ITS:交通情報提供システムの普及と運転支援システムの実用化

~自動運転の実用化への取り組み開始~

2013/04/26

要 約

 ITS(高度道路交通システム:Intelligent Transport Systems)とは、情報通信技術を交通分野に活用し、道路交通の諸課題を解決する取り組みの総称であり、1980年代に交通事故の減少と渋滞の軽減が主目的で、日米欧にて開発が始まった。

 日本におけるITS技術は、AHS(Advanced cruise-assist Highway System)や新交通管理システムの開発、交通情報の収集・活用の仕組みの構築などが、それぞれ専門組織が設立されて進められ、官民学が一体となった推進体制として、NPO法人ITS Japanが活動している。

 現在、ナビゲーションシステムの累積出荷台数5,428万台以上、VICS(Vehicle Information and Communication System)車載器累積出荷台数3,653万台以上(共に2012年12月末)、ETCセットアップ件数5,314万件以上、利用率88.5%(共に2013年3月)であり、ITSの実用化に関して世界のトップレベルにいる(国土交通省のHP公表データより)。

 近年は、ITSの導入目的が当初の「安全」だけでなく「地球温暖化対応」などに拡大され、ITSスポットやDSSSなどに見られるように、システム開発内容も情報提供機能に加えて車両制御にまで踏み込んだ安全運転支援システム、さらにはトラックの隊列走行による省燃費効果を狙った自動運転システムにまでITSへの取り組み内容が拡大してきている。

 本レポートは、ITS Japanが提示している「新たなモビリティ社会のイメージ(下図参照)」に示されている各種取り組み内容の調査と、多くの自動運転プロジェクトに関わってこられた津川定之名城大学教授へのインタビュー内容を参考にし、ITSスポットなどのインフラ投資による情報提供サービスの拡大の様子やインフラ情報を使った安全運転支援技術拡大の状況を紹介するとともに、車載センサーを主体とした自律型の運転支援技術および自動運転への取り組み状況など、現在のITS技術の実用化への取り組み状況を整理した。

 また、EU第7次フレームワークプログラムの一環として、EU委員会の研究開発支援を受けて日本よりも活発な技術開発を行っている欧州と、DOTによるインフラ協調型システムの評価活動などを行っている米国の状況を、日本の状況と比較整理した。

 最後に、複数のシステムの協調発展のための運営課題や将来の自動運転普及のための非技術面の課題など、今後のITS拡大のための課題についてまとめた。


 関連レポート
車載カメラ応用システムの採用拡大状況と今後の動向 (2012年12月)



(1) ITS技術の概要

技術分野 技術内容 システム例 説明
交通流制御 信号機制御 公共車両優先システム
(PTPS)
信号機制御による円滑な交通流実現。警察庁が運用中。
料金所制御 ETC 料金自動収受。セットアップ件数:5,314万件以上(2013年3月)
交通情報提供 カーナビシステム 渋滞回避経路誘導
システム
道路状況を加味した経路探索・誘導。下記の「情報収集・分析・配信システム」の情報を活用している。累積出荷台数:5,428万台以上(2012年12月)
情報収集・分析・配信システム VICS リアルタイム交通情報を収集し、配信。車載機累積出荷台数:3,653万台以上(2012年12月)
ITSスポット 全国の高速道路網に1,600基設置。VICSより広域な情報を配信。
プローブ情報システム トヨタ、ホンダ、日産などがそれぞれ運用中のテレマティクスシステム。



運転支援 インフラ協調型 インフラ協調型警報・制御
システム
ITSスポット情報を使った道路上の障害物警報や、一般道の光ビーコン情報を使った出会い頭衝突防止など(DSSS)
車車協調型 車車間協調型警報・制御
システム
出会い頭衝突防止支援など
自律型 FCW/ACC、LDW/LDP など カメラ、レーダーなどを使った障害物認識・回避制御など
自動運転 自律型走行制御 高速道の隊列走行 複数台トラックの隊列走行(NEDO:エネルギーITSなど)
市街地の自律走行 Google Car など
出展:国土交通省のHP公表データ
PTPS: Public Transportation Priority System
ETC: Electronic Toll Collection system
VICS: Vehicle Information and Communication System
DSSS: Drivng Safety Support Systems
FCW: Forward Collision Warning
ACC: Adaptive Cruise Control
LDW: Lane Departure Warning
LDP: Lane Departure Prevention
プローブ情報: 車の位置、速度などの情報をもとに作ったリアルタイム交通情報
光ビーコン: 赤外線を媒体とした送信器


 ITS技術の適用システムを「交通流制御」「交通情報提供」「車両制御」の3つに分類し、それぞれの分野での開発・運用状況の概要を整理した。

 交通流制御とは、一般道での信号機の制御や高速道路での料金所での交通流制御を総称している。現在、警察庁による公共交通機関の優先通行などの交通管制システムが運用され、高速道路料金所ではETCによる自動収受による所謂料金所渋滞の解消が効果を上げている。

 交通情報提供では、カーナビゲーションへの交通情報提供によって、安全かつ効率的な経路誘導を実現している。交通情報は表中の「情報収集・分析・配信システム」に示す「ITSスポット」などのシステムからの情報を活用している。

 車両制御は、従来からの「インフラ協調型警報・制御システム」などの「運転支援」に加えて、近年「隊列走行」などの「自動運転」への取り組みが増えているため、表中に区別して整理した。

 これらのITS技術の中から、
・提供される交通情報を使った経路探索/誘導機能の着実な進歩が見られる「カーナビゲーション」
・その交通情報の質の向上を実現している「情報収集・分析・配信システム」として、「ITSスポット」と「DSSS」、
・近年実用化が進んできている「運転支援システム」
・これからの実用化に向けて研究開発が盛んな「自動運転システム」
に関して、次章にて開発状況を説明する。

 

 



(2)主なITS技術の開発状況

1)カーナビゲーションでの経路探索/誘導機能の高度化 (実用化済)

組込みナビ(PND含む) センター型ナビ

(スマートフォン含む)
車載メモリ
(HDD/SD)
路車間通信 テレマティクス

G-Book
Internavi LINC
Carwings など
VICS ITSスポット
固定情報 道路
施設
地形
特異点
統計交通情報
リアルタイム
情報
交通混雑 ○(広域)(注)
交通障害 ○(広域)(注)
交通事故 ○(広域)(注)
工事・規制 ○(広域)(注)
新設道路(地図更新)
プローブ情報
路面状況

(注)「○(広域)」:VICSよりも広域の交通情報を提供する。


 カーナビゲーションの経路探索/誘導技術は、当初、車載メモリに内蔵した「道路情報・施設情報」や、蓄積データを解析して得た「特異点情報や統計交通情報(注)」を使っていた。1996年4月にVICSのサービスが開始され、収集・解析されたリアルタイム交通情報/道路情報を、路側に設けられた電波ビーコン/光ビーコン/FM多重放送 の3つの手段を使って車載機に提供し、経路探索/誘導の精度向上を図った。

 これに加えて、自動車会社は自前のテレマティクスシステムを構築し、2003年からホンダがプローブ情報の活用などによるVICS情報を補完・強化した交通情報の活用サービス(Internavi LINC)を始め、2006年に日産(Carwings)、2007年にはトヨタ(G-Book)も同様のサービスを始め、現在では地図データの更新やその他の情報サービスなどの各社独自サービスを展開している。

 さらに2011年からはITSスポットによるVICSよりも広域な交通情報/道路情報の提供が始まっている。

 なお、近年台数増加の著しいスマートフォンナビなどの情報センターによる経路探索結果を運転手に提供するナビゲーションも、VICS情報などのリアルタイム情報を活用している例が多い。


(注)統計交通情報: 曜日、時間帯、天候 などによって過去の交通混雑データを統計
処理し、経路探索/誘導計算の際に活用できるようにした情報。

 

2)ITSスポット (2011年運用開始)

ITSスポットの概要  
推進母体  国土交通省
運用状況  全国の高速道路上を中心に約1,600箇所にITSスポットを整備し、2011年1~3月、全国サービス開始。
車への提供サービス  ダイナミックルートガイダンス(広範囲の交通情報データを配信)
 安全運転支援(ヒヤリをなくす事前の注意喚起)
 ETC(現状のETCサービスを継承)
提供手段  5.8GHz DSRC (Dedicated Short Range Communication)
安全運転支援の概要  事故多発地点における注意喚起(渋滞末尾情報など)
 道路上の落下物などの障害物の注意喚起
 トンネル内などの画像情報提供

 

(国土交通省HP)


 国土交通省によって全国の高速道路に設置されたITSスポットの配置図を示す。道路側から車載器に道路状況を伝達することによって、現在のETCサービスの置換機能に加えて、カーナビの経路探索・誘導機能への情報提供と安全運転支援のための情報提供機能を提供している。

 下表に、ITSスポット対応車載器の販売状況を整理した。ほとんどの車載器はカーナビと連動して動作するタイプだが、発話装置を備えたりスマホを表示装置にするなど、カーナビと連動しないタイプの装置も一部の部品メーカから販売されている。

ITSスポット対応車載器の販売状況(2013年3月末時点) ITSサービス推進機構ホームページより
メーカー名 標準装備/
工場装着
オプション
販売店装着
オプション
発話型
ITSスポット
対応車載器
ITSスポット対応
カーナビ連動型
カーメーカー トヨタ (注1)
日産
三菱自
マツダ
スズキ
富士重
プジョー
ベンツ (注2)
フォルクスワーゲン (注3)
アウディ (注4)
フィアット
部品メーカー アルパイン
パイオニア
パナソニック
三菱電機
三菱重工
クラリオン
デンソー (注5)
ケンウッド
(注1):LS600h,LS460 / GS450h、RX450h、HS250h、クラウン アスリート など
(注2):C-Class,CLS-Class,E-Class / A-Class,B-Class など
(注3):Golf R, Scirocco R, Golf Touran, The Beetle Cabriolet など
(注4):A3,TT,R8
(注5):スマホ連携型

 

3)DSSS (2011年運用開始)

DSSSの概要  Driving Safety Support System
推進母体  警察庁/UTMS
運用状況  東京都および神奈川県における事故多発交差点にて運用開始(2011年7月)
車への提供情報  信号情報、規制情報、道路線形情報、車両・歩行者の情報
提供手段  光ビーコン
車載機の動作  ドライバーへの注意喚起
主な注意喚起対象  出会い頭衝突防止支援/自転車衝突防止支援、
 信号見落とし防止支援、一時停止規制見落とし防止支援、追突防止支援
 右折・左折時衝突防止支援、歩行者横断見落とし防止支援、


 DSSSは、カーナビゲーションに交通情報を送信する光ビーコンを使い、ドライバーへの安全運転支援情報の提供を行うシステムであり、6都道府県(東京都、神奈川県、栃木県、埼玉県、愛知県、広島県)の一部に配備されて運用が始まり、今後全国展開が計画されている。

自動車会社の「DSSS対応車載器開発状況」を下表に示す。

メーカー名 搭載車種
市販車への搭載 トヨタ自動車  クラウン、カムリ、プリウス、アルファード、エスティマ など 50車種以上の市販車にDSSS対応カーナビを仕様設定。
日産自動車  フーガ、スカイライン、デュアリス、エルグランド、セレナ、ノート など 17車種にDSSS対応カーナビを仕様設定。
実験車開発 ホンダ  実証実験に参加して、技術開発を継続中。
マツダ
三菱自動車

 

4)運転支援システム (実用化済/開発継続中)

情報取得手段

 

路車間通信 車車間通信
DSSS ITSスポット
協調型 出合い頭衝突防止
右折・左折衝突防止
横断歩行者見落とし防止
など
高速道障害物警報
事故多発地帯情報
画像情報提供など
出会い頭事故防止
合流支援
など

 

カメラ/ミリ波レーダー/レーザーレーダー など
自律型 FCW/ACC
LDW/LDP/LKS
衝突回避操舵
など
LKS: Lane Keep Support
路車間通信: 道路側の通信機と車載通信機との間の通信
車車間通信: 自車と周辺他車との間の通信


 運転支援システムは、「協調型」と「自律型」の2タイプが開発されている。

 「協調型」には、路車間通信(5.8GHz帯)を使う「インフラ協調型」と車車間通信(700MHz帯)を使う「車車協調型」があり、「インフラ協調型」として、一般道でのDSSSと高速道路でのITSスポットが運用を開始している(上記、(2)章の2)項および 3)項参照)。車車間通信を使った支援システムは、現在研究開発中である。(注8)

 「自律型」は、カメラ/レーダーなどの車載センサーによって走行環境を認識し、安全な走行を支援するシステムであり、多くのシステムが市販車に搭載され始めている。今後もセンサー技術/制御技術/アクチュエータ技術の進歩によって、研究開発が継続されより高度なシステムが実用化されてくると思われる。(市場・技術レポートNo.1132 車載カメラ応用システムの採用拡大状況と今後の動向 (2012.12.28)参照)

 (注8)2008年~2009年に総務省が「ITS無線システム高度化に関する研究会」を開催し、自動車会社、部品会社、通信会社などが参加し、2012年の「700MHz帯高度道路交通システム」標準規格に向けての検討が行われた。2013年3月の第4回国際自動車通信技術展での講演で、トヨタは「車車間通信を使った安全支援システムの開発に注力する。」と公表している。

 

5)自動運転システム (開発中)

 自動運転に関しては、日米欧にて種々の開発が行われているが、大別すると、
・主にトラックなどの商用車に対して、隊列走行による燃費削減を目指すシステム
・主に乗用車に対して、市街地での自動走行を目指すシステム
(目的は、ぶつからない車の実現や駐車場での利便性向上、障害者/高齢者の社会参加など様々)
の2通りの開発が見られる。

 これらの開発内容を、走行環境認識技術の観点で分類すると下記のようになる。

走行環境認識技術の分類 カメラ レーダー 360° 注3
レーザ-レーダ-
GPS 地図 車車間通信
障害物認識 注1
自車位置認識 注1 注1 注1
他車両状態認識 注2
注1: 360°レーザ-レーダ-によって周囲地図を生成し、GPSと地図による推定位置と比較して自車位置を特定する技術。
SLAM (Simultaneous Localization and Mapping )と言われる。
注2: 車両間で車両運動情報および車両操作情報を共有する。
注3: 米カリフォルニアのVelodyne Lidar Inc. がほぼ独占的に供給している。


 自動運転のためのキー技術は、走行環境の認識精度を高めることであり、そのために、複数の認識手段を組み合わせて人間の認識レベルに近づけようとする開発努力が行われている。

 

5-1)トラック隊列走行(NEDO:エネルギーITSプロジェクト。 開発終了)
エネルギーITSプロジェクト  NEDO 平成20年度~24年度 推進事業
 プロジェクトリーダー: 津川定之 名城大学教授
達成性能  大型トラック3台小型トラック1台の4台隊列走行
 走行車速80km.h、車間距離4m
省エネ効果(期待値)  15%以上
環境認識技術 路面白線認識  カメラ/レーザーレーダーの2重化
障害物認識 ミリ波レーダー/レーザーレーダーの2重化
車間距離検出
車間距離制御技術  車車間通信(5.8GHz、20ms周期)により、車間距離、速度、加速度 を共有し、
 各車の速度制御モデルを使った車間距離制御を実施
参加企業、大学  
トラックメーカー  いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそう、UDトラックス
走行制御担当メーカー  大同信号
位置認識技術担当メーカー  三菱電機、日本電気
走行環境認識技術担当メーカー  日産自動車、デンソー、日本電気
車車間通信技術担当メーカー  沖電気、三菱電機、日本電気
参加大学  日本大学、神戸大学、慶応義塾大学、東京大学、弘前大学、金沢大学、東京工業大学
研究機関  日本自動車研究所、産業技術総合研究所

 

出展:NEDOプレスリリース


 技術の汎用性を向上させ隊列走行の早期実用化につなげるため、車車間通信を用いた車間距離制御と前方障害物認識技術を我が国大型車メーカ4社の大型トラックに適用したCACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)の実験車4台を製作し、走行デモを行った。(2013年2月に公開)

 

5-2)自律走行(Self-Driving Car by Google)
Self-Drivng Car (Google)
達成性能 市街地一般公道での自動走行
環境認識技術 自車位置 360°レーザーレーダーによる周囲地図作成 と
GPSと道路地図による自車位置推定との組合せ
障害物認識 360°レーザーレーダー
前方用3台のレーダーと後方用1台のレーダー
前方用カメラ
信号認識 前方用カメラ

出展:Google プレスリリース


 スタンフォード大学の自動運転技術の研究者を集めてSelf-Driving Car を開発し、米国の3つの州にて公道走行の許可を取得し、走行テストを行っている。2013年1月に北米で開かれた家電ショー(CES)にてトヨタも同様のシステム構成と思われる自動走行車を発表した。(注3)

(注3)トヨタの公開した実験車を見ると、360°レーザーレーダーと複数のカメラおよび複数のミリ波レーダーが搭載されている。


 Google、トヨタを含めて、自動走行車の開発状況を整理した。走行シーンとして一般公道を目指している開発と、高速道路などのシーン限定であっても、既存センサー技術の延長で早期実現を重視した開発とに大別される。

メーカー シーン 特徴 現状
Google 一般公道 周囲環境認識
技術のブレイク
スルーがポイント
 米国3州(ネバダ、フロリダ、カルフォルニア)で公道試験実施中。
トヨタ  米国ミシガン州で公道試験開始を発表。
Audi  米国ネバダ州で公道試験開始を発表。
Bosch  欧州での公道試験を予定。
GM 高速道路 既存センサー技術
の延長で実現可能
 2017年の実用化を表明。(高速道路本線のみ限定)
VW  EUプロジェクト「HAVE-it」にて走行試験実施。
BMW  アウトバーン走行1万キロ実施済。
Continental  米アリゾナ州での評価試験実施済。
日産 駐車場  駐車スペースの自動認識、自動駐車のデモを実施。

 

 



(3)日米欧の状況比較

 ITS技術の開発/実用化の状況は日米欧で少し様子が違っている。

日本 ・交通情報提供 および インフラ協調型運転支援 の面で、他地域より進んでいる。
・VICS、ETCの普及規模 大。
・ITSスポット、DSSSの運用開始。
・しかし、各システムの運用に関わる官庁間の壁の撤廃や民間データと官データの一元化など、より使いやすいシステムにするための課題が残っている。
・自動運転に関しては、トラックの隊列走行の開発が終了している。
・国土交通省主催の「次世代ITSに関する勉強会」が始まり、自動運転に関する制度面や社会受容性などの技術以外の面の課題整理に取り掛かっている。
欧州 ・EU委員会の研究開発支援によって、技術開発において三極内で一番活発かつチャレンジングな課題に取り組んでいる。
・特に自動運転/隊列走行に関しては、HAVE-itやSARTREなどのプロジェクトにて実用化時の技術以外の面の検討も行われ、日本での取り組みより先行している。
・反面、路車間通信などのインフラ整備が必要なシステムについては、各国の独自性が壁になって、実用化の進みは遅い。
・eCall や路車間通信システムなどのフィールドテストは始まっている。
米国 ・三極内では最も活動は低調。(州ごとのITSに関する関心度にバラツキがある)
・政府(DOT)の活動の中心は、路車間/車車間通信システムの効果/受容性評価である。
Safety Pilot : 2013年の評価結果で、5.9GHzDSRCの使用継続が判断される。
・一方、民間(大学も協力)では自動運転の開発競争が始まっている。
・GoogleのSelf-Driving carに始まり、GMや北米トヨタが走行実験開始を公表している。

 

HAVE-it Highly Automated Vehicles for Intelligent Transport プロジェクト
プロジェクト期間: 2008年~2011年
一般道のトラックを対象とした先行車追従走行と
高速道路における乗用車の高度な運転支援(速度制御や車線制御)の研究開発を実施。
主要参加企業: VW, Volvo, Continental
SARTRE Safe Road Trains for the Environment プロジェクト
プロジェクト期間: 2009年~2012年
幹線一般道における隊列走行(先頭車:トラック、後続車:3台の乗用車)を実現。
主要参加企業: Ricardo(英国の自動車技術研究機関)、Volvo
Safety Pilot   米DOTによる Connected Vehicle Technology の有効性実証実験プログラム

 

 



(4)今後の発展予想と課題

 今後の発展方向を予想させる「国/自動車会社の動き」を下記に整理した。

国、自動車会社 技術分野 活動内容
道路新産業
開発機構
情報提供 ITS車載器を使ったトライブスルー実証実験実施(2012年3月)
・ITSスポットサービスの普及のための試み。
・つくば学園都市のマクドナルドにて実施。
国土交通省 自動運転 自動運転の実用化に向けたロードマップ発表(2012年3月)
・2020年初頭の実用化を目指す。




トヨタ 情報提供 路車間通信対応カーナビの搭載拡大。
・2011年に搭載を開始し、現在50車種以上。
渋滞緩和技術の適用拡大を図っている。
・2013年、北京市にて交通流シミュレーターに実証実験実施を発表。
運転支援 760MHz帯を使った路車/車車間通信技術を披露。(2012年11月)
・路車間と車車間の通信を一つの車載器で実現。
・対向車、歩行者などの認知度を高め、衝突防止を支援する。
自動運転 一般公道での自動走行試験を米国にて実施開始を公表。(2013年1月)
ホンダ 情報提供 テレマティクスを世界60ヵ国以上に展開を表明(2013年3月)
・Internaviの資産をベースに情報センターを構築。
・日本で展開しているスマートフォンアプリを提供。
Internaviの機能拡大
・急ブレーキ多発地点などを掲載した「SAFETY MAP」を一般公開(2013年3月)
・ソーシャル機能強化に向けた「dots」プロジェクト開始。(2011年12月)
渋滞抑制を目指した渋滞予兆検知技術を開発、公道実験開始。(2012年4月)
・インドネシアでの公道実験にて、渋滞抑制と燃費改善効果を確認(2013年3月)
日産 情報提供 路車間通信対応ナビの搭載拡大。
・2009年に搭載を開始し、現在17車種に拡大。
動的経路誘導の交通分散効果の実証実験実施。
・北京市にて12,000人が8か月の大規模実証実験を行った。(2011年12月)
自動運転 駐車場での自動運転デモ走行を実施。(2012年10月。実験車名:NSC2015)
米国に研究拠点を開設。(2013年2月)
・研究分野: 自動運転車両、外部環境とつながる車両


 上記に示した活動状況から、ITS技術の開発/実用化は下記に記すように、各分野において今後も発展して行くと予想している。しかし、その発展のための課題は多い。下記に主な課題を合わせて整理した。

発展予想 課題
交通流制御 広域・連携の信号機制御による交通流円滑化制御が拡大する。 対応車載器の普及
高速道路料金所でのETC機能への付加価値が拡大する。 コンテンツ提供母体の協調・運営の一元化
交通情報提供 より広域、よりリアルタイムな情報が提供される。
・経路選択の多様性が拡大する。
(燃費、時間、快適 など)
複数の提供情報収集手段の連携拡大が必要
・プローブ情報の一元化、
警察と道路管理者データの一元化など
安全運転支援情報提供が拡大する 道路側設備のメンテナンス、情報提供母体の運営一元化
・信頼性、リアルタイム性向上が必要
車載器の仕様統一が必要



運転支援 自律型安全運転支援支援システムの搭載が拡大する 走行環境認識センサーの低コスト化が必要
路車間・車車間通信による自律型運転支援機能の補完が進む 提供情報の信頼性、リアルタイム性向上
対応車載器の搭載拡大(低コスト化、コンテンツ拡大)
路車間と車車間の通信機の統一・低コスト化
自動運転 商用車での隊列走行/自動走行(オートパイロット)の拡大 道路インフラ整備(専用道の整備など)
自動運転機能に対するドライバの対応などの人間工学研究の進歩
事故発生時の責任問題解決に向けた法整備
その他 複数のシステムの相互連携が進み、シームレスなサービスが拡大する。
(ex. 一般道と高速道路での情報伝達コンテンツの一元化プロブ情報の一元化など。)
省庁間の連携した施策が必要になる。
カーメーカー間の情報公開・協調が必要になる。
ITS技術と道路環境整備の連携/協調が必要になる。
対応車載器搭載車と非搭載車混在環境を前提としたシステム開発・運用


 どのシステムも拡大傾向が続くと思われるが、どのシステムにも共通した課題として、データの収集・加工・配信のための管理母体の一元化要求が課題として大きい。省庁間でのデータの相互流通やフォーマットの共通化が望まれるし、民間においても、データの囲い込みを止め、情報の相互利用を進めることが望まれる。さらに、配信データを運転支援への活用が拡大すると、そのデータの信頼性確保が大きな課題になる。そのために、データの更新、設備のメンテナンスなどが確実に行われる仕組みを構築する必要がある。

 運転支援や自動運転に関しては、自動運転技術だけでなく、自動運転の適用時と非適用時およびそれらの切替時のドライバーの挙動に与える影響などの人間工学的研究の進歩も必要になる。さらに技術面の進歩だけでなく、事故発生時の責任問題や社会的受容性の醸成などの技術以外の面の課題解決にも取り組む必要がある。この観点から、運転支援や自動運転機能については、商用車への適用が乗用車への適用に比べて拡大のスピードが速いと思われる。これは、商用車はプロのドライバーを前提にできること、あるいはITS技術搭載コストを回収できる効果を商用車の運行管理者ならば見積もりやすいことなどに起因する。


 2013年10月には東京において第20回ITS世界会議が行われる。そこでは世界中から60か国8000人の参加が見込まれていて、現状および今後のITS技術開発/実用化の状況の発表が期待されている。開催国の日本からはショーケースとして次世代協調型システム(ITS Green Safety)や情報提供高度化(次世代VICSやITSスポット補完など)および自動運転、安全運転支援などの未来のITSの紹介も予定されているので、ITSの今後の発展予想と課題への取り組み状況が見えてくると思われる。


以上

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>