分析レポート CVT (日本・欧州・米州市場編)
日本市場の固有部品化が進むCVT
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Ⅰ. はじめに
エンジンを主とした動力源の出力軸より希望する出力、つまり運転状況に適した回転速度・トルク・回転方向を得るためのユニット部品が変速機=トランスミッションであり、動力源とともに走行性能・燃費やドライブフィーリングなどモデルの商品性を左右する重要な製品である。そのため、エンジンや動力モーターと同様に自動車メーカーがイニシアティブをとるために内製されるものが多く、トランスミッションユニットを供給できるサプライヤーは一部の大手に限られている。よって、可能な限り自動車メーカー内製とサプライヤー製とを区分し、また搭載されるエンジンやモデルとの関係を踏まえて述べていく。
トランスミッションは大きくオートマチックトランスミッションとマニュアルトランスミッション(以下 MTと称す)に分類され、さらにオートマチックトランスミッションは以下のように細分化される。
本稿で扱う範囲は、上図のオートマチックトランスミッションのうち以下の連続可変型変速機(以下、CVTと称す)である。
- 動力伝達ベルトやチェーンを用いた摩擦式無段階変速機 (以下、機械式CVTと称す、ステップ機構付を含む)
- 動力分割機構を介して内蔵電気モーター/ジェネレーターによる無段階変速を行う、トヨタ車をはじめとするハイブリッド車変速機 (以下、電気式CVTまたはハイブリッドトランスミッションと称す。電気式CVTは、ベルトとプーリーを用いた機械式CVTとは全く構造が異なるが、機能的に分類し無段階変速に含める)
オートマチックトランスミッションは本稿の対象外となる。
- トルクコンバーターと遊星歯車を用いた有段式オートマチックトランスミッション(以下ATまたはステップATと称す、MTモード付ATを含む) 分析レポートAT編を参照
- ハイブリッド車変速機のうち有段式AT機構にモーターとクラッチを組み込んだ構造のもの (日産FRハイブリッド車、欧州を中心としたZF社製変速機を搭載するモデル、トヨタのマルチステージハイブリッドシステム) 分析レポートAT編を参照
- オートマチックトランスミッションの仲間ではあるが、MTをベースにクラッチ操作と変速操作を自動化したDCT(デュアルクラッチ・トランスミッション)やAMTなどのいわゆる2ペダルMT
CVTはステップATのようにギアを段階的に切り替え変速させるのではなく、無段階に変速させる機構である。無段階であるため最適ギア比で走行できることがCVTの大きなメリットである。エンジンの効率がいい回転域にギア比を合わせられるため、パワーの限られた小排気量の軽自動車や小型車との相性が良い。そのため、近年の日本市場における軽自動車・A-Dセグメントクラス前輪駆動車のオートマチックトランスミッションの多くがCVT搭載となっている。後で詳述するが、本稿では日本・欧米市場を対象とするも現在のCVTビジネスは実質日本市場・日系OEM固有の製品となっている。
特にことわりがない限り、以降本稿で扱うオートマチックトランスミッションという言葉はAT、機械式CVT、電気式CVTまたはハイブリッドトランスミッションを指すものとする。
販売地域別トランスミッション形態 CVTは実質日本市場・日系OEM固有の製品。
| 市場規模 | MT (%) | AT (%) | 適用自動変速機 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 地域 | 非大型生産数※ | CVT | 電気式CVT | AT(多段) | DCT | AMT | ||
| 日本 | 約750万台 | 2 | 98 | ◎ | ○トヨタHV | ○ | x | ▲スズキ |
| 北米 | 約1,850万台 | 3 | 97 | ○日本車 | △トヨタHV | ◎ | ○欧州車 | |
| 欧州 | 約1,500万台 | 60 | 40 | x | △トヨタHV | ◎ | ◎ | |
| 中国 | 約2,700万台 | 5 | 95 | ○日本車 | △トヨタHV | ◎ | ◎欧州車 | |
【図1.2024年実績】(マークラインズ作成:日本は乗用車+軽自動車+軽トラック、米州、欧州は乗用車+小型トラック、中国は乗用車+SUV+MPV)
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