでの現地供給ニーズに対応。
ミツバ

自動車用モーターの新工場設立、2014年秋までに稼働

ミツバは、Corporation Mitsuba de Mexico, S. A. de C.Vの4番目のSilao工場(Guanajuato州)を2013年3月に設立。投資額は約20億円。2014年秋までに稼働させ、フロントワイパーシステム、四輪用スターターモーターなどを生産し、大半をメキシコ国内向けに供給。これに伴い、モーターの部品を製造するフィリピンの工場も生産能力を増強し、メキシコでの生産拡大に備える。
リョービ

ダイカストの生産能力増強

リョービは2013年5月、RDCM, S. de R.L. de C.V.(Guanajuato州)のダイカストの生産能力を現状比40%増強すると発表。20億円を投じて2,500トンの鋳造機を3台増設し、2014年6月稼働を計画。同工場では、トランスミッションケース、コンバーターハウジングを生産しており、受注増に対応する。

 



メキシコ アグアスカリエンテス(Aguascalientes)州への生産能力増強など

 

会社名 活動内容
エクセディ

第2工場でトルクコンバーター、MTクラッチの生産を2014年2月に開始

エクセディは、EXEDY DYNAX MEXICO, S.A. DE C.V. (Aguascalientes州)で大型工場の建設を計画。敷地面積13万平方メートルに第1期工事として3.1万平方メートルの建屋を2013年9月末に完成。2012年から賃貸工場で組立生産していたATやCVT部品のトルクコンバーターの量産(年90万個)を2014年2月から開始。加えて、新たに受注したMTクラッチの組立生産も開始。将来はプレス機などを導入し、MTクラッチの構成部品も内製化する計画。
ジヤトコ

新設の第2工場でCVTを2014年夏から生産

ジヤトコは、JATCO Mexico, S.A. de C.V.(Aguascalientes州)の第2工場を2014年夏から生産開始する。年産能力は約40万台。最新型の「CVT8」を日産ほかに供給する。第2工場は、敷地の3分の1しかまだ使用していない。なお、2016年からダイムラーからのライセンス供給を受けたATも生産する予定と発表していたが、日産の方針変更でこの件は無くなった模様。
タチエス

新たなトリムカバー工場、シートフレーム工場を建設

タチエスは、INDUSTRIA DE ASSIENTO SUPERIOR, S.A. De.C.V(INSA;Aguascalientes州)のトリムカバー第2工場が2013年10月に生産開始。生産規模は、2016年度に73万台の計画。トリムカバーは、同州にあるINSAの第2シート工場に送られ、組み立てられる。完成品は日系メーカーのメキシコ工場に供給。
また、2014年9月にはFUJIKIKO TACHI-S MEXICO(Aguascalientes州)のシートフレームと機構部品の工場も生産開始予定。
ユニプレス

ホンダに車体骨格部品を2013年度から納入

日産系のユニプレスは、Unipres Mexicana, S.A de C.V.(Aguascalientes州)が、ホンダから「フィット」のアッパーボディの骨格部品を新たに受注し、2013年度から納入。2014年度には納入が増加し、メキシコでの売上高はホンダ向け全体の4分の1に当たる20億円規模に拡大する。この他、マツダ「アクセラ」の部品も受注。(2013年5月報道)

 



メキシコ 米国との国境沿いの州などでの動向

 

会社名 活動内容
上板塑性

冷間鍛造部品の供給量拡大へ

上板塑性は、KAMIMEX S.A. DE C.V.(Baja California州)で2014年9月に設備を追加導入し、現地一次サプライヤー向けのエンジン関連の歯車、ソレノイド部品、防振ゴムの金具などの冷間鍛造部品の供給量を増やす。年間売上高を2014年見込みの600万ドルから2015年に1,000万ドルに伸ばす計画。2016年以降も需要がさらに増加するようであれば、第2工場の建設も視野に入れている。
日本精機

新たに四輪用計器の完成品を生産開始

日本精機は、Nippon Seiki De Mexico S.A. De C.V.V(Nuevo Leon州)で、四輪用計器に組み込む基板を集中生産し、米国工場で完成品に組み立て、メキシコにも供給していた。しかし、取引先の日系自動車メーカーのメキシコ現地生産拡大に対応して、2013年中に新たに完成品も組み立てる一貫体制を整える。これにより、北米での四輪用計器の生産を従来の250万台から500万台に拡大していく。
日本精工

メキシコを電動パワーステアリング工場の候補の一つに

日本精工は、中南米地域に電動パワーステアリング工場を新設する。メキシコとブラジルに絞り検討し、2014年中に決定する。2016年に生産開始する方針。(2014年1月報道)
日立化成

2014年にブレーキ摩擦材の生産能力増強、粉末冶金の製造開始

日立化成は、Hitachi Chemical Mexico, S.A. de C.V.(Nuevo Leon州)のブレーキ用摩擦材料の生産能力増強を当初計画の2015年から早ければ2014年夏に前倒しする。2011年5月の報道では、北米での年産能力は2012年8月までにそれまでの500万個から1000万個に、2015年までに1500万個に増強。また、2014年秋に同工場で新たに粉末冶金製品を生産開始する。米国工場でも同時期に粉末冶金製品の生産能力を増強し、北米全体の年産能力を倍増させる。

 



ブラジル 新生産拠点の構築、生産能力増強

 

会社名 活動内容
旭硝子

自動車用などのガラスの商業生産を2013年10月開始

旭硝子は、AGC Vidros do Brasil(Sao Paulo州)でミラー・自動車用ガラス、建築用ガラスの商業生産を2013年10月に開始。新工場への投資額は約400億円。2016年の年産能力は、自動車用ガラスが50万台分を計画。
エフテック

現地生産を行う場合は現地企業との提携で

エフテックは、現地企業に技術援助を行っているが、今後、現地生産するとしても、現地企業との提携を探るとしている。独自に新規で工場を建設するには、一定の生産量の確保が必要なため。(2013年9月報道)
KYB

ショックアブソーバーの生産能力を増強

KYBは、KYB-Mando do Brasil Fabricante de Autopecas S.A.(Parana州)で2015年度に市販品ショックアブソーバーの生産ラインを2013年度比2倍の年100万本に増強する。また、2013年12月から現代自動車向けにショックアブソーバーを生産し、供給を開始。
住友ゴム

乗用車用ラジアルタイヤ工場が2013年10月稼働

住友ゴム工業は、Sumitomo Rubber do Brasil Ltda.(Parana州)の自動車用ラジアルタイヤ工場が2013年10月に稼働。総投資額約353億円。同社の中南米初のタイヤ生産拠点。生産量は、2013年末の日量約2,000本から2015年末には日量1万5000本に拡大させる。当初計画を1年前倒しする増産。納入先は日系自動車メーカーのほか、欧州メーカーにもアプローチする計画。
東洋紡

自動車部品用の高機能樹脂事業を新たに展開

東洋紡は、TOYOBO DO BRASIL PARTICIPACOES LTDAのAmericana工場(Sao Paulo州)内にエンジニアリングプラスチック製造の新工場を建設し、2014年8月に生産開始予定。投資額は約10億円。年産能力は約5000トン。現地の自動車部品メーカーに供給する。なお、同工場では、様々なニーズに対応する受託コンパウンド事業も進める計画。
西川ゴム

自動車用ゴムなど生産の合弁会社設立

西川ゴムは2013年8月、ウェザーストリップ類などの自動車用ゴム・樹脂製品を生産する合弁会社(社名未定。Sao Paulo州)を米Cooper Standard Automotive, Inc.(CSA)と2013年12月(予定)に設立すると発表。資本金は830万ドル。出資比率はCSA60%、Nishikawa of America, Inc.40%。工場は2014年上期に生産開始予定。当面、製品はトヨタ、ホンダ向けに供給し、その後フィアット向けも始める。2014年12月期に約18億円の売上高を目指す。
日清紡

自動車用ブレーキ摩擦材工場の移転、拡充

日清紡HDは2013年11月、連結子会社のTMD Friction do Brazil S.A.(Sao Paulo州)を2016年末までに約15キロ南西の新立地に移転すると発表。新工場の延べ床面積は既存工場の1.5倍。生産能力は2016年に2013年の2倍に拡大。投資額は約60億円。輸入関税免除のために現地調達比率を高めている日米欧自動車メーカーからの引き合いに対応する。
ブリヂストン

ラジアルタイヤ工場の生産能力増強

ブリヂストンは、Bridgestone do Brasil Industria e Comercio Ltda.(Sao Paulo州)の乗用車用ラジアルタイヤ及び小型トラック用ラジアルタイヤ工場(Bahia州)の生産能力を、2015年下期までに日産約2,800本増強し、2013年比1.4倍の日産約10,100本とする見込み。総投資額は約65億円を予定。中南米市場での中長期的なタイヤ需要増を見込むもの。
古河電工

エアバッグ部品の生産へ

古河電工は、エアバッグ部品のステアリングコネクターの組立生産を2014年後半から開始する。工場は、グループの既存拠点を活用する計画。年産能力は60万個からスタートし、順次能力拡大と構成部品の現地での内製化を進める。ブラジル政府が2014年度までに新車へのエアバッグ搭載率を100%に引き上げる動きに対応。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>