第3回 EV・HEV 駆動システム技術展 取材報告

日本電産が永久磁石を用いないSRモーターを、日本ケミコンが回生装置向けキャパシターを展示

2012/01/31

要 約

 第3回 EV・HEV 駆動システム技術展が、2012年1月18日-20日にかけて東京ビッグサイトで開催された。その展示概要を、同時開催のカーエレクトロニクス技術展を一部含めて、報告する (同じく、同時開催の「クルマの軽量化技術展」の展示概要は別レポートにて報告いたします)。

 モーター関連では、日本電産が出展した永久磁石を用いないSRモーター、安川電機の巻線切替え方式のモーターを持つモータードライブシステム QMET-IIが注目を集めていた。また、EV・HEV関連技術では、日立オートモティブシステムズの回生協調対応電動型制御ブレーキシステムの展示に関心が集まっていた。

 カーエレクトロニクス展では、日本ケミコンがマツダの減速エネルギー回生システム向けに供給する、電気二重層キャパシターを展示。

関連レポート: 2012年 第2回クルマの軽量化技術展取材報告(1)炭素繊維強化樹脂と軽金属(2)樹脂化関連
2011年 第2回EV・HEV駆動システム技術展 (1)駆動用モーター関連の新製品・新技術 / (2)電池・充電器関連の新製品・新技術



モーター:日本電産が永久磁石を用いないSRモーターを、安川電機はモータードライブシステム QMET-IIを展示

 日本電産は、ローターに永久磁石を用いないSRモーターを展示。2013年頃からの量産開始を目指す。安川電機は、効率領域が広い巻線切替え方式のモーターを用いる、モータードライブシステム QMET-IIを展示した。

 三菱自動車向けのモーター/インバーターを供給する明電舎は、開発中のモーター/インバーターを展示。シコーとミツバは、それぞれ、インホイールモーターを展示した。


日本電産のSRモーター
日本電産のSRモーター


SRモーターのパネル
SRモーターのパネル(拡大)

 

日本電産:永久磁石を用いないSRモーターを展示

SRモーター  ローターに永久磁石を使わない、低価格での量産が期待されるSR(Switched Reluctance)モーター(注)。鋼板製のローターは軽く、応答性が高い。最高出力は44 kW、最大トルクは86N・m。2013年頃から量産開始を目指す。現在の課題は、効率の良い領域が10,000rpm近い高回転領域にあり、5,000rpm以下では効率が落ちてしまうこと。
(注) 1. SRモーターは、磁石が鉄を引きつける力(Reluctance)を利用する。鋼板でできたローターを、電磁石でできたステーターが連続的に引きつけることで回転。19世紀から、存在する仕組みだが、振動、騒音の問題で主流とはなっていなかった。
2. 日本電産は、SRモーターの関連特許を世界の半数持つとされる米社Emerson社のモーター事業を2010年9月に買収した。

 

安川電機:モータードライブシステム QMET-II

 2012年1月に発表した、巻線切替え式モーターを用いたモータードライブシステムの2代目。一般に低速モーターは低回転から高トルクが出るが高回転はできず、高速モーターは高回転が可能だが低回転時に高トルクが出ないという特性を持つ。モーターに巻線切替えの仕組みを導入することで、低速/高速モーターの2つの長所、低回転時の高トルクと高回転が可能となり、広い効率範囲を持つ。
軽量化  QMET-IIでは,初代に比べて小型軽量化(体積で23%減、質量で43%減)。
脱レアアース  レアアースを使わない永久磁石同期モーターを量産予定(2012年11月よりサンプル提供予定)。
プラットホーム化  モータードライブのコア技術の標準化、部品の共通化、モジュール化により、幅広いラインナップを提供。最大トルク、最高回転数を選ぶことができ、構造/インターフェイスは要求に応じてセミカスタム化が可能。

(注)1世代目のQMETは2009年6月に発表。巻線切替えモーターは、安川電機の主要事業である工作機械用に開発された技術。


安川電機 QMET-IIのモーター
安川電機 QMET-IIのモーター


安川電機 QMET-IIのインバーター
安川電機 QMET-IIのインバーター

 

製品ラインナップ

容量 対応製品 対象車種 サンプル提供予定 量産予定
120 kWクラス QMET-II セダン(1.6L-)、バス/トラック 2012年7月 2013年春以降
80 kWクラス QMET-II コンパクトカー(1-1.5Lクラス) 2012年4月~
50 kWクラス QMET-II、YMEV 軽四輪車 2012年6月~
30 kWクラス YMEV 2012年6月~

(注) YMEVは2011年1月に安川電機が発表した、巻線切替えがない小容量用のモータードライブシステム。

 

明電舎:三菱向けと現在開発中のモーター/インバーターを展示

MINICAB-MiEV
モーター/インバーター
 明電舎は、2011年12月発売の軽商用車 三菱 MINICAB-MiEVのカットモデルを置いて、同社が供給しているモーターとインバーターを展示。モーターの最高出力は30kW/2,500-6,000 rpm、最大トルクは196N・m/0-300rpm。
開発中の
モーター/インバーター
開発中のEV/PHV/HV向けのモーター/インバーターも展示。スペック(下表)はあくまで参考値で、自動車メーカーの要望に合わせて調整するとのこと。2013年にもサンプル提供可能。


05明電舎の次期モデル向けEV用モーター
明電舎の次期モデル向けEV用モーター


05明電舎の次期モデル向けEV用インバーター
明電舎の次期モデル向けEV用インバーター

 

開発中のモーター/インバーターの諸元(参考値)

モーター インバーター
質量 最大定格 最大回転数 体積
軽自動車クラス(30-40kW) 25kg 30kW-75Nm-3,820rpm 12,000rpm 3.5L
小型車クラス(50-60kW) 35kg 60kW-150Nm-3,820rpm 12,000rpm 4.6L
中型車クラス(80-90kW) 40kg 80kW-200Nm-3,820rpm 12,000rpm 6.5L

 

シコー:ローター内部が中空のインホイールモーターを展示

 シコーは、小型コアレスモーター・小型発電機を開発・販売するメーカー。今回は、小型発電機用コアレスモーターをベースとした、主に軽自動車向けを想定したインホイールモーター(注)を展示。出力は5kW。ローターの内部は中空で、ブレーキなどを納めることも可能。
 ベースとなった同社のコアレスモーターは、通常は銅線を巻くステーターに銅シート材を用い、1) 軽量ながら、高密度・高出力で剛性が強く、2)放熱性に優れ、3)極めて滑らかな回転という特性を持つ。

(注)同社はホイールインモーターと呼称。


シコーのローター内部が中空のインホイールモーター
シコーのローター内部が中空のインホイールモーター

 

ミツバ:マイクロコミューターEV向けモーターを展示

 ミツバは自動車電装部品を製造販売するメーカー。同社が参加する、群馬マイクロEV協会のマイクロコミューターμ-TT2に搭載するインホイールモーターを展示。アウターローター型の3相ブラシレスモーター。最高回転数は9,400rmp、定格出力は0.3kW、質量3kg。


ミツバのマイクロコミューターEV向けモーター
ミツバのマイクロコミューターEV向けモーター

 



EV・HEV関連システム:日立オートモティブシステムズが回生協調対応電動型ブレーキシステム、ニチコンが車載充電器を展示

 EV・HEVの関連システムでは、日立オートモティブシステムズが、ハイブリッドシステムと、回生ブレーキと油圧ブレーキを組み合わせた「回生協調対応電動型ブレーキシステム」を展示した。ニチコンは車載用の充電器、日本電産トーソクはモーター冷却用の電動オイルポンプを展示した。


Chevrolet Volt向けのモータージェネレーター
Chevrolet Volt向けのモータージェネレーター


Chevrolet Volt向けのインバーター
Chevrolet Volt向けのインバーター

 

日立オートモティブシステムズ:ハイブリッドシステム

ハイブリッドシステム  日立オートモティブシステムズは、モータージェネレーター、インバーター、リチウムイオン電池を展示し、ハイブリッドシステムの主要部品を全て供給できることをアピール。
モータージェネレーター  GM Chevrolet Voltへ供給している、モータージェネレーター(注)。高密度な集中巻きとコンパクトな結線構造により小型高出力を実現した。
インバーター  GM Chevrolet Voltへ供給している、インバーター。駆動用に加え、補機用のインバーターを内蔵し実装性を高めた。冷却構造を工夫して放熱性を高め、高出力化に対応した。
リチウムイオン電池  GMのマイルドハイブリッドシステムe-Assist向けのリチウムイオン電池モジュール。同社のリチウムイオン電池セル LIB-IIIを32個内蔵。

(注)Voltには2つのモーターが搭載されており、共に日立オートモティブシステムズが供給。展示されていたのは、ジェネレーターも兼ねるモーター。

 

日立オートモティブシステムズ:回生協調対応電動型制御ブレーキシステム

回生協調対応電動型
制御ブレーキシステム
 駆動用モーターによる回生ブレーキと通常の油圧ブレーキを協調制御するブレーキシステム。日産のEV LEAF、Fuga HV に搭載。電動型制御ブレーキアクチュエーター(e-ACT) 、ESC、ストロークセンサー、電動パーキングブレーキ機能付キャリパーからなる。
 ブレーキペダルからの入力量は、磁石を使った非接触式のストロークセンサーで電気信号に変換される。そして、コンピュータが、回生ブレーキと油圧ブレーキの必要なブレーキ量を計算。
 必要な油圧は、e-ACTのボールねじをモーターで駆動することにより発生させる。ボールねじとブレーキペダルは通常時は直接つながっていない。


回生協調対応電動型制御ブレーキシステム
回生協調対応電動型制御ブレーキシステム

 

ニチコン:日産LEAF、三菱 i-MiEV向け車載充電器を展示

EV用車載充電器  日産 LEAFに供給している車載充電器。世界各国の電源に対応している(入力電圧AC100Vー264V)。充電効率は最大90%、出力電力は最大3.3kW、出力電圧は200V-410V。冷却方式は水冷で、充電器内部に一体化されている。
EV用車載
充電器一体型
DC-DCコンバーター
 三菱 i-MiEV向けに供給している、DC-DCコンバーター一体型の車載充電器。充電器の基本的な性能は上記のLEAF向けと同じ。DC-DCコンバーターの入力電圧は200-410V、出力電圧は14V、出力電流は80-120A。充電器とコンバーターの間に冷却水が流れる構造となっている。


ニチコンが日産 LEAFに供給する車載充電器
ニチコンが日産 LEAFに供給する車載充電器


ニチコンが三菱 i-MiEVに供給する車載充電器一体型DC-DCコンバーター
ニチコンが三菱 i-MiEVに供給する車載充電器一体型DC-DCコンバーター

 

日本電産トーソク:電動オイルポンプ

電動オイルポンプ  日本電産トーソクが開発中の電動オイルポンプ。通常はアルミで作られるポンプハウジングを鉄とすることで、フリクショントルクを小さくした(特許出願予定)。また、同部品用のインバーターも内製。小型の電動オイルポンプはインバーターと一体化した。

(注)電動オイルポンプは、駆動用モーターの冷却やアイドリングストップ時のトランスミッションの油圧確保に使われている。


日本電産の電動オイルポンプ
日本電産の電動オイルポンプ

 



キャパシター:日本ケミコンが低抵抗の電気二重層キャパシター、新神戸電機がリチウムイオンキャパシターを展示

 日本ケミコンは、マツダの減速エネルギー回生システム向け電気二重層キャパシターを展示。今後、汎用化して、他社への展開を図る。また、新神戸電機は2012年春より量産予定のリチウムイオンキャパシターを展示。


日本ケミコンがマツダ向けに供給する、電気二重層キャパシターモジュール
日本ケミコンがマツダ向けに供給する、電気二重層キャパシターモジュール


日本ケミコンの第三世代電気二重層キャパシター DXE シリーズ
日本ケミコンの第三世代電気二重層キャパシター DXE シリーズ

キャパシターの展示

日本ケミコン マツダ向け電気二重層
キャパシター DLCAP
 マツダの減速エネルギー回生システム i-ELOOP(注)向けに供給するキャパシターを展示(モジュールも日本ケミコンが組立て)。従来製品に比べて、内部抵抗値を3分の1に抑えて大電流の蓄放電能力を高めた。また、耐熱性も60度から70度に高めて、エンジンルーム内に納めることを可能とした。
DXE シリーズ  同社は、マツダ向けに開発した上記のキャパシターを、汎用化して2012年度に量産化する(第3世代 DXEシリーズ)。耐熱性を85度までに高めたキャパシターも開発。自動車向け、太陽光発電向けなどに提案。
新神戸電機 リチウムイオン
キャパシター
 リチウムイオンキャパシターは電気二重層キャパシターに比べて、高入出力、長寿命、高耐熱性(80-90度)の特性を持つ。2012年春より、産業用向けに数万セル単位で量産開始。自動車向けには、鉛バッテリーと組み合わせて、アイドリングストップシステムの耐久性アップ、燃費向上に貢献できるとのこと。
 リチウムイオンキャパシターは、(現在のところ)電気二重層キャパシターに比べて、コストが3-4倍かかる。新神戸電機が生産する、リチウムイオン電池と共用できる部品もあり、リチウムイオンキャパシターの本格的な量産となればコスト低減も可能とのこと。
ニチコン 電気二重層キャパシター  主にエネルギー分野に用いられている、(ねじ端子式の)電気二重層キャパシターを展示。超低抵抗モジュールやハイパワー密度キャパシターなどをアピール。今のところ、自動車向けの供給は無いとのこと。

(注)マツダは i-ELOOPを搭載したコンセプトカー雄(TAKERI)を2011年12月の東京モーターショーで初披露。2012年には市販される予定。


新神戸電機のリチウムイオンキャパシター
新神戸電機のリチウムイオンキャパシター


ニチコンの電気二重層キャパシター
ニチコンの電気二重層キャパシター

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>